ポリス、映像作品『アラウンド・ザ・ワールド』初ブルーレイ&DVD化記念・短期集中連載「今だから語るポリス、1980年の日本ツアー」Part 2

全3回にわたって短期集中連載としてお送りしております「今だから語るポリス、1980年の日本ツアー」。スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランド──ポリスの3人が1979〜1980年にかけて初めて行なったワールド・ツアーの様子を収めたドキュメンタリー『アラウンド・ザ・ワールド』が5月20日に発売されました。それを記念しての、当時日本の所属レコード会社だったアルファレコードの肥田慶子氏と、専属カメラマンとして同行した写真家の浅沼ワタル氏というポリス発来日ツアーの舞台裏に居合わせたお二人による、1980年の来日公演のすべてを語り尽くす対談、その第2回です。

「(“ソー・ロンリー” のビデオ撮影は)急に決まったのよ。地下鉄、近くなら三田駅だとなって」

肥田慶子

肥田慶子(ひだ・けいこ)当時ポリスが所属した日本のレコード会社アルファレコードA&M部の社員。

「パルコ壁面の『白いレガッタ』広告のことを伝えたら、バンドが率先して「行こう、行こう」となって」

浅沼ワタル

浅沼ワタル (あさぬま・わたる)写真家。当時ポリスの専属カメラマンとしてワールド・ツアーに同行。エリック・クラプトン『スローハンド』『Live At 武道館』ジャケットなども撮影。

──東京・中野サンプラザの2公演(2月14日、2月15日)を終えて、2月17日が渋谷公会堂です。リハーサルの合間に、渋谷パルコ前に浅沼さんが三人を連れ出します。
浅沼ワタル(以下浅沼):壁(パルコ壁面の『白いレガッタ』広告)のことを伝えたら、バンドが率先して「行こう、行こう」となって。
肥田慶子(以下肥田): フットワークはいい人たちだからね。
浅沼:若いからね。当時ね。

──スティングが28歳です。
肥田:あなたに言われたらどこにでも行ったじゃない。三人とも。
浅沼:マネージャーの言うこと聞かないけど俺の言うことはね。
肥田 :BBCのクルーもあなたのことをうらやましがっていた。
──そして渋谷公会堂に戻って公演ですね。
肥田:コンサートをゆっくり見た記憶がないの。見る余裕がない。
浅沼:スタッフとして付いているからね。

──新幹線で名古屋から新大阪に移動するシーンがこの映像作品『アラウンド・ザ・ワールド』にあります。名古屋公演(2月18日)の翌日、まずは名古屋国際ホテルから車で名古屋駅に移動しました。
浅沼:駅のホームで時間があったんだよね。

──作品中に、三人がホーム上にいたお坊さんを珍しがって囲んでいるシーンが。スチュワートが「彼は僕よりずっと慎ましい人物だよね。僕は傲慢だから」と軽口を飛ばしています。
浅沼:列車を待ってるのが暇でさ。面白いことやろうって考えて僕が新聞を買って渡したら逆さまに持って読んでる。

──車内では、名古屋名物のういろうを買って、浅沼さんが「切るんだよ。切って食べる」と教えています。
浅沼:スチュワートが買うって言うからやめろって言ったの、きっと口に合わないからって。けれど聞かなくて。ほとんど食べられなかった。
──この作品には「ソー・ロンリー」のミュージック・ビデオがまるごと収録されています。この1980年の日本滞在時に、東京の地下鉄の駅で、2月22日に撮影されました。
浅沼:僕は撮影を知らなかった。知ってたら付いていたもの。その日の午前中に僕はホテルからシンコー・ミュージックに行ってフィルムの出し入れをしていて、撮影に立ち会っていない。
肥田:急に決まったのよ。地下鉄、近くなら三田駅だとなって。

