今年の〈フジロック〉で観るべきアクトは?

今年もいよいよ〈フジロック〉の季節がやってきました。昨年はボブ・ディランが初出演を果たすなど特別な盛り上がりを見せましたが、今年も見逃せないラインナップが数多く出揃っています。

ここでは各日のヘッドライナー3組を改めて紹介すると同時に、元ミュージック・ライフ編集部でもあるライター赤尾美香さん選出によるオススメアクトを紹介していきます!

■各日のヘッドライナーはこの3組!

今年のグリーンステージ3日間のトリを飾るこの3組。ライターの赤尾美香さんに各アクトの見どころを紹介してもらいます。

THE CHEMICAL BROTHERS ケミカル・ブラザーズ
7/26(金)GREEN STAGE

今春発表した原点回帰の最新作『No Geography』の評判も上々、初期フジロックの常連で、場内遭遇率も高かった彼らが、8年ぶりに苗場に帰還(通算7回目)。トム・ローランズとエド・シモンズが英マンチェスターの大学で出会って30年。ふたりの創造性が可能にしたロックとダンス・ミュージックのスマートな融合は、90年代半ばから現在に至るまで強烈なインパクトを放ってきた。

そんな、独創的なビートや鮮やかなトラック・メイキングの技が冴える彼らの真骨頂は、ライヴ!!  映像を駆使した爆音のライヴ・ショウは、百戦錬磨のロック・バンドが繰り出すダイナミズムに勝るとも劣らない“圧”でオーディエンスを熱狂に導いてくれるのだ。

SIA シーア
7/27(土)GREEN STAGE

豪アデレード出身、97年にデビュー、10年頃から「有名になりたくない」を理由に素顔を隠して活動を続けるシンガー・ソングライターにして、ビヨンセやマルーン5、リアーナらに楽曲を提供してきた現代ポップ・シーンのキー・パーソンのひとり。14年発表の『1000 フォームズ・オブ・フィアー』が全米1位を獲得、ディオールのTVCMでもおなじみシングル「シャンデリア」は世界的に大ヒット。

そんな彼女、実は04年にZERO 7のゲスト・シンガーとしてフジ初出演を果たしているが、SIA名義での来日は今回が初めて。アーティスティックかつミステリアスでアングラ的な魅力があるというステージを、目撃する日が待ちきれない!!

THE CURE ザ・キュア
7/28(日)GREEN STAGE

07年、23年ぶりの来日でフジ出演を果たし、往年のファンに歓喜と感涙をもたらしたザ・キュアー。13年の再出演時には3時間に及ぶセットを披露し、新たなフジロック伝説を増やした。76年にロバート・スミスを中心に英クローリーで結成、ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ期〜オルタナティヴ期を経て現在も精力的に活動する彼らは、今年 “ロックの殿堂” 入り。多くの後輩に影響を与えたバンドの功績を讃える役を務めたのは、トレント・レズナー(ナイン・インチ・ネールズ)だった。

5月末より、名作『ディスインテグレーション』30周年記念ツアーがスタート、グラストンベリー・フェスのヘッドライナーを務めた後のフジロック。またも伝説を作ってくれるだろうか!?

■ライター赤尾美香が選ぶ注目アクトは?

ヘッドライナー以外にも例年200組以上のアーティストが出演するフジロック。引き続きライター赤尾美香さんにML世代にオススメしたいアクトを各日3組ずつ選んでもらいました。

それではラインナップを見ていきましょう。

7月26日(金)

TYCHO ティコ
7/26(金)WHITE STAGE

実のところ私は、普段あまりエレクトロニック系の音楽を聴かないのだけど、自然に溢れたフジで聴くとなぜか、えも言われぬ開放感を味わうことができるのだ。で、今年は彼らに注目。サンフランシスコを拠点にするスコット・ヘンセンによるエレクトロニック・プロジェクトは、トム・ヨーク登場前のホワイトを気持ちのいいグルーヴで満たしてくれるだろう。
フジ直前にリリースされる新作『Weather』では、穏やかなレトロ・ムードに覆われたサウンドにアンニュイなヴォーカルが絡むドリーム・ポップのごときアプローチも見せた。ライヴでは、映像作家でもあるハンセンが手掛けるヴィジュアルとのコラボも楽しみだ。

MITSKI ミツキ

7/26(金)RED MARQUEE

今年のフジは女性出演陣の充実にも注目したい。2019年9月7日、米NYのセントラル・パークで行なわれるライヴを最後に無期限でライヴ活動を休止すると発表したMITSUKI。音楽活動を辞めるわけではないが、MITSUKI目撃の貴重な機会になるフジのステージは絶対に見逃せない。
日本生まれ、現在はNYを拠点に活動するシンガー・ソングライターは、大学在学中にBandcampで音源を発表しつつ、12年にデビュー作をリリース。16年にDead Oceansから発表した4作目『Puberty 2』で注目を高めた。既成概念にとらわれないユニークな構成やアレンジの楽曲に乗せて表現される彼女の “孤独” や “疎外感”、あるいは “自己探求” は、苗場でどんな風に響くのだろうか。

THE LUMINEERS ザ・ルミニアーズ

7/26(金)FIELD OF HEAVEN

14年、初日のグリーン・ステージに立った彼らは、完璧なるオーディエンス巻き込み型のライヴを披露して拍手喝采を浴びた。バンド創始者のふたり、ウェスリー・シュルツとジェレマイア・フレイテスは、クルクルと楽器を持ち替えながらマルチ・プレイヤーぶりを存分に発揮。さらには、観客のシンガロングやコール&レスポンスを巧みに操って見せた。PAの屋根に登って演奏したのは、後にも先にも彼らだけだろう。
あれから5年、米コロラド州デンバー拠点のルーツ系ロック・バンドは、9月に3年ぶりの新作『Ⅲ』の発表を控え、フジ初日、天国でトリを務める。私にはもう、しあわせオーラに包まれた
                       天国の様子が見えている。

