『ヘドバン』創刊10周年記念トーク・イベント・レポート
~『ヘドバン』とは何か?〜

梅沢直幸 × 阿刀“DA”大志 11月7日@東京・下北沢 本屋B&B

写真左より阿刀“DA”大志さん、梅沢直幸 編集長

『ヘドバン Vol.40』
創刊10周年、そしてVol.40にも到達した『ヘドバン』。そのダブル記念としてのトークイベントが、梅沢直幸さん(『ヘドバン』編集長)、阿刀“DA”大志さん(PR/ライター/カメラマン)の二人を迎え11月7日 本屋B&Bにて、満員の場内+配信で開催された。
出会いは『音楽生活』

梅沢さんが編集者として関わっていた『音楽生活』という雑誌(バーン・コーポレーションより2000年夏創刊~2001年Vol.6まで発行)を読んで感動した阿刀さんが、直接編集部に梅沢さんを訪ねるところから物語は始まる。『音楽生活』は「音楽版MONOマガジン」的なものを──という会社の方針から梅沢さんがサブカル的な方向に舵を切り、2号目ではメタルを斜めから切り取った『80年代メタル・カルチャー浪漫集会』を特集、4号目にはアイドル特集『GOD SAVE THE アイドル』として当時のアイドル、モーニング娘。などを掲載した。

梅沢:バーン・コーポレーションっていうメタルの会社でアイドルをやるのは面白くねっ?──って単純な考え方で。
阿刀:表紙からしてイカレてる(セックス・ピストルズ+アイドルのヴィジュアル)、このクロスオーヴァー具合に本当に撃ち抜かれて。めちゃめちゃ興奮して、なんかしらないけど会いに行ったんですよ。
梅沢:そこで熱くこの4号を褒めてくれたのが最初のきっかけだよね。

『音楽生活』は6号で突然の休刊。その後阿刀さんのブログをチェックしていた梅沢さんは、アイドル・シーンのチェックの早さに驚いて色々とサーチをしている最中、CDジャーナルのWEBで引っかかってきたのがBABYMETALだった。
梅沢:「いいね!」のミュージック・ビデオの付いているパブ記事。今までメタルを真正面からガチでいじっているアイドルがいなかったから、これはとんでもないものが来たなと、そこから掘り下げていった。2000年代後半からのメタルコアのブレイクダウンとラップ・メタルを合体させて、なおかつあの3人のアイドルがチャラいラップをしている感じは完璧かつ新種のラップ・メタルの誕生とさえ思った。
阿刀:そこから『ヘドバン』の立ち上げまでにはどう動くんですか?
梅沢:シングル「ヘドバンギャー!!」のコルセットが付いてるボックスを買って、抽選で鹿鳴館のチケットが当たってね。
阿刀:そこでライヴを観て。
梅沢:そうだね。その鹿鳴館のライヴが完璧すぎた。

梅沢さんが鹿鳴館に向かう坂の途中でメタルのTシャツを着たガチメタラーっぽいオジサンたちに出会い、こういう層からの支持もあるんだと実感。そして客入れの音はメタリカやパンテラ等という状況でライヴが始まる。

梅沢:3人のメンバーは始まったら笑わないしMCもないし。最後の「ヘドバンギャー!!」では棺桶出してきてSU-METALが入っていくのかな? やった曲は7~8曲だけど物凄いインパクトで、客出しBGMにはステージではやらなかった「イジメ、ダメ、ゼッタイ」がかかってた。その時点でナンダコレ?ってザワついてた。
夜の部は行った人間から逐一報告を受けていて、夜の開演前BGMはX JAPANや聖飢魔IIなんかのジャパメタで、報告が来るたびになんだコレってなった。当時はX JAPANとか聖飢魔IIを洋楽のガチのメタルに組み合わせることはなかなかできず分断されてて、その感性を持ってる人がいなかった。それもすごいと思った。さらに〈銅鑼が出てきてSU-METALは失神しましたよ〉と報告がきた。それはどう考えてもX JAPANのYOSHIKIへのオマージュ。それまで誰もX JAPANやYOSHIKIをいじる人はいなかったから、その時点でスッゲーことをやり始めたな、これは大変なことだと。これ、ちゃんと真正面から扱えるメディアはないんじゃないかな?と思った。そこで、もう自分が作るしかないかなと思い始めた。
阿刀:その日に!
梅沢:この日がきっかけでもあると思う。でも、やってることはものすごくプロフェッショナルで、SU-METALもMOAMETAL、YUIMETALも笑み一つ浮かべずに、ダンスも上手いし。そこも含めて、とんでもないものを見たなと。それで「BABYMETALは一体誰が仕切ってるんだろう?と」いう興味も湧いた。
当時のアイドル・メディア側はBABYMETALのメタル的な面白さを伝えきれないし、メタル・メディアは一切無関心。だから取り上げるメディアがないのならやるしかない──とぼんやり思っていた。

