森田編集長の “音楽生活暦”

森田敏文(ミュージック・ライフ・クラブ編集長)

第7回:ケイト・ブッシュ85年の「神秘の丘」、ドラマに使用されてのリヴァルヴァル・ヒット

ミュージック・ライフ・クラブ編集長・森田敏文による連載・第7回。月いちペースでミュージック・ライフ的な洋楽のアーティストや作品、業界やシーンに関するあれこれなど。「ミュージックなライフのカレンダーへ」、徒然なるままに語るその月の談話形式の雑記としてお送りします。

第7回目のテーマは、ケイト・ブッシュ「神秘の丘」のリヴァイヴァル・ヒットについて。6月14日MLCニュースでお伝えした通り、この曲は、地上波TVでのCMも放送され大人気を読んでいるNetflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で使用されたことで世界中で再ヒット、中には首位を獲得した国も。今回の編集長のコラムは、そこからかつてのケイト・ブッシュのお話へと広がっていきます。

●ケイト・ブッシュ85年の「神秘の丘」、ドラマに使用されてのリヴァルヴァル・ヒット

◆ 再ヒットした「神秘の丘」が新たに生み出した数々の記録 ◆

ケイト・ブッシュの1985年にリリースした楽曲「Running Up That Hill」──「神秘の丘」という邦題でしたが、これがイギリスのシングル・チャートで1位になりました。これはNetflixの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で使われていて話題になり、バズってヒットしている。元々は1985年発表当時はビルボードHot100では、30位になったんですが、今回は8位。イギリスのチャートでは1位。リリースから37年を経ての首位獲得というのは新記録だそうで、これまではワム!の「ラスト・クリスマス」が最長記録を持っていましたが、これを超えた。他にも記録があって、彼女のデビュー・シングルが1978年の「嵐が丘」(原題「Wuthering Heights」)がチャート1位で、そこから44年振りの1位獲得というのも最長記録なようです。これまではトム・ジョーンズの42年だった。また、女性アーティストとして1位を記録した最年長にもなるそうで、7月6日生まれなので、64歳になったばかりですね。今回は、本人もビックリしているそうです。
商品詳細
ケイト・ブッシュ
『Hounds Of Love(2018 Remaster)』


Amazon Music・MP3(1985/9/16)¥1,500
CD(2018/11/16)輸入盤
◆ 作品数が少ない割に、シンガーとしての評価が驚くほど高い ◆

今回のヒットで改めて彼女の昔の作品を聴き直してみたんだけど、古びてないとこに驚きました。よく「あー、昔こういうのあったよね」とか古さを感じる音楽とか楽曲はあると思うけど、彼女はあまり古さを感じない。昔の曲なのに何故なんだろう?と思った時に、楽曲の普遍的な良さもあると同時に、使われている音が凄く基本的な音だったり、あまり流行の音を使わないというのがあったのが古さを感じない所かと。

『ミュージック・ライフ』はデビュー当時すごくケイト・ブッシュを推していて、その頃他のメディアはあまり取り上げていなかった。デビュー当時は、いわゆる「不思議ちゃん」のイメージで、声もちょっと変わっている部分もあったし、楽曲も他にはない感じでしたから、同類のポジションにいた人がいない。イギリスから出てきた若い才能で注目を集めていたけど、だんだん作品のインターバルが長くなって、作品が出なくなってくる。勿論リリースされるアルバムは見事に磨き挙げられたものなので、それで着実に大御所になっていった。だから彼女のキャリアからしてみれば作品の数は少ないですよね。初来日時に長谷部さんが撮影した寺の大きな鐘の下にいる有名な写真は、20歳くらいだったんじゃないですかね。すごく若かった。

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調べてみたら、イギリスの『Q』誌で、「歴史上最も偉大なシンガー100」というのがアップされた時に、彼女は19位。作品やヒット曲の数からしたら、そんなに上位なんだとビックリしました。それだけイギリスで確固たる地位を築いている証なんでしょう。ちなみに、18位はボブ・ディラン。20位はザ・ビーチ・ボーイズのカール・ウィルソン(意外でしたね)。さらに下位は誰がいるのか見たら、ニーナ・シモン、ヴァン・モリソンやレイ・チャールズなどがいて。その中でケイト・ブッシュが19位というのは、それだけ人気もあって大御所だという事を皆が認めているということでしょう。


◆ 本人もドラマの音楽担当も驚いた!? 同じようなケースは今後増えるかも◆

最初の方は間を置かずにアルバムが出ていたので、日本でも人気があった。でも、その後徐々に作品の発売間隔が長くなってきましたね。60、70年代のアーティストは年に何枚も発表していたから、1年に1枚だと寡作と言われていましたけど、今は1年でアルバム出ると短いと言われて、3,4年間隔空くの当たり前の時代になりました。

ケイト・ブッシュも今回のヒットは予想外だったけど、このドラマは見ていたらしいです。結構好きだったそうですね。ドラマ自体が昔の楽曲を使ってたりしていて、音楽担当はケイト・ブッシュの曲を使おうと思ったけど、多分断られるだろうと思っていたらしい。ケイト・ブッシュって、なかなか楽曲の使用を許可しないアーティストで、使われればお金になると分かっていても自分の曲が変な所で使われて欲しくないと思っているようで、結構ハードルが高いそう。ダメもとであたってみようとなって、その為に色々な手を尽くして、どういう場面で使われるのかとか丁寧に説明し、使われることになった。こういったケースが今後も増えてくるかもしれません。著作権での収入というのは、サブスクになったり、コロナの影響で興行をやれなかったりしている中で、これまで以上に重要な意味を持ってきていますからね。
ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN 長谷部宏 写真集

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3,300円
日本人カメラマンとして初めてザ・ビートルズを撮影した長谷部宏。氏が音楽雑誌『ミュージック・ライフ』のために撮り下ろした数多くの海外ミュージシャンの写真の中から、来日時の写真や日本を感じさせる“ジャパネスク”な写真を厳選した写真集です。1965年にロンドンのEMIスタジオ(後のアビイ・ロード・スタジオ)で撮影したザ・ビートルズ&星加ルミ子の写真、1972年にジャマイカで撮影したレコーディング中のローリング・ストーンズの写真、1975年の初来日時に東京タワーを背にホテルの庭でくつろぐクイーンの写真などなど、貴重な写真の数々をたっぷりとお楽しみいただけます。
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