「ビートルズは終わらない! ルーフトップ再現ライヴ&深掘りトーク・イベント」レポート──最強のライヴ・バンドだということをルーフトップで聴かせてくれました!

写真左より吉田聡志(MUSIC LIFE CLUB)、The Beatmasters、藤本国彦(ビートルズ研究家)


「ビートルズは終わらない! ルーフトップ再現ライヴ&深掘りトーク・イベント」がThe Beatmasters、藤本国彦さん(ビートルズ研究家)を迎え、12月3日代官山Space ODDにて開催されました。

「ビートルズは終わらない! ルーフトップ再現ライヴ&深掘りトーク・イベント」レポート

@12月3日 代官山 Space ODD

「ビートルズは終わらない! ルーフトップ再現ライヴ&深掘りトーク・イベント」がThe Beatmasters、藤本国彦さん(ビートルズ研究家)を迎え、12月3日代官山Space ODDにて開催された。

オープニング・アクトとしてジョージ・ハリスン「ギヴ・ミー・ラヴ」「マイ・スウィート・ロード」、ジョン・レノン「イマジン」「スタンド・バイ・ミー」が演奏された。二人の命日が開催日に近いこともあり、彼らを偲んでの選曲だ。

続いて背景のスクリーンに、『ザ・ビートルズ:Get Back』関連の映像や画像を映し出しながら、ビートルズの語り部藤本国彦さんを迎えた「ジョージ・ハリスン 美しきロック人生」「『レット・イット・ビー』深掘り鑑賞ガイド」発刊記念のトークがスタート。「ジョンとポール、どちらが好き?と聞かれたらジョージと答えます」というジョージ・ハリスン好きの藤本さんが、まずはアルバムについて語る。


藤本:ジョージのアルバムで最初に買ったのは1976年の『33 1/3』というフュージョン寄りのアルバム。その3年後の『慈愛の輝き』は時代に逆行したのどかな大人のロック・アルバムでこれも好きです。ジョージはジョンと同じようにあまり売れるということに貪欲じゃなかった……と思います。

映画『ザ・ビートルズ:Get Back』をご覧になると、ジョージ・ハリスンのナイーヴな感性や、言うときは言う……というところや案外ワガママなところ、ちょっと後ろ向きなところ──がよく伝わってくるんです。やっぱり一番年下の末っ子キャラなんですね、でも職人気質なところもあって。

ジョージ・ハリスンが唯一行なったジャパン・ツアーは、30年前の1991年12月1日横浜アリーナからスタート、東京ドームも含め全12公演が行なわれた。

藤本:あの時期では世界でも唯一、エリック・クラプトンに「日本はやりやすいから」と推されてやったツアー。初日、ステージに上がったジョージはすごく緊張しているようで、声は震えるし膝もガクガクしてるみたいで、観ているこちらもハラハラドキドキしました。一曲目が「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー」という意外な選曲、しかも続いて「オールド・ブラウン・シュー」というビートルズがライヴでやっていない曲をいきなり連続して──というのもびっくりしました。他にも「ピッギーズ」などビートルズ・ナンバーが思いの外多くてたまらなかったです。ソロになってからのナンバーも初披露の曲が多くてよかったですね、今は『ライヴ・イン・ジャパン』として音源が出ているので聴くことができます。ジャケットのイラストのジョージは髭を生やしていますが、最初は髭無しだったそうで、ジョージが気に入らなくて修正した──という話を聞きました(笑)。このツアーの映像は無いと言われていますが、幾つかのボックス・セットには何曲か入っているので、74年の北米ツアーとこの日本ツアーの映像は出して欲しいですね。

今年はジョージ・ハリスンの代表作ともいえる『オール・シングス・マスト・パス』50周年盤もリリースされた。

藤本:タイトル曲はビートルズのゲット・バック・セッションでも披露されていて、ポール・マッカートニーがハーモニーを付けたりもしているんですね。でも何故かジョージは途中からこの曲を取り上げなくなった。今、考えるとこれは幸せなことかもしれなくて、もしビートルズとして完成して『レット・イット・ビー』に収録されていたら、『オール・シングス・マスト・パス』というアルバムのコンセプトが変わってしまっただろうし、少なくともタイトル曲にはならなかった。そう考えるとジョージの諸行無常的なテーマが、実質的なソロ・デビュー・アルバムのタイトルとなり、しかも3枚組にもかかわらず売れてジョージの代表作となったのは本当によかったと思います。ソングライターとして68〜69年のビートルズ時代に書いていた曲も入れて、上り調子となっていた頃の集大成ですから。ジョージの魅力は名曲を書くことよりも、スライド・ギターとか独特の味わいも含めてのものなので、これはマストな一枚ですね。

