2024年3月2日(土)〜8日(金)@東京・原宿 sppace WOW

新クイーン・ゼミナール2『クイーン II 』を語りまくった3日間のイベント・レポート

『クイーン II 』を大好き!という方々に、それぞれの視点でその魅力を語っていただいた計5回のイベントを、まとめてレポート !

3月上旬に3日間5回に分け、東京は原宿のspace WOWを会場に開催された『クイーン II 』50周年ウイーク。下記の方が登壇された。

・第1回)ロジャーM.T.(QUEER/ドラマー)
・第2回)大貫憲章(音楽評論家/DJ)+ 今泉圭姫子(音楽評論家/DJ)
・第3回)朝日順子(洋楽歌詞解説者)
・第4回)白井良明(プロデューサー、ムーンライダーズ)
・第5回)ROLLY(ミュージシャン)

司会は石角隆行さん(クイーン研究家)が担当。各々が皆『クイーン II 』を大好き!という方々、それぞれの視点でその魅力を語りまくった。
★3月2日(第1回)

ロジャーM.T.(QUEER/ドラマー)

ロジャーM.Tさんはドラマー視点から、実演ビデオを引用しながらロジャー・テイラーの細かいテクニックを紹介。
◎僕は「キラー・クイーン」からクイーン・ファンとなって、逆に辿ってファースト・アルバム『戦慄の王女』を買った。3、2、1と順番通りに戻らなかったのは、『クイーン II 』のジャケットは小学生には怖からったか。『クイーン II 』は、聴けば聴くほど味の出るアルバムで、“最初、なんだこれは? と思って、さらに途中ではどうなるか!? ” と思ったけど、最後「輝ける7つの海』で落ち着きました。
◎このアルバムはロイ・トーマス・ベイカー(プロデューサー)を支えたエンジニアのマイク・ストーンが重要(ジャーニー、エイジアのエンジニア)。個人的に好きなアルバム『華麗なるレース』の共同プロデューサーもやっていて、彼がいることでロジャー・テイラーのドラムの音がドえらく良くなった。すごく空間を感じさせる音になっている。
◎収録曲それぞれ印象的なポイントを。
「ホワイト・クイーン」:演奏上の技では、マレットを使ったシンバル・ロールで細かい表情をつけている。
「サム・ディ・ワン・ディ」:ブライアン・メイが初めて歌を聞かせた記念すべき曲。歌詞も好き、アコースティック・ギターが素敵。ライヴでも聴きたい。
「ルーザー・イン・ジ・エンド」:イントロのドラムがでかい(笑)。
「オウガ・バトル」:アルバムですごく作りこんだサウンドをライヴ用には削ぎ落とした骨太な演奏でやっている。ギターのバックのドラムの拍を変えてある。
「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」:いくつものパートを個別に録音したものを繋いだもの。クラシック、およびプログレをやりたかったんだろうなぁ……ライヴで観たかった。
「ファニー・ハウ・ラヴ・イズ」:どんどん新しい音にトライした、今後出てこないだろうウォール・オブ・サウンド! 。
「輝ける7つの海』:当時なかなかアルバムは買えなかったから来日記念シングル「キラー・クイーン」 c/w「輝ける7つの海」を買った。何千回聴いたかわからないけど、そのうち「輝ける7つの海』の方が好きになっていった。ドラムの激しいところがいいし、途中コーラスが花開く瞬間にとんでもない人たちだなと思った。すごいかっこいい邦題。この曲のエンディングに酔っ払いの歌が入っていて、楽しそうだなって聴いてました。
★3月2日(第2回)

大貫憲章(音楽評論家/DJ)
今泉圭姫子(音楽評論家/DJ)

