『GENTLE GUITAR MELODIES~A Tribute to George Harrison~』 発売記念 星加ルミ子×藤本国彦トーク&益田 洋ライヴ・イベント・レポート PART.1

写真左より星加ルミ子氏、益田洋氏、藤本国彦氏

ジョージ・ハリスンのオフィシャル・ツイッターで認められた日本人ギタリスト益田 洋。

そのジョージ・ハリスンの優しく、繊細なナンバーをギター1本で演奏したアルバム『GENTLE GUITAR MELODIES~A Tribute to George Harrison~』の発売(3月8日)を記念してのライヴ&トーク・イベント(益田 洋さんの演奏と、星加ルミ子さん[元ミュージック・ライフ編集長]と藤本国彦さん[ビートルズ研究家]によるトーク)が2月27日東京/新宿のBACK IN TOWNにて開催されました。

ここでは当日の模様を前後編に分けてお届けしていきます。

 

その頃からジョージ・ハリソンの人気は凄かったんです、ポールやジョンよりも

藤本国彦(以下藤本):こんばんは、藤本です、今日はお招きいただき、素敵な演奏をありがとうございます。

星加ルミ子(以下星加):星加です、優しい音なのでもう一曲聴いたら寝てたかもしれない(笑)。

藤本:ジョージ・ハリソンは2日前、25日が誕生日、ジョージ本人曰く本当の生まれは24日らしいんですけど、24日・25日と二日祝えるのでいいのかなと(笑)。

星加:(笑)当人が24日って言ってるのに、なんで勝手にこうやって25日になってるの?

藤本:昔から25日になってるんです世間的に、で、生きていれば76歳。

星加:もうそんなになりますかジョージも。

藤本:皆さんご存知の通りビートルズはポール・マッカートニーとリンゴ・スターの二人が存命で、4月にはリンゴが来日。ポールももう一回くらい来そうだし、で、今日はジョージのイベントなんですけど、星加さんは日本人でオノ・ヨーコさんに次いでビートルズのメンバーと直接たくさん会ってる方だと思うんですけど。

星加オノ・ヨーコさんに次いで…、私の方が会ったのは先よ(笑)。(場内拍手)

藤本:ミュージック・ライフという雑誌の編集長として1965年から1969年まで毎年メンバーに会われていて、途轍もなく凄い方だと思うんですが、最初に会ったときのジョージはどんな印象でした? ビートルズにはジョンとポールという二大巨頭がいるのでやっぱり三番目の存在?
 

星加:ジョージはとっても無口でインタビューする方としては困った相手だったんですけど、でも嫌だから答えないんじゃなくて静かな大人しい性格なんでしょうね。“オゥ・イエィ、イエィ”って笑ってて、こっちは後で原稿を書かなきゃいけないから、どうしようか──ジョージ(笑)、ジョージ(笑)ばっかりになっちゃう──(笑)。でも本当に感じのいい、グッド・ルッキングなハンサムな青年で、その頃からジョージ・ハリソンの人気は凄かったんです、ポールやジョンよりも。それは当人に会って分かりました、向こうのファンは目が高い。

藤本:言葉数が少ないから原稿にはなりづらいけど。

星加:膝の上にギターを乗せてポロポロ弾きながら、ギター少年っていう感じで。取材を嫌がってるわけじゃなくて、私の話をよく聞いてくれているんですけど返ってくる返事が非常に短くて、ちょっと手こずりました。で、今だから思うんですけど、ジョージ・ハリソンは4人の中でのベスト・ドレッサーだと。トラディショナルなツイードのジャケットを着こなして似合っていたし、顔立ちもノーブルで凄く英国人を感じさせました。インタビューではよく喋ってくれるポールの方を重宝しましたけど(笑)。

藤本:星加さんは最初ポールに会ったときは。

星加:あの人180cmくらいあるから見上げる格好になるんですけど、こんなに可愛いキレイな男の子って世の中にいたのかしら──って思いました、チャーミングで。

藤本:一番社交的でした?

星加:一人で喋ってくれました、ジョージの分も全部。ともかくビートルズが解散するまで彼はスポークスマンでした。人を飽きさせないしジョークも上手いし話も上手。それであんな素晴らしい曲をたくさん作るんですから、神様ってなんて意地悪なんだ──って思いますよね。

藤本:ジョン・レノンは若干取っ付きにくい感じでした?

