『WINGS OVER THE PLANET ポール・マッカートニー&ウイングスの軌跡』出版記念トリビュート・ライヴ・ショウ&トーク・イベント・レポート

10月15日(日)@東京・渋谷CLUB ROSSO

皆んなウイングスが大好き!という幸せな時間空間を共有した一夜

『WINGS OVER THE PLANET ポール・マッカートニー&ウイングスの軌跡』
写真左より矢口清治さん、浅沼ワタルさん、吉田聡志(MLC)
10月15日『WINGS OVER THE PLANET ポール・マッカートニー&ウイングスの軌跡』出版記念トリビュート・ライヴ・ショウ&トーク・イベントが渋谷CLUB ROSSOにて行なわれた。トーク・ゲストにフォトグラファー浅沼ワタルさんを迎えた第一部は、MUSIC LIFE CLUB吉田聡志を交え、ディスク・ジョッキー矢口清治さんの司会で進行。第二部はウイングス、ビートルズのナンバーならおまかせのComma-Dadaが熱演を披露。満員の観客で盛り上がった一夜となった。
第一部

浅沼さんは70年代初頭よりロンドンを拠点にフォトグラファーとして活動されており、クイーン、レッド・ツェッペリン、エリック・クラプトン、ポリス、ピンク・フロイドなど名だたるミュージシャンを撮影。今回の主役であるウイングスも何度も撮影されている。

矢口清治(以下矢口):この『WINGS OVER THE PLANET ポール・マッカートニー&ウイングスの軌跡』には浅沼さんと長谷部宏さん(“65年、初の日本人ビートルズ取材” でお馴染みのフォトグラファー)の写真がバッチリ掲載されている上に、“軌跡” というだけあってウイングスのライヴ、全公演の日程やセットリストまで克明に掲載されてるんですね。
吉田聡志(以下吉田):僕以上にウイングス・オタクのライターさんが何人もいらっしゃって渾身の作業をしていただきました。
矢口:今、パッとめくったページが日本盤シングルのジャケット満載──、当時このシングル盤を買って聴き倒してました。
吉田:「全米TOP40」でいち早く新曲を聴いて、レコード屋さんに行ってシングルを買って。
矢口:そのワクワク感が大事──、そういう気持ちをもう一度心の中に蘇らせてくれる一冊ですね。では、浅沼さん、お待たせしました、ここにいる誰よりも直接ポール・マッカートニーやウイングスのメンバーと会っていた浅沼さんに、色々とお聞きしたいことがあるんですが。
浅沼ワタル(以下浅沼):(笑)どうぞ。
矢口:まず、子供っぽい質問ですが(笑)、メンバーの印象はいかがでしたか?
浅沼:僕はリンダ・マッカートニーと距離が近かったんですよ、彼女も写真家だからか分からないけど、立ち話をしたり、バックステージやパーティに呼ばれたりすることが多かった。そこで、『ちょっと待ってて、うちの旦那呼んでくるから』って。ポールのことを旦那って呼ぶんです(笑)。
矢口:じゃあ、まずリンダから入って?
浅沼:いや、ポールからなんですけど、ポールは色んなメディアに対応したりで忙しすぎるから、リンダと会話できる時間が多かったんです。東京ドームの最後の公演でも、僕は日本でのオフィシャル・カメラマンで付いたんですけど、ファンのための撮影のときもリンダが声をかけてくれて、『ちょっと待ってて、旦那呼んでくるから』って(笑)。
矢口:英語でなんて言うんですか?