 
ラジオ番組「全英トップ20」のパーソナリティを務めた今泉圭姫子さんと大貫憲章さんの名コンビが送るトーク。
◎『クイーン II 』との出会いは?
今泉:私は「ストーン・コールド・クレイジー」(3rdアルバム『シアー・ハート・アタック』収録)からクイーン体験が始まっているので、74年に(『クイーン II 』も含め)日本で発売されたクイーンの作品(1st~3rd)を次々と聴いた。当時イエスやピンク・フロイドのプログレにハマっていたので、このアルバムは自分にドンピシャで掴まれた感じ。
大貫:前作からの制作期間は短いんだけれど、彼らは計画的に考えて全体がストーリー構成で組曲的な流れになってるのでサイド・ブラック「オウガ・バトル」には、いきなりすごいのが来た!っていうショックがあった。
◎『クイーン II 』はここが凄い!
今泉:『クイーン II 』は一番好きなアルバムで、自分の放送でかけても泣いちゃうんです。フレディの色々な声が本当に素晴らしい。今回のクイーン+アダム・ランバートは比べるものでもない違う趣旨のものなんだけど、アルバム1st~3rdからは演ってくれなくて逆に良かった。「キラー・クイーン」は名古屋でだけ演ってますけど。自分の頭の中にフレディやブライアン、ロジャー、ジョンの音がカッチリ入っているので、もう他の音では聴けないんです。
大貫:本当に構成がよくできてる。彼らの音楽は起承転結が分かりやすいんですけど、そこにハマらないものも時々出てくる──例えばブライアンの「39」もあれだけ聴くとフォーク・ロックみたいで──でも全体を通してみると違和感がない。クイーンはそれをまとめ上げるバンドとしてのパワーがデビューの頃から突出してたと思います。『クイーン II 』もサイド・ブラックは「オウガ・バトル」から始まり、どこがブリッジか分からない「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」もあるけれど前後の曲の繋がりが上手くできていて、最後「輝ける7つの海」で昇華する構成。
◎『クイーン II 』の中で敢えて1曲挙げるとすれば?
今泉:プログレとかクラシックとかそういうものが全部融合されて、音が変化していくところが大好きな「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」。この曲を聴くと涙が出るんです。フレディの歌の可愛さと凄さと色々なものが凝縮されていて、私の中では高校生の頃に初めて聴いた感覚が今も残っていてその印象しかないんです。
大貫:(『クイーン II 』を作っていた頃はメンバーもお金に困っていた時期……)を受けて、自分は、この音楽から彼らの苦境を感じることはできないんですけど、ただそれを乗り越えてさらに前進しようという気概は『シアー・ハート・アタック』もそうだし、この『クイーン II 』にも感じられる、それは唯一無二のものだと思う。
★3月3日(第3回)

朝日順子(洋楽歌詞解説者)

歌詞の面から『クイーン II 』を語られた朝日順子さん。サイド・ホワイト、サイド・ブラックから数曲を選び出し、ブライアン・メイ、フレディ・マーキュリーの作家性と、そのサイド・ストーリーを含め解説された。
◎「ホワイト・クイーン」ブライアン・メイ
女性を女神に喩えて称えている論文集『THE WHITE GODDESS』(ロバート・グレイヴス著)を元に書かれたブライアンの片思いの詩、ブライアンは理系なんだけどすごい文学青年で古い文語の詩的世界になっている。
◎「オウガ・バトル」フレディ・マーキュリー
この曲は、子供の頃フレディが妹のカシミラさんと作り上げた空想物語「ライ王国神話」の一部である可能性が高い。『戦慄の王女』に収録されている「マイ・フェアリー・キング」も「ライ王国神話」の一部であると思われ、「オウガ・バトル」にも登場する〈笛吹き(piper)〉が歌われている。
◎「フェアリー・フェラーの神技」フレディ・マーキュリー
この絵を描いた画家リチャード・ダッドには長文の詩があり、当日、朝日さんは絵に描かれた多くの登場人物を読み解き、それぞれ絵のどの場所に登場しているかを細かく解説。
◎「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」フレディ・マーキュリー
この長尺の物語は若い頃から何年もかけて作られたもの。古語の言い回し、単語のダブル・ミーニング、英語の慣用句をもじった言葉遊びのユーモアも交え、何幕もある舞台劇のような作品。歌あり踊りありの大衆演劇的なレビューになっている。
◎「輝ける7つの海」フレディ・マーキュリー
空飛ぶ種族が出て来る王国神話の曲。1952年に刊行されたアーサー・C・クラーク『幼年期の終わり』(異星人が地球に来訪し、変容していく地球の様を描いたSF作品の傑作)との関連性にも言及。さらにフレディがジミ・ヘンドリックスの歌詞が大好きで学者並みに研究していたことにも触れ、シミヘンの書いた「リトル・ウィング」つながりで、相当影響があったはずなので、それも詩のアイデアの中にはあったのではないか──。

