ロジャー・テイラーを勝手に<お師匠>と呼んでます!──『伝説のドラマー〜ロジャー・テイラー物語』 ロジャーM.高橋イベント・レポート

2019年8月2日、「MUSIC LIFE  特集●ロジャー・テイラー/QUEEN」の発売を記念し、QUEERのドラマー、ロジャーM.高橋氏をゲストに迎えたトークイベント「伝説のドラマー〜ロジャー・テイラー物語」が行われた。当日はトークだけではなく、ドラム実演も加えた立体的なロジャー・テイラー研究となった。


──それでは本日のゲスト、ロジャー・テイラーを心から愛し、トリビュートし続けるドラマー、QUEERのロジャーM.高橋さんをお呼びしたいと思います。

(場内大拍手)

──よろしくお願いいたします、じゃ、まず自己紹介を。

ロジャーM.高橋(以下高橋):よろしくお願いします。ロジャーM.高橋と名乗っていますが、高橋と申します。1974年の「Killer Queen」を聴いて、ガツーンとやられて以来ずっとクイーンが好き。そしてドラムが大好きだったので、ロジャー・テイラーを勝手に<お師匠>と呼んで頑張ってます。
 
【ブラックをベースにピンクのストライプが入ったロジャー・テイラーと同様のジャケット着た高橋氏、市販品はないため製作した特注品とのこと。】
 
──高橋さんは世界中のクイーンのファンやクイーン関連の人たちとネットで繋がっていて、ロジャー・テイラーの周りにいる方とも交流があると聞いていますが、最近ですとどういった方が?

高橋:みなさんもよくご存知のクイーン・トリビュート・バンド、GOD SAVE THE QUEENのドラマーのマティアスとかヴォーカルのパブロとかマネージャーとは仲良くさせてもらっていて、機材や曲順の事とかいつも情報交換をしています。ロジャー・テイラーについては、1976年くらいからご本人のドラム・セットを全部ケアして、改造したり作ったり、最終的にはパーソナル・アシスタントにもなったクリス “クリスタル” テイラーさんとFACEBOOKやメールでやり取りをさせてもらってます、凄く光栄です。世界中のロジャー・ファンがクリスタルさんにドラム・セットのことを訊くと、“ああ、それは俺じゃなくて日本の方に訊け” と言うらしいいので──そんな状態です。

──それくらい信頼されているのは凄いと思いますし、先日発売になった『MUSIC LIFE  特集●ロジャー・テイラー/QUEEN』ではクリスタルさんへの最新インタビューもやっていただいて。

高橋:今まで自分の知りたかったこと、調べていることが、合っているのか違うのか、その答え合わせをしたかったんです。クリスタルさんとは随分前からやり取りはしていても、これまで機材のことは訊かないできたんです。いつも<これ合ってる?><そんなのお前知ってるだろ>といった二行くらいのメールでしたから(笑)。だからインタビューを頼んだらどれくらい答えてくれるのかな──と思いながら考えていたら質問が75個になってしまったんです。

──多い!

高橋:75個の質問は、多いって怒られてもしょうがないかな──と思って送ったら、一週間しないうちに全部の質問に対して克明に書いて送ってきてくれたんです。素晴らしい! それは全部『MUSIC LIFE  特集●ロジャー・テイラー~』に掲載されています。

──ロジャー本人は機材に関しては気にする人?

高橋:全然気にしてないと思います(笑)
 
【ここで高橋さんの友人でロジャーを崇拝するイタリア人のドラム・マニアが自費出版したロジャー・テイラーのドラムに関する本が紹介された。ロジャー本人、前述のクリスタルさん公認の一冊で、高橋さんが監修を担当している。

この後、ロジャー・テイラーのプロフィールをベースにしたトークとなり、出身地、初期のバンド活動などが語られた。】
 

高橋:僕も皆さんと同じように『ミュージック・ライフ』の東郷さんの記事を読み、長谷部さんの写真を見てクイーンを知って、そこから色々な雑誌などで調べてきました。ロジャー・テイラーというのはカッコよくて、無茶苦茶歌が上手くて声も高い、理由は分からないんですけど聖歌隊に入ってソプラノを担当していて、そこで発声とかは磨かれたと思うんです。

──地元のコーンウォールでバンドを組むんですけど、最初はギターでその後にドラム。

高橋: 50年代後期〜60年代初期のバンドの写真を見るとドラムが前に出て、後ろにギターやベースがきちっと並ぶ立ち位置が多いんですね。最初にロジャーがやっていたバンドがカズン・ジャックス(Cousin Jacks)、それからリアクション(Reaction)、この頃にはヴォーカルも兼任していました。絵的にはロジャーがドーンと前に出て女の子がギャーって騒ぐ感じ。ローカルとはいえ大人気だったと思うんです。ですから、その後ブライアン・メイが結成したスマイルからティム・スタッフェルが抜けた後、ヴォーカルとしてフレディ・マーキュリーが入り、最初のベーシストが入りクイーンとなった時、最初にライヴをやったのがロジャーの地元コーンウォールなんですね。そのポスターの絵柄は上半分がロジャーで下に3人の写真。地元でナンバー・ワンの人気者ですからね。

