【MLCプレイリスト】テーマ別に往年の名曲を集めて聴く連載企画・第3回

「四月になれば彼女は」──原題カタカナ化もいいけど、希少化する “邦題” を愛そう

テーマ別に往年の名曲を集めて聴く新企画を始めます──名付けて【MLCプレイリスト】! アーティストの来日やリリース、また季節や記念日、さらにその時々のトピック的な内容をテーマに取り上げ、10曲前後、46分を目安に往年の名曲をピックアップしていきます。

第3回目となる今回のテーマは「希少化する “邦題” を愛そう」。題して “四月になれば彼女は” です。
原題カタカナ化もいいけど、希少化する “邦題” を愛そう
 
ミュージック・ライフ・クラブ

90年代以降ぐらいから?、シンプルに原題をカタカナ化する日本での曲名が増えてきて、それ以前に多かった邦題が少なくなったように思います。そんな希少化する邦題を愛そう!ということで集めた10曲あまり。──ただしここで取り上げるのは、単に訳しただけでもなく、原題はおろか内容にもほぼ無関係な飛躍したものでもありません。多少の意訳や歌詞の大意要約でも、曲に寄り添うように、それでいて「美しい」と思えるもの。そんな10曲をまずは原題で取り上げますので、その邦題を思い出してみてください。文中に正解も記しておきますが、読むまでもなく簡単に思い出せるはず。結局それはやはり「良い邦題だから」記憶に留められているということだと思います。付けてくださった訳者・当時のレコード会社の担当氏に、時を超え御礼申し上げます。

サイモン&ガーファンクル「四月になれば彼女は」──今回のテーマで選曲するにあたり真っ先に思い浮かべたのはこの曲でした。なんかいろんな切ないドラマを想像させる邦題で、これをお好きな方も相当多いのでは? ……が、原題は「April Comes She Will」とそのままなんですよ。なので、これは邦題が素晴らしいのではなく「オリジナルの曲名が素晴らしい」ということで、このプレイリストからは除外。今回は題名としてピックアップさせていただくこととした次第です。

そして最後に2曲。テーマからは逸脱してしまうのですが余談として追加。なので蛇足のボーナス・トラックとお考えください。トータル46分24秒、再生ボタンをポチッとどうぞ!

MLCプレイリスト 2022.06.03/四月になれば彼女は

1. Phil Collins - You Can't Hurry Love (Official Music Video) Phil Collins
2. The Police - Every Breath You Take (Official Video) The Police
3. All You Need Is Love (Remastered 2015) The Beatles
4. Roberta Flack - Killing Me Softly With His Song (Official Audio) RHINO
5. Harry Nilsson - Everybody's Talkin' (1968) Beat-Club
6. Daryl Hall & John Oates - You've Lost That Lovin' Feeling (Official Video) Daryl Hall & John Oates
7. Finale performance of "All the Young Dudes" at the 2019 Rock & Roll Hall of Fame Induction Ceremony / Rock & Roll Hall of Fame
8. Bob Dylan - Tangled up in Blue (Official Audio) Bob Dylan
9. Tommy James & The Shondells - I Think We`re Alone Now Live on Village Square 1967 / Tommy James
10. The Rolling Stones - You Can’t Always Get What You Want (Official Video) [4K] ABKCOVEVO
●Bonus Tracks
11. Cyndi Lauper - Girls Just Want To Have Fun (Official Video) Cyndi Lauper
12. Hurra Torpedo - Total Eclipse Of The Heart (live) frozentoast

■楽曲解説

1. Phil Collins “You Can't Hurry Love”

ママが娘に恋のアドバイス、「恋は焦っちゃダメなのよ」ということで、邦題は「恋はあせらず」。フィル・コリンズによるスプリームスの大ヒット曲カヴァーですが、モータウンは60年代の黄金時代に現地法人を設立しヒットを量産、英国人によるこの頃のモータウン愛が尋常でないのはきっとそのせい。コリンズ少年も御多分に洩れず当時浴びるように聴いていたのだと思います。原曲の勘所をきっちり押さえヒットにも納得の名カヴァー、フィルの分身の術をお楽しみください。ちなみに現行ジャケットでの横顔はシワシワに差し替えられています。
英詞Google翻訳
商品情報
フィル・コリンズ
『Hello, I Must Be Going』

Amazon Music・MP3(1982/11/5 )¥1,500[2016 Remaster]
CD(2016/2/26)輸入盤

2. The Police “Every Breath You Take”

「ひとつひとつの息つく様も見つめているよ」ということで、邦題は「見つめていたい」。原題は歌い出しの部分で、並列で歌われる同様の場面を4つ経て、ここ日本ではそれに続く一節を題名へ(この出だし部分の歌詞を正確に思い出せる方も多いのでは)。原題とは違う部分ながらも分かりやすくコンパクトに邦題として取り上げたことも一因となったのでしょう、アルバムと併せて一皮むけた大ヒットに。「シンクロニシティ」という言葉とその意味を広く一般に認知させました。並行して進行中のポリス連載もぜひご一読ください。
英詞Google翻訳
商品詳細
ザ・ポリス
『シンクロニシティー』