そして『ヘドバン』は動き出した
その後梅沢さんはBABYMETALのライヴに足繁く通うこととなる。BABYMETAL伝説のライヴ・シリーズ(レジェンド I、D、Z)が始まり、I:Shibuya O-EAST、D:Akasaka BLITZ、Z:Zepp Tokyoの完璧なライヴと超満員の観客を見て、これは彼女たちをフィーチャーしたメディアを作った方がいいと確信。発売元(シンコーミュージック・エンタテイメント)に企画書を出し『ヘドバン』GOサインを得て、BABYMETAL所属のアミューズへもプロデューサーKOBAMETAL氏と繋がって直談判。色々メタルのジャンルの話をし、BABYMETALを中心にしたメタルの切り口でやっていきたい──ぜひ特集を組みたい、雑誌を創刊をしたいという話をした。2013年の年明け早々だった。そのあと色々と紆余曲折があり、最終的に巻頭特集はBABYMETAL、表紙はBABYMETALをイメージさせるキツネ・サインのイラストとなった。
『ヘドバン』創刊号(2013年7月発売)。
※現在は販売しておりません。

阿刀:今となってはこれでよかったんじゃないかという。
梅沢:ああそうだね──たしかに。
阿刀:普通アーティスト担当の人間の立場からすると、今後どうなっていくかわからないグループに対し乗っかってきてくれる新規媒体で、ぜひ表紙でときたら、「どうぞどうぞ、ありがとうございます」となるところですけど、そうはならずに注文をしてくる。
梅沢:いやぁもう『ヘドバン』で1号目から取材していて、窓口はレコード会社だけど、KOBAMETALと色々やりとりをしていたから、彼のBABYMETALのブランディングの徹底具合は凄かった。あれがあったから今の立ち位置があるんじゃないかっていうくらい凄かった。
阿刀:それはなかなかできないですね。
梅沢:そうなんだよ。普通だったら大歓迎するところを、次々すごい名前を挙げて表紙絵柄について交渉してきた気がする。これはハードル高い!って思った。
阿刀:それだけ信じているものがあったということですよね。それで、メインはBABYMETALに決まった、他の特集はどうしようか──というのは?
梅沢:BABYMETALが鹿鳴館でX JAPANを流した、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」「紅月 -アカツキ-」でX JAPANのオマージュをしている、銅鑼を叩いて失神というのもYOSHIKIのオマージュ、ということは、これはもうX JAPANをやった方がいいと。でもメタル側からX JAPANをやるのって当時の音楽雑誌はなかったと思う。しかも、巨大過ぎて、もう解散したバンドだし。だから創刊号ではXがインディーズで出した『VANISHING VISION』再評価特集を入れた。デーモン閣下も、聖飢魔IIってガチ・メタラーから離れた位置にいたし、KOBAMETALが昔から大好きだと話してたから、『音楽生活』の流れで吉田豪氏にインタビューを頼んで。そこに最後は、ガチ・メタラーの権化的存在でもある伊藤政則大先生を組み込んだ並びになった。
阿刀:割とすんなり決まったんですか?
梅沢:この並びは割りとすんなり決まった。サブカルっぽいという言い方も変だけど『音楽生活』からの流れで、メタル本とは言わずに、メタルをやるサブカル本のような感じはあったかなと思うんだよね。
阿刀:いきなり伊藤政則「メタルゴッド祝還暦!」ですか(笑)。
梅沢:日本のメタル・カルチャー的なものを、伊藤政則、X JAPAN 、聖飢魔IIがあってBABYMETALが、という流れで見せたかったというのはあるかな。それまでメタル側からそれをやったメディアはないと思うし、今はこうなんだよ、というのを打ち出した方がインパクトがあるかなと思って。