浅沼:I call husband.
吉田:浅沼さんは、東京ドームでポールと関係者とのプライヴェートな集合写真も撮ったんですよね。
矢口:そんな浅沼さんはどこでポールとの距離が縮まったんですか?
浅沼:最初に撮ったのが1975年のバーミンガム公演。終わった後に合同の記者会見があって、その後ポールとは立ち話で顔見知りになった。
矢口:そこで信頼を得て、1976年10月20日ロンドン・エンパイア・プール公演でも撮影されていて、これもこの本に表紙になっています。
吉田:「WINGS OVER AMERICA TOUR」の前後。
浅沼:当時、僕も「WINGS OVER AMERICA TOUR」のオフィシャル・カメラマンにノミネートされていて、最終的にはポールが選考する──って言われてた。結局イギリス人カメラマンに決まったんだけど……。
吉田:惜しかった、決まっていたら大変なことになっていて。
浅沼:僕、ここにはいないですよ(笑)。付け加えると、僕はポールが主催したパーティで入場するお客さんを撮影したこともあって、ザ・フーのキース・ムーン(Dr.)も婚約者と一緒に来ていたのを撮ったんですけど、それが彼の最後の写真になったんです。翌日起きたらラジオのニュースが、『キース・ムーンが亡くなった』と。
矢口:映画のワンシーンみたいな感じですね。僕はライヴの現場のこととか分かっていないので、初心者レベルの質問ですけれど、こういった超大物クラスのバンドだと、苦労した、大変だった……ということはありますか?
浅沼:ウイングス、ポール関連では全くないです。広報の人が全部キチンと仕切るので、それに乗っていけばいいだけで。
吉田:作られた状況を撮影する──と。
矢口:現場で何か起きて、予定が急に変更するといったことは?
浅沼:なかったです。
矢口:すごいですね。
吉田:ウイングスはプロのバンド、プロ集団なんですよ。
浅沼:日本では80年に入国できなかったですよね(空港で逮捕、拘留強制送還)、その後イギリスで「BACK TO THE EGG TOUR」が始まって、僕はフォトピットでカメラを構えてたら、ステージの幕が上がって出てきたポールが僕に向かって『オッス!!』って親指を立てて合図したんです。後で聞いたら、『拘置所で日本人に教わった』って(笑)。
矢口:それ以降、来日のステージでは『オッス!!』って言ってますよね。
吉田:どこで覚えたんだろう?って思ってました。日本では観られなかった「BACK TO THE EGG TOUR」もこの本にしっかり載ってます。.
矢口:これで観られなかった気持ちも少しは落ち着きますし、改めてウイングス時代に対する気持ちを掻き立ててくれますね。私がリアルタイムでラジオでウイングスを聴いたのは「マイ・ラヴ」かな。そこから彼らのヒット曲をどんどん紹介してくれるラジオに魅入られて、結果的に今やっているような仕事に就いたんですけど、ヒット・チャートを賑わしたあの当時のウイングスの破竹の快進撃はすごかった。『レッド・ローズ・スピードウェイ』に入っている「マイ・ラヴ」以降、「バンド・オン・ザ・ラン」「あの娘におせっかい」「心のラヴ・ソング」「しあわせの予感」まで出すアルバムから必ず全米ナンバーワン・ヒットが出てるんです。で、今回は浅沼さんに来ていただいて貴重なお話を伺っているんですが、〈これは差し上げられないんですが〉というお宝をお持ちいただいてます。