といったように、絵画、小説、詩、などの他ジャンルとの関連性も引き合いに、ブライアン、フレディの描く世界を歌詞の面から深く掘り下げた回となった。
★3月3日(第4回)

白井良明
(プロデューサー、ムーンライダーズ)

 
ブライアン・メイの実際のレコーディングでのセッテイングを見た白井さん。自筆のアンプとマイクのセッティング図を元に紹介。
◎ 1996年、ゼルダの『虹色のあわ』のプロデュースでロンドンに行っていた時、クイーンの『イニュエンドゥ』からアシスタント・エンジニアとして関わったノエル・ハリスンがエンジニアについてくれた。当時、ブライアン・メイがプロデュースするテレビの番組の録音をメトロポリス・スタジオでやるので、ノエルが会いに行くというから一緒に行きました。オシャレなスタジオで、行ったのはダビング用のスタジオ。
◎僕が会った時のセッティングは白いVOXのAC-30(ギター・アンプ)が3台扇状に並んでいて、それに向かってヴィンテージのリボン・マイク2本が離れて並んで立ててある状態。普通はアンプ1台にマイク一個なんですが、これは音の位相が逆になる面白いセッティングで、大音量がシャリシャリの軽い音になったりする。音響の謎なんですが上手く録れば太い理想の音で録れるんです。60年代のビートルズとかも、ギター1本で音のステレオ芸術、宇宙の音を創りたい──と皆やっきになってた。その伝統をある意味クイーンは受け継いでいるんです。この3台のアンプにギターをつないで、同じ音で弾くとフェイズといって低音が揺れて気持ちがいい。だけどこの場合は左右それぞれのマイクに別々の2台のアンプの音〈直接音+回り込んだ音〉が入る。そうやって2本のマイクで録った音のバランスを取ると、音が混ざってグニャグニャした音──不思議なワールドが作られるんです。こうすればミックスの時、左/右/センターの音のバランスの選択肢が豊富にある。ブライアンのそういう方法はクリエイティヴですよ、さすが理工系。
◎もう一つノエルが話してたのは、ヘッドフォンを使わないフレディの独特なヴォーカルの録音法。スタジオではなくミキシング・ルームで録る。モニターのメインスピーカーとは別に、ミキシング・コンソールの卓の前に小さめのスピーカーを2本立てて、それで演奏を再生しながらスタンド・マイクの前で振りをつけてヴォーカルを録音する。歌ってる方は気持ちがいいと思いますけど、“音が漏れないのか?” と心配すると、ノエルは “大丈夫だ” と言ってました。
◎僕はクイーンを聴いたのはちょっと遅かった、84年頃かな……本格的に入ったのは。最初は1枚目からず~~っと聴きましたよ。一番感動したのは『オペラ座の夜』と、めくるめくギターの『クイーン II 』。「サイド・ブラック」でのフレディの芯の強さというか、表現に妥協しない所も勉強になりますね。でも、2枚目でいきなりコンセプト・アルバムって凄いよね、『クイーン II 』はポップ・チューンを作っていく最初の第一歩の「輝ける7つの海」や、「ボヘミアン・ラプソディ」への第一歩である「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」も入っている、そういう次への第一歩を歩み出すアルバムでもあった。一枚目と合わせて早くも作った集大成であると同時に、輝ける未来を象徴する曲も入った作品だと思います。
★3月8日(第5回)

ROLLY(ミュージシャン)

