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『柴田直人 自伝2』刊行記念トーク:柴田直人×広瀬和生(BURRN!)

「ライフワークにするつもりで再結成したANTHEM、中途半端に投げ出すことはない」

2026年1月23日タワーレコード新宿店にて、ANTHEMのリーダー:柴田直人さん(b)の『柴田直人 自伝2』刊行記念トーク&サイン会が行なわれました。司会進行は本書を編集したBURRN! 編集長の広瀬和生。柴田さんはSNSでの予告通り “EPILOGUE”(2025年12月27日/川崎クラブチッタ)のステージ衣装だった派手シャツでご登場いただきました。

 僕の中では嘘ではないし、誰かの悪口になるような事を書きたいわけじゃないという想いと、
事の流れはしっかり書かないと意味がない、という狭間で書き上げた
 

広瀬和生(以下、広瀬):それでは柴田さんにお話を伺いたいと思います、どうぞ。

(場内大拍手、ご本人登場)

柴田直人(以下、柴田):よろしくお願いします。

広瀬:今回、僕の方からANTHEMの40周年を迎えて『柴田直人 自伝』(2018年)の続きを書きませんか?とオファーさせていただいたことで実現した『柴田直人 自伝2』ですが、前回は生まれてからANTHEM解散までを、今回はANTHEM再結成から現在に至るまでになりますが、書いていてどうでしたか?

柴田:…思い出すのがとにかく大変でしたね。事前に広瀬さんからインタビューを受けるんですが、できるだけ時間軸に沿って丁寧にインタビューをしてもらっても、出来事を全て思い出して書くというのは不可能なので、自分で思い返してやっぱりここは大変だったとか、本当に嬉しかったと思うところを書くという方向でどうですか?とお返事をさせていただきました。

広瀬:僕はずっと新譜が出たりアニバーサリーの度にあらゆる事をインタビューしてきたんですけど、実際にはANTHEMというバンドのインタビューだから「柴田直人がその時何を思っていたのか」という本音の部分は分からなかったんですよ。『自伝2』を改めて読むと今回初めて知るようなことが沢山書かれていますね。

柴田:けっこうギリギリのところまで書きましたね。あった事をちゃんと書かないと本を出す意味がないと思っていましたからね。すごく難しい部分ですけど、本に登場する沢山の人達の目線からすると僕の言っていることはもしかしたら少しニュアンスが違うかもしれない。だけど僕の中では嘘ではないし、誰かの悪口になるような事を書きたいわけじゃないという想いと、事の流れはしっかり書かないと意味ない、という想いの狭間で行ったり来たりしながら書いていましたね。

広瀬:坂本英三さん〈vo〉や本間大嗣さん〈ds〉のこともちゃんと愛を込めてどういう経緯でこうなったか、という事が書かれていますもんね。僕たちは基本的に結論しか知らなくて、裏側でどんな話し合いが行なわれたのか分からないじゃないですか? だから「なるほどそういう流れだったんだ…」って。

柴田:相当色んなことを割愛して書いているんですけど、ANTHEMの場合はある日突然気に入らなかったメンバーと殴り合いをして辞める、みたいなことはないんですよ。ずっと伏線があって、お互いにちゃんとバンドをやりたいと想いながら進むんですけど、これは一緒にやってない方が良いだろうな…というタイミングが必ず来るんですよね。だから誰が悪いというのではなくて、一生懸命自分のやりたいことをやっている人間同士という感覚なので、「まぁ仕方がないんだろうな…」と思ってもらえるところまでは書きたい、という感じでした。

清水がBURRN!で1位を獲ったときは本当に嬉しかった。
コロナ禍で開催された『鋼鉄フェスティバル』のステージからみた景色は一生忘れない。

広瀬:2001年に再結成をしてから四半世紀になりますが、良いことも悪いこと含めて最も印象的だったことって何がありますか?

柴田:清水昭男〈g〉が酔っ払って「ANTHEMをどうしてもやりたいです!」って僕に絡んだのは多分死ぬまで忘れないです。タクシーで隣に座ってるのに、耳を近づけないと何言ってるのか分かんないくらい酔っ払ってましたからね。(笑) でも、それがキッカケでANTHEMを再スタートできたこと。それから、森川之雄〈vo〉が戻ってくる決断をしてくれたことも本当に嬉しかったですね。同時に田丸勇〈ds〉が頑張って手伝ってくれたことも嬉しかったですし…。あとね、清水がBURRN!2024年4月号掲載の “HEAVY METAL CHAMPIONSHIP 2023” ギタリスト部門で1位を獲ったときは本当に嬉しくて!

