第68回グラミー賞授賞式、今年の受賞者たちの合言葉は「ICE out」

今年で第68回目となるアメリカ音楽界最高峰の栄誉の祭典、2026年度グラミー賞の授賞式が2月1日、カリフォルニア州ロサンジェルスのクリプト.コム・アリーナで開催されました。トランプ政権が強行する苛烈な移民政策により、ICE(アメリカ移民・関税執行局)によるアメリカの一般市民を巻き込んだ悲惨な事件が続発する只中で行なわれた式典では、受賞者として登壇したバッド・バニー、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ディーンらが、それぞれのスピーチで移民代表としての自身の見解や、ICEの蛮行に対する明確な批判を表明しました。

この夜最大の栄誉を手にしたのはバッド・バニーで、アルバム『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』が年間最優秀アルバムに選出され、この部門におけるラテン・アーティスト史上最初の受賞者となりました。彼は更に最優秀ムジカ・ウルバナ・アルバム賞(Best Música Urbana Album)と最優秀ミュージック・パフォーマンス賞にも輝きました。

彼がとりわけ直球で痛烈な言葉を口にしたのは、この最優秀ムジカ・ウルバナ・アルバム部門の受賞者として登壇した時で、開口一番、「神に感謝を捧げる前に、まず言わせてください、『ICE out』」と発して拍手喝采を浴びました。

かねてからトランプ政権批判を繰り返し、自身のショウの観客がICEの標的にされるのではとの懸念からアメリカ国内でのツアーを断念したと言う彼は、更に言葉を続け、ヘイトを煽る行為に対して熱のこもった異議申し立てを行ないました。「昨今は何かを憎まずにいることが難しくなっています。でも憎しみは更なる憎しみを得てどんどん力を増して行きます。憎しみより強い唯一のものは愛です。だから、僕らは違う道を選ばなければなりません。闘うなら、愛をもって闘いましょう。彼らを憎むんじゃないんです。僕らはこの国に暮らす人々を愛し、僕らの家族を愛する、それが僕らの闘い方です──愛をもって。どうかそのことを忘れないでください」

彼同様、頻繁にトランプ政権に対する批判を口にしているビリー・アイリッシュは、先日もミネアポリスにおけるICEの強硬策に声をあげていましたが(1月22日MLCニュース参照)、自身が受賞した年間最優秀楽曲賞でのスピーチは、熟慮の末にごく端的なものとなった印象でした。「盗んだ土地では誰も不法ではありません」(=アメリカは元々ネイティヴ・アメリカンが住んでいた土地を入植者たちが奪う形で作られた国である)と語ったアイリッシュは、こんな時代には一体何をどうすればいいのか、判断がとても難しいと言葉を続けました。
「ただ私たちは、とにかく闘い続け、声を挙げ続け、抗議し続ける必要があると思っています。私たちの声には間違いなく意味があり、一般市民にも力はあるのです」。アイリッシュはそう結んだ後、ステージを去る前にこう言い放ちました。「Fuck ICE」

●OLIVIA DEAN Wins BEST NEW ARTIST | 2026 GRAMMYs Acceptance Speech

最優秀新人賞を受賞した英国生まれのシンガー・ソングライター、オリヴィア・ディーンは、受賞スピーチの最後に、自身もまた移民3世であることを明かしました。「私自身が(国を出て海を渡り、新たな土地で新たな生活を築き上げようと試みた彼らの)勇敢さの賜物であり、彼らは祝福されるべきだと私は思います」

ケンドリック・ラマーとの共作「luther」で年間最優秀レコード賞を受賞した後、バックステージで記者たちに囲まれたSZAは、堰を切ったように話し出しました。「これってなんだかもの凄くディストピア的だよね、私たちがこんな風に着飾って、世俗的な世界の栄誉を享受してる一方で、ストリートでは一般市民が突然拉致されたり、真正面から撃たれたりしてるんだもの」。彼女は続けて、「憤りと絶望」を感じるのも当然だけれど、自分は決して諦めないと語りました。
「今はコミュニティとしてみんなが深く考えて、学ぶべき時だと思うのよ。OK、誰か他の人間をアテにしてる場合じゃないんだ、私たちが自分たちの手で、隣人たちや自分自身を護るんだってね。互いに声を掛け合って、言ってみればモラル・ブースター(士気を高める存在)になること、互助って発想を広めること、そしてお互いに気に掛け合い、面倒を見合うってことよ、」彼女は言います。『ファックICE』っていっつも言っちゃうけど、これってただの合言葉みたいなもので、私はとにかくみんなに絶望して欲しくないのよ。だってやる気を失ってしまったら、変化を起こすことは不可能になっちゃうから。だからね、みんなにも頑張って踏み止まって欲しいんだ。私は絶対黙らない」

メインのTV中継が始まる前に、最優秀R&Bパフォーマンス部門で受賞者として登壇したケラーニは、スピーチの最後に一言、「Fuck ICE」と叫びました。そしてシャブーズィー(Shaboozey)は初めて手にしたグラミー賞──最優秀カントリー・デュオ/グループ・パフォーマンス部門において、ジェリー・ロールとの共作「Amen」で受賞──を、「移民の子供たちに」捧げる、と表明しました。ナイジェリア出身の両親を持つこのカントリー界のスターは、こう言葉を続けます。「この賞はまた、より良いチャンスを求めてこの国にやって来て、みんなに自由を約束し、努力を厭わない誰もに公平なチャンスを与えてくれるこの国の一部になろうとしてきた全ての人々のために与えられたものです。あなた方のカルチャーを、あなた方の音楽を、物語を、そして伝統を持って来てくれてありがとう。あなた方がアメリカに彩りを与えてくれるのです」

●Gloria Estefan at 2026 Grammys: 'I'm scared of what I'm seeing' in the US
グロリア・エステファンはバックステージで記者たちに、アメリカの現状に驚きと不安を感じていると語りました。過去5回のグラミー賞受賞歴を誇り、今年も『Raíces』で最優秀トロピカル・ラテン・アルバム賞を獲得した彼女は、「私たちの政府が人権に対する私たちの請願に耳を傾けてくれることを」願っていると言います。「怖いわよ、とても不安だわ。何の制限もなく誰でも国境を越えて来て構わないなんて思ってる人たちなんていやしない、それにしたって今は犯罪者じゃない人たちまでが拘束されてるんだから。彼らにも家族があるし、この国に対して何十年と貢献して来た人たちなのよ。しかも取り締まりには小さい子供たちまで含まれてる。何百人という子供たちが収容所に入れられているのよ。非人道的にもほどがあるでしょう」

これらのスピーチに加え、アイリッシュと彼女の兄でありコラボレーターのフィニアス、ジャスティンとヘイリー・ビーバー、ブランディ・カーライル、ジャック・アントノフ、ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノン、マーゴ・プライス、サマラ・ジョイ等、数多くのアーティストたちが「ICE Out」(ICEは出て行け)と書かれたピンバッジを身につけてレッド・カーペットを歩く姿が見られました。
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『グラミー賞 2024』


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