AC/DCの故ボン・スコットが1978年に書いた手紙がオークションに

1980年に33歳の若さで急死したAC/DCの元リード・シンガー、ボン・スコットが、1978年のツアー中に幼馴染のヴァレリー・ラリーに宛てた手紙が〈Nate D. Sanders〉のオークションに出品されました。1月31日に終了したオークションでの落札価格は不明ですが、1月29日の時点では6,500ドル（約71万円）の値が付いていました。

3枚にわたる直筆サイン入りの手紙に日付はありませんが、手紙の内容から1978年8月末に〈パワーエイジ（Powerage）ツアー〉で訪れたピッツバーグで書かれたものと思われます。

手紙には、AC/DCのドラマー、フィル・ラッドのこと、飲み過ぎの日々、バンドへの借金、ハードなツアー・スケジュール、ライヴ・アルバムのことなどが綴られています。

以下、手紙の全訳です。

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

ヴァレリーへ

今日はピッツバーグのダウンタウンにいます。『ミッドナイト・スペシャル』に出演したロサンゼルスで数日過ごし、西海岸からこちらに移動したばかりです。この前、ロング・ビーチのラ・カンティーノ・エルパソまでダグの新しいバンドを観に行ったんだけど、最高に楽しかったよ。ダグのプレイと歌は本当に上手かった。彼から聞いたかどうか知らないけど、フィルがノイローゼ気味で、長い間精神科医にかかっていたので、その後任にどうかと思い、数週間前ダグに電話したことがあったんだ。フィルのノイローゼは本当に酷かったけど、バンドのメンバーを混乱させない状態までは回復したよ。デリケートなフィルには慎重に対応する必要があったけど、今はもう大丈夫。

残念だけど、あと数か月は会えないな。まだペンシルべニアとニューヨークの公演があるからね。でも、キミに会えないからって頭がオカシイ訳じゃないよ。手紙や電話となるとマメじゃないのはわかってるけど、俺はいつもツアーで移動中か酔ってるか、二日酔いだからね。
今日は飲み過ぎたせいで手が震えて上手く書けないけど、ここ数週間キミに手紙を書こうと思っていたので、今書いているところです。借金がある時は、高くつく電話は止めた方がいいからね。今週の給料はすでに130ドルになってるけど、2週間前の給料日にはバンドに70ドルの借金があったんだ。クレイジーなのはわかってるけど、クレイジーでいることだけが、僕の正気を保つ方法なんだ。

キミと最後に会って以来アメリカ中を何度も移動し、顔がゲッソリしてきた気がするよ。一か月くらい療養所に入りたいけど、このツアーの後には一か月のヨーロッパとUKツアーが続くんだ。そしてまたアメリカに戻って年末のツアーが続くというスケジュールだから、今度キミに会う時は老人病棟に入ってるかもね。髪の毛もバズビー（バッキンガム宮殿の近衛兵がかぶっている毛皮の高帽）みたいになってるけど、このまま伸ばして当分はまたヒッピーの頭にするんだ。

愚痴ばかり言ってるように聴こえるだろうけど、俺はいつも楽しんでいるし、レコードをたくさん売って、ファンをハッピーにしているから、俺の人生そんなに悪くはないぜ。

そうそう、数週間前にニューヨークでライヴ・アルバムが完成したんだけど、ヴォーカルのサウンドが悪くて、5回のコンサートを録音し直す羽目になったんだ。でも、出来上がったアルバムのサウンドは最高だし、クリスマス・ツリーにあのアルバムを飾ったら素敵だろうね。発売日はわからないけど、キミに1枚贈るよ。僕はプラチナ色のレコードがいいんだけど、赤いレコード盤になるかもね。

あと30分で行かなくちゃならないし、ニューヨークにも電話しなくちゃならないから、またね。アメリカを出る前に、キミから返事が来るといいな。ご家族に宜しく。ママは元気？ ボンが宜しく言ってたって、ママに伝えてね。

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