星加:だんだん分かってきたんですけど、もの凄く警戒心の強い人で恥ずかしがり屋なんですね。私とポールとリンゴが喋ってると、そこに興味があるわけで、離れた所からこちらをチラチラ見て、だんだんにじり寄ってきて仲間に入ってくるんです。<こんなオカッパ頭の子(私です)と親しく話していいいのか──>って近寄って来て、大丈夫そうだと分かると入ってきていつの間にか話の輪の中にいる、非常にシャイな性格なんですね。
 

pic: KOH HASEBE / Music Life / Shinko Music

藤本:警戒心が強い──猫みたいな感じですか?

星加:そうかもしれませんね。ポールが犬の感じで。

藤本:リンゴ・スターは?

星加:この人は本当に大人だ──と思ったのは、3人の側にニコニコしながらいるんですけど、やっぱり<自分は遅れて入ってきたビートルだ>という自意識があるんでしょうね、絶対に自分から口火を切らないわけですよ。皆が話して、“リンゴはどう?”って訊かれてから初めて一生懸命喋るんです。解散するまでずっとそうでした。

藤本:ビートルズって、やっぱりあの4人だから上手くいったんですか?

星加:いつも思うんですけど、正にあの4人はジグゾー・パズルのピースなんですよ、それ以外の人が入ってもピタッとはハマらない。4人が実にうまくハマり合ってジグゾー・パズルの一枚の絵が完成したのがビートルズなんです。

藤本:ジョージの話に戻りますと、星加さんが最初ジョージに会った65年は、かれはまだ21歳で、あどけない感じだと思うんですが、その後66年、67年とインド音楽に手を染めてシタールとかも弾いたりして、いきなり大人っぽくなりますよね。

星加:ちょっと飛びますけど1967年インドから帰ってロンドンでレコーディングに入ったときに。

藤本:今日飾ってある写真はちょうどそのときのジョージですね。

星加:そのスタジオに取材に行ったんです。そうしたらジョージはジョンやポールと同格になってましたね、髭を蓄えた風貌とかもの凄く貫禄が出てきて、ツイードのジャケットを着て “イエィ“ って言ってたジョージとは全然違っていて驚きました。これは全員そうですね、カメラマンの長谷部さんも “あいつら変わったなぁ、すごく大人になった” って言ってました。
 

pic: KOH HASEBE / Music Life / Shinko Music

藤本:1967年の9月、ちょうど「フール・オン・ザ・ヒル」の録音で。まだ曲作りの途中で、全員でピアノを囲んで演奏している所を撮影したんですよね。

星加:「フール・オン・ザ・ヒル」の歌詞をポールが持ってきてピアノの譜面台に置いてメロディを弾いてる所にジョンが来て、その紙を取って赤ペンで詞を直して、それをまたポールが見ながら曲を弾いて。それで間奏の所になって、“ハーモニカを使う? それともインドの楽器にする?” って4人がピアノの周りに集まって話し始めたんですね。そうしたらポールがすかさず “リコーダーがいいと思うな、リコーダーを持ってきて“ って言って。「フール・オン・ザ・ヒル」は間奏にメランコリックな物悲しいメロディが入りますよね、あそこはハーモニカだったらそうはなりませんからね、ましてや他の楽器だったら、いやぁポールは凄いセンスをしてるな──って思いました。

藤本:また少し戻るんですが、66年の日本公演のときのジョージや他のメンバーはどうでした?

星加:メンバーが泊まっているキャピタル東急ホテルの部屋に行って、写真を撮ったり一時間くらいの取材だったんですけど、ジョージは顔を出さなかったんです。その時はジョンと話をして。ジョンが日本の民謡のレコードをかけて聴いてました、“日本のフォークソング(民謡)は面白いな” ──って。それが印象に残ってたので、後に出た「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のエンディングは絶対にあのとき聴いてた「斉田郎節」の♪エンヤートット〜に感化されたなぁ…と思ったんですけど、誰も賛成してくれないので皆さん、ちょっと聴いてみてください(笑)。まぁ、日本公演のときはホテルに缶詰めでしたからウンザリしてたんじゃないでしょうか、でも明るく陽気でした。そこで「おそ松くん」のシェーのポーズをやってくれって頼んだらみんな喜んでやってくれましたから、ジョンも。

