MUSIC LIFE CLUB 6th Anniversary

【連載・朝日順子】ロック史の現場を見て!食べて!飲む! ビートルズのインド編 オールドデリーでのレコード・ハントはさながらテーマパークでの宝探し

朝日順子さんによる連載第2弾はインドでのビートルズゆかりの地巡り。第3回での朝日さんはレコード・ジャンキーの “性” が発動、その道行はさながらロック考古学者のお宝探し道中のてんやわんやを描いた冒険活劇!(監督はきっとスティーヴン・スピルバーグ)。果たしてお宝は手に入るのか!? ── あのテーマ曲を思い浮かべながら読むとぴったりな内容です。

お店そのものよりも、その行き帰りのパンチが効きすぎな件

第3回 ハンターの皆様、インドでもレコードは高いのでご注意ください

レコ屋ジャンキーは、いつでもどこでもレコード屋に行きたくなるものです ── 例えそこがインドであっても。朝食はホテルでお好み焼きのようなマサラドーサにチャツネを付けて美味しく頂き、モスクのジャマー・マスジッドを見学した後で、安全でお洒落なショッピング街にツアーは移動し、2時間の自由時間を与えられました。そんな時目指すのは、むろんレコード屋。有り難いことにツアー主催者の井上ジェイさんと藤本国彦さんも同行してくれることになりました。
マサラドーサとカレーの朝食。
ジャマー・マスジットにて。
オートリクシャ(日本の人力車から命名)で、政府や軍の施設が並ぶ瀟洒なニューデリーを颯爽と走り抜け、別世界のオールドデリーに。水浴びや歯磨きから商売、寝食まで路上で済ます光景が続きます。デリー最古の市場に近づくにつれ、牛、犬、自転車のリクシャ、手押し車が一斉に行きたい方を目指し、身動きできなくなりました。最後は徒歩でレコード屋を目指すと突然、修行僧が汚れた綿棒1本を鼻先に突き出してきた! 後でガイドさんに聞いたら、香水を売っているとのこと。
道路にはオートリクシャがうじゃうじゃ。
 
 
老舗レコード店「New Gramophone House」(創業1930年!)に入ると雑貨ばかりでレコード屋は閉店?と一同戸惑っていると、レコードは2階だと告げられます。お目当てのレコード ── インドのボブ・ディラン “Susmit Bose” の” Train To Calcutta” は無く、ボリウッドのサントラばかり。ビートルズ研究家の藤本さんらのお目当ては、アップル・レコードのインド盤ですが、ビートルズは編集盤ばかりで数も少なく、値段にいたっては1~2万円と、世界的なアナログ・ブームでとんでもないことになっていました。
レコード屋外観。
レコード屋店内。
Susmit Bose『Train To Calcutta』(1978)
名前の読みを仮名表記するなら、英語では「サスミット・ボーズ」、ヒンディー語の発音なら「ソシミット・ボース」が近い?(編集部調べ)。1950年生まれ、70年代から活動するシンガー・ソングライターで、ウィキペディアによるとその楽曲は「社会問題、人権や世界平和、非暴力を扱う」ことから、“インドの・ボブ・ディラン” と称されているのでしょう。代表作には朝日さんも買い求めようとした『Train to Calcutta』など。そして歌声もまた『ナッシュヴィル・スカイライン』でのボブ・ディランのようです。ウェブ検索してみると同作LPにはレーベル名の記載がなく品番も「BWLP-1」だったりしたので、朝日さんお探しのブツはもしかして自主制作で結構レアなのでは? 2020年にCDと配信でアンソロジー作品『Then & Now』をリリース(下記)、日本のアマゾンでも配信中。
商品詳細
Susmit Bose
『Then & Now』


Amazon Music・MP3(NOV 01 2020)¥5,200
帰路は信号で止まる度に四方八方から物乞いが突撃してきます。子供は足にしがみつき、トランスジェンダーの物乞いは鬼の形相で「ぱん!ぱん!」と手を叩いて脅してきたり、額に触れて御利益を授ける仕草を。手作りの車椅子に乗り、手を使ってアスファルト上を猛スピードで寄ってくる人もいました。これは何のアトラクションだろう? 混沌という名のディズニーランドだろうか?と考えながら、なぜか元気と勇気が湧き出てくるのでした。

─────────────

朝日順子氏による「ロック史の現場を見て!食べて!飲む!」の「ビートルズのインド編」第3回は、困ったことに何回読み直してもインディ・ジョーンズしか思い描けません。香水売りの修行僧なんてRPGでも見たことないし。そして最初からの流れを経て、最後の一文「なぜか元気と勇気が湧き出してくる」との因果関係が理解できないのは自分だけ? だってそのほんの直前までめちゃくちゃだよ? もしや、これがジョージを直撃したインドの理屈を超えたパワーなのか……!?

というわけでインドのパワーに組み伏せられた朝日さん、次回はどうなる!? 第4回は4月22日(月)公開、乞うご期待! रिकॉर्ड स्टोर कहाँ है?(リコード・ストー・カハーン・ ハェ?)。

朝日順子のサイト

■朝日順子連載

ロック史の現場を見て!食べて!飲む!

UK & アイルランド体当たりレポート〜2023 夏

■朝日順子・主な著作

商品詳細
アジョイ・ボース(著)、朝日順子(翻訳)、藤本国彦(解説)
『インドとビートルズ:シタール、ドラッグ&メディテーション』

単行本(2022/12/26)¥2,860
Kindle版(電子書籍)(‎‎ 2022/12/26)¥2,717
商品詳細
朝日順子(著)、藤本国彦(編集、読み手)
『ビートルズは何を歌っているのか?(CDジャーナルムック)』

ムック(2018/6/4)¥1,731
Kindle版(電子書籍)(‎2018/6/4)¥1,558
商品詳細
朝日順子(著)
『ルート66を聴く: アメリカン・ロード・ソングは何を歌っているのか 』

単行本(2021/6/25)¥1,980
Kindle版(電子書籍)(‎‎2021/6/25)¥1,881
商品詳細
朝日順子(著)、藤本国彦(監修)、杉本綾子(イラスト)
『クイーンは何を歌っているのか?(CDジャーナルムック)』

ムック(2019/7/31)¥1,935
Kindle版(電子書籍)(‎ 2019/7/31)¥1,742

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