キース・リチャーズから口説かれた際のエピソードを披露──「俺バンド作るんだけど、もうひとりのギタリストお前だから」
キース・リチャーズ公式YouTubeチャンネル「Keith Richards & The X-Pensive Winos - I Wanna Be Your Man (Live at the Hollywood Palladium)」より
ザ・ローリング・ストーンズが初めてアメリカをツアーした1965年は、いわゆるブリティッシュ・インヴェイジョンが最高潮に達していた時でした。後のセッション・ギタリスト界の第一人者、ワディ・ワクテルはその年の5月1日、学校をサボって彼らのブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックでのライヴを観に行きました。当時のストーンズはどこへ行っても、姿を現わしただけでファンの絶叫を浴びるのが当たり前になっていましたが、ブルックリンの観客の彼らを迎える態度は思いがけず冷ややかなものでした。
「大半が彼らの前座を務めた地元出身のヴォーカル・グループ、ザ・トークンズ目当てで来てたんだよ」ワクテルはそう振り返ります。「だからストーンズが出て来た時にはみんな帰っちゃってたんだ」
「大半が彼らの前座を務めた地元出身のヴォーカル・グループ、ザ・トークンズ目当てで来てたんだよ」ワクテルはそう振り返ります。「だからストーンズが出て来た時にはみんな帰っちゃってたんだ」
「会場はほぼガラガラの状態だったけど、そこにストーンズが現れて、“Not Fade Away” をプレイし始めた。そりゃもう素晴らしかったよ。完全に心奪われたって感じだった」
ワクテルはそこから一線級のギタリストへとのし上がり、リンダ・ロンシュタット、スティーヴィー・ニックス、ウォーレン・ジヴォン、ボブ・ディランその他、数え切れないほどのアーティストたちと共演経験を重ねました。こうした経歴をもってすれば、彼がいずれリチャーズと行き会うことになるのは自然な流れだったのかもしれません。その時が最初に訪れたのは、ワクテルがロンシュタットのバンドとツアーに出ている最中でした。
「70年代半ばにイングランドをツアーしてた時、キースがショウを観に来てくれて、俺たち凄く貴重ないい時間を一緒に過ごすことができたんだ」と彼は回想します。
それはリチャーズにとっても良い時間だったのでしょう。1988年、彼がソロ・デビュー・アルバム『Talk Is Cheap』のためにバッキング・グループのX-ペンシヴ・ワイノーズを結成するに当たって、まず頭に浮かんだのはワクテルを勧誘することでした。
「イギリスの代理人から電話があって、キースが俺を探してるって言われたんだよ。それで、『ああ、こうやって見つかったじゃないか──俺の番号渡しておいてくれない?』って言ったら、『いいですか、今彼はララビー・スタジオにいるんですよ』って言われてね。彼はちょうど(1987年のチャック・ベリーの自伝映画で、リチャーズがギタリスト兼バンドリーダーを務めていた)『チャック・ベリー ヘイル・ヘイル・ロックンロール』の制作中だったんだ。だから、『そちらから電話してみてください』って言われてさ」
「それでキースに電話したら、彼が開口一番、『ワディ、俺バンド作るんだよ、で、もうひとりのギタリストはお前だから』って。俺が『マジで?!』って言ったら彼は『マジで。このバンドにはオーディションはねえから。お前で決まり』だって。もう、いきなりノックアウトされちまったよ」
ニューヨーク・シティで行なわれたリハーサルで、リチャーズとドラマーのスティーヴ・ジョーダンに合流したワクテルは、キースが彼にプレイして欲しいギターまで手ずから選んでくれたことを知りました。
「キースからは『ギターは1本も持って来なくていい』って言われてたんだよ。それでホントに手ぶらで現場に行って、彼が俺のために用意してくれたケースを開けたらさ」、中に鎮座していたのはギブソン・レスポールのTVモデルで、実はワクテルが最初に手にしたのと同じモデルのエレクトリック・ギターでした。
「ケースを開けてギターが目に入った途端に、俺が『うわあ、これ俺の最初のエレクトリック・ギターだよ!』って言ったら、彼は『ああ、俺はそいつを “Tumbling Dice”(邦題「ダイスをころがせ」)で使ったんだ』って」
ワクテルはそこからワイノーズのメンバーとして3作のリチャーズのソロ・アルバムに参加し、1992年の『Main Offender』ではコ・プロデュースも担当しました。リチャーズとの仕事はどんな時も常に楽しかったと彼は言います。
「時に物事が思うように進まなくなる時があって──分かるだろ、スタジオってところは度々トラブルが起こるんだよ。機材が壊れたり、セッティングがどうにも決まらなかったりね。彼に向かって、『キース、こんなに時間かかっちゃって申し訳ない』って言うと、彼はいつも言ってくれたよ、『気にすんな、ダチ公、大丈夫だから。こんなの俺だって何度も経験あるよ。大したことじゃない』って」
彼の思い出の中でひとつ、リチャーズの歴史と、彼の絶えず事も無げな冷静さが集約されたようなエピソードがあります。それは彼らがカリフォルニア州サン・ラファエルのザ・サイトで『Main Offender』のレコーディング作業を行なっていた時のことでした。
「ある日、俺たちは居間のエリアにいて──キースの寝室はそのすぐ上にあってね。もうそろそろ夕方に差し掛かるくらいの時間で、俺たちは休憩を取ってて、彼はちょっと横になって来るって言って上の階に上がって行った。俺たちがTVを観てたら、突然ビートルズのコンサートの放送が始まったんだ──シェイ・スタジアムか何かのやつでね。もの凄い絶叫の嵐だった──女の子たちがみんな発狂状態で叫びまくっててね」