締め切り間際の断末魔

阿刀:インパクトといえば、ヘドバンの扉の原稿が激烈。
梅沢:それは締め切り間際の断末魔の叫びみたいなもので、あははは(笑)。扉原稿は一番最後に書くんですよ。最後、煮詰まって煮詰まって何回書いても煽る感じじゃないから、もう締め切りで寝てなくて深夜3時くらいのテンションで書いたもの。書いたらすぐにデザイナーさんに投げて、上がってくると、それなりに俺とデザイナーさんとの呼吸感があるから、そういうレイアウトをしてくれるんだよね。煽り過ぎたかなとも思うけど、雑誌って過剰なくらいじゃないとつまらない。やり過ぎたかな──とも思うけど、レイアウト込みでいいかな……という感じです。
阿刀:レイアウトしてくれる人がいるんですよね、読んでると梅沢さんが書いたそのままっていう感じです。
梅沢:あははは、まあ書いたのは俺だけどね。でも1号目で、そういう大扉のスタイルを作ったから、そのせいで大扉を作る作業は本当に辛い。
阿刀:ここ辛いんですか?
梅沢:辛い。今は3号に1号くらいしか書いてない。
阿刀:毎回載ってるイメージだけど。それくらい印象が強い。
梅沢:今は、ここのテンションに自分を持っていくのが辛い。だから今後『ヘドバン』が出て、大扉の煽り原稿が載ってなかったら辛いんだな──と思ってもらえたらと。でも、ここが『ヘドバン』の激アツな部分だって言ってくれる人もいるから、それがプレッシャーで。
40冊作って、中にはそういうテンションじゃない号もある。例えば最近だとVol.37アヴリル・ラヴィーンの号。メタルでもないし、ガチなパンクでもない、だから多分書いてないですね。BABYMETALとかはやりやすいけど。
阿刀: BABYMETALは自然とそういうテンションになって。
梅沢: BABYMETALって、既存のメタルに対するアンチテーゼみたいな部分で位置付けしてたじゃない、今は全然違うけど。だからそういう感じを自分の中に入れると煽れる、だから書きやすい。メタルって本当はこうだろ?って。
阿刀:読者を導いていきたいっていうことはあるんですか?
梅沢:それはないかな。今は音楽情報誌が成り立たない時代でしょ、SNSでインタビューとかも読めるしそれで十分。だから音楽雑誌としての特殊な感じを出さないとダメだと思う。そうすると、過剰な感じとか価値観があった方が刺さるかなというところを意識して。その一環で煽ったりを今はやってる。戦略というとカッコいいけど、音楽雑誌が生き残る術の一つとして刺さる感じに持っていきたいなとは思ってる。
阿刀:そのために脳みそをフル回転させて。
梅沢:そうだね、自分がヘドバンを40号出して振り返ってみて、それこそBABYMETALが稼働していない時期のヘドバンは色々なものをこねくり回して様々な企画を練って詰め込んでいるというか、自分のありったけの企画脳をぶちまけてる感じは出てるんじゃないかな。
阿刀:いつも心配になりますよ、濃過ぎて。
梅沢:最初に濃いのを作ってるから、薄いと売れないんじゃないか──っていう感じがして、もう病気だよね。バーン・コーポレーションに入る前は競馬とかパチンコとかのギャンブル雑誌やエロ本を出している出版社にいたんだけど、そこの営業の人が自社の雑誌をパラパラと見て、「こんな薄いの売れるわけねーだろ」っていうのが口癖でさ。それがずっと頭に残っていていて。実際そうだったし、それがあるから必要以上に濃くしてるんじゃないかな。

BABYMETAL、世界へ

2023年10月26日に発売された『ヘドバン』は第40号、創刊10年を迎えた。40号ではその10年間を振り返る──という企画も考えたそうだが、過去を振り返るのはやりたくないということで40号は現在のシーンを代表する形に収まった。詳細はこのトーク・イベントの最後に譲るとして、別角度から阿刀さんが『ヘドバン』の10年に切り込んでいく。

