トランスジェンダーの先駆者、ソウル歌手のジャッキー・シェインが78歳で死去

2017年にシングル・コレクションとライヴ音源を収録したボックスセット『Any Other Way』（写真）がリイシューされ、再び注目を集めていたトランスジェンダーのソウル歌手、ジャッキー・シェインが、2月22日にナッシュヴィルの自宅で睡眠中に亡くなりました。享年78。

1940年にナッシュヴィルに生まれたシェーンは、13歳の時に性同一障害であることを自認しますが、当時は世間に理解されなかったため、自身をゲイだと説明することもあったと言います。

南部の教会でゴスペルを歌っていましたが、R&Bやソウルに囲まれた生活を送り、リトル・リチャードやジ・アップセッターズから学んだジャッキーは、エタ・ジェイムズやジャッキー・ウィルソン、ジ・インプレッションズらとステージを共にしていました。

その後、60年代にカナダのトロントへ移住すると、彼女が出演したナイトクラブが満員になり、地元の音楽番組にも出演しています。

「Money (That's What I Want)」「You Are My Sunshine」、そして「Any Other Way」などをカヴァーし、シングルとライヴ・アルバムをリリースしていますが、レーベルが信頼できないとしてスタジオ・アルバムは1枚も制作しませんでした。また、1971年には謎の失踪を遂げ、亡くなったのではないかと思われていました。

ジャッキーは、ロサンゼルスの母親を介護するために引退し、母親の死後はナッシュヴィルに戻り隠居生活を送っていましたが、2010年にカナダのテレビ局が彼女のドキュメンタリーを制作したことで再び注目を集め、トロントの20階建てのビルの壁面には、影響力のあったミュージシャンとして、マディ・ウォーターズらと共に彼女の顔が描かれているそうです。

アルバム『Any Other Way』は、2019年のグラミー賞で、〈最優秀ヒストリカル・アルバム賞（Best Historical Album）〉にノミネートされていました。