広瀬:読んでて本当にそんな嬉しかったんだって思いましたよ。(笑)

柴田:嬉しかった。(笑) たぶん本人が引いてたくらいなので…本当に嬉しかったんですよ。僕はそういう風に清水を認めてたけど、“俺が俺が” っていうタイプじゃないので、そういう形で見られるギタリストじゃなかったと思うんですよね。だけどなんか1位を獲ってからグイグイ演るようになったので、彼の中でも意識改革があったんじゃないかと思います。あとは何だろうな…他はほとんど嫌なことかもしれない。(笑) 病気のこともそうですし、コロナ禍の時は本気でこのまま音楽を辞めるのかな…って考えてましたから。あの頃はエンタメ業界が徹底的に叩かれて、特に音楽の中でもロックコンサートは大阪のライヴハウスでのクラスター報道以降はNGということになってましたよね。だけど、僕たちがやっているのはそういう空間のなかでエネルギーを作る仕事だから、これはもうダメかなと思いました。

広瀬:そんな時に東海市芸術劇場の『鋼鉄フェスティバル』(2021年)があったことが大きかったんですよね?

柴田:あの時のステージから見た景色は一生忘れないですね。観客の皆さんがマスクをして間隔を空けて、声を出せない状況でも、必死にボディアクションで「自分たちはここに来たんだ!」ということをアピールしてくれていたのは本当に忘れられないですね。それが一番嬉しかったことかもしれない。

ANTHEM 20年の頃はまさか現役でベースを弾いているとは思っていなかった。
アルバム『BURNING OATH』は“何くそ!”っていうパワーで作り上げた。

広瀬:(2005年)当時も思ったんですけど、振り返ってみて、伊藤政則さんがね。「20周年だな」って言ったのは大きかったでしょうね。

柴田:たぶん、周年イベントは日本のヘヴィ・メタルをやってるプロのバンドでは僕たちが最初なんじゃないでしょうかね?

広瀬:伊藤さんって生半可なことじゃ許してくれないですよね?

柴田:そうなんですよ。(苦笑) 最初、伊藤さんは東京だけ元メンバーを~って言ってたんですけど、話しているうちに僕がケツを蹴り上げられた勢いで、全部連れてまわることにしました。伊藤さんも流石にそれは無理だろう、って言ってたんですけど結果的にやり遂げました。

広瀬:ちなみに当時は40周年をやるって思ってましたか?

柴田:全く思ってないですね。今頃は裏方でいて差し入れなんか持ってレコーディング・スタジオにふらっと現れて「頑張ってね~♪」っていう制作サイドの人間になってる予定だったんですけど…。

広瀬:事務所の社長みたいな。(笑)

柴田:セーターやなんか肩から掛けてね。(笑)

広瀬:やってるやってるぅ~?って、それ80年代ですね。(笑)

柴田:(笑) そんな感じかなぁ…と思ってたんですけど、まさか現役でベースを弾いているとは思いませんでしたね。

広瀬:アルバム制作もいつも妥協がないから結果が良いですよね。もし妥協していたら半分以上の曲は無かった、なんてこともあるじゃないですか? 「BLACK EMPIRE」(2008年)とか「CRIMSON & JET BLACK」(2023年)だったり。

柴田:「CRIMSON & JET BLACK」に関しては、1回目のレコーディングの時とは2曲、2回目のレコーディングの時とは4曲しか(完成したアルバムと)同じものがない。根本的にはアレンジが全然違うので曲としてはほとんどが違いますね。

広瀬:僕も大好きな「BURNING OATH」(2012年)の時、ある人の言葉で “何くそ!” っていうパワーで良い曲が次々生まれてきた、っていうエピソードは知らなかったです。

柴田:今回、本に書いたのが初めてだと思います。

広瀬:そのシチュエーションでそんなこと言う人は一人しかいないんですけどね。(笑)

柴田:それは…何とも言えないです。(笑)

激動の2018年、留まっていたら現在のANTHEMはなかったと思う。
ワードレコーズの並木社長と出会えたことは大きかった。

広瀬:僕のなかで「そうだったのか」って思ったのが “激動の2018年” だったんですよね。

柴田:そうですね…。誰にも言えない内側のことなので結構大変でした。あそこで留まっていたら、解散しているかは分からないですけど、少なくとも現在のANTHEMではなかったでしょうね。

広瀬:コロナ禍直前に「NUCLEUS」(2019年)を出してツアーも普通にやってたと僕は思っていたんですけど、裏では色んな出来事があって、涙の場面もあったんですよね?

