【スペシャル・インタヴュー】

ヴィンテージ・トラブル来日インタヴュー! 「バンドは強くなった。さあここからだ!」

取材・文◉内本順一 協力◉ビッグ・ナッシング

ヴィンテージ・トラブル、『ヘヴィー・ヒムナル』におけるその純正ロケンロール、ラウドなR&B、ヘヴィなゴスペルはもうお聴きになったでしょうか。2015年にメジャー・デビューした際には「老舗ジャズ・レーベルのブルーノートが契約した初めてのロックンロール・バンド」として話題をさらい、今回そのデビュー作以来ながら何倍もパワー・アップした最新作『ヘヴィー・ヒムナル』を今年6月にリリースしたばかりです。

それに先立つことひと月前、5月には東京での単独公演と横浜でのフェス出演のために来日していました。今回のインタヴューはその際に取られたもの。結成から13年、前作から8年、磨き上げ・鍛え上げられたサウンド同様、取材ではまったくブレることのない目線をそのまま言葉にしてくれています。
5月の来日公演(ビルボードライブ東京単独、及びGREENROOM FESTIVAL'23出演)でも激熱なパフォーマンスで観る者たちを熱狂の渦に巻き込んだロッキン・ソウル・バンド、ヴィンテージ・トラブル。フルレングスのオリジナル・アルバムとしては『華麗なるトラブル』以来実に8年振りとなる新作が、6月23日に発売された『ヘヴィー・ヒムナル』だ。構造的な人種差別、社会の分断化、疫病が追い打ちをかけた社会不安、軍事侵攻の愚かさと恐ろしさ。そういった世界の現状に焦点を当てた、これは “重い賛美歌”。そのタイトルの通り、彼らはこの新作で、これまでになく強く厳しいメッセージを放っている。
「最初のアルバム(2011年の『ボム・シェルター・セッションズ』)を出した頃、『ヴィンテージ・トラブルはグッド・タイム・バンドだ。みんなに楽しくて最高の喜びの時間を与えるんだ。ブルーズとロックで盛り上がろうぜ』みたいな気持ちで音楽をやっていた。そうやってみんなを巻き込んで楽しくやれたら最高だったんだ。でも時代が変化して、今はそれだけではやっていられなくなった。今は自分が何を言いたいのか、何を言わなきゃいけないのかを明確にしなかったらダメな時代なんだ。特に自分はアフリカ系アメリカ人ということもあり、ミュージック・ビジネスの世界で歌い続けることの責任も伴う。いつまでも “楽しく生きようぜ” というメッセージばかりを発し続けるわけにはいかないんだよ。それで今回は、懸命に生きる者たちにとっての “人生のサウンドトラック” となるような内容にしたいと思った。人種差別に対するデモがあったり、covid-19のパンデミックによる分断があったり、ここ数年、社会は激動しているわけだけど、それに対してしっかり声を上げている人、声をあげようとしている人たちにとってのサウンドトラックのような作品を作れたらいいなと考えていたんだ」
(タイ・テイラー/ヴォーカル)

とりわけ最後に収録された「リピーティング・ヒストリー」は、何年経っても繰り返される差別や暴力、それに対する絶望と怒りを歌った重要曲だ。が、かといってヘヴィーな曲ばかりが並んでいるというわけでもなく、勢いのいいゴスペル風ロックンロール・ナンバー「ユー・オールレディ・ノウ」、ブルーノ・マーズあたりにも通じるポップR&Bの「ベイビー・ホワット・ユー・ドゥー」、ブルーズ的なギター・フレーズとファンク的なノリとがポップな感触で合わさった「シャイニン」など、明るさやドライヴ感を有した曲もある。「ノット・ザ・ワン」や、レディ・ブラックバードとのデュエット「ザ・ラヴ・ザット・ワンス・リンガード」のようなソウルバラッドも胸に沁みる。

●プレイリスト/『ヘヴィー・ヒムナル』[11曲]

「辛いこと、絶望的なことばかりを歌ったら、聴く人が『わかったよ、もういいよ』ってなるだろ? だからやっぱり希望は持たせないと。このアルバムで、オレたちは今やれることの全てをやったんだ。こういう曲は既にあるから違う感じの曲が必要だな、といった感じでソングライティングに幅を持たせたし、サウンドに関してもそうだし、ライヴ・パフォーマンスのエネルギーをいかに録音に落とし込むかということに関してもそう。TO DO リストを埋めていくような感じだね(笑)。足したり引いたり掛け算したりする時間が今回の制作にはたっぷりあった。それが功を奏したんだよ」
(タイ・テイラー)
実はこのアルバム、パンデミックの影響でスタジオに集まることができず、共同プロデュースを担当したクリス・シーフリード(レディ・ブラックバード、アンドラ・デイ、ラーキン・ポー)とメンバーの4人がそれぞれリモートでやり取りして作ったのだそうだ。聴けば、とてもそうとは思えないバンド感、一体感を有しているわけだが、メンバーたちにとって、初めてのこの作り方はどうだったのだろう?