今回の映像作品『ザ・ビートルズ:Get Back』の原点でもあるゲット・バック・セッションは、1969年1月2日からロンドンのトゥイッケナム・フィルム・スタジオで始まり、その後アップル・スタジオに場所を変え、月末のアップル・ビル屋上の通称「ルーフトップ・コンサート」へと続く一連のビートルズのレコーディング・リハーサル・セッション。ポールの発想でスタートしたものが、屋外でのライヴ〜スタジオ・ライヴ〜ライヴのテレビ特番〜と形を変え、結局リハーサル、レコーディング中の生の姿を撮影しておこう──となったもの。

藤本:70年の映画『レット・イット・ビー』にあったジョージとポールの口論のシーンの前後の部分も『ザ・ビートルズ:Get Back』では描かれていて、そういったところも含めて実態はどうだったのかがわかります。仲良くやる──というのではなく、バンドが曲を作る、生み出していく過程ではそういう口論はつきものですから。今回の発見のひとつに、キーボードのビリー・プレストンの参加の過程があります。最初からセッションに参加させようと呼んだのではなく、たまたまイギリスに来ていたビリーを、ジョージが「遊びに来ないか?」とスタジオに誘ったら、キーボード奏者の必要性も言われていたタイミングで、「じゃあ加わらないか?」とジョンが半ば強引に声をかけて、ビリー・プレストンも喜んで参加した──ということがわかりました。事実がどんどん明らかになる──今回の映画は見所が多いですね。

『Let it Be』の50周年記念盤はゲット・バック・セッションの様々な音が数種類の形態でリリースされた。中にはエンジニア&プロデュースを任されたグリン・ジョンズによる幻のアルバム『Get Back』も含まれており、なぜ当時この形では発売されなかったのか──を推察。

藤本:ずっと海賊盤として出回っていましたが、今回ようやくオフィシャルとして『Let it Be』-スペシャル・エディション - スーパー・デラックス-の中にディスクとしてリリースされました。グリン・ジョンズのミックスは賛否両論があって、発注したポールもジョンも2回作成されたミックスには結局OKは出さなかった。でもグリン・ジョーンズの『Get Back』はむしろ映画とタイアップしたサウンド・トラック的な意味合いで、スタジオ内の生のセッションや、演奏の失敗も含めてドキュメンタリーを音として閉じ込めようとしたもの。それは元々ジョンとポールの要望でもあったし──、だからサウンド・トラックとして聴くのが一番いいと思います。

ムック「『レット・イット・ビー』深掘り鑑賞ガイド」にはそのグリン・ジョンズや、映画『レット・イット・ビー』の監督でもあるマイケル・リンジー・ホッグの最新インタビューが収録されている。また藤本さんが責任編集された『アンド・ザ・ビートルズ レット・イット・ビー』(シーディージャーナル刊)では、ゲット・バック・セッション中演奏された他人の曲250曲のリストと解説が入っている。

藤本:これを見れば、ロックンロールだけではないジャズや昔のポピュラー・ソング、ブルース、クラシック……といったビートルズの音楽性の幅の広さがわかります。で、映画のクレジットを見たら、全然知らない曲がもう5曲あって全部で255曲(笑)。これはどこかで追加したいなと思ってます。

先行する形で発売された写真集『ザ・ビートルズ:Get Back』には映画に出てくる会話の前後の部分も含めて掲載されており、映画と一緒に楽しむことができる写真の数も豊富な見所満載のもの。149頁には当時スタジオに持ち込まれていた『ミュージック・ライフ』誌1968年11月号も写っている。映画『ザ・ビートルズ:Get Back』の字幕監修もされた藤本さんにはそのポイントも聞いた。

藤本:1ヵ月間のゲット・バック・セッションを時系列で追うというマニアックな映画、しかも全部で7時間半という長尺なので、これを多くの方や若い方にも見ていただきたいから──というのが一つのポイント。そのためにはなるべくわかりやすくしようと思いました。字幕監修は翻訳された会話をビートルズだったらこういう言い方をする──という部分、たとえば会話の最後に “ね” がつくとか、ジョンが話すときにもっと “俺” という言い方を入れようとか、そういった所から提案していくんです。字幕は縦横の文字数が決まっているので、その中で言葉を探しました。

