【イベント・レポート前編】

小川隆夫×池上信次
『レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2』

刊行記念トーク1:ジャズはマイナー・レーベルも面白い

▲(右側写真)右が『レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2』著者の小川隆夫氏。左が編集を担当した池上信次氏。

ジャズを代表する42の主要レーベルの概要と代表的な作品を解説して好評を博した
「レーベルで聴くジャズ名盤 1374」の続編、
『レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2』刊行イベントが9月上旬、
四谷の老舗ジャズ喫茶 “いーぐる” にて開催された。

当日は 同書を編集された池上信次さんが司会進行を担当、
著者 小川隆夫さんが曲を挟みながら「レーベルで聴く」という楽しみ方を講演、
密度の高いトーク・イベントとなった。

前編はまずは同書の出版の経緯、本のコンセプトなどの話題から──

【第1部】“傍系” レーベルやハービー・マン関連のあれこれ

■■ マイナー・レーベルを集めたのが「PART 2」■■

池上信次(以下池上):この本の編集を担当しました池上です、まず小川隆夫さんをご紹介します。世界で一番多くライナーノーツを書いた男と言われているくらいたくさんのライナーノーツ、著書があります。4年前に出た「レーベルで聴くジャズ名盤 1374」はマニアの方に好評で四刷を重ねる隠れたベストセラー、今回はそのPART 2の内容の紹介を中心に、『レーベルで聴くジャズ名盤 1374』の盤、さらに両者でまだ紹介されていない盤を加えて、たっぷりとその面白さを音を聴きながら楽しんでいきたいと思います。まず、なぜこの『レーベルで聴くジャズ名盤』という本を出したのでしょうか?
 
小川隆夫(以下小川):小川です。最初『スイング・ジャーナル』が休刊になるまで毎月連載していたものに、インパルスを加えてまずまとめて一冊の本にしました。それが売れたんですね。

メジャー・レーベルはほぼカヴァーしていますけれど、ジャズはマイナー・レーベルも面白い、でも1枚とか2枚のリリースで消えてしまったレーベルとか色々あるんです。そういったものも集めて作ったのが『Part 2』です。3冊目のアイデアもあります──日本のレーベルをまとめたもの。だから敢えて今回は入れませんでした。僕は日本のレーベルも好きだし、次はヨーロッパのレーベルも──と思ってますけど、多分今回の本で打ち止めでしょう(笑)。で、レコードはアーティスト主体でも、レーベルでも、皆さんが好きに聴けばいいのであって。早く音を聴きましょう。
 
池上:その前に、最初の本では1374枚のアルバムと42レーベルを紹介しています。『Part 2』は83レーベルですが、レーベルで聴く面白さはどういうところなんですか?
 
小川:僕も最初はブルーノートにこだわったんですけど、基本的にはアーティスト。マイルス・デイヴィスが好きで聴いていくと、ブルーノート、プレスティッジ、コロムビアとかレーベル毎に分かれてきて、レーベルの特色みたいなものがあるんです、そういうのが分かってくると深掘りしたくなる。そうすると僕の好きなサウンドがあって、もっと遡るとプロデューサーが出てくるんです。僕がジャズを聴き始めたのは60年代で、70年代になってもあんまりプロデューサーとかは語られたことがない。ブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンの話は外国の雑誌でも取り上げられたことはほとんどない、プロデューサーってないがしろにされていた。だけどレコード会社を運営しているのはプロデューサーであり、その人のテイストで作品が作られていくわけで、だんだんプロデューサーが大事だとわかってきた。そうやって考えるとレーベル毎でプロデューサーが違うと特色がある、それまでさんざん聴いていたけど、そこからまた聴き方が変わったんです。これは最初に言うべきだったんですけど、1冊目を出した時はメジャー・レーベルでくくりました。でもその中にプレステッジ、傍系レーベルでニュージャズとか他にも色々あるわけで、アトランティックにはアトコ(ATCO)とかあって、それらもひっくるめて1冊目で書いちゃったんです。でも今度出すときは、傍系レーベルだけ独立させてもう1回きちんと紹介し直そうと思って、それでレーベルの数(83)も増えたってこともあるんです。
 
池上:それでお手元に本日のプレイリストをお配りして、どこまでかけられるかわかりませんが。まず傍系レーベル、英語で言うとサブ・レーベルですけど、これにはどういう意味があるんでしょうか。

▲イヴェント当日に配布されたプレイリストのレジュメ

小川:それぞれいろんな事情があって、メインのレーベルとは違った音楽性のものを作りたい──別ラインで何かやりたいとか。アトコの話をすると、アトランティックのサブ・レーベル。いわゆるメジャー・レーベルというのはRCAとかコロムビア、デッカなど、個人ではなく大企業で、それこそジャズ、クラシック、ポップや童謡、朗読などありとあらゆるジャンルを取り上げるのがメジャー・レーベル。それに対して個人で経営しているブルーノートとかはジャズが中心。アトランティックも個人で始めたけれど、資金に余裕があったのかポップな音楽も取り上げていて。それがまずあった上で、そこから分家したみたいな感じですね。アトコっていうのはアトランティック・カンパニーの略。子会社じゃなくて兄弟レーベル。それでハーブ・エイブラムソンという元々アトランティックを作った人が、徴兵されて戻ってきたら自分の思う音楽を自由に作れる環境がなかったため、社長の名義はそのままに作った別会社がアトコ。アトコってトータルでみるとリズム&ブルースの方が強くて、あまりジャズのレーベルというイメージではないけれど、その中でも有名で僕が好きなのはこれから聴いていただくローランド・ハナ(P)、ベン・タッカー(b)、ロイ・バーンズ(ds)のトリオ。本家アトランティックに比べると社長の趣味が反映されているレーベルかと思います。

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『レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2』

レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2

3,300円
著者:小川隆夫

【掲載レーベル】

01 ABC-Paramount
02 ABC-Impules!
03 Ad Lib
04 America
05 Andex
06 Antilles/Antilles New Directions
07 Arista
08 Arista/Novus
09 Artists House
10 Atco
11 Audio Fidelity
12 Bee Hive
13 Black Jazz
14 Black Lion
15 Black Saint
16 Blackhawk
17 BYG
18 Chiaroscuro
19 Choice
20 Cobblestone
21 Commodore
22 Criss Cross
23 Dawn
24 Debut/Danish Debut
25 Dial
26 Dootone
27 Elektra/Musician
28 Embryo
29 ESP Disk
30 Famous Door
31 Flying Dutchman
32 Freedom/Arista Freedom
33 Futura
34 Galaxy
35 Gramavision
36 HiFi Jazz
37 Horizon
38 Imperial
39 India Navigation
40 Intro
41 Jaro
42 Jazz:West
43 Jazzcraft
44 Jazzland
45 Jazztime/Jazzline
46 JCOA
47 Jubilee
48 KUDU
49 Landmark
50 Mainstream
51 Mode
52 Moodsville/Swingville/ Tru-Sound
53 New Jazz
54 Nilva
55 Novus
56 Owl
57 Palo Alto Jazz
58 Peacock’s Progressive Jazz
59 Period
60 Progressive
61 Reprise
62 Signal
63 Signature
64 Skye
65 Sonet
66 Soul Note
67 Storyville
68 Strata-East
69 Tampa
70 Theresa
71 Time
72 Timeless
73 Transition
74 Vanguard
75 Vortex
76 Warwick
77 World Pacific
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