クイーン研究家・いしづみたかゆきのクイーンとプラチナ・ジュビリーを訪ねて5,000マイル![2]6月4日(土)バッキンガム宮殿にて

クイーン研究家としてMLCでもおなじみ石角隆行(いしづみたかゆき)氏による、クイーンのツアー+エリザベス女王プラチナ・ジュビリー観戦記 in 英国・第2回! 「いしづみたかゆきの英国徒然漫遊紀行」と題して先週(6月23日MLCニュース参照)から4回にわたって連載としてお送りしている、今回はその第2回。いよいよプラチナ・ジュビリー・コンサートです。

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MUSIC・ 2022.06.23
クイーン新連載! クイーン研究家・いしづみたかゆきのクイーンとプラチナ・ジュビリーを訪ねて5,000マイル![1]

クイーンとプラチナ・ジュビリーを訪ねて5000マイル!
いしづみたかゆきの英国徒然漫遊紀行②

遂にロンドンに帰還! プラチナ・ジュビリーコンサートにQAL登場!!

石角隆行(クイーン研究家)

クイーン+アダム・ランバート(以下QAL)は6月4日(土)にバッキンガム宮殿で開催されたエリザベス女王戴冠70周年祝賀コンサート「The Platinum Party at the Palace」(以下、プラチナ・ジュビリーコンサートと記す)に出演しました。世界中で大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』の公開から4年。遂にロンドン市民の前にQALが還ってきました。

さて、プラチナ・ジュビリーコンサートのレポートに入る前に、クイーンとこれまでのジュビリー・コンサートとの関わりを、ちょっとおさらいしておきましょう。

シルヴァー・ジュビリー(1977)とゴールデン・ジュビリー(2002)のクイーン

時は遡って1977年。この年は戴冠25周年のシルヴァー・ジュビリーイヤー。同年1月から始まった「A Day at the Races」ワールド・ツアーの最終公演地となったのが、6月6日(月)と7日(火)のロンドンのアールズ・コート。折しもシルヴァー・ジュビリー・ウイークと重なっていたこともあり、クイーンは女王の王冠を模した “Crown Lighting Rig” と呼ばれる高さ26フィート(約8m)、幅54フィート(約16m)の巨大な照明装置をこの日のコンサートで初披露しました。コンサートのオープニングでその巨大な “王冠” が上昇すると、その下からメンバーが登場して演奏開始という演出で幕を開け、エンディングはお客さんと一緒に「God save the Queen」で締め、女王のシルヴァー・ジュビリーをお祝いしました。まさにクイーンからクイーンに向けたセレブレーション・コンサートでした。この公演の収益はシルヴァー・ジュビリー基金に寄付しています。
続いては2002年、戴冠50周年のゴールデン・ジュビリー。クイーンはバッキンガム宮殿で行なわれた記念コンサートに参加しました。集まった観客の度肝を抜いたのはオープニング。なんとブライアンが宮殿の屋上から「God save the Queen」を愛機レッド・スペシャルで弾いたのです。これまでのコンサートではエンディングにHD音源を流していましたので、クイーンのコンサート史上、初めてとなる同曲の生演奏でした。さらにコンサートの中盤にも再登場。この時点ではまだポール・ロジャースとのコラボレーションも始まっていませんからヴォーカリストは不在。これを埋めたのは、同年5月にウェスト・エンドのドミニオン劇場で始まったミュージカル『WE WILL ROCK YOU』のキャストの面々。「Radio Ga Ga」「ウィ・ウィル・ロック・ユー」では彼らと共に、「伝説のチャンピオン」では俳優/歌手のウィル・ヤングが客演。圧巻は「ボヘミアン・ラプソディ」。リード・ヴォーカルはミュージカルのプリンシパルの3人が交互に努め、冒頭のコーラスと中間のオペラ・パートを全キャストで再現。オープニングの「God save the Queen」に続き、こちらもクイーンのコンサート史上初となる「ボヘミアン・ラプソディ」のフル・コンプ演奏を実現させました。


ブライアンによる屋上での国歌演奏は、アーカイヴ・映像シリーズ「Queen The Greatest」のVol.47でも取り上げられています。

開演前、バッキンガム宮殿裏ではQALのリハーサル音漏れに遭遇!

