【連載特集:ジャパン】全5回をスタート! 初回はスティーヴ・ジャンセン来日独占インタヴュー

ミュージック・ライフ・クラブでは、4月にEXIT NORTHで来日したスティーヴ・ジャンセンの独占取材に成功。それを契機に今月【連載特集・ジャパン】を全5回にわたってお送りします。

手始めにスティーヴ・ジャンセンの最新インタヴューを2回に分け、まずは今回その〈前編〉をお届け(〈後編〉は13日[木]公開)。インタヴュアーにはMLCではおなじみ、カメラマンにしてスティーヴの旧友・浅沼ワタル氏をお招きしました。30年来の友人同士によるほっこりするやりとり、お楽しみください。

また以降は、発売中の書籍からの引用で構成した「解散後〜再結成」のエピソードやML写真館、当時の『ミュージック・ライフ』誌面からのご紹介などをお送りする予定です。ファンの皆様、どうぞお楽しみに!

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【連載特集・ジャパン】

EXIT NORTHで来日したスティーヴ・ジャンセン・インタヴュー by 浅沼ワタル〈前編〉

インタヴュー◉浅沼ワタル 協力◉田村亜紀 取材協力◉ビルボードライブ
2023年4月22日(土)東京・恵比寿

元ジャパンのスティーヴ・ジャンセンは、現在EXIT NORTHというグループのドラマーとして活動中であり、これまでにも公演のために来日していることから、ご覧になったことがある方も少なくないはず。そして再びEXIT NORTHとしてこの4月に来日公演が決まり、春先に取材のオファーをしたところ快諾が! 

そしてインタヴュアーには、ご本人たっての希望もあって浅沼ワタル氏に依頼。浅沼氏は、70〜80年代にかけて英国でミュージシャンの写真を撮り続け、グラビアに記事にと多数『ミュージック・ライフ』にも写真をご提供くださっており、MLCユーザーのみなさんには『ザ・ゴールデン・イヤーズ・オブ・ブリティッシュ・ロック』『クイーン 輝ける日々の記憶』という2冊の写真集でおなじみですね。そんな浅沼氏、もちろん当時ジャパンも度々撮影……というか、実は彼らとは被写体とカメラマンという以上に、友人としての信頼関係で結ばれていると言っていい間柄なのです。

中でも特にスティーヴとは個人的な付き合いもあって他のメンバーよりも親しく、しかも30年くらい会っていなかったこともあって「ぜひ俺に!」と手を上げてくださっていたのでした。なので、マネージメントを通じて浅沼氏による取材であることをお伝えして、旧交を温めていただくはず……だったのですが、来てみたらどうやらご本人までそれが伝わっていなかったようで。80年代以来、意図せぬサプライズでの再会の時間となったのでした。
──調子はどうなの、楽しんでる? こっちに着いたのはいつ?
「いいよ。こちらには一昨日、僕だけで。バンドは今日着くよ。……あなたの展覧会の方はどう? 上手くいってる?」
──うん、好調だよ。あ、そう言えば僕は6月にロンドンに行く予定にしてるんだ、4日間……いや、5日間だったかな。その時に会えるかな?
「あ、そうなんだ。勿論だよ」
──リッジ・ファームって行ったことある? レコーディングやリハーサルなんかをやるスタジオで……リッジ・ファーム。そこへ行きたいと思ってるんだ。
「あー、名前は聞いたことあるけど。そうなんだ、なるほどね」
──さて、と言うわけで……。
「うん、今日は何をやるのかな?」
──ああ、その前に、何か飲みものは欲しくない?
「あー、そうだな、多分……」
──多分じゃなくて、「欲しい」だろ(笑)。
「そうだね(笑)。じゃあアイスコーヒーでも……」

超イケオジ=スティーヴ・ジャンセン、のっけから軽くボケてくる

──キミ、いま幾つだっけ?
「105歳(苦笑)。……ああ、僕は今63歳だ」
──そうなの? 光陰矢の如しとはこのことだね。
「うん、ホント。あなたは?」
──77歳。ハハハ。
「77歳か。ゲンキだね」
──お兄さんの方はどうしてるの? デヴィッド(・シルヴィアン)は。
「もう何年も会ってないよ」
──年単位? それとも10年以上?
「そう、10年以上だね、うん」
──じゃあ、最近どうしてるかは殆ど分からない?
「うん、ほぼ何も知らない」
──そうなのか。ワーオ!(笑)。まあ、特に驚きではないけど。
「アハハ。まあ、そう。僕は今日あなたに会えるなんて知らなかったからね」
──え、そうなの?
「うん。今日会えるとは思ってなかったよ」
──おやおや。今日僕らは、キミと僕とで昔の話をするっていう企画で来てるんだけど……。
「……何だって!?(笑)。そんな話、誰も教えてくれなかったよ(苦笑)。なるほど、そういうことか!(笑)」
──僕は去年こういう本を出したんでね、それについての話をしようと……これはキミにプレゼントするよ。