『クイーン II 』への愛を公言してやまないROLLYさん、“〈人生で一番の回数聴いた〉&〈一番影響されたアルバム〉『クイーン II 』について、ギターを手にトークがスタート。
◎ “『クイーン II 』について語らせていただけるのは、中学生の時の私からしてみたら夢また夢の話で、でもそれを叶えてくれるのがロックというものなんですよ” というメッセージでトークはスタート。
◎「サイド・ホワイト」の「プロセッション」をヴァイオリン奏法などを交えて、輪唱のように重ねて言った──とギター(10年ぶりに復活したROLLY QUEEN、ピックアップはレッド・スペシャルと同じ)で再現。“昨日この曲を聴いてボロ泣きしました──ディズニーランドで、今から乗るアトラクションをイメージさせるファンファーレを感じてね……” そこから、クイーンとザ・フーの関係に話が及ぶ。
◎曲が繋がって、「ファーザー・トゥ・サン」にいく前のギター・フレーズの展開、これはザ・フーの1969年のロック・オペラ『トミー』のオープニング曲「序曲」と同じコード進行。映画版の『トミー』を見ると、クイーンが影響を受けたところが随所に出てきます。アトラクションが続くように曲が重なってくるところは、「ホワイト・クイーン」のイントロが『トミー』の「アシッド・クイーン」(映画ではティナ・ターナーが踊り歌う曲)と非常に似ている。多分、当時この『トミー』にはものすごいショックを受けたと思うんです。
◎「サム・デイ・ワン・ディ」のアコースティック・ギターに続いて入るギター・ワークは、ブライアンが普通ギタリストがあまり触ることのないトーン・コントロールをゼロにした篭った音を出しているのが遊園地感がある──と解説。
(この日ROLLYさんがギターに装着したのは、ブライアン・メイの音を出すことができるヘッドフォン・アンプ “amPlug Brian May” ※ブライアン・メイ監修)
この『クイーン II 』はギタリスト、ブライアン・メイの音色としては(クイーンのアルバムの中でも)濃厚で僕は一番好き。サイド・ギターとかも含め何本入れてるの?っていうくらい入れて、ギターのダビングも激しい。ブライアンのギターの音は逆回転のように聞こえるように弾いてるんじゃないか──というところもあって、逆回転というのは聴いている人を変な気持ちにさせようとする、そこが最高です。クイーンの素晴らしい点は、ものすごくエンタテイメント性もあって気持ちの良いものと、非常に違和感を感じさせるものがあるところ。それはこのアルバムでも随所にあって、「オウガ・バトル」のダビングの凄さはまるで音の洪水。これはBGMにはならない、ちゃんと聴いて欲しい作品です。このアルバムは冬向き、夏の暑い最中海辺で聴く感じじゃあない。
◎普通、ロック・バンドがやらないような曲を平気でやるのがクイーンなんです。だからジャンルを飛び越えたところで音楽を楽しむことができた、そこが好きなところ。僕の曲にはクイーンからの影響が色濃く入っていて、クイーン好きの人にニヤッとしてもらえるようなものをずっと作ってきました。クイーンや、レッド・ツェッペリン、ザ・フーから受け取ってきたバトンをつないでいく感じですね。
青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝

青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝

2,200円

今泉圭姫子:著
青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝

今泉圭姫子著『青春のクイーン、永遠のフレディ 元祖ロック少女のがむしゃら突撃伝』購入特典ミニステッカー3枚セット付

クイーン グレイテスト・デイズ 366日の記憶

クイーン グレイテスト・デイズ 366日の記憶

2,200円
この記事についてのコメントコメントを投稿

この記事へのコメントはまだありません

クイーン 華麗なる世界 UPDATED EDITION

クイーン 華麗なる世界 UPDATED EDITION

4,000円
QUEEN in JAPAN

QUEEN in JAPAN

2,200円
『フレディ・マーキュリー ⾃らが語るその⼈⽣』

フレディ・マーキュリー ⾃らが語るその⼈⽣(通常版)

2,750円
MUSIC LIFE 特集●ブライアン・メイ/QUEEN

MUSIC LIFE 特集●ブライアン・メイ/QUEEN

3,190円

RELATED POSTS

関連記事

LATEST POSTS

最新記事

ページトップ