Amazon Music・MP3(1983/6/17)¥1,260
SACD(2016/10/26)¥2,903

3. The Beatles “All You Need Is Love”

ビートルズだとどれだろう?……「悲しみはぶっとばせ」「ひとりぼっちのあいつ」? それ以外では地味目なアルバム収録曲だったりしたので、最終的に「愛こそはすべて」かな、と。彼らの曲名リストをみていると邦題曲はさほど多くはないものの、「抱きしめたい」に代表されるように狙いすぎ感が否めません。彼らの楽曲には全体的にシンプルな英語の歌詞〜タイトルが多い中、まれに日本語にしづらそうなものがあり、そこで意味を伝えることを優先した結果なのでしょう。当時のご苦労が偲ばれます。
英詞Google翻訳
商品情報
ザ・ビートルズ 
『ザ・ビートルズ 1』

Amazon Music・MP3(2000/11/13)¥1,920[Remastered]
CD(2015/11/6)¥2,778

4. Roberta Flack “Killing Me Softly With His Song”

ロバータ・フラックの代表曲「やさしく歌って」などはいかがでしょう。ただのカタカナ起こしではかえって勘違いを巻き起こしそうだし、邦題が必要な曲に間違いありません。若かりし日にこの曲を聴いて「kill」の意味を辞書で調べ直した方も多いのでは? こちらの辞書で言えば6番目あたりのあたりがぴったり来そうです。歌詞全体のグーグル翻訳ではコーラスの部分が大変なことになってしまいました……。この曲はロリ・リバーマンという女性シンガー・ソングライターのカヴァーで、比べるとロバータ版がほぼそのままであることがわかります。
英詞Google翻訳
商品詳細
ロバータ・フラック
『やさしく歌って』

Amazon Music・MP3(1973/8/1)¥1,400
CD(2013/4/24)¥961

5. Harry Nilsson “Everybody's Talkin'”

ハリー・ニルソン「うわさの男」は当初シングルとしてリリースした際にはさっぱりだったのに、後に映画『真夜中のカウボーイ』で主題歌として起用されたことでヒットしました。この曲もカヴァーで、オリジネイターはフレッド・ニール(1966年)。邦題が付けられたのはおそらく映画公開時にニルソンのシングルとして国内リリースされた際(1969年)だと思われます。なので、作者ニール版の方もこの邦題で呼ばれるようになったのはニルソンのおかげ、と。邦題は歌詞の大意要約、という感じでしょうか。
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商品詳細
ニルソン
『空中バレー』

Amazon Music・MP3(1968/7/1)¥1,800[Mono Version]
CD(2013/3/6)¥1,980

6. Daryl Hall & John Oates “You've Lost That Lovin' Feeling”

またまたカヴァーで、元曲はフィル・スペクターのプロデュースによるライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち」、1964年リリースで時代を超えた大ヒットです。そしてこちらも大意要約系──キスする時にも触れ合う時にもかつてのやさしさが失われ、もう僕を愛おしむ気持ちはなくなってしまったんだね、ということからの邦題。原題が文章であることから、短く一言に上手く言い換えた邦題だと思います。このホール&オーツ版はビートを強調してポップでモダンなイメージですね。
英詞Google翻訳
商品詳細
ダリル・ホール&ジョン・オーツ
『モダン・ヴォイス』

Amazon Music・MP3(1980/7/29)¥1,800
CD(2016/7/27)¥1,010[期間生産限定盤]

7. Mott The Hoople "All the Young Dudes”

「すべての若き野郎ども」! デヴィッド・ボウイ作、演ずるはイアン・ハンター率いるモット・ザ・フープル。タイトルの訳としてはそのまんまですが、言葉のチョイスがロケンロール。楽曲に関してはウィキペディアがすげー詳しかったのでそちらをどうぞ。動画は2019年ロックの殿堂式典でのパフォーマンス。デフ・レパードを従えたイアン・ハンターを中心に、居並ぶはブライアン・メイ、ゾンビーズのコリン・ブランストーンとロッド・アージェント、リトル・スティーヴン、スザンナ・ホフス、フィル・マンザネラという豪華メンツです。
英詞Google翻訳
商品詳細
モット・ザ・フープル
『すべての若き野郎ども』

Amazon Music・MP3(1972/1/1)¥1,800[Expanded Edition]
CD(2013/3/6)¥1,638

8. Bob Dylan “Tangled up in Blue”

ボブ・ディラン「ブルーにこんがらがって」、アルバム『血の轍』のオープニング・トラックです。前半を「ブルーに」としたあたり1975年を感じさせません。今となっては当たり前な言い回しで、ユーミンの「守ってあげたい」にもそんな一節がありますが、この曲とて1981年、40年以上前の楽曲ですよ。そして後半はそのまんまの日本語化、とはいえ「もつれて」でも「からみあって」でもなく「こんがらがって」としたあたり、熟考に熟考を重ねた上にたどりついた最適解!と想像しています。実際はどうだったのでしょう。
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商品詳細
ボブ・ディラン
『血の轍』