「俺たちがそこに座ってずっと画面を眺めてたら、唐突にキースが階段を下りて来て、部屋の向こう側からTVを見やると、一言『あったねえ(Done that)』って言ったんだ」
「スティーヴと俺はお互い顔を見合わせて思わず言ったよ、『ああ、そうだよな。この人、まさに経験者なんだよな』って」
「彼はとにかく愛らしい人なんだよ──誠意に溢れていて、漢前で、美しい心の持ち主だ。と同時に、彼はデビューして最初の5年間、ずっと黄色い声を浴びてた『あの』ローリング・ストーンでもあるわけで──あの頃はステージで何をプレイしてても、自分たちじゃ何ひとつ聞こえなかったってさ」
無論、あのワクテルが目撃した、彼らのブルックリンでの最初のショウのような状況でプレイした時を除いてのことですが。
ワクテルはそこから一線級のギタリストへとのし上がり、リンダ・ロンシュタット、スティーヴィー・ニックス、ウォーレン・ジヴォン、ボブ・ディランその他、数え切れないほどのアーティストたちと共演経験を重ねました。こうした経歴をもってすれば、彼がいずれリチャーズと行き会うことになるのは自然な流れだったのかもしれません。その時が最初に訪れたのは、ワクテルがロンシュタットのバンドとツアーに出ている最中でした。
「70年代半ばにイングランドをツアーしてた時、キースがショウを観に来てくれて、俺たち凄く貴重ないい時間を一緒に過ごすことができたんだ」と彼は回想します。
それはリチャーズにとっても良い時間だったのでしょう。1988年、彼がソロ・デビュー・アルバム『Talk Is Cheap』のためにバッキング・グループのX-ペンシヴ・ワイノーズを結成するに当たって、まず頭に浮かんだのはワクテルを勧誘することでした。
「イギリスの代理人から電話があって、キースが俺を探してるって言われたんだよ。それで、『ああ、こうやって見つかったじゃないか──俺の番号渡しておいてくれない?』って言ったら、『いいですか、今彼はララビー・スタジオにいるんですよ』って言われてね。彼はちょうど(1987年のチャック・ベリーの自伝映画で、リチャーズがギタリスト兼バンドリーダーを務めていた)『チャック・ベリー ヘイル・ヘイル・ロックンロール』の制作中だったんだ。だから、『そちらから電話してみてください』って言われてさ」
「それでキースに電話したら、彼が開口一番、『ワディ、俺バンド作るんだよ、で、もうひとりのギタリストはお前だから』って。俺が『マジで?!』って言ったら彼は『マジで。このバンドにはオーディションはねえから。お前で決まり』だって。もう、いきなりノックアウトされちまったよ」
ニューヨーク・シティで行なわれたリハーサルで、リチャーズとドラマーのスティーヴ・ジョーダンに合流したワクテルは、キースが彼にプレイして欲しいギターまで手ずから選んでくれたことを知りました。
「キースからは『ギターは1本も持って来なくていい』って言われてたんだよ。それでホントに手ぶらで現場に行って、彼が俺のために用意してくれたケースを開けたらさ」、中に鎮座していたのはギブソン・レスポールのTVモデルで、実はワクテルが最初に手にしたのと同じモデルのエレクトリック・ギターでした。
「ケースを開けてギターが目に入った途端に、俺が『うわあ、これ俺の最初のエレクトリック・ギターだよ!』って言ったら、彼は『ああ、俺はそいつを “Tumbling Dice”(邦題「ダイスをころがせ」)で使ったんだ』って」
ワクテルはそこからワイノーズのメンバーとして3作のリチャーズのソロ・アルバムに参加し、1992年の『Main Offender』ではコ・プロデュースも担当しました。リチャーズとの仕事はどんな時も常に楽しかったと彼は言います。
「時に物事が思うように進まなくなる時があって──分かるだろ、スタジオってところは度々トラブルが起こるんだよ。機材が壊れたり、セッティングがどうにも決まらなかったりね。彼に向かって、『キース、こんなに時間かかっちゃって申し訳ない』って言うと、彼はいつも言ってくれたよ、『気にすんな、ダチ公、大丈夫だから。こんなの俺だって何度も経験あるよ。大したことじゃない』って」
彼の思い出の中でひとつ、リチャーズの歴史と、彼の絶えず事も無げな冷静さが集約されたようなエピソードがあります。それは彼らがカリフォルニア州サン・ラファエルのザ・サイトで『Main Offender』のレコーディング作業を行なっていた時のことでした。
「ある日、俺たちは居間のエリアにいて──キースの寝室はそのすぐ上にあってね。もうそろそろ夕方に差し掛かるくらいの時間で、俺たちは休憩を取ってて、彼はちょっと横になって来るって言って上の階に上がって行った。俺たちがTVを観てたら、突然ビートルズのコンサートの放送が始まったんだ──シェイ・スタジアムか何かのやつでね。もの凄い絶叫の嵐だった──女の子たちがみんな発狂状態で叫びまくっててね」
「俺たちがそこに座ってずっと画面を眺めてたら、唐突にキースが階段を下りて来て、部屋の向こう側からTVを見やると、一言『あったねえ(Done that)』って言ったんだ」
「スティーヴと俺はお互い顔を見合わせて思わず言ったよ、『ああ、そうだよな。この人、まさに経験者なんだよな』って」
「彼はとにかく愛らしい人なんだよ──誠意に溢れていて、漢前で、美しい心の持ち主だ。と同時に、彼はデビューして最初の5年間、ずっと黄色い声を浴びてた『あの』ローリング・ストーンでもあるわけで──あの頃はステージで何をプレイしてても、自分たちじゃ何ひとつ聞こえなかったってさ」
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