そして浅沼氏がスティーヴにプレゼントしたのがこちら。氏が英国在住時代に、『ミュージック・ライフ』での取材で撮りためたアーティスト/バンドの写真をまとめた作品集。もちろんジャパン、若かりし日のスティーヴの写真もあり。
ザ・ゴールデン・イヤーズ・オブ・ブリティッシュ・ロック 浅沼ワタル写真集

ザ・ゴールデン・イヤーズ・オブ・ブリティッシュ・ロック 浅沼ワタル写真集

3,960円

撮影:浅沼ワタル
まずは思い出話。ほぼ半世紀前、ジャンセン当時18歳、ワタル32歳

「ああ、ありがとう。嬉しいな。(パラパラ見ながら)ああ~……。ここら辺の写真を見るのはもの凄く久しぶりだな。これは何年前だろう?」
──43年……45年?
「1979年?」
──いや、それより前だと思う。キミらがアリオラ/ハンザと契約したばっかりの頃だよ。
「そうか、てことは1978年だ。僕は18だね」
──78年より前かも知れないよ。76年か、77年か……アルバムが出る前だったからね。多分77年じゃないかな。
「うん、それじゃ僕は17だ」
──キミがバンドに入ったのが、17歳の時?
「いや、違うよ。兄と一緒にバンドを始めたのは1974年で、僕は14歳だった」
──なるほどね。まあそれはともかく、本日のディスカッションの議題はね……ほら、僕とキミはもう長い付き合いになるじゃない?
「うん、もっとも相当長いこと会ってなかったけどね。(苦笑)でも確かに、うん、昔からの友人であることは確かだ」
──で、『ミュージック・ライフ』という雑誌はもう今はなくて、ウェブの方に移行したんだよね。ニュースとか色んな記事が更新されてる感じ。だから今日のインタヴューはそちらの方の掲載になる。この点はいいかな?
「うん」
──それからキミのマネジャーからは、写真撮影は止めてくれっていうお達しが出てるんだけど、これはキミも了承済みの話?
「うん、そう。もっとも、あなたは写真撮りたいかな?(笑)」
──まあ、撮らせてもらえるものならね(笑)。ちなみに、今のキミのマネジャーって誰なの? サイモン(・ネピアベル)は?
「マネジャーはいないよ。ノー(苦笑)、サイモンは昔の話だね」
──彼のことは覚えてる? キミたちのマネジャーの。
「ああ、まあ覚えてるけど……僕のかつてのマネジャーについて、何か聞くべき話でもあるのかい?」
──彼に関しては実に色んな噂を聞いてたよ(笑)。
「そうなの? 例えば?」
──彼はT・レックスの創始者である。違う?
「あー、T・レックスじゃなくて、マーク・ボランを見出した人って意味では外れてはいないかな。T・レックスの前だね」
──そうか。それからジャパンの後には、ワムと、ジョージ・マイケルと……。
「ちょっとだけね、うん。ジョージ・マイケルに対しては束縛が凄かったよね(苦笑)」
──ああ、そうだよね、知ってる。(笑)彼とはその後連絡は取ってない?
「全然。彼は今タイに住んでるはずだよ」
──彼は大金持ちのはずだね。
「ああ(苦笑)、彼は何でも全部独り占めにしちゃうからね」
──うん、勿論。彼はカネがあるはずって言うのはそういう意味だよ。
「うん、でも他人から巻き上げる以上の額を、使ったり失ったりしてるんじゃないかな。まあ、分からないけど。ガッポリ税金で持って行かれたりしてるかも(苦笑)」
──彼はきっと向こうで幸せに暮らしてるんだろうね。
「ああ、ボーイフレンドと一緒にね」
──ナンだって!?(笑)。ガールフレンドじゃなくて?
「うん、そうだよ。ボーイフレンド」
──それは知らなかったなあ。
「そういうこと(笑)」

