MUSIC LIFE CLUB 7th Anniversary

【ミュージック・ライフ写真館〜ML Imagesライブラリー】

追悼:小嶋秀雄さん(フォトグラファー)
──ミュージシャン最高の一瞬を撮り続けた数十年

【ミュージック・ライフ写真館/ML Imagesライブラリー 撮影:小嶋秀雄 pix : Gutchie Kojima / ML images / Shinko Music】

11月29日、ミュージック・ライフに限らずBURRN!、ヤング・ギターなど、シンコーミュージックの刊行物で長年にわたり写真撮影を手掛けられ、“グッチー” のニックネームで愛されてきた、フォトグラファーの小嶋秀雄さんが亡くなられました。我々MUSIC LIFE CLUB編集部の面々も、数限りないほどの取材現場で小嶋さんのお力を借りてきました。熱心な読者の方であれば、“Pic:Gutchie Kojima”というクレジットを度々目にされたかと思います。ちょっとシャイで控えめなのか?と思いきや豪快な一面を見せたりする小嶋さんは、現場でもスタッフから非常に愛された方であり、そんな面白い方と仕事を共にする機会がもうなくなってしまうのかと思うと、何とも言えない寂しさが込み上げてきます。
 
ここでは小嶋さんが膨大に撮影した写真の中から、ほんの一部を紹介しながら、故人のカメラ術を振り返ってみたいと思います。

何故カメラマンという仕事に就いたのかと問われた小嶋さん。その答えは「カメラマンを目指すなんてことは一度も思ったことがなくて、最初に行った会社がたまたま現像所で、撮影もやっていた」というアバウトなものだったようです。小嶋さんの人柄を知る我々からすると「らしいなぁ」と思ってしまうのですが、撮影の経験を積みつつ、1970年代からは長谷部宏さんと並ぶシンコーミュージックお付きのカメラマンとして八面六臂の活躍を重ねていくことになります。

小嶋さんはとにかく仕事が早く、サッとセッティングして、被写体の好きなようにポーズを取らせて、サッと撮る。そのスタイルがミュージシャンからの称賛の声にもつながっていました。

こちらは1992年2月、前年の『Nevermind』で世界を席巻したニルヴァーナが行なった唯一の来日公演時の写真です(記事冒頭のメンバー3人ショットも同来日時のもの)。この取材の際、カート・コバーンのインタビューはホテルのベッドルームで実施されたのですが…その際のショットがこちら。パジャマ姿のカートがベッドに横たわる──カジュアルというにはあまりにもラフな格好ですが、カートというミュージシャンの妖しくも破壊的な魅力をきっちり写真の中に収めた、奇跡的なショットと言えましょう。

同じ1992年の7月、BURRN!の表紙用に柔道の道着を着たパンテラのフィリップ・アンセルモ。洋楽ミュージシャンと “和” のファクターを組み合わせるのは(手前味噌ながら)かつてミュージック・ライフに代表されるシンコーミュージック十八番のお遊びだったわけですが、こんなカットも残されていました。この来日時、小嶋さんはライヴが始まってすぐフィルにステージへ上げられ、「上からオーディエンスを撮れ」と言われたそうです。

方や1988年12月のガンズ・アンド・ローゼズ来日時、取材場所の一角でナチュラルに撮られたスラッシュ。もう一方は1987年7月来日時、ステージ同様の衣装でビシッとキメたモトリー・クルー。どちらもシチュエーションは違いますが、ビシッと決まったクールなカットに仕上がっています。

アーカイヴをちょっと掘り返すだけでも、小嶋さんは多岐にわたる有名ミュージシャンの全盛期ど真ん中の姿を写真に収めていることがわかります。こちら1枚目は1982年5月、今も人気No.1の傑作『TOTO IV』を提げて2度目の来日を果たしたTOTO。メンバー全員揃っていい笑顔。2枚目はラッシュの現時点で唯一の来日時(1984年11月)。ゲディ・リーとアレックス・ライフソンのコンビ、特別な撮影装置もないホテルの一室ながら、実に趣ある1枚です。