コンサート当日(6月4日)の15時ごろ、地下鉄ハイド・パーク・コーナー近くにあるハード・ロック・カフェに居ました。そこはクイーンのゴールド・ディスクやブライアンの衣装が展示されており、ファンが必ず訪れるスポットのひとつ。店内のメモリアル・グッズを堪能して外に出ると、自動車の走行音の向こうから、「伝説のチャンピオン」が聞こえてきました。あれ?、この声はアダム・ランバート??? 続けて聞こえてきたのは「ドント・ストップ・ミー・ナウ」に「ウィ・ウイル・ロック・ユー」。アプリで現在地を確認すると、ここはバッキンガム宮殿の真裏。くしくもQALのリハーサルに立ち会うことが出来たんです! 残念ながらプラチナ・ジュビリー・コンサートのチケットは持ってなかったのですが、この場所でこれだけ聞こえるのなら、宮殿に近いところなら、もっと漏れ音が聞けるはず! そう思っていそいそと出かけました、19時30分ごろバッキンガム宮殿に。入場ゲートに着くと、そこには「Non Ticket Holdersはこちら→」という標識があるではありませんか。人の流れを追っかけて歩いていくとセント・ジェイムズ・パークに入りました。公園の中には巨大なスクリーンが置かれています! なんと、ここはパブリック・ヴューイング会場だったのです。さっそく好位置をキープし開演を待っていると、次から次へと人が入ってきます。気がつけば身体を動かせないぐらい会場は埋まってきました。場内を見渡すと数万人はいそうです。後方にはフード&ドリンクのブースが並び、さながらフェス会場のようです。みなさん、ビールを飲みながら開演をいまかいまかと待っています。事前のアナウンスではスタートが19時30分になってたんですが、いっこうに始まる気配がない。準備に時間がかかって開演が押してるんだろうと、こちらも気長に待ってました。

バッキンガム宮殿内のヴィクトリア女王碑。この前にステージが組まれた
セント・ジェーム・パーク内のパブリック・ヴューイング会場
開演まではスクリーンにはイベントのロゴが映し出されています
セント・ジェイムズ・パークにはメイン会場以外にもスクリーンを設置
ウィ・ウイル・ロック・ユーに女王陛下も参加!? プラチナ・ジュビリーコンサート

20時を過ぎるとスクリーンにはバッキンガム宮殿の特設ステージが映し出されました。続いて画面は宮殿内に。テーブルを挟んで左手にエリザベス女王。右手にはくまのパディントンが座り、お茶会の真っ最中! ロンドン五輪の開会式では007/ジェイムズ・ボンドと共演し世界中を驚かせましたが、今度はくまのパディントン! なんとも懐の深いお方です、女王陛下は。こんなお茶目なことをやってくれることが、イギリスの国民に愛されている理由なんだと思いました。

やがてステージからは、英国海兵隊吹奏部の太鼓団が力強く奏でる「ウィ・ウイル・ロック・ユー」のリズムが流れてきました。女王もこれに合わせ、ティーカップの縁をスプーンで叩いているではありませんか! クイーンとクイーンの粋なコラボに、場内に集まったお客さんも大喜びで声援を送ります。そして、大きな歓声に迎えられステージ中央にゆっくりと歩み出てきたのはアダム・ランバート。プラチナ・ジュビリー・コンサートという晴れの舞台に凛として表れる様は神々しさすら感じます。広い会場に向けて、これから始まる世紀のパーティを讃えるよう、高らかに歌います。いよいよギター・ソロ・パート。20年前のゴールデン・ジュビリーではバッキンガム宮殿の屋上に立っていましたが、今回ブライアンはいずこに?と思っていたら、ステージ上方の金色に輝くヴィクトリア女王の彫像の前に降臨。レッド・スペシャルが唸りを上げました。これ以上ないという派手な登場で、オープニングから会場は異様なまでの盛り上がりを見せています。