浅沼氏の大事な宝物──スティーヴ画伯の当時の作品を披露する

──僕らはエア・スタジオでよく顔を合わせてたよね。オックスフォード・ストリートの……。
「ああ、しょっちゅうね。あそこは僕にとって、ほぼ4年間我が家同然だったんだから。キミはいつもカズ(宇都宮)と一緒だっただろ、違ったっけ?」
──うん、ライターのね。ああ、よく覚えてるなあ。彼は今ロサンジェルスにいるよ。
「うん、知ってる。彼はヴァージンで仕事してたでしょ? 確か昔ヴァージンの出版にいたんだよね?」
──それは『ミュージック・ライフ』の後ね。
「あ、そっちが後なんだ。そうか」
──ヴァージンの出版部門で仕事をした後、アメリカに行って、CBSレコードのインターナショナル部門に入ったんだ。今はフリーランスだよ。
「フリーランスで何をやってるの?」
──パブリシストとか、ジャーナリストとか、色んなこと。音楽業界のあらゆる仕事を渡り歩いてるんだ。
「僕は彼とは直接連絡を取り合ってるわけじゃないんだけど、数年前に彼が僕の写真を1点購入してくれたんだよ」
──へえ、そうなの?
「うん、僕は自分の写真をオンライン・ショップで販売してるんだけど(Steve Jansen Image Shop)、その売りに出してる中に、バックステージで彼が写ってる写真があってね。彼はそれを買ってくれてたんだ」
──ということは、彼はキミに連絡を取ってきて……。
「いや、彼とは直接やりとりしたわけじゃないんだよ、オンライン決済だからね。ただ、事務処理する時に彼の名前を見つけて……」
──ああ、「Kaz Utsunomiya」ってね。
「うん。ああ彼が買ってくれたんだ、と思って。バックステージでサカモトサン(坂本龍一)と、うちの兄貴と彼が並んで立って、喋ってるところを写した写真だった。その決済データで、ああ、彼は今アメリカにいるんだってわかったっていうわけ」
──そうか。察するにその写真は、YMOのツアー中に撮られたものかな? ハマースミス・オデオンの……。
「いや、僕が撮ったのは武道館のバックステージだ」
──ああ、日本だったんだ。英国じゃなくて。
「うん、日本で撮ったやつ」
──そうか、そうだったんだ。それから……これ、僕の宝物なんだよ。

そう言いながら浅沼氏が取り出したのは、1枚の似顔絵。かつてスティーヴが関係者の顔をボールペンで描いたもので、浅沼氏の写真展でも展示されていたためご覧になった方も多いはず。コミカルにアレンジされているものの、これがなかなかの傑作! 下は昨年10月1日、浅沼氏の写真展を紹介したスティーヴのツイートで、4枚めの似顔絵がそれ(1枚めは、ジャパンの当時ミック・カーンとともに凧揚げに興じる若かりし日の浅沼氏で、スティーヴのプライヴェート・コレクションからと思われます。2枚め・3枚めは浅沼氏の写真展での様子)。裏側には、話にも出たカズ宇都宮氏を描いた似顔絵があり。ちなみにカズ宇都宮氏とは、浅沼氏同様当時英国在住で、ライターとして『ミュージック・ライフ』で多数の原稿を執筆、その後現地でヴァージン・レコードに入社し副社長も務めた人物。後にCBSレコードなどでも役職を歴任した方で、ご覧いただけませんがこちらも特徴を捉えた似顔絵となっています。
「ああ~、イエス(笑)。Mr.コダックだね。……これ(裏側)は誰?」
──そっちはカズだよ。
「カズか。これも僕が描いたんだっけ?」
──そう。
「OK。(同席した日本側スタッフの女性に向かって)ほら、芸術作品て感じだろ?(笑)。……まあ、絵画と言うよりただの似顔絵だよね。僕は芸術家じゃないんだよな(笑)」
──いやいや、立派な芸術家ですよ。多分これを描いたのはインタヴューの最中だよね?
「ああ、そうだね」
──遠い昔のことだ。
「遠過ぎるくらいだ、僕はもう覚えてないくらい。確かあなたがマナー・スタジオに来てくれたんだよ。僕がバンドの写真をあなたに送って……」
──お招きを受けたんだよね。どうして僕を呼んでくれたの?
「そりゃあ、何と言っても腕が良かったからさ(笑)」
──いやいや。あそこのハクチョウを覚えてる? あの湖のさ。誰か来ると、あそこのハクチョウが付け回すんだよね。誰かが駐車場に車を止めたらすぐやって来て、散々追い回すんだ。それを見てキミらが意地悪にゲラゲラ笑っててさ。覚えてるかい?
「ああ、あったね。覚えてる覚えてる(笑)」
──キミらは僕がそういう目に遭うのが観たかったんだろう。それで僕をわざわざ呼びつけたんだ(笑)。まあともかく、僕はあそこで一晩過ごしたよ。いい時代だったよね。
「うん、そうだったね」
──覚えてるだろ、キミがジャパンに居た時には、僕らはほぼ毎日会ってた。エア・スタジオでも、どこでも……。
「ああ、勿論覚えてるよ、うん。あなたはまるで僕らのパブリシティ・チームの一員だった(笑)。毎週何かしら一緒にやってたよね」
──ジャパンでは何枚アルバムを作ったの? スタジオ・アルバムは……。
「ほんの5枚かそこらだと思うよ」
──5枚だけ? そうか。もっとあったと思ったけど。
「当時はヴァージンで。今その版権はユニバーサルに移ったんだ。ただし、ハンザのカタログに入ってるものはソニーの管理になってる」
──ああ、そうか! アリオラ/ハンザはソニーに行ったんだものね。で、ヴァージンがEMI経由でユニバーサルか。
「そういうこと。だからアルバム3枚分はソニーが持ってるわけ」