阿刀:『ヘドバン』10周年なので、一番売れた号って聞いてもいいですか?
梅沢:多分1号目が5刷りくらい行ってるかな。で、SU-METALの初のロング・インタビューが載ってる3号目もたしか5刷り。10号目までは2刷り3刷りを繰り返して、割とBABYMETALがシーンを駆け上がっている時と重なったのかな。
阿刀:5刷りまでいく凄さって何か表現できます?
梅沢:出版に携わった人ならわかると思いますけど、最初に部数が少ないとすぐに売り切れて、その後すぐに重版出来になる。創刊号なんて海のものとも山のものともつかないから最初の部数はすごく少なかった。だからすぐに重版がかかった、それも割と大量の重版だったと思う。10号目以降からは最初から部数をかなり乗せてるからあまり重版はかかってない──ということで。3号目が一番売れたのかな。
1号目から3号目って割とサブカル路線が強いっていうか。吉田豪氏とかを大フィーチュアして自分の中ではサブカル的な路線でメタルに切り込んで──という感じ。そこにBABYMETALが入ってくるミックス感が初期は強いと思う。で3号目はBABYMETALの2014年の武道館2days(3月1日、2日)の直前に出した。それで武道館2daysの最後に、BABYMETALが 「海外に行きます」となって、あの辺から『ヘドバン』もBABYMETALがメタル本場に侵攻を仕掛けるとなったから、うちもサブカルやってる場合じゃない!という自分の中の方向転換があったと思う。読んでくれてた人は気づいたと思うけど。
阿刀:正面から向き合わないと。
梅沢:そうだね、ネットでもBABYMETALがメガデスとかアンスラックスとかいろんなバンドと一緒に写ってる写真が上がって、LOUDPARKにBABYMETALが出たときなんかは賛否両論だったけど、海外に行った時に海外勢が一斉に賛辞を送った。「ヘドバン」を作ってる方としては、〈間違ってないし、こっち側に行かなきゃダメだ、メタル側からBABYMETALを見せていかないと、それが正しいことだし、それを打ち出していかないとBABYMETALを扱うメタル雑誌として正しくない──〉と思った。それは覚悟を決めた感じかなと。
阿刀:いじわるな質問ですけど、徐々にBABYMETALの結果が出てきて安心した部分ってあるんですか?
梅沢:それは正直あると思う。BABYMETALのチームもメタルと真正面から向き合ってるから、ガチメタル勢からの賛否をしっかりと受け止めていて。その中でも一つの大きな転機というか象徴的な出来事は、2016年の〈Alternative Press Music Awards〉でロブ・ハルフォードと共演したことじゃないかな。あのライヴ写真や映像を観たときに〈ずっとメタル側から応援してきてよかったな〉という気持ちになったかな。だって、メタルというジャンルを作った1人であり、メタル・ピラミッドの頂点に立つメタル・ゴッドが認めた、しかもBABYMETALをオマージュした赤と黒の衣装をわざわざ作って共有したというのは一つの答えになった。あとはメタリカ韓国・ソウル公演のスペシャル・ゲストかな。日本のバンドがメタリカのフロントアクトに付くなんてことはたった一度もなかったからね。それが、BABYMETALがスペシャル・ゲストに出るなんて異例中の異例だから。
阿刀:あの気持ち良さはたまらなかったですよね。
梅沢:そうね、言葉は悪いけど、BABYMETALを否定していたガチ・メタル勢に対してざまあみろって感じで(笑)、阿刀くんもメタルの中にいる人じゃないけど、その気持ちはわかるよね。
阿刀:わかります。
梅沢:2015年くらいからYUIMETALが脱退する2018年くらいにかけてのBABYMETALの一連の海外進出とガチ・メタルへの侵攻は、間違いなくメタル史に刻まれる大きな大きな出来事じゃないかと思っていて、それを本に閉じ込めることができたから本当によかったと思う。
阿刀:余すことなくちゃんと盛り込んでますね。
梅沢:この歴史的出来事を『ヘドバン』がちゃんと捉えなきゃダメだろうって思いながら作ってたから。