いつもなら次は「伝説のチャンピオン」ですが、演奏されたのは意外にも「ドント・ストップ・ミー・ナウ!」。映画のエンディングに使われたということでの選曲でしょうが、実はこの曲、2021年2月に英国内で実施されたアンケート “Most motivational song of all time(もっともやる気にさせてくれる曲)” で1位を獲っている曲でもあります。つまり、この時点でイギリス人をもっとも高揚させる曲だったのです。それもあってか冒頭から全員が大きな声で歌います。サビに入る直前、アダム・ランバートは間合いをとり十分に溜めてからコーラス・パートに突入。ここでオーディエンスも我慢していたのを一気に弾けさせるように大爆発! 身体を大きく揺すったり、その場でジャンプしたりと大騒ぎ! 場内は地響きを建てるように揺れています。みんながみんな、ニコニコして歌い、本当に楽しそう。「ドント・ストップ・ミー・ナウ!」がいかにイギリスで愛されている曲だというのがよくわかりました。クイーンの長い歴史の中でも「WWRY」と「チャンピオン」の間に別の曲を挟んだのは、これまで1回だけ。1986年マジック・ツアーで「Friends will be Friends」を演奏した以来でしたが、この盛り上がりを見てると、敢えて、この曲を挟んだ意図もよくわかりました。

熱過ぎるぐらいヒートアップした会場に向け、ラストに演奏されたのは、もちろん「伝説のチャンピオン」。もはやイギリス第二の国歌と言ってもいいぐらい、皆さんで大合唱。サビではユニオン・ジャックの旗を大きく掲げながら、左右への大きなウェーブでプラチナ・ジュビリーを讃えます。面白いのはこのウェーブの速度。日本だと腕をゆっくりと振りますが、こちらでは自動車の高速ワイパーか!と突っ込みたくなる程の速さ。これには大いに戸惑いました(笑)。

3曲12分弱の短い時間ではありましたが、プラチナ・ジュビリー・コンサートのオープニングという重責を果たしきったQALの圧巻のパフォーマンスでした。また、クイーンのヴォーカリストとして、アダム・ランバートが地元ですっかり受け入れられていることも体感できました。何より、イギリス人はクイーン(女王陛下)とクイーンが大好きなんだという事を実感した一夜でした。
ユニオンジャックの旗を降って声援を送ります
パブリック・ヴューイング会場はたいへんな盛り上がり
翌朝の朝刊1面トップはQAL
以下、中面記事でもQALをTOP報道
プラチナジュビリー・コンサートには他にもデュラン・デュランやロッド・スチュワート、エルトン・ジョン(VTR出演)、アリシア・キーズにダイアナ・ロスといった錚々たるミュージシャンが出演はしているのですが、やはりオープニングでのクイーンのパフォーマンスが鮮烈だったよう。人々の記憶に残る名演と言っても良いのでしょう。翌日発行の新聞各紙の一面トップは軒並みクイーンでしたから。

このコンサートの模様はBBC Oneで生中継され、瞬間最高視聴者は1,340万人にも及び、BBCの2022年度の最高視聴者数を記録したそうです。イギリスの人口は約6700万人ですから国民の5人にひとりは視ていたことになります。やはり注目度が高い催し物だったのですね。

次回はいよいよラプソディ・ツアー最初のロンドン公演。6月5日(日)O2アリーナの模様をレポートします。今しばらくお付き合いください。
■石角隆行の著作
クイーン 誇り高き闘い

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ジャッキー・スミス/ジム・ジェンキンズ(著)
田村亜紀(訳)
クイーン 輝ける日々の記憶 浅沼ワタル写真集

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