柴田:ツアー初日のライヴハウスに着く直前、いろいろあって別れた一番信頼してたスタッフにメールしたらすぐに返事が来て、その内容があまりにも嬉しくて、涙で車を降りてそのまま会場に入れない状態になったんです。(笑) 奇しくも5月10日で僕の誕生日だったこともあって、忘れられない瞬間になりましたね。

広瀬:「NUCLEUS」はワードレコーズからリリースされたわけですが、終盤の重要人物として並木社長が出てきますね。こないだの “EPILOGUE” の日に「俺も『柴田直人 自伝2』買ってきたよ!」って楽屋で仰ってましたもんね。(笑) 

柴田:もう3回読んだって言ってました。(笑) 

広瀬:現在、柴田さんはご自身の会社を立ち上げて活動されていますが、並木さんとの出会いは大きかったですか?

柴田:そうですね。ただただ物理的に周りを新しくするだけではいけなくて、仕事に対する姿勢だとか僕自身のすべての意識改革を行なわないとダメだろうなと思いました。今まではレコード会社とプロモーターと僕でやってきたことを、一人で背負ってやるには会社を立ち上げるしかない、だけど身体は一つしかない状態でどうやるのが正しいか、並木社長に色々教わって何とかここまで来ました。だから並木さんと出会えたのは大きいですね。

生誕60周年記念 METAL MAN RISINGからもう7年以上経つけれど、
ミュージシャンとしてまだまだ進化したいと思っている。

広瀬:2018年の “柴田直人 生誕60周年記念 METAL MAN RISING”(同年6月9日/川崎クラブチッタ)からもう7年以上経つんですね…。

柴田:ミュージシャンとしてまだまだレベルを上げたいところがいくつもあるんですよ。

広瀬:そうなんですか?

柴田:やればやるほど出てきちゃうんですよね…。僕は上手にベースを弾きたいと思ったことは一度もないんですけど、“こういうベースを弾きたい” っていうのはあるんです。そこにはまだ届いてないなぁ‥って思うのが最近、特に去年は色んなことをやってそれに気が付いたり。あとは今、映像作品を編集してるんですけど、やっぱ映像を見ると演奏中に気を抜いているところが分かるんですよ。(笑) 僕だけじゃなくて田丸でさえも…って田丸は休んでないか。

広瀬:田丸くんは演奏中に休むところ無いでしょう。(笑)

柴田:(笑) これが清水は分かんないんですよ。いつも淡々と弾いているからどこで抜いているのか分からない…。森川は分かるんですよ!(笑) 清水がソロパートでものすごい盛り上がってるのによく見たら後ろで顔拭いてましたからね。

広瀬:(笑)

柴田:もちろん、そういうのは映してません。(笑) あとは基礎体力だったり持久力も、年齢平均以上はありますが、もうちょっと上げていきたいなと思ったりもしますね。2025年を経たANTHEM、少なくとも僕はまだまだ進化したいと思っていますね。

ANTHEMの40周年アニバーサリーは誰もやったことがないことをやりたかった。
トリビュートバンドのTHE JUGGLERには全員が本当に触発された。

広瀬:『自伝2』がまさに40周年に取り組まれている最中だったので、本の中で具体的には触れられてないですが、振り返ってみてどうでしたか?
 
柴田:「今ANTHEMを応援してくれている人達に何かを返したい」という想いが強くて、後ろを振り返るのではなく、“今” と “未来” という風に感じて「もう元のメンバーを呼ぶのは止めよう」と考えたのが最初でした。じゃあ具体的に何をしようか?と思ったときに、誰もやったことがないことをやりたい癖があるので、自分達のトリビュートバンドを組んでもらって本家本元が連れてツアーする、なんてことはあまり聞いたことがないと思うんですけど、僕の中には良いツアーになるという自信がありました。やってみるとトリビュートバンドTHE JUGGLERの島紀史くん(g/CONCERTO MOON)を筆頭に、彼らの頑張りに全員が本当に触発されて…もっともっと頑張らなきゃ、と思ったのはそれもあるんですよね。
 
広瀬:THE JUGGLERで演奏していた、はなちゃん(ds/Gacharic Spin)ですけど、彼女は3月20日と3月21日にHEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3で行なわれる “ANTHEM LIVE 2026 ~TRIGGER~” のゲストなんですよね?
 
柴田:彼女はEPILOGUEに出られなくて残念がってたので、オファーしたら「演りたいです!」っていう流れで決まりました。そのために作られたコンサートではないんですけど、僕の中ではそれをもって “EPILOGUE” 完結、と勝手にイメージしてますね。
 
広瀬:“TRIGGER” というタイトルが付いていますが、ここを起点にどういった感じで今年は動こうと思っていますか?
 