「おとなしく待機している間にも自分なりのテンションを整えてそれを保たせることが難しかった。それを可能にするには互いの信頼が何より重要で、だから今回の制作によって絆がまた深まったとも言えるかな」
(リチャード・ダニエルソン/ドラムス)
「初めてのプロセスからの学びがいろいろあった。時間は十分にあったから今までと違う新しい弾き方を試したりすることができたのはよかったね」
(ナリー・コルト/ギター)
「プロデューサーのクリスは、オレたちの楽器の音や歌をパズルのように組み立てて作るんだ。いつもはせーの!で録っているオレたちからすると、着地点が見えなかっただけに、初めは戸惑いがあった。でもクリスの判断は明確で、『ここはいらない、ここは最高』といったことをバシっと判断してくれる。それを信頼して作業を続けた結果、自分たちの想像を遥かに上回る作品になったと思うよ」
(タイ・テイラー)

結成から13年目で、新たなやり方を学び、新たな代表作をものにすることができた4人。

「継続は力なりじゃないけど、13年続けてきた分、バンドは強くなった。さあここからだ!って感じだね」

(リック・バリオ・ディル/ベース)

ヴィンテージ・トラブル公式YouTubeチャンネル


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ハリウッドのブルース/ファンク・ロッカー、ヴィンテージ・トラブルのサード・アルバムが完成。世界の現状に焦点を当てた重い賛美歌のコレクション『ヘヴィー・ヒムナル』、リリース。

●ゲスト:レディ・ブラックバード

●ヴィンテージ・トラブル(Vintage Trouble)は、リード・シンガーのタイ・テイラー(Ty Taylor)、ギタリストのナル・コルト(Nalle Colt)、ベーシストのリック・バリオ・ディル(Rick Barrio Dill)、ドラマーのリチャード・ダニエルソン(Richard Danielson)で構成される。ジェイムズ・ブラウン(James Brown)、ミック・ジャガー(Mick Jagger)、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)、プリンス(Prince)の良いところを取り入れたTタイは、同世代で最も優れたフロントマンの一人として広く知られている。彼らの最新アルバム『Heavy Hymnal』は、バンドのトレードマークであるブルース/ファンク・ロック・スタイルで世界の現状に焦点を当てた作品で、同じロサンゼルス出身のジャズ/ソウル・シンガー、レディ・ブラックバード(Lady Blackbird)がヴォーカルでゲスト参加している。歴史が証明するように、世界が炎に包まれたとき、共感するアーティストが言葉、音楽、リズムに火をつけ、社会の怒りを覆い、傷ついた魂を看護する。パンデミックによる封鎖と社会との距離、そして市民運動と人種的不公正という激動する疫病が、ヴィンテージ・トラブルに戦闘服への着替えを求めた。これまで何度もそうしてきたように、彼らはレコードを紡いで戦場に投下し、戦乱の世を一瞬で止めることを意図している。そして、安心している間に、私たちは、同じ歴史を繰り返すために軽率に突撃するのではなく、攻撃する前に考えたり、撤退を決めたりすることを自由に選ぶことができる。この重い賛美歌のコレクションは心からのもので、私たちのこれまでの報いの清算に必要な上昇を提供するのだ。

●2010年にハリウッドで結成されたヴィンテージ・トラブルは、伝説的な音楽マネージャー、ドク・マッギー(Doc McGhee)によって、直ちに世界のステージに立つことになった。『Later with Jools Holland』でのパフォーマンスが高く評価され、世界で6番目のトレンド・トピックとなり、デビュー・アルバム『The Bomb Shelter Sessions』はAmazonのUKチャートで1位を獲得した。そこから、ローリング・ストーンズ(Rolling Stones)、AC/DC、ザ・フー(The Who)、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)、デイヴ・マシューズ(Dave Matthews)、ブライアン・メイ(Brian May)、ガヴァメント・ミュール(Gov’t Mule)、パロマ・フェイス(Paloma Faith)、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)等のアーティストと共に、何度も世界中を回るツアーをスタートさせた。また、コーチュラ(Coachella)、グラストンベリー(Glastonbury)、ロラパルーザ(Lollapalooza)、ロック・イン・リオ(Rock in Rio)、バイロン・ブルース・フェスティヴァル(Byron Bay Blues Festival)、ボナルー(Bonnaroo)、ライフ・イズ・ビューティフル(Life is Beautiful)等、世界中の主要フェスティヴァルのメイン・ステージでプレイし、『Classic Rock』誌の「Best New Band」にも選出された。バンドは、『David Letterman』『Conan O'Brien』『Craig Ferguson』『Jimmy Kimmel』などの世界中の大きなテレビ番組に出演。『Tonight Show with Jay Leno』では1年間に4回の出演という記録も持っている。その後、バンドはドン・ウォズ(Don Was)のブルーノート(Blue Note)と契約し、セカンド・アルバム『1 Hopeful Rd.』を2015年にリリース。2018年にはEP『Chapter II - EP1』、2019年には『Chapter II - EP II』を発表した。また、バンドは、ホンダ、IBM、スーパーカッツ、ジョン・バルベイトス等、映画やCMで大きくフィーチャーされている。

■More info:Big Nothing

■アルバム情報
ヴィンテージ・トラブル『ヘヴィー・ヒムナル』
Vintage Trouble/Heavy Hymnal

ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
世界同時発売、解説/歌詞/対訳付(予定)、日本盤ボーナス・トラック収録(予定)

商品詳細
ヴィンテージ・トラブル
『Heavy Hymnal』


Amazon Music・MP3(JUN 23 2023)¥1,800
1. Who I Am
2. You Already Know
3. Not The One
4. Baby What You Do
5. Feelin’ On
6. The Love That Once Lingered(feat. Lady Blackbird)
7. Alright Alright
8. Holla!
9. Shinin’
10. Repeating History

※他、日本盤ボーナス・トラックを追加収録(予定)
商品詳細
ヴィンテージ・トラブル 
『華麗なるトラブル』


Amazon Music・MP3(AUG 14 2015)¥1,900
CD(2015/8/12)¥2,206
商品詳細
ヴィンテージ・トラブル 
『Juke Joint Gems』


Amazon Music・MP3(OCT 15 2021)¥1,600
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