──東京、名古屋、大阪、京都の全公演を終え、三田駅から近い白金の都ホテルに滞在していました。
浅沼:撮影許可取ってないよね。
肥田:取ってない。もう私はドキドキドキドキしながら。だって歩き回るんだもん。電車の中を。他のお客さんがいるのに。
浅沼:スティングがウォーキートーキー(無線機)を持ってね 。ウドー(音楽事務所)さんから借りたもの。
肥田:慌てて切符を買って、改札を通して。

──スティングが地下鉄に乗り込むとき車両のドアの横に「Keisei」の文字が見えます。浅草線と京成電鉄の直通ですね。今作の宣伝用スチル写真も、地下鉄駅での三人の姿です。「ソー・ロンリー」は1978年の曲ですが、シングル再発売のためにこのタイミングでBBCのクルーを活用してのミュージック・ビデオ撮影となりました。
浅沼:香港でも撮ってるよね?
──東京の地下鉄と、香港の街で撮影したものを組み合わせてMVが完成しています。
『アラウンド・ザ・ワールド』より
──日本滞在でのハイライトの一つは相撲部屋訪問です。地下鉄が2月22日で、相撲は離日前日の2月23日と思われます。
浅沼:大山部屋 (東京都墨田区)だよね。もうなくなってしまったけれど。朝6時くらいに都ホテルを出たんだよ 。タクシー2台くらいで行ったんだよね。

──相撲のシーンはこの映像作品で大きく扱われています。浅沼さんは動画のカメラを持って映り込んでいます。
浅沼:アンディの8mm(カメラ)。相撲部屋に行って、どんな風景なのか見るという話だった。スモウレスラーを見てみたいって感じで。
肥田:そしたら、まわしをすることになって。
浅沼: 三人でもめて、誰がする、俺いやだ、ってなって、最後アンディがやるってなった。
肥田:脱いだらきゃしゃな人で。スチュワートかスティングなら身体がしっかりしてるのに。
    
──映像では畳の部屋で、三人が部屋のちゃんこ鍋を食べています。 肥田さんも畳に座ってメンバーに説明していらっしゃいます。BBCが番組のために相撲を発案したんでしょうか?
浅沼:誰かが肥田さんに、相撲を見たいって頼んだんだよ。それで肥田さんが手配してくれた。
肥田:そうでしたっけ?
浅沼: けっこう相撲部屋に断られてた。
肥田: 断られたのは覚えてます。
浅沼: 最後に大山部屋に電話した。確か僕も一緒にいたと思うんだよ。

──アルファのオフィスから電話したんですか?
浅沼:ホテルで。

──来日前に予定を組んだのかと。そんな直前にやってるんですか?
肥田:そうなの。地下鉄に行く時だって思いつきだもの。その時の。急に「明日」とか。
浅沼:「今」とか。
浅沼: 相撲と言い出したのはアンディ? マイルス(・コープランド)ではないね。BBCかも。
肥田: かおるちゃんからだったかも。 西山かおるというアルファ・レコードの社員がクルーについていたから。

──あいだに一人入っているから、誰のアイデアだったかの記憶がないのかもしれないですね。
浅沼:相撲部屋にはかおるちゃんは入ってない。肥田さんは中で通訳をしている。 かおるちゃんは外で車の手配なんかやっていたのかも。

──相撲部屋の外で、スティングとアンディが持っているコダックのカメラバッグが映っています(下画像、スティングが左手で持っているバッグ。1980年2月21日の京都観光)。
浅沼:ヨドバシカメラで僕が店員に頼んで4つもらったの。アン・ナイチンゲール(BBCのレポーター。下画像、スティングの隣の女性)も一緒に行ったんだ、ヨドバシに。3人の分と、アン・ナイチンゲールにもあげたら、アンがすごく喜んでね。
肥田:それは喜ぶでしょう。
浅沼:3人は移動中もずっとそれ使ってたもんね。カメラが入るじゃない。

──力士との対戦で全く歯が立たなかったアンディをマイルスが慰めて、「グッド・トライだった。また来年な」という場面があります。この11ヵ月後の1981年1月には会場が東京・日本武道館などに大きくなるジャパン・ツアーのために、ポリスは戻ってきます。