──最初ブライアンとティムがバンドを組んでいて、ドラマーがなかなか定着しなかった。これも有名な話ですが、ブライアンがカレッジの掲示板にメンバー募集の広告を出すんですよね。

高橋:その募集の文言が、「ミッチ・ミッチェルやジンジャー・ベイカー的なドラマーを求む」。ミッチ・ミッチェルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのドラマー、ジンジャー・ベイカーはエリック・クラプトンとクリームで活動した人。ドラマーっていくつかタイプがあって、ドラムは基本的には三角形の底辺を担うパートなんですが、そこをやりつつガンガン攻撃的にアピールしていくタイプと、後ろにずーっと控えているタイプ。ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツとかはさしずめ後者で、ミッチ・ミッチェルは叩きまくって自己主張をしていく前者。で、一方ジンジャー・ベイカーは?っていうと、ブルース・ベースで一発一発の音がいい人。だからブライアンは、ミッチ・ミッチェルみたいなバーンと前に華やかに出て行くタイプで、ジンジャー・ベイカーみたいに一発一発の音がキレイな人──っていう希望を募集に書いたんだと思うんです。ロジャーはザ・フーのキース・ムーンも好きだったという話がありますね、ぶっ壊し屋キース・ムーンのバタバタバタ──とブッ叩くドラミングを確かにロジャーは引き継いでます。でも一番好きなのはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム。ジョンの音を意識しているところはありますね。

──そしていよいよクイーン結成。デビュー・シングルの「Keep Yourself Alive」については東郷編集長もイントロのギターが超カッコ良くて一瞬にして持って行かれたって仰ってますが。

高橋:カッコいいですよね。でも、ギターのリフが続いたかと思ったら、途中でいきなりドラム・ソロが始まって、何を考えてるんだ!って思いましたね。デビュー・シングルですよ、普通あり得ない。最近はPCで音源を加工することができるので、試しに「Keep Yourself 〜」のドラム・パートを抜き出してつないでみたんです。そうすると結構普通の曲になっちゃう。僕の中ではこのスタジオ盤のドラム・ソロは短いんです、ライヴは長いんですけど。

──ライヴによっても長さは違いますよね、高橋さんのオススメは?

高橋:ドラム・ソロだけで言うと、僕は『ライヴ・キラーズ』。リズムの連打の拍の裏にコン!って高い音を入れるのがロジャーの癖で、初期はこれをカウ・ベルでやってたんですね。それが『ライヴ・キラーズ』の頃は、カン!っていう高音が鳴るロート・タムを右側に二個並べていて、これを叩く。もうロジャー印ですね。

──ロジャーがクイーン・サウンドに貢献している…という点については?

高橋:クイーンが生み出す楽曲を根底から支える役割とは何か?をもの凄く真面目に考えているんですね。この曲にはこの音が絶対に必要だって叩いてみて、足りないなと思ったらもう一回叩いて重ねて。それを三つ、四つとオーヴァーダブしていって、楽曲の土台をしっかり作りながら彩りも加えているんです。だから色んなミュージシャンがクイーンのトリビュート・アルバムを作っても、誰がやっても絶対その音にはならない。音に拘って、楽曲に拘って、一つ一つを組み立てていくという役割をロジャーは担ってるんです。一般的なバンドのドラマーは、レコーディングのとき一番最初にスタジオに入ってリズム録りをして、そこにベースを加えギター、キーボードを加え…という流れなので、後半になるとその場にいなくてもよくなる。だけどロジャーは違うんです。必ずスタジオにいて、曲がどうなっていくかを全部見て聴いて、アイデアがあれば加え、多過ぎれば減らす。そういった楽曲が仕上がってく最後のところまで必ず付き添ってる真面目な人なんです。

──それくらいロジャーはクイーンのサウンドに貢献している。

高橋:一発叩いただけでもこの人の音だって分かりますから。

──では、ここで高橋さんに選んでいただいた「ロジャー・テイラーの拘りが凝縮されている曲」を聴こうと思うんですけど。

高橋:ギターを重ねるブライアンは有名ですけど、ロジャーもドラムをいっぱい重ねてるんです。でもミックス・ダウンしたときにそれが聞こえない曲もあって、いわば隠し味的な感じで入ってる。それを、<本当はこれを入れてるんだよ、聴いてみて>と「One Vision」のB面(カップリング)で出したのが「Blurred  Vision」というリミックス・トラック。Blurred(ブラード)というのは<ぼやけた>という意味です。これを聴くと何をどのタイミングでどう重ねていったか全部分かるんです、是非聴いてください。今はアナログ盤でしか手に入らないけれど、YouTube で聴けるかもしれません。