藤本:星加さんは<ジョン・レノンにシェーをさせた人>。

星加:赤塚先生も喜んでくださって。まぁ、ホテルの窓から日本を見て、<またいつか戻って来たい>ってメンバーは──、特にジョンはそう思ったそうです。

藤本:そういう意味ではヨーコさんと結婚してよかったですね。

星加:そのために結婚したのかも、そんなことはないか(笑)。
 

pic: KOH HASEBE / Music Life / Shinko Music

藤本:日本公演の後、ビートルズは全米ツアーをやって結局これが最後のツアーになるんですけど、星加さんはこの取材もされてますよね。

星加:5人目のビートルって言われたマネージャーのブライアン・エプスタインが日本公演の帰り際、私に “8月の公演に一緒に来るか?” って言ったんです。すぐには意味が分からなかったんですけど、訊いてみると<アメリカ、フランス、イギリスと日本それぞれの国から、音楽雑誌の記者とカメラマンをI名ずつ招待するつもりだ>って言うんです。“日本からはアナタとコウ・ハセベを招待する、来るかい?“ って。もう “行きますとも、何を差し置いても行きます” って言ったら、ロンドンに帰ってすぐ手配したんでしょうね、エプスタインからすぐにプレスカードが届いたんです。このカードを首からぶら下げてたら楽屋でもホテルでもどこでも4人を取材してかまわない──って書いてあって…もう至れリ尽くせりで。

後編に続きます。

益田 洋 ライヴ

当日は星加さん×藤本さんの対談を挟み、二部に分かれて益田 洋さんのライヴが行われた。今回のアルバム作成の起因ともなった「Give Me Love」をはじめ、“ヒット曲だけど同じフレーズの繰り返しだからやりにくい”という「My Sweet Load」、映画『Let It Be』のアレンジに準じた「I Me Mine」、デモ・テイク・アレンジの「While My Guitar Gently Weeps」など様々な趣向でジョージ・ハリソンの名曲の数数が演奏された。アンコールは静謐なサウンドに溢れた「All Things Must Pass」。心と身体が癒されたライヴだった。
 
『GENTLE GUITAR MELODIES~A Tribute to George Harrison~』
Hiroshi Masuda Live

 
<Part.1>
1. For You Blue
2. Something
3. Give Me Love
4. While My Guitar Gently Weeps
 
<Part.2>
1. Here Comes The Sun
2. Only A Northern Song
3. All Those Years Ago
4. Don’t Bother Me
5. My Sweet Load
6. I Me Mine
7. The Light That Has Lighted The World
8. Let It Be
〜encore〜
9. All Things Must Pass

GENTLE GUITAR MELODIES~Tribute to George Harrison~
<収録曲>
01.Don't Bother Me
02.You Like Me Too Much
03.Only A Northern Song
04.While My Guitar Gently Weeps
05.Piggies
06.Something
07.Here Comes The Sun
08.For You Blue
09.I Me Mine
10.My Sweet Lord
11.What Is Life
12.All Things Must Pass
13.Give Me Love (Give Me Peace On Earth)
14.The Light That Has Lighted The World
15. All Those Years Ago
 
全曲ギター・ソロ演奏&アレンジ:益田 洋
ALL SONGS by GEORGE HARRISON
2,000円(税込み)/3月8日発売  SHINKO MUSIC RECORDS
 
下記配信も同日にスタート! 
Apple Music
Spotify

RELATED POSTS

関連記事

LATEST POSTS

最新記事

この記事についてのコメントコメントを投稿

この記事へのコメントはまだありません

ジョージ・ハリスン~マイ・ギター・ロード~<シンコー・ミュージック・ムック>

ジョージ・ハリスン~マイ・ギター・ロード~<シンコー・ミュージック・ムック>

2.376円
私が会ったビートルズとロック・スター

私が会ったビートルズとロック・スター

1,512円
MUSIC LIFE ザ・ビートルズ ホワイト・アルバム・エディション<シンコー・ミュージック・ムック>

MUSIC LIFE ザ・ビートルズ ホワイト・アルバム・エディション<シンコー・ミュージック・ムック>

1,512円
ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN 長谷部宏 写真集

ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN 長谷部宏 写真集

3,240円

ページトップ