元ジャパン他のリチャード・バルビエリ、久々のソロ作リリース

リチャード・バルビエリと言えば、その独特な質感的革新性でジャパンのサウンドを際立たせ、後にはポーキュパイン・トゥリーのサウンド形成にも一役買ったシンセシスト。その彼が、4月10日に新たなソロ・アルバム『Hauntings』をリリースします。ソロとしては2021年の『Under A Spell』(2020年12月18日MLCニュース)以来久々のフル・スタジオ作となります。

今作『Hauntings』でバルビエリは、過去数十年にわたる経験を駆使し、時間と知覚について、ひとつの一体化した考察へと昇華させている印象です。アルバムは殊更に技巧を強調することなく、雰囲気やディテイル、エモーショナルな共鳴にプライオリティが置かれています。それは、華々しさよりも繊細さを、即効性よりも深みを一貫して重視してきた彼のスタイルの軌跡の延長線上にあるものです。

バルビエリは全11曲にわたり、アナログとデジタル合成の幅広いパレットを駆使して、音世界を築きあげて行きます。アルバムのオープニング曲「Snakes & Ladders」は不安な空気を作り出し、「Anemoia」は自分では生きたことのない時代に対する憧れというコンセプトそのものに傾倒しています。「Victorian Wraith」と「1890」は霧が立ち込める中、濡れた石畳にちらちらとガス灯の光が反射する19世紀のロンドンを想起させ、続く「Paris Sketch」ではグレイン・テクスチャーのベル・エポックの夢想へとフレームを転じるのです。
 
それ以外の曲では、バルビエリの視点は未来へと向かいます。「Artificial Obsession」、「Traveler」、「A New Simulation」といった曲では、タイトなコイル状のリズム・パターンと広がりのある和声的空間との対比により、現代社会に脈打つ不安が表現されています。アルバムの中では時に厳粛なまでの空気も醸し出されながら、メロディと抽象的概念の相互作用の合間には折々高揚感も顔を出します。「Reveille」や「Last Post」といった短めの曲はトーン調整のための間奏曲として機能しており、アルバムのコンセプト的なまとまりを強化する役割を持っています。

『Hauntings』オフィシャル・トレイラー動画はこちら。

作品の中心的建築家はあくまでバルビエリですが、ドラムスとパーカッションのモーガン・アグレン、ベース・ギターのパーシー・ジョーンズ、トランペットのルカ・カラブレーゼもまた『Hauntings』の鍵を握る貢献を果たしています。バルビエリの緻密に計算し尽くされたエレクトロニックな設計に対し、彼らのパフォーマンスはオーガニックな対位法で応え、それがレコード全体の内省的な焦点をブレさせることなく、更なる深みとメリハリを与えているのです。

バルビエリが築いてきたコンテンポラリー・ミュージックにおける名声は、1970年代半ばにスタートさせたキャリアがベースになっています。1957年11月30日生まれの彼は1975年、デヴィッド・シルヴィアン、ミック・カーン、スティーヴ・ジャンセンらと共にジャパンを結成。デビュー当時英国では殆ど注目を浴びることがなかった彼らですが、日本で早々に商業的な成功を収めた後、1981年の『Tin Drum』で一気に幅広い層から評価を得ます。バルビエリのプログラミングとテクスチュアにおける独自のセンスは、アート・ロックと当時出てきたばかりだったエレクトロニック・ミニマリズムの融合による特徴的なアルバムのサウンド形成の立役者でした。ジャパンは1982年のワールド・ツアーを最後に解散しましたが、彼らの影響はヒューマン・リーグ、デュラン・デュラン、ゲイリー・ニューマンからトーク・トークまで、幅広く認知されています。
 
グループ解散後、バルビエリはレイン・トゥリー・クロウ・プロジェクトやジャンセン/バルビエリやジャンセン/バルビエリ/カーン名義での数々のリリースでジャンセン、カーン、シルヴィアンと更なるコラボレーションを重ねました。また、イタリア人シンガーのアリスやブリティッシュ・アート・ポップ・グループのノー・マンとも仕事をし、後者で初めてスティーヴン・ウィルソンと出逢います。
 
1993年、バルビエリはポーキュパイン・トゥリーに加入し、以来ウィルソンと並んでバンドの最長在籍メンバーとなっています。彼のキーボード・ワークは『In Absentia』『Deadwing』『Fear Of A Blank Planet』、そして2022年の『Closure/Continuation』といったアルバムの基盤としてしっかりと埋め込まれています。ポーキュパイン・トゥリーがそのサイケデリックなルーツからプログレッシヴ・ロック、更にはよりヘヴィな地平を目指して進化していく中で、雰囲気と構造の両方を形成することのできるバルビエリは一貫して不可欠な存在であり続けているのです。
 
2005年の『Things Buried』から始まった彼のソロ作のカタログは、彼にとってはよりパーソナルなテクスチャーとムードの探求を突き詰める場となっているようです。『Stranger Inside』や『Planets + Persona』といった作品からは、物語に基づいたシークエンスとテーマの連続性に対する彼の興味が強まっていることが窺えます。2017年から18年にかけて制作された “The Variants EP” シリーズでは、インプロヴィゼーションとリワークされた楽曲が並べられており、ヴァリエーションや聴覚的再解釈に対するバルビエリの飽くなき好奇心が明確化されることとなりました。

Richard Barbieri
『Hauntings』
1. Snakes & Ladders [05:33]
2. Anemoia [05:09]
3. Victorian Wraith [03:02]
4. 1890 [03:58]
5. Artificial Obsession [05:07]
6. Paris Sketch [05:47]
7. Perfect Toys [03:48]
8. Traveler [05:41]
9. Reveille [01:54]
10. Last Post [02:23]
11. A New Simulation

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『JAPAN The Photo Sessions』

2026年3月27日発売

・予価:19,800円(税込) 世界限定600部
・上製(ハードカヴァー)/BOX入り/シュリンク包装
・スティーヴ・ジャンセン&リチャード・バルビエリ直筆サイン入りカード付
・A4判 224ページ
・ISBN:978-4-401-62308-2
・発行:株式会社シンコーミュージック・エンタテイメント

【S.M.R.S.(SHINKO MUSIC RECORDS SHOP)『JAPAN  The Photo Sessions』特別販売ページ】
※予約は2026年2月27日(金)午後2時より予約開始いたします。
※JAPANのオリジナルロゴの入ったレザー・トレイをS.M.R.S.限定特典でお付けします。レザー・トレイは、S.M.R.S.とイヴェント販売時の限定特典です。一般販売には付きません。

商品詳細
リチャード・バルビエリ
『Chosen Spells』


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商品詳細
リチャード・バルビエリ
『Introducing... Richard Barbieri』


Amazon Music(JUN 16 2017)
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