7月27日(土)

CAKE ケイク

7/27(土)GREEN STAGE

90年代初頭、カリフォルニア州サクラメントで結成されたオルタナティヴ・ロック・バンドが、8年ぶりにフジに戻ってくる。クールでユーモラス、シニカルだけどあたたかく、時に賑々しく鳴らされるホーンは、時にそこはかとない哀感も引きずる。ローファイ感覚でゆるりとカヴァーされた「アイ・ウィル・サヴァイヴ」にも顕著だった摩訶不思議な音世界がやみつきに。
寡作なバンドながら、マイペースで活動を継続、昨年10月に久々の新曲を発表したが、フジ後の11月にはこれまた8年ぶりとなる新作のリリースが予定されている。

DEATH CAB FOR CUTIE  デス・キャブ・フォー・キューティー

7/27(土)WHITE STAGE

極上のメロディを全身に浴びたいのなら、デスキャブ。サマソニのイメージが強いけど、7年ぶりの来日で、遂に初フジ!!  米ワシントン州ベリンハム出身、根強い人気を誇る米インディ/オルタナティヴ・バンド。多彩なギター・サウンドを中心に据えたアレンジで、フックの効いたメロディを際立たせる。フロントマン、ベン・ギバートの甘く、はかなげな歌声とともにメロディが心に滑り込み、あちこちの感情を揺らす。
昨年発表の『サンキュー・フォー・トゥデイ』から正式な5人体制となった彼らの “今” に超期待。この日のホワイト、アメリカン・フットボールからデスキャブの流れ、最高!(と思いながら、SIAも観たくて、すでに悩んでいる)

 ALVVAYS オールウェイズ

7/27(土)RED MARQUEE

カナダはトロント出身のドリーミー・ポップ・バンドが、フジに初登場。昨年秋の初来日公演が全公演完売で、涙を飲んだ人、お待たせしました!! 2014年リリースのデビュー作『ALVVAYS』、そして17年のセカンド作『ANTISOCIALITE
S』と、彼らが放つキュートな胸キュン・ポップは、インディ・ポップ・ファンはもちろん、かつてのギタポ・フリークやネオアコ・マニアをもメロメロに。90年代スウェディッシュ・ポップにも通じる “せつない甘さ” もあり。
楽曲の完成度は高いけど、出来過ぎにならない音の感触と、フロントウーマン=モリー嬢のべったり甘すぎないチャーミングな歌声の相性もバッチリ。夢見心地な体験をぜひ!!

7月28日(日)

HIATUS KAIYOTE ハイエイタス・カイヨーテ
7/28(日)GREEN STAGE

やっと観れる!!  過去の来日公演をことごとくミスっていたので、これでようやく……だ。生前のプリンス殿下も絶賛した、豪メルボルン出身の4人組フューチャー・ソウル・バンドは、なんと言ってもギターを抱えてフロントに立つ紅一点、ネイ・パームの存在感がすごい!
エキセントリックなルックスもさることながら、R&B的でもありジャズ的でもありジャム・バンド的でもあるフューチャリスティックなサウンドに、変幻自在のヴォーカルをのせてグルーヴを巻き上げていく。昨年は、ネイ・パームがソロ、ほか3人はユニット=スウーピング・ダックとして活動、リフレッシュも充分のはず。

JAMES BLAKE ジェイムス・ブレイク

7/28(日)WHITE STAGE

エレクトロニックのジャンルに括られることの多い彼だが、私にとってはやはり“シンガー・ソングライター”だ。英ダブステップのシーンから登場、エレクトロニカ、アンビエント、ソウル……ジャンル無用のサウンドはそこはかとなくメランコリック。ファルセットが印象的な歌に溢れるセンチメンタリズムが胸を打つ。
ジェイムス・ブレイクの音世界はもの悲しく、澄んだブルーのイメージ。
16年、小雨降る中グリーンで観た彼のステージのクライマックスでは、ダイナミックなエモーションの放出にめまいを起こしそうになったが、今度は、ぐるりと緑に囲まれたホワイトの幻想的な夜の風景を、どんな風に見せてくれるのだろう。


 

STELLA DONNELLY ステラ・ドネリー

7/28(日)RED MARQUEE

SIA、コートニー・バーネット、ネイ・パーム(ハイエイタス・カイヨーテ)に、このステラ。みんな豪州出身。個性色々。友人からレイプ被害を告白されて書いた「Boys Will Be Boys」が図らずも<#me too>運動のアンセムとなり一躍話題になったステラ。キュートなルックスの彼女が、そのスウィートな歌声で社会に斬り込んだときの痛快さと言ったら!! 
今年3月に発表したデビュー作『ビウェア・オブ・ザ・ドッグス』でも、ウディ・アレンにインスパイアされた曲があったりするが、彼女が何かに「No!!」を突き付けたり糾弾するときの、力の抜け具合が好きだ。日常にあるものとして大袈裟にしな                        い、そのやり口が好きだ。初フジ、熱烈応援!!

開催まであと1ヶ月を切った今年のフジロック。以上のリストを参考にプランを立ててみてはいかがでしょうか。

『FUJI ROCK FESTIVAL'19』
2019年7/26(金)27(土)28(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場

■オフィシャルサイト fujirockfestival.com

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