『ヘドバン』は本誌以外にも別冊、スピンオフなどのアイテムを残している。別冊の『史上最高の英国メタル・フェス完全レポート』では “SONISPHERE" フェスのメイン・ステージに立ったBABYMETALのレポートを掲載、梅沢さんは「俺自身の利益はゼロなんだけど、やった意味はあった。ちゃんとここまでフォローしてる雑誌はなかった」と述懐。『ヘドバン・スピンオフ「日本が世界に誇るメタル」欧州進撃追跡レポート号』では人間椅子とBABYMETALを表紙で絡めた号。それぞれの欧州でのライヴに密着した大特集となった。
阿刀:では梅沢さんが思い入れのある号というのは?
梅沢:最初から最後までのパッケージとしていいのができたなと思ったのは『ヘドバン Vol.30』(X『jealousy』30周年メモリアル特集)と、『ヘドバン Vol.34』(レッチリ! Dragon Ash! BABYMETAL!『ヘドバン』なりの「ミクスチャー・ロック」大特集号!)の2冊かな。
阿刀:そりゃまたなんで。
『ヘドバン』Vol.30(2021年6月発売)。

“世の中をヘッドバンギングさせる本”『ヘドバン』、8年がかりでVol.30到達! 華を添えるのは…X『Jealousy』! BABYMETAL! ZI:KILL! GASTUNK!
※現在は販売しておりません。
『ヘドバン』Vol.34(2022年6月発売)

レッチリ! Dragon Ash! BABYMETAL! Vol.34は『ヘドバン』なりの「ミクスチャー・ロック」大特集号!
梅沢:『ヘドバン Vol.30』は、X『jealousy』のメイン特集があって、Xが当時やっていたエクスタシー・レコード所属の弟分でZI:KILLという解散してしまったレジェンド・バンドの元メンバーたちのインタビューをダメ元で申し込んだらOKが出て話してくれ。GASTANK特集もやっているけど、GASTANKもXと繋がってる、BABYMETALもXのオマージュをやっていてある意味繋がってて──という意味で一冊丸々全部がX/X JAPANと繋がってる。ちゃんとレアなインタビューも取ってるし、パッケージとしても自分の中でいいかなと。
『ヘドバンVol.34』のミクスチャーに関しては、今のメタル/ラウド・シーンの先取りをしてたな──と自分の中では思ってる。いつかDragon AshのKjのインタビューを載せたいなと思っていたけど突然載せるのは違和感があるし──でもレッチリのアルバムも出るし、BABYMETALは活動していなかったけど、KOBAMETALって割とミクスチャーも好きだから、そこも絡めて作りたいなと思った。それ以外のバンドも全部ミクスチャー系で固めようと自分が当時チェックしてたSOUL GLOやHo99o9とか、Paleduskとか、全部パッケージングでミクスチャーとして見せられた方がいいかなと。いいのが作れたと思います。表紙にはレッチリのマークも混ぜてね。花冷え。も表紙の中にいるしレイジもいるし。
雑誌はあまり先取りしても届かないからしょうがないけど、一つのテーマがあれば先取ってもパッケージングできる。パッケージを作ることは『ヘドバン』を作る上ですごく意識していて、一つの大きな軸、流れがあることは音楽雑誌の中で生き残っている術かな。
阿刀:逆に一番悩んだのはどの号?
梅沢:最新号かな(笑)。BABYMETALを表紙、花冷え。を裏表紙にするのは美しいな──と今年の頭から自分の中ではず~っと思ってて。で、人間椅子はBABYMETAL、花冷え。と並ぶくらいに日本のバンドとして自分も好きだし、出したい。それ以外のもう一つはカーカスというか掟さんで、掟ポルシェあってのカーカスだから(笑)。それは出したいと思って、他をどうするか?というのが悩んで辛かったですね。
色々なライヴハウスに行く中でVMOとKNOSISが出ていて、これはうちでやりたいとすぐに取材をオファーした。その時たまたま大阪に花冷え。を見に行ってたから、そこでVMOにインタビューして──と次々といろんなものがたまたま繋がって混ざってきた感じ。
この号に関しては自分で勝手に40号10周年到達記念なんて言い出しちゃったから、これはヘタなものは出せないなって(笑)。本当は『ヘドバンが見てきた40年のメタルのヒストリー』とかやろうとか思っていたの。記念号ってそう感じでしょ。最初はそういうのも考えてたけど、作っている途中からそういう過去を振り返るのはやりたくないと思って。メタリカの『「セイント・アンガー」20周年』は過去だけど、それ以外は最新のもので固めたいと思った。BABYMETALを中心にしてきた本じゃないですか、ダサいのはつくりたくないし、〈見ていて『ヘドバン』はなにか違うな〉と思わせたいというのはVol.40もめちゃくちゃ意識して作った。