ここまでオフステージでの写真をご覧いただきましたが、ここからはライヴ・ショットを。一期一会の機会であるライヴの場でわずかな瞬間を切り取り、読者に「かっこいい!」と思ってもらえるような写真を撮るというのは、カメラを操る人の腕の見せ所です。古今東西の会場どこでも駆けつけて、ミュージシャンのクールな瞬間を捉える、という機動力の高さにおいても、小嶋さんは信頼の置けるフォトグラファーでした。

マイケル・ジャクソン、1988年9〜10月に実現した “Bad World Tour” 横浜スタジアム公演にて。やや遠景で撮ったらしきカットですが、キング・オブ・ポップの凛々しさが十二分に伝わってきます。
ジョン・ウェットンの突然の脱退により、急遽グレッグ・レイクをフロントマンに迎えたエイジアの初来日公演(1983年12月)。2026年2月に開催が決定した来日公演でも、この “ASIA IN ASIA” の再現が謳われているというほどの色々な意味で歴史的コンサートですが、そんな貴重な一公演を写真にキャプチャーしたのも小嶋さんです。
ポップス/ロックを総合的に扱うミュージック・ライフの取材となれば、当然のことながらフォログラファーが撮るミュージシャンのキャラクターも大変にヴァラエティ豊かです。カルチャー・クラブ(1985年8月 “ROCK IN JAPAN '85”)、カーズ(1980年/唯一の来日)、スティーヴ・ウィンウッド(1989年/初来日)。洋楽の来日コンサート華やかなりし時代の一幕です。特にどのジャンルが好きといった枠を設けることもなく、「音が好き」というフレキシブルな小嶋さんにはピッタリな活躍の場だったと言えるのでは。
昨今はそんなイメージも過去のものになりましたが、かつてロックと言えば男臭いイメージも強かったジャンル。小嶋さんは「女性を撮りたいなぁ」とボヤいていたこともよくありました。1981年11月、初来日したシーナ・イーストンのようにかっこいい女性ミュージシャンを撮る時はなおさら入魂…だったのかも?
ちなみに小嶋さんが一番好きなアーティストとして挙げていたのが、ローリング・ストーンズ。そういえば2003年にストーンズが来日した頃、「昔ビル・ワイマンがいる頃に撮ってるから、もう撮れなくても悔しくない(笑)」なんて語っていたっけなあ…。
 
小嶋さんご本人は自分で撮った写真が大々的に展示されることに興味がなかったそうです。「一生懸命やってないから、(写真を褒められると)凄く恥ずかしい」という珍言もありました。しかし、ここに挙げた写真を見るだけでも、褒められて当然だったのは言うまでもないでしょうね。そういうちょっとぶっきらぼうで、いちいち発言がジワッと面白いところも、愛された要因でした。
 
今はあえなくお別れの時が来てしまいましたが、今後もMUSIC LIFE CLUBは小嶋さんの写真にお世話になり続けることでしょう。

小嶋秀雄さん、長年にわたって多大なご貢献をいただき、ありがとうございました。
安らかなる眠りをお祈りいたします。
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「ミュージック・ライフ写真館」では、こうして弊社のライブラリから、当時誌面を賑わせた/未公開のままだった写真を公開しています。クイーン、レッド・ツェッペリンなど、過去の公開分も併せて是非お楽しみください!

過去の「ミュージック・ライフ写真館」はこちら。
1960〜90年代にかけて、雑誌『ミュージック・ライフ』は、フォトグラファー長谷部 宏氏を中心にした撮影陣で、数多くの海外アーティストの写真を撮り続けて来ました。60年代にはビートルズ、70年代にはクイーン、KISS、チープ・トリック、ジャパン、80年代にはボン・ジョヴィやデュラン・デュラン……などなど、撮りためたポジ・フィルムやプリントは、数十万枚にも及ぶ量になります。しかもその貴重さは世界的レベルのため、海外からのリクエストも絶え間なく寄せられています。

現在我々は、そのコレクションを「ML Images」と名付け、膨大な量の写真を地道に整理整頓しつつ、貸し出すサービスを行なっており、ライブラリへアップロード済みの画像は目下約3万点で、現在も増え続けております。ご利用をご希望のメディア/展示スペースの方は、弊社までご連絡いただければ、具体的なご希望がない場合でもスタッフがお応えいたします。お気軽にご相談ください。メールはこちらから。

※個人の方へのご提供は行なっておりません。
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