映画『ザ・ビートルズ:Get Back』のハイライトでもあるルーフトップ・コンサート、今回はノーカットということもあり音だけでは知り得なかった、その時のメンバーの細かな様子がよくわかる作りになっている。

藤本:屋上の演奏に関しては、これはライヴなのかレコーディングなのか──というのがありますが、私の解釈は「公開ライヴ・レコーディング」です。同じ曲を何度も演奏していますし、監督のピーター・ジャクソンも「これはちょっと特殊だけどレコーディングだ」と言っています。スタジオ内ではグダグダうまくいかなかったのが、いざ屋上に上がるとこんなに凄い演奏ができるのか!という。そして終わったあとのメンバー自身の手ごたえや達成感も感動的でした。ビートルズがライヴ・バンドとしての底力を見せつけた “ルーフトップ・コンサート”を観るために、その前の6時間を過ごす──という映画だと思います。

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このあとThe Beatmastersによるルーフトップ・コンサートの再現+アルファが行なわれた。
演奏曲目
「レット・イット・ビー」
「ゲット・バック」
「ドント・レット・ミー・ダウン」
「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」
「ワン・アフター909」
「ディッグ・ア・ポニー」
「ゲット・バック」
アンコール
「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
MUSIC LIFE ジョージ・ハリスン 美しきロック人生〈シンコー・ミュージック・ムック〉

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2,200円
51年目に聴き直す『レット・イット・ビー』深掘り鑑賞ガイド〈シンコー・ミュージック・ムック〉

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2,090円

●公式写真集「ザ・ビートルズ:Get Back」日本語版

¥ 8,800 (本体 8,000+税)
発売日:2021年10月12日発売
240ページ B4変型判(302mm x 254mm)ハードカヴァー仕様(上製本)
ISBN:978-4-401-65036-1
発売元:株式会社シンコーミュージック・エンタテイメント

シンコーミュージック・レコーズ・ショップ他で発売中

公式書籍「ザ・ビートルズ:Get Back(日本語版)」発売情報

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【ザ・ビートルズ関連情報】


ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』

11月25日(木)・26日(金)・27日(土)ディズニープラスにて全3話連続見放題で独占配信スタート

伝説のロック・バンド、ザ・ビートルズの3日連続6時間の時空を超えた《体験型ドキュメンタリー・エンターテイメント》が、ディスニープラスで独占配信。
巨匠ピーター・ジャクソン監督によって、“Get Back(復活)” を掲げて集まった4人が名盤『レット・イット・ビー』に収録される名曲の数々を生み出す歴史的瞬間や、ラスト・ライヴとなった42分間の“ルーフトップ・コンサート” が史上初ノーカット完全版として甦る。
解散後、半世紀を超えて明かされる衝撃の真実とは?

監督:ピーター・ジャクソン
出演:ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター

ディズニープラス『ザ・ビートルズ:Get Back』をディズニープラスで楽しむには

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:Disney.jp/thebeatles
問合せ先:アニープラネット TEL:03-3549-1266 press@annieplanet.co.jp

The Beatles: Get Back
A Sneak Peek from Peter Jackson

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『レット・イット・ビー』スペシャル・エディション 2021.10.15 世界同時発売

 

同名映画製作と同時進行したレコーディングの膨大な音源をフィル・スペクターがリプロデュースしたザ・ビートルズ最後のアルバム(全英チャート8週連続、全米チャート4週連続1位)のスペシャル・エディション。ジャイルズ・マーティンによるニュー・ステレオ・ミックス及び5.1サラウンド・ミックス、ドルビー・アトモス・ミックスに加え、レコーディング・セッションの過程で残されたアウトテイク、リハーサル・テイク、スタジオ・ジャムの未発表音源等が収録された “スーパー・デラックス” をはじめ、2CD、1CDなど様々な形態で2021年10月15日(金)世界同時発売。

 

〈商品フォーマット〉

 [スーパー・デラックス](5CD + 1ブルーレイ収録)

〈輸入国内盤仕様/完全生産限定盤〉
 品番:UICY-79760 | 価格:19,800円(税込)他、全6形態で発売

商品形態・収録曲他詳細:ユニバーサル・ミュージック ザ・ビートルズ公式ページ 

① 5CDs+Blu-ray
② 2CDs
③ 1CD
④ 5LPs
⑤ 1LP
⑥ 1LP・Picture Disc
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