伝説的ギタリスト／プロデューサー、リック・デリンジャーが77歳で死去

60年のキャリアを誇るギタリスト／シンガー／ソングライター／プロデューサーのリック・デリンジャー（Rick Derringer）が5月26日、77歳で死去しました。

妻のジェンダが訃報を伝えており、デリンジャーは発作を起こした後、生命維持装置が外され、フロリダの病院で安らかに息を引き取ったそうです。また、ジェンダと共に最後を看取った親友で介護人のトニー・ウィルソンによると、デリンジャーは2か月前に冠動脈3枝のバイパス手術を受け、順調に回復していたものの、月曜の夜にショック状態に陥り、亡くなったそうです。

1947年にオハイオ州セライナで生まれたデリンジャーは、1960年代初頭にリック・アンド・ザ・レイダーズ（Rick and the Raiders）を結成し、後にザ・マッコイズ（The McKoys）に改名したバンドは、1965年のデビュー・シングル「Hang on Sloopy」が全米No.1ヒットになりました。

1969年にマッコイズが解散した後、リックと弟のランディはエドガー・ウィンターのバンドに参加し、全米第1位を獲得したエドガー・ウィンター・グループ1973年の代表曲「Frankenstein」では、リックがプロデュースとギターを担当していました。

1973年には初ソロ・アルバム『All American Boy』をリリースし、同作から「Rock and Roll, Hoochie Koo」が大ヒットとなり、この曲は後に1993年の映画「Dazed and Confused」や、2022年にNetflixで配信されたSFホラーTVシリーズ『Stranger Things』（邦題『ストレンジャー・シングス未知の世界』）のサントラにフィーチャーされました。

また、デリンジャーはセッション・ミュージシャン／プロデューサーとしても高く評価され、バーブラ・ストライサンドやスティーリー・ダン、シンディ・ローパー、エア・サプライ、ボニー・タイラー、アリス・クーパー、トッド・ラングレンらのレコーディングに参加し、彼がプロデュースしたアル・ヤンコヴィック1984年の「Eat It」（マイケル・ジャクソン「Beat It」のパロディ・ソング）は、グラミー賞を受賞しました。

なお、プロレスラーのハルク・ホーガンのテーマ曲「Real American」は、デリンジャーが作詞作曲／プロデュースと演奏も担当し、この曲は2017年に再録ヴァージョンがリリースされています。

2001年には、ティム・ボガート、カーマイン・アピスと共にアルバム『Derringer, Bogert & Appice：Doin Business as...』をリリースし、以前デリンジャーとアピスが制作したアルバム『Party Tested』が、2011年にリイシューされました。

2010年からは、リンゴ・スター＆ヒズ・オールスター・バンドのワールド・ツアーに3回参加し、2014年にはピーター・フランプトンのツアーにも出演していました。

デリンジャーの訃報を受け、元ブルー・オイスター・カルトのジョー・ブーチャードや、ドラマーのヴィニー・アピスと兄のカーマイン・アピス、ポイズンのリッキー・ロケット、アリス・クーパー・バンドのデニス・ダナウェイらが追悼メッセージを発表しており、ブーチャードは次のように綴っています。

「伝説のリック・デリンジャーの訃報を聞き、本当に悲しいです。ブルー・オイスター・カルトが結成間もない頃、エドガー・ウィンターズ・ホワイト・トラッシュの前座を務め、リックがリード・ギターを担当していました。彼らから、演奏前にしっかりウォームアップすることの重要性を学びました。彼らはステージに上がると、タイトでハイなエネルギーが爆発していましたから！　それから数十年後、フォックスウッズ（リゾート・カジノ）に招待され、リックと “Hang On Sloopy” を共演しました。まさに至福のひとときでした。（追伸：リックは『Rick Derringer’s Guitar Secrets』という素晴らしいギター本を執筆し、私は何年もこの本をウォームアップに使っていました）」

安らかなる眠りをお祈りいたします。