森田編集長の “音楽生活暦”

森田敏文(ミュージック・ライフ・クラブ編集長)

第6回:最近のイチオシ、ザ・ブラック・キーズ『ドロップアウト・ブギー』

ミュージック・ライフ・クラブ編集長・森田敏文による連載・第6回。月いちペースでミュージック・ライフ的な洋楽のアーティストや作品、業界やシーンに関するあれこれなど。「ミュージックなライフのカレンダーへ」、徒然なるままに語るその月の談話形式の雑記としてお送りします。

第6回目のテーマは、森田編集長の「最近のイチオシ」ザ・ブラック・キーズについて。2001年デビュー、42歳と43歳の男性二人組ですが、ウィキペディアのヘッドラインが端的にして簡潔で分かりやすかったため引用させていただきますと──「ザ・ブラック・キーズ (The Black Keys)は、アメリカ・オハイオ州アクロン出身の2人組ロックバンド。ガレージテイストのLo-Fiなサウンドを特徴とする。2013年現在までに、グラミー賞を7部門で受賞している」、と。この先のご説明は、は編集長自らの言葉でご説明いただきます!

参考:検索結果「ザ・ブラック・キーズ」

●最近のイチオシ、ザ・ブラック・キーズ『ドロップアウト・ブギー』

◆ ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズのソロ・アルバムは、細野晴臣に由来!? ◆

今週一番驚いたのはワン・ダイレクションのハリー・スタイルズのソロ・アルバム。そのタイトル『Harry’s House』。これは、どうも細野晴臣の名盤と言われるソロ第一作『Hosono House』(1973年)からタイトルをいただいたそうで、これには驚きました。ちょうど私が、70年代初頭は邦楽で “はっぴいえんど” を知り、細野さんのこのアルバムも当時リアルタイムで聴いていたので、何でそんな事が起きるの?と、とんでもなく不思議でした。どうやらハリー・スタイルズがその細野晴臣のアルバムを聴いて、とても感動したという事情があったらしい。意外というか、まさか、という感じでしたね。なかなか、ハリー・スタイルズと細野晴臣が結びつかないけれども、細野晴臣はここ数年で、アメリカで再評価というか初めて知られ、発見されたようなものなんですね。細野さんのソロ・アルバムがアメリカでちゃんとリリースされるようになって、その実力が認知されその流れでハリーも聴いたのではないかと思います。ハリーのアルバムも実際良い出来ですし。既に世界中で爆発的に売れていますが、こちらもオススメしておきます。
商品情報
ハリー・スタイルズ 
『ハリーズ・ハウス』

Amazon Music・MP3(2022/5/20)¥2,100
CD(2022/6/8)¥2,640
商品情報
細野晴臣
『Hosono House』

Amazon Music・MP3(1973/5/25)¥1,850
CD(2012/10/3)¥1,354
◆ ブラック・キーズ──ブルース・ベースのロック、ロック・オリエンテッドなブルース ◆

今回は、ザ・ブラック・キーズについて。ザ・ホワイト・ストライプスもそうでしたけど、彼らもダン・オーバック(Vo, G)と、パトリック・カーニー(Ds)というドラム&ギターの二人組。アクロン出身なのでディーヴォと同郷というのも可笑しいですが、既に20年選手で、今回出した新作『ドロップアウト・ブギー』は11作目。初心に帰ったような内容で、ブルース・ベースでのロックなんだけど、もうちょっとロウファイ(Lo-Fi)な感じで。そういった意味で言えば、ZZトップが好きな人も聴ければ、もう一方でベック(BECK)のちょっと崩れたブルージーなものが好きな人も聴けるし、色んな人を取り込める要素を持っていますね。何しろどの曲も良いフックを持っていて、地味に流れない所が必ずあって、ちゃんと覚えられるメロディーラインを持たせている。音の録り方が時代感はきっちり出ているけど、今回のアルバムはたくさんの人に聴かれて、ぜひ日本でもライヴが出来るようになって欲しい。

彼らはそもそものレーベルが、ノンサッチ・レコーズ。そこはエレクトラを作ったジャック・ホルツマンという人が立ち上げて、元々はワーナー・グループでクラシックをやっていた所。その後、民族音楽とか、ジャズとかリリースしてどっちかと言えば地味なレーベルでした。それが2000年代に入ってからワーナー・グループの再編成で、ロック・アーティストの中でもあまり予算が与えられていない、もしくは露出の仕方がポップや、メインストリームのロックとは違うよね、というアーティスト達を吸収し、その中にはジョニ・ミッチェルやライ・クーダー、ランディ・ニューマン、ウィルコなども含まれて、その後ノンサッチからリリースされて傑作も生まれていった。ザ・ブラック・キーズもノンサッチからリリースされるようになり、名盤とされるものを出していった経緯があります。昨年出した『デルタ・クリーム』というのはブルースのカヴァー・アルバムだったのでマニア向け、通好みだったから、今回の11作目は全部オリジナルで、しかもZZトップのビリー・ギボンズがゲスト参加していたり、非常に分かりやすいし、出来が凄く良い。私も今年のベスト・アルバムの1枚にしてもいいかなと思ってます。ぜひとも、ミュージック・ライフ・クラブの人たちに聴いてもらいたいですね。
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ザ・ブラック・キーズ
『ドロップアウト・ブギー』


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◆ 二人はミュージシャンズ・ミュージシャン。しかも片方はプロデューサーとしても超一流 ◆

彼らはアメリカのブルース、カントリー、ソウル、ロックンロール的な要素からすべてをぶち込んだ上で、時代の空気感を取り込めている、いわゆる王道的な音だと思います。そういう形になると、普通は曲にフックが無くて面白くないパターンが結構ありますが、彼らは曲を作るセンスは素晴らしい。見た目の派手さは無いので、アメリカでの人気度を考えると日本とアメリカとの温度差は感じますね。何年かしてくれば人気が上がってくるとは思いますけど。

彼らはミュージシャンズ・ミュージシャンで、ダン・オーバックはプロデューサーとしても超一流。2019年にはヨラという黒人の女性シンガーを手掛けて話題になりました。そういえばドクター・ジョンが、ニューオリンズのジャズ・ブルースの地味な方向に傾倒していったのを、もう一回ヴゥードゥー・ロックに戻して作った2012年の傑作アルバム『ロックト・ダウン』も彼のプロデュースでした。彼はコンポーザー、プロデューサーなどでたくさんのアルバムに携わっています。

2021年にドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズというバンドのドラマーでヴォーカルもとるアーロン・フレイザー(下写真、左から二人め)の初ソロ・アルバムのプロデュースもダン・オーバック。このアルバムもとても素晴らしい。アーロンはファルセット・ヴォーカルなんだけど、ソウルの色々なヴァリエーションを聴かせてくれる。曲もアーロンとダンが一緒に作っていたりして。とにかく良いアルバムなのでビックリした。それもあって、アーロンのバンドのドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズにも注目してたら、今回7月に来日公演が決まったと。古き良きと言ってもいいと思いますが、70年代ソウルとかの雰囲気が味わえるので、これを聞き逃すのは勿体ないと思います。

今回は私のイチオシをという事で。


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