【ここで「One Vision」のB面曲、「Biurred Vision」が流される。音が増えたり変わる度に、高橋さんが、“ここはドラムの枠を叩いて、これは小さいシンバル、ここは低い方のシモンズ・ドラムで……ここからは全部”と解説。】
 
高橋:アルバムの音ともミックスの成分が違っていて、聴いているとそれこそぼやけて目眩がする…なんだコレ?って音になっています。ロジャーがソロでやりそうですね、ここまでやったら、フレディは “もういいいよ、もういいよ、これ要らない” とか言いそうなんですが、それを “いや、これはここに必要なんだよ” ってロジャーが作った曲なんです。
 
【この後ステージ脇にセッティングされたドラム・セットを使って、具体的なドラミングの解説が始まった。】
 
高橋:このセットは、皆さんが大好きな、フレディが黄色いジャケットを着てる1986年の「マジック・ツアー」で使われた、ロジャーが唯一日本製を使ったYAMAHAのドラム・セットです。なぜこれを使ったのかは世界中のロジャー・テイラー・マニアの謎なんですけど。この間 “クリスタル” テイラーさんに訊いたら、“俺も知らないけれど、届いたんだよ” って言ってました(笑)。このセットはその時しか使ってないんです。ここにあるのはウエンブリー公演の時も使っていたセットと年代もシリアル番号も近いものです。奥の部屋にセッティングしてあるのは、皆さんご存知の「ライヴ・エイド」も含む1984年からの「ザ・ワークス」のツアーで使われたセットと年代もシリアル番号も近いものです。
  クイーンのステージは中央にロジャーのドラムがあって、左右対称が凄く奇麗にレイアウトされ、その前を三人のメンバーが動いてステージングをするんですけど、その中心にあるクイーンの象徴がバス・ドラムのヘッドです。
 
【この日、ステージ脇にはクイーンの年代別のバスドラ・ヘッドが飾られており、それぞれの使用されたツアーや時期、なぜそのヘッドになったか…が解説され、人気のヘッド模様はどれか?も拍手で選ばれた。(79年「クレイジー・ツアー」から使用された<ロジャーの顔アップ・ヘッド>)
 
ここでドラム席に移動した高橋さんは、実際に演奏しながら、プレイ中のロジャーのリズム・キープの特徴、癖(歌うドラマーならではの呼吸法)や、独特のタムのチューニング(音により深みが出る張り方)、強い手首としなやかで強靭且つ器用な足首の動き、個性的なシンバルの叩き方、身体の向き、椅子の高さ、客席からの視点を考慮した機材配置、PA等の変化によるツアー毎の身体の向き、スティックを回すなどカッコ良いステージ・アクション、エンディングのキメ、ドラムを使用せずに録音した「We Will Rock You」のライヴでの叩き方などを詳細に解説。

さらに『ライヴ・アット・ウェンブリー』からの「Crazy Little Thing Called Love」に合わせて、師匠ロジャー・テイラーのアクションや音をカヴァーした演奏を数小節披露。】
 

──本当に分かりやすい説明で、クイーンを聴く時の新たな楽しみが増えたと思います。(場内大拍手)じゃぁ最後にボーナス・トラック(笑)、名曲中の名曲「Bohemian Rhapsody」のエンディングを。

高橋:最後の歌詞の後でロジャーが銅鑼を叩くんですが、ライヴとかを見ると、どうもタイミングが合ってない時もあったりして。モニターはもちろんあるんですけど、これはただ単純にフレディの最後の歌が聞こえないからなんです。何故かというと、銅鑼は一発だけジャ〜ンと鳴らせばいいわけではなく、ライヴの時は少しずつ叩いていって最後にダァ〜ンと叩くとバァァァ〜ン!!!っていう音になる。その少しずつ叩いてる最中の音が身体にも共振して凄い音の渦になるともうモニターは聞こえない、仕方がないから状況を見て最後の一打を叩くしかないんですね。

──じゃぁ、せっかくなんで隣の部屋で銅鑼を体験しませんか。

高橋:因みに本家が使っている銅鑼は、60インチっていう1.5メートル位の直径の巨大なものなんですが、僕が使っているのは38インチ(1メートル弱)で、少し小さいのですが音の雰囲気は分かると思います。
 
【この後、別室に移動して<少しずつ叩いていって最後にダァ〜ンと叩く>銅鑼が実演された。】
 
高橋:こんな音がします

──ロジャーM.高橋さんのトークイベントは以上になります、今日はありがとうございました。
(場内大拍手)
 

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