1980年10月にリリースされたアルバム『ゼニヤッタ・モンダッタ』の録音の一部は、この1980年2月に東京で行われていました(続く)。
 
構成:大島隆義

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◆商品情報
ポリス『アラウンド・ザ・ワールド(レストア&エクスパンデッド)』
The Police/Around The World Restored & Expanded

2022年5月20日発売

・Blu-ray+CD:商品番号UIXY-15046 / ¥6,600円(税込)
・DVD+CD:商品番号UIBY-15125 / ¥5,500円(税込)

*アンディ・サマーズ(G)によるライナーノーツ掲載(日本盤は日本語訳付)
*日本盤のみ日本語字幕付、SHM-CD仕様

お求めはこちら
■DVD & BLU-RAY
※下記の曲の演奏シーンあり。

Next To You/ネクスト・トゥ・ユー
Walking On The Moon/ウォーキング・オン・ザ・ムーン
Born In The 50’s/俺達の世界
So Lonely/ソー・ロンリー
Man In A Suitcase/スーツケースの流れ者
Can’t Stand Losing You/キャント・スタンド・ルージング・ユー
Bring On The Night/ブリング・オン・ザ・ナイト
Canary In A Coalmine/カナリアの悲劇
Voices Inside My Head/果てなき妄想
When The World Is Running Down, You Make The Best Of What’s Still Around/君がなすべきこと
Shadows In The Rain/シャドウズ・イン・ザ・レイン
Don’t Stand So Close To Me/高校教師
Truth Hits Everybody/トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ
Roxanne/ロクサーヌ
 
※ボーナス・フィーチャーズ(完全演奏)
Walking On The Moon(Live from Kyoto)/ウォーキング・オン・ザ・ムーン(ライヴ・フロム・京都)
Next To You(Live from Kyoto)/ネクスト・トゥ・ユー(ライヴ・フロム・京都)
Message In A Bottle(Live from Hong Kong)/孤独のメッセージ(ライヴ・フロム・香港)
Born In The 50’s(Live from Hong Kong)/俺達の世界(ライヴ・フロム・香港)
■CD
1. Walking On The Moon - Live from Kyoto/ウォーキング・オン・ザ・ムーン(ライヴ・フロム・京都)
2. Next To You – Live from Kyoto/ネクスト・トゥ・ユー(ライヴ・フロム・京都)
3. Deathwish - Live from Kyoto/死の誘惑(ライヴ・フロム・京都)
4. So Lonely - Live from Kyoto/ソー・ロンリー(ライヴ・フロム・京都)
5. Can’t Stand Losing You - Live from Kyoto/キャント・スタンド・ルージング・ユー(ライヴ・フロム・京都)
6. Truth Hits Everybody - Live from Kyoto/トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ(ライヴ・フロム・京都)
7. Visions Of The Night – Live from Hammersmith/ヴィジョンズ・オブ・ザ・ナイト(ライヴ・フロム・ハマースミス)
8. Roxanne – Live from Hammersmith/ロクサーヌ(ライヴ・フロム・ハマースミス)
9. Intro/イントロ
10. Born In The 50’s – Live from Hong Kong/俺達の世界(ライヴ・フロム・香港)
11. Message In A Bottle – Live from Hong Kong/孤独のメッセージ(ライヴ・フロム・香港)
12. Bring On The Night – Live from Hong Kong/ブリング・オン・ザ・ナイト(ライヴ・フロム・香港)
商品詳細
スティング
『ブルー・タートルの夢』


Amazon Music・MP3(1985/6/1)¥1,350
CD(2011/11/9)¥2,028
商品情報
スティング
『マイ・ソングス』


Amazon Music・MP3(2019/5/24)¥2,210(Deluxe)
2CDs(2019/10/4)¥3,520(スペシャル・エディション)

 
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