アイルランドの歌姫、シネイド・オコナーが56歳で死去

1990年の大ヒット曲「Nothing Compares 2 U」で知られるシネイド・オコナー(Sinead O’Connor)が7月26日、56歳で死去しました。

オコナーは、双極性障害、依存症、線維筋痛症など、生涯を通じて様々な健康問題を抱え、2022年1月に17歳の息子シェーンが自殺して以降、メンタルヘルスの問題が悪化していました(2022年1月12日17日MLCニュース参照)。

家族が訃報を伝えていますが、死因は発表されていません。
「私たちの愛するシネイドが他界したことをお知らせすることになり、大きな悲しみに包まれています。彼女の家族や友人は打ちのめされており、この非常に辛い時期において、プライヴァシーを望んでいます」
オコナーは1966年にアイルランドのダブリンで生まれ、両親から虐待を受けて育った彼女は、子供時代から日常的にトラブルを起こし、15歳の時に教会が運営する精神病院に収容されました。厳しい環境の中、対処法の一つとして歌い始めたオコナーは、ある結婚式で歌ったことを機に、音楽の道に進むことを決意しました。

ダブリンでバンドに加入したオコナーは、地元のライヴで音楽関係者の目に留まり、最初の契約を結んだ後、1986年にU2のジ・エッジと「Heroine」を共作し、彼女が歌った同曲は、1986年の映画『Captive』のサントラ・アルバムにフィーチャーされました。

翌1987年に発表したデビュー・アルバム『The Lion and the Cobra』は、収録曲「Mandinka」と「I Want Your(Hands on Me)」がラジオで大々的にオンエアされ、後者の曲が1988年の映画『A Nightmare on Elm Street 4:The Dream Master』(邦題『エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃』)に起用されるなど世界的に注目を集め、オコナーは同作で初めてグラミー賞にノミネートされました。

そして1990年、セカンド・アルバム『I Do Not Want What I Haven’t Got』(邦題『蒼い囁き』)がリリースされ、オコナーがカヴァーしたプリンスの曲「Nothing Compare 2 U」が、世界20カ国以上のチャートでNo.1を記録する大ヒットになりました。この曲は本来、プリンスのバンド、ザ・ファミリーが1985年にリリースしたデビュー・アルバム『The Family』に収録されましたが、当時ほとんど評価されていませんでした。

オコナーは、同曲のヒットで世界的スーパースターの名声を得たものの、1992年に米・音楽番組『Saturday Night Live』に出演した際、ボブ・マーリーの「War」を歌った最後に、聖職者の虐待に対する抗議として、突如ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の写真を引き裂き、大きな物議を醸しました。
しかしながら、その後もオコナーの需要は高く、1993年のイギリス映画『In the Name of the Father』(邦題『父の祈りを』)では、U2のボノらが共作したオコナーのシングル「You Made Me the Thief of Your Heart」がサントラにフィーチャーされ、翌1994年に開催されたザ・フーの結成30周年記念イベント「A Celebration:The Music of Pete Townshend and The Who」(後にライヴ・アルバムとして発売)にも、特別ゲストとして出演していました。

2014年の『I’m Not Bossy, I’m the Boss』以降、アルバムを発表しなかったオコナーは、2017年に本名を「マグダ・ダヴィッド」に改名し、2018年にイスラム教に改宗した時は「シュハダ・ダヴィッド」と名乗り(2018年10月30日MLCニュース)、2019年には苗字をダヴィッドからサダカットに変え、「シュハダ・サダカット」に改名していました。

その後も、音楽活動は「シネイド・オコナー」として続けていましたが、2021年に引退を宣言したオコナーは、2022年に最後のアルバム『No Veteran Dies Alone』をリリースし、プロモーション・ツアーも行なうと発表。しかしながら、パンデミックや個人的な理由で実現には至りませんでした。

なお、2021年にオコナーの回顧録『Rememberings』が出版され(2020年12月9日MLCニュース)、2022年には、オコナーのドキュメンタリー『Nothing Compares』がアメリカで公開されています(2022年9月20日MLCニュース)。

オコナーは、生涯にわたり10枚のアルバムをリリースし、グラミー賞1回、ビルボード・ミュージック・アワードを2回、MTVビデオ・アワードを3回受賞し、ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされました。

オコナーの訃報を受け、キャット・スティーヴンスやブライアン・アダムスをはじめとする多数のアーティストが追悼メッセージを発表しています。

loudwire.com
Rockers Mourn Iconic Singer Sinead O’Connor, Who Has Died at 56

blabbermouth.net
SINÉAD O'CONNOR Dead: Rockers Pay Tribute To 'A Great Person And An Amazing Artist'

安らかなる眠りをお祈りいたします。
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シニード・オコナー
『So Far : The Best of Sinéad O'Connor』


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