Amazon Music・MP3(1975/1/20 )¥1,800
CD(2013/3/6)¥1,609

9. Tommy James & The Shondells “I Think We`re Alone Now”

1987年にティファニー(当時15歳)のカヴァーで大ヒットした「ふたりの世界」。動画はオリジネイターであるトミー・ジェイムズ&ザ・ションデルズの若干バブルガムな雰囲気もあるトップ5ヒットで、いかにも80年代的なティファニー版よりサビの部分でグッと抑えるのがいい感じ。ちなみにティファニーは大ヒットの32年後に再レコーディング、そちらのミュージック・ビデオなんてのもあります。ここまで来て、グーグル先生は有名な邦題はご存知なのかもと思えてきました。
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商品詳細
トミー・ジェイムス&ションデルズ
『I Think We're Alone Now』

Amazon Music・MP3(1967/2/1)¥1,500

10. The Rolling Stones “You Can’t Always Get What You Want”

みんな大好きストーンズからは「無情の世界」にしました。「いや “愚か者の涙” か “友を待つ” だろ!」というご意見にも異論はありません。まあ全部好きなんで。歌詞の流れでは「望んだものがいつも手に入るとは限らない、でもいつか試してみると見つけるだろう」とポジティヴに結ばれるのに対し、邦題ではネガティヴ・サイドに重きを置いたのはなんでなんだぜ? 当時のバンドのパブリック・イメージによるもの? でもこれで良かったと思います。動画は近々劇場公開もされる『ロックンロール・サーカス』より。
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ザ・ローリング・ストーンズ
『レット・イット・ブリード』

Amazon Music・MP3(1969/11/28)¥1,200
CD(2010/11/24)¥1,965(SHM-CD)

■ボーナス・トラック

11. Cyndi Lauper “Girls Just Want To Have Fun”

ここからはテーマからは離れてしまうので、あくまでもボーナス・トラックということで。リリース以来「ハイスクールはダンステリア」の邦題で愛されてきたこのシンディ・ローパーのデビュー・ヒット、現在邦題はそのままカタカナ起こしの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」に修正されております。一説によるとご本人の希望で変更されたとも言われておりますが、しかしパッと思い浮かぶのはやはり旧邦題。原題からはかけ離れているものの、ご本人のキャラを反映した異色の愛され邦題だったと思います。
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商品詳細
シンディ・ローパー
『シーズ・ソー・アンユージュアル』

Amazon Music・MP3(1983/10/14 )¥1,800
CD(2001/2/21)¥1,591

12. Hurra Torpedo “Total Eclipse Of The Heart”

フラー・トーペードは90年代から活動する、ギター/ヴォーカル、冷蔵庫/洗濯機、ガスコンロ/半ケツというノルウェーの破壊的トリオ。こうしたものをお嫌いな向きもおいででしょうが、皆様にぜひご覧に入れておきたく、ボニー・タイラー「愛のかげり」をカヴァーしていたことから最後にオマケとして。それでなくとも彼らのレパートリーはカヴァーが多く、そのチョイスもこれまた絶妙。ヨーロッパでは人気のようで、大きなフェスやホールでの演奏動画もありますので、お気に召したましたら他にも探してみてください。
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商品詳細
Hurra Torpedo
『Kollossus of Makedonia』

Amazon Music・MP3(2006/5/22)¥1,600

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邦題が付けられるのは、ほとんどの場合原題が日本語に置き換えづらい言葉や意味の伝わりにくい文章というケースです。シンプルなら単縦にそのカタカナ読みが一番なのは間違いないわけで。シングル・ヒットが望めそうな良い曲なのに原題がややこしくて残念、「じゃあ邦題付けちゃえ! えい!」てな感じでしょうか。どれを取っても印象的で、その先につながる物語が気になる邦題ばかりです。

セレクトを改めて見直すと、まずは「良い曲」であることが大前提になっていますね。今回は結果的に半数がカヴァーになりました。いずれも長く聴かれ・歌い続けられている愛され続けている楽曲だということでしょう。何らかのテーマに限定しての、カヴァー曲だけの46分とかそのうちやってみたいと思います。
やっぱなんだかんだヒット曲っていい曲が多いですね、当たり前ですが。改めて向き合って聴いてみると、その広く長く愛され続ける理由を痛感させられます。多めにピックアップして10曲前後に削った結果、結局残っているのははずせないヒット曲ばかりに。それにしても、あーでもないこうでもないと考えている作業はなんでこんなに楽しいんでしょうか!


ということで、また第4回でお目にかかりましょう。「我こそは!」という方、まずはテーマとその10曲をこちらまでお送りください。追ってこちらから原稿発注いたします(残念ながらノーギャラです)。ということで次回もどうぞお楽しみに!

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