今年相次いで亡くなった、盟友YMOの二人

──ほら、去年の10月、いや9月だったかな、キミはユキヒロ・タカハシ(高橋幸宏)に会っただろ。
「ああ、9月だ、うん」
──あれはとても悲しいことだったね(今年1月11日に他界)。キミは彼には会えたの?
「いや、あの時彼はずっと病院にいたんでね、行っても会わせてもらえないってことで……コロナの影響でね。面会は近親者に限るってことになってたから」
──ああー、そうか……今回、お墓参りには行く予定?
「ああ、もしかしたらね。彼の奥さんには会おうと思ってたんだけど、彼女は最近体調を崩して、入院したりしてるらしくて」
──え、そうなの? 今も?
「いや、今はもう復調してるみたい。今回のショウにも来てくれることになってるから」
──ああ、それは良かった。来られるといいね。
「うん、僕もそう願ってるとこだ」
──キミは彼とは長い付き合いだったものね。
「元々の計画では、ショウを終えた後で、僕が彼の自宅を訪ねることになってたんだよ。ただ、奥さんの体調もあって、果たして実現するかはまだ分からないんだ」
──そうか、なるほどね。でも可能なら是非行くべきだよ。これを逃したらなかなかそういうチャンスは巡って来ないだろ?
「うん、ひとまずは彼女の体調次第だね」
──それと、リュウイチ・サカモト(坂本龍一)が亡くなったことは知ってる?
「知ってるよ勿論、当たり前じゃないか。彼には何度かメールを書いたよ。ずっと病気だったのは知ってたんだ、彼の奥さんが僕のヨーロッパでの仕事をオーガナイズするのを手伝ってくれていたんで、数年前から彼女を通して、彼がどういう状態かはよく聞いていてね」
──癌だったんだよね。
「うん、だから彼が既にステージ4だってことも知ってたんだけど、こんなに早く逝ってしまうとは思っていなくて……」
──彼も(幸宏と)同じだよね。
「しかも二人はとても親密な関係だったからね」
──そうだね、悲しい。とても悲しい。
「うん、本当に惜しまれるよ」

下のツイートは今年4月5日のスティーヴのツイート。画像が表示されていませんが、クリック/タップしてみてください。高橋幸宏、坂本龍一とともに3人でレストランでグラスを傾ける1枚とともに、二人を悼むメッセージをツイートしています。
ということで、今回は〈前編〉としてここまで。気のおけない旧友同士による肩肘張らないやりとり、なるべくご覧に入れたいため非常に長くなってしまい、二つに分けることにしました。リラックスした雰囲気、伝わっておりますでしょうか? 〈後編〉はEXIT NORTHでの活動やプライヴェートに関する話など、今週の木曜(7/13・木)正午に公開いたします。どうぞお楽しみに!
©︎ Kenju Uyama
商品詳細
Exit North
『Book of Romance and Dust』


(2018年)
Amazon Music・MP3(MAY 14 2019)¥2,000
1. Bested Bones
2. Short Of One Dimension
3. Sever Me
4. Passenger's Wake
5. Nort
6. Lessons In Doubt
7. Spider
8. Losing
9. Another Chance
Exit North
『Anyway, Still』


(2023年)
Bandcamp
1. I Only Believe In Untold Stories
2. Your Story Mine
3. The Unforeseen
4. Where The Coin Fell
5. Bled Out
6. Us In Half
7. A Battle Cried
8. With All The Indifference
9. In The Game
10. The Signal
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ミュージック・ライフが見たジャパン

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1,980円

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