柴田:とにかく新譜を制作するための1年にしようと思っています。だからほぼ自室に篭って曲のアイデアを録音して、それを選んでいって「これで行ける」と思ったら曲を作っていくというのが1年間続くわけですけども、それだけだと行き詰まるので、コンサートが現状7本決まっています。TRIGGER” の2デイズの他に、6月から7月にまたがって3本、それ以外は年末の方にある予定です。
 
広瀬:レコーディングにはいつごろ取り掛かるのが目標ですか?
 
柴田:理想を言えば10月ぐらいからドラム録りを始めて、年内はベースとドラムを録り終えられたらいいな、という感じです。
 
広瀬:柴田さんは実際、何年くらい先を見据えてプランを立てているんですか?
 
柴田:順調に来年アルバムが出来たらツアーがあるでしょ、その次はまたなんか考えてたらもう45周年がすぐじゃないですか!(笑)
 
広瀬:そういうことですよ。(笑)
 
柴田:年齢的にも45周年は感慨深いかもしれませんね。

ANTHEM再結成を決意したとき、完全に自分のライフワークにするつもりで
始めたから、中途半端に投げ出すことはない。

広瀬:キングレコード時代のANTHEMって最後、柴田さんが嫌になって辞めちゃったじゃないですか? 再結成以降も嫌になって辞めてもおかしくないタイミングって幾らでもあったと思うんですが、あの頃と何が違ったんでしょうか?
 
柴田:なぜでしょうね…。再結成を決意した時点で広瀬さんにもお話しましたけど、完全に自分のライフワークにするつもりで始めたのに比べて、1985年にデビューしてからの6~7年は若かったこともあって、特に何も考えてないんです。ただ自分がリーダーで先頭を走らなきゃいけないっていうだけ。だから、上手くいかなくなったりシーンがなくなったりすれば当然傷つくし、「もういいや」ってなったんですけど、だけど一番最初にそういうことがあった分だけ、もう一度始めるときは “自分で何をやるべきか” 考えて始めたので、中途半端なことで投げ出すことはしないです。
 
広瀬:『自伝2』を読むと、清水くんがいたおかげっていうのも大きいですよね?
 
柴田:清水がいなかったらここまで来られなかったんじゃないでしょうか…。他のメンバーが清水に比べて劣っているとかそういうことではなくて、清水がズバ抜けて洞察力が鋭かったり、僕が知ってるギタリストによくあるパターンの自己顕示欲だけで生きてる感じではないし、バランスが良くて、ああ見えて漢っぽいし…キレイ好きすぎるのが難点ぐらいですね。(笑)
 
広瀬:そういえば最初の方で、楽屋で柴田さんが清水くんに「あのパフォーマンスはなんだ!」って怒ったけど、後で「俺が間違ってた…」って謝る、っていうエピソードもありましたよね。(笑)
 
柴田:(笑) 清水はたぶん僕をずっと支えようとしてきてくれたと思うんですけど、単なる補佐ではなくて、十分すぎるぐらいミュージシャンとして一人立ちした素晴らしい才能の漢ですね。そんな人間が「僕はANTHEM以外でヘヴィ・メタルを演るつもりはありません」って言う以上、少なくとも清水の前では怠けることはできません。ライヴではよく怒られてるんですけど。(笑)
 
広瀬:(笑) 柴田さんがグラハム・ボネット〈vo〉と一緒に演ったときギターを弾いてたじゃないですか? 僕そのとき清水くんと一緒に観てたんですけど、「あれベースでしょ!」ってツッコんでましたね。(笑)
 
柴田:(笑) ギタリストとして出てギターを弾いてるつもりなんですけど、僕が弾いてるアドリブのフレーズを聴いて「いつもベースでやってるフレーズだ!」ってすぐ分かったみたいです。(笑)

広瀬:そろそろお時間ですね…今日のトークは一旦ここまでということで、柴田さんありがとうございました!
 
柴田:ありがとうございました!
 
(場内大拍手)

 
この後、和やかな雰囲気のなかサイン会が開かれました。
ファンとの交流を楽しみつつ、一人ひとりに真摯に向き合っていた柴田さんのお姿をここに記しておきます。

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「ANTHEMは、デビューから30数年を経てなお進化し続ける稀有なバンドである。コンスタントにアルバムを発表する度に“最新作が最高傑作”を実現させる柴田直人の、一切の妥協を排する強固な意志と弛まぬ努力には驚嘆するばかりだ。そんな“信念の人”柴田直人が初めて自らの内面を赤裸々に明かした本書は、掛け値なしに“待望の一冊”と言えるだろう」(広瀬和生/BURRN! 編集長)
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