ここで浅沼さんの秘蔵コレクションの一部が披露された。

・ウイングス公演のカメラマン用のフォト・パス 4枚
・アルバム『BACK TO THE EGG』発売記念パーティの招待状(目玉焼き型の変形)
・『BACK TO THE EGG』ボックス
・ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニー、デニー・レーンのサインの入ったアルバム『VENUS AND MARS』
・謎のペンギン・キャラが登場するウイングス・ポスター
浅沼:フォト・パスは大きいバンドは割と凝ったパスを作るんです、ツアー毎にデザインも変えて。『BACK TO THE EGG』の箱は記者用のプレスキットや目玉焼き型のパーティ・インビテーション・カードが入ってました。
吉田:このウイングスのロゴを胸につけたペンギンたちのポスターは僕も初めて見るもので、これは何だろう?とさっき浅沼さんとも話してました。
矢口:この時代のポールは何かペンギンに関係したことってありましたっけ?
吉田:これもボックスに入っていたみたいですね。
矢口:ご存知の方がいらっしゃいましたらMUSIC LIFE CLUBまで(笑)。
吉田:そして最後はウイングスの3本柱のメンバーの直筆サイン入り『VENUS AND MARS』、3人が揃っているのは泣けてきますよ。今、デニー・レーンの体調が芳しくないので心配ですけど、これは超貴重な物です。
矢口:こういった物を見ながら浅沼さんのお話を伺える、そしてこの後のトリビュート・ショウで、ウイングスのヒット曲の数々を愛して止まない方々と一緒に聴けるといういい時間を持てたのは、この『WINGS OVER THE PLANET ポール・マッカートニー&ウイングスの軌跡』がそのきっかけを作ってくれたからだと思います。吉田さんが思う、この本を持っていたい──という所はどこでしょう。
吉田:ファン目線も入って冷静に分析できないんですけど、とにかくウイングスの全盛期、パワー全開のときの写真が今になって一冊にまとまったんです。ご存知の通り長谷部さんはオーストラリア公演を撮ってるんです、オフでポールがコアラを抱いている、あのときの写真とか。でもイギリスの写真がなかったので、どうしてもストーリーが作れなかったのが、今回浅沼さんの写真が加わってウイングス全盛期の物語が作れた。そしてウイングス・マニアの方々が作り上げてくださった完璧なディスコグラフィ、愛に満ちたレビュー、皆んなウイングスが大好きなんですよ。だから読んでいて、ファンのためのウイングスの本だな、ファンの方は読んでいただきたいなと心から思いました。
矢口:浅沼さんも本日はありがとうございました。この後のトリビュート・ライヴは<職業:ポール・マッカートニー>とおっしゃる永沼忠明さんを中心とする実力派トリビュート・バンドComma-Dadaが出演されます。是非このショウも楽しんでいってください。では最後にお二人に質問をさせていただきます、吉田さんにとってポール・マッカートニー&ウイングスとは何でしょうか?
吉田:中学校のクラブ活動みたいなもの。勉強は嫌いだったけどクラスの中でウイングス好きな人といつもウイングスの話をしてましたね。
矢口:浅沼さんはもうプロの写真家として接せられていらっしゃったから、どうでしょう、浅沼さんにとってポール・マッカートニー&ウイングスとは?
浅沼:体が震えるくらいの人物で、まさか写真が撮れるとは思ってなかったんです。フォト・パスもイギリスのメディア優先で何枚も出ないから、入るのは大変で当時は夢でした。その夢を叶えたのがこの本です。あ、最後に一つ。ポールとパーティで会うと、“お前、うちに遊びに来いよ”って言うんですけど、住所もくれないし、連絡先も何もくれない(笑)、マネージャーに聞いたら、ダメって言うに決まってるじゃないですか。それを毎回言うんですよ“うちに遊びに来い”って。実は歩いて行ける距離だったんですけどね。
矢口:行けたらよかったですけど、ま、それも一つの夢として(笑)。では、そろそろお時間となりました。セットチェンジの後は、Comma-Dadaによるトリビュート・ライヴです。ありがとうございました。
浅沼:ありがとうございました。
吉田:ありがとうございました。

※ウイングスのペンギンのポスターに関して、詳しい情報をお持ちの方は、お手数ですが、MUSIC LIFE CLUB お問合せフォームにてご一報ください。

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第二部 Comma-Dada LIVE

イントロのギター・フレーズが流れると一瞬にして半世紀前にタイムスリップ! 1973年の「Band on the Run」からステージは始まった。リード・ギター久保 肇、ドラムス ヒロ渡辺、リズム・ギター小松陽介、キーボード黒岩典英、そしてセンターにリッケンバッカー・ベースを腰に構える永沼忠明のComma-Dada。ウイングスがそうであるように、全員がコーラス、歌、ハーモニーを担当したカラフルなサウンドで、時にブルージー、時に美しく、そして常にロックなウイングス・ワールドが再現されていった。途中ビートルズ・ナンバーを数曲はさみ(なんと客席からのリクエストにも応えて)、怒涛の快進撃メニューで1時間半強を駆け抜けた。皆んなウイングスが大好き!という幸せな空間だった。
The Greatest Rocks ~For Paul McCartney & Wings Lovers~

1. Band on the run
2. etting go
3. My love
4. Juniors farm
5. Let it be
6. Another day
7. Listen to what the man said
8. 1985
9. Lady Madonna
10. Hey bulldog
11. Maybe I’m amazed
12. Live and let die
13. Silly love songs
14. Venus & Mars
15. Rock show
16. Jet
Encore
17. Soily
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ナビゲーター:杉 真理 & 和田 唱
監修:藤本国彦
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