10周年到達記念40号のバックヤード
梅沢:じゃ最後に言ってなかったことを。なんで『ヘドバン』がBABYMETALとか花冷え。を推すのかっていうと、花冷え。は阿刀くんがツイッターに上げてくれた曲「令和マッチング世代」に俺すぐ飛びついたじゃない? あれは俺がBABYMETALを「いいね!」で飛びついて、なんだこれは?って思ったのとまったく同じなんだよね。「令和マッチング世代」を最初に聴いた時に、これ本人たちがやってるのかな? って思ったら、本人たちが作っていて、衣装も自分たちで作っていて、見られることの意識がちゃんとある。

BABYMETALはメタル・ダンスユニットだけど、俺の中では10年経ってやっとBABYMETALと同じ感覚──「なんじゃコレ!?」って感覚で飛びつけるのが出てきたというのが花冷え。で、事務所も決まってないのにインタビューした。そうやって、ココぞというときにアクセルを踏めるかどうかが編集者の全てだと思う。うぬぼれじゃなく、そこで踏み込んだというのが。
阿刀:あの時に反応したのは梅沢さんしかいなかったですからね。で、メジャー・デビューが決まったら、「阿刀さん、花冷え。がいいって言ってましたよね」という人が結構いて、(言い寄ってくるのは)このタイミングなんだ──って。
梅沢:その辺の自分のアンテナというのは『ヘドバン』の本質なんじゃないかな。これから来る!じゃなくて、コレ面白いな!っていうもの。それはBABYMETALも花冷え。も共通してる感じなんで。Vol.40で表紙/裏表紙でやったのは自分の中での一つの到達点かと思います。こんな感じの締めでいかがでしょうか。ありがとうございました。
阿刀:ありがとうございました。
(場内大拍手)

シンコー・ミュージック・ムック

ヘドバン Vol.40


『ヘドバン』創刊10周年記念+Vol.40到達記念=「ダブル記念特別号」は……新生BABYMETAL! 花冷え。! そして人間椅子! 『ヘドバン』を象徴する3組のアーティストを、増ページで分厚くして大特集!

創刊10周年イヤーを展開してきた『ヘドバン』ですが、その真打ちとも言える一冊がいよいよ登場! 創刊10周年記念でありVol.40到達記念……「ダブル記念特別号」です! 表紙巻頭は、新たな3人体制となった新生BABYMETAL! 3人体制初の撮り下ろし&超ロング・インタビュー掲載!

裏表紙&大特集は、今まさに海外で大沸騰状態なガールズ・メタルコアの花冷え。! そして、9月に新作を発売する人間椅子も大特集! 『ヘドバン』が圧倒的熱量で激推し続けてきた3組……つまり、『ヘドバン』10年史を象徴する3組が「ダブル記念特別号」のメインを飾ります!

◎掲載アーティスト
BABYMETAL/花冷え。/人間椅子/CARCASS/METALLICA『St.Anger』20th Anniversary/BARONESS/SLEEP TOKEN/SCOWL/PALEDUSK/KNOSIS/SWARRRM/VMO


ヘドバン Vol.40

A5判/256頁/定価:1,540円(税込)/9月中旬発売
ヘドバン・スピンオフ

ヘドバン・スピンオフ:ヘドバン的METALLICA来日祈願祭

1,540円
ヘドバン Vol.39

ヘドバン Vol.39 BABYMETAL

1,540円
ヘドバン・スピンオフ11

ヘドバン・スピンオフ LOVEBITES/BABYMETAL

1,540円
ヘドバン Vol.38

ヘドバン Vol.38 マネスキン

1,430円

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