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スティーヴ・クロッパー、クラプトンやブライアン・メイ他豪華ゲスト参加の遺作『Watching The Tide』8月リリース決定

スティーヴ・クロッパー&ザ・ミッドナイト・アワーのアルバム『Watching The Tide』が8月28日に「Provogue/Artone Label Group」からリリースされます。これは2025年12月にこの世を去ったスティーヴ・クロッパーが生前完成させていた遺作であり、エリック・クラプトン、ブライアン・メイ、ビリー・ギボンズ、ロニー・ウッドをはじめとする多数のコラボレーターが参加しています。
このアルバムは、クロッパーのアメリカン・ソウル、リズム&ブルース、ロックとの長年にわたる関係の延長線上にあると同時に、アーティストとしてのキャリアにおける集大成という意味でも重要な作品と言えます。グラミー賞にノミネートされた2024年のアルバム『Friendlytown』の後、クロッパーはジョン・ティヴェンから次のアルバム制作を促されたと言い、そのティヴェンは最後のレコーディングに臨んだクロッパーの様子を、新たなクリエイティヴ・エナジーに満ちていたと証言しています。彼の死のわずか数週間前に完成した『Watching The Tide』には、そのエナジーのほとばしりが確かに映し取られており、いわゆるアーカイヴ作品とは異なる、彼の晩年の集大成として位置づけられるべきものです。

本作の曲作りはコラボレーション・ベースのアプローチに基づいて行なわれ、レコーディング作業はナッシュヴィルのRCAスタジオCで、ロジャー・C・リアリー、アナ・グロッシュ、ニオシ・ジャクソン、エディ・ゴアを擁するザ・ミッドナイト・アワーのメンバーを主体に進められました。アルバム・タイトルは、クロッパーがかつてオーティス・レディングと共作した「(Sittin' On)The Dock Of The Bay」からの引用で、彼のスタックス時代のレガシーと、後年の作品との繋がりを強調する意味が込められています。

本作の目玉のひとつが、エリック・クラプトンのギターがフィーチャーされた先行シングル「Ticket First」。この曲は、クロッパーが冗談めかして語った、願いを叶えてくれる精霊の話をベースに、ソングライター兼プロデューサーのジョン・ティヴェンとヴォーカリストのロジャー・C・リアリーと共に本格的な楽曲へと発展させたものです。このセッションの方向性を決めたのが、ナッシュヴィルで録音されたクラプトンのパートで、彼が何度もテイクを重ねていくうちに、曲の構成と雰囲気を劇的に変えるギター・パートが完成しました。
Ticket First
スティーヴ・クロッパーのキャリアは、現代のソウル・ミュージック及びロック・ミュージックの歴史とほぼ一体と言っても過言ではありません。ブッカー・T&ザ・MG'sの創設メンバーであり、スタックス・レコードのサウンドの中核を担っていた彼のギター・プレイは、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴをはじめとする多くのアーティストのレコーディングの決め手となっていました。また「(Sittin' On)The Dock Of The Bay」「In The Midnight Hour」「Knock On Wood」といった名曲で発揮されたコラボレーターとしての力量は、リズム&ブルースを世界的な音楽へと押し上げたソングライティング革命の中心人物という彼の立場を確固たるものにしたのです。

クロッパーは数十年にわたり、セッション・ミュージシャン、プロデューサー、コラボレーターとして精力的な活動を展開し、ジョン・レノンからロッド・スチュワートまで、数多くのアーティストと共演しました。『Friendlytown』や『The Midnight Hour』のレコーディングなど晩年のプロジェクトでも、80代になっても尚衰えることのないスタジオワークへの情熱を示していました。

なお、『Watching The Tide』はクロッパーの生前に制作作業自体は完了していたものの、死後にリリースされる作品という、意図や作者の帰属についてしばしば疑問を呈されることがあるジャンルに属しています。が、今作の場合、共同プロデューサーのジョン・ティヴェンは、クロッパーが亡くなる前にミックスを聴いて承認し、最終的なヴァージョンに近いものを聴いていたことを強調しており、クロッパーが亡くなる直前の数日間も、見舞いに訪れた人々に自らその音源を聴かせていたという証言もあります。自身の手で完成形を世に出すことは叶いませんでしたが、限りなく完成に近い状態に至るまで立ち会った作品であるという意味で、アーティストの創作活動が途絶えてから長い年月を経た後に制作された、数多のアーカイヴ作品とは一線を画すものと捉えることが可能でしょう。

『Watching The Tide』は、スティーヴ・クロッパーの芸術的なスタジオ・ワークが記録された最後の作品であり、アメリカ音楽界において彼が果たした礎としての役割から始まって、ロック界屈指の著名ミュージシャンたちとの共演による最後の創造的な爆発へと繋がって行く様子がそのまま収められています。それはメンフィスのスタックス・レコードで幕を開け、ナッシュヴィルで終章を迎えたひとりのレコーディング・アーティストの人生そのものの投影であり、彼がそのキャリアの中で磨きをかけてきた技巧、コラボレーション、そして音楽的なストーリーテリングに対する飽くなきこだわりによって、見事に締めくくられた作品となっています。

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※編註

ここまでの内容(おそらくレーベルが作成したプレスリリースでしょう)が現地メディアで報じられたのは5月8日前後。しかしその後、5月13日にスティーヴ・クロッパー公式のインスタグラムとフェイスブックで、遺族サイドから「我々はこのリリースを認めていない」という声明が発表されました。

この文面から、現時点の舞台裏で何が起こっているのか正確なことはわかりません。「生前最後の作品」というお墨付きの取り合いをしているのか? はたまたレーベル/アルバム制作サイドが遺族の意向を無視してリリースを強行しようとしているのか? そうしたこととは関係なく契約/お金の問題が絡んでいるのか? いずれにせよ今後明らかになっていくものと思われます。

とはいえ故人の作品に関してのことなので、クロッパーのレガシーを汚すことのないような結末になってほしいものです。

商品詳細
Steve Cropper & The Midnight Hour
『Watching The Tide』


Amazon(2026/8/28)輸入盤CD
1. Tandoori Chicken
2. Ticket First(Feat. Eric Clapton)
3. My Angels Are Calling(Feat. Brian May & Billy F. Gibbons)
4. Until Now(Feat. Ron Wood)
5. Blood From A Stone
6. Here & Gone(Feat. Ana Grosh)
7. It’s Gonna Get Worse
8. Down & Out
9. Stand Right Here(Feat. Billy F. Gibbons & Ana Grosh)
10. Tipoff To The Ripoff
11. House Of Cards
12. Tandoori Chicken Part 2
商品詳細
Steve Cropper & The Midnight Hour 
『Friendlytown』


Amazon Music(AUG 23 2024 )
Amazon(2024/8/30)輸入盤CD
商品詳細
Steve Cropper
『Fire It Up』


Amazon Music(APR 23 2021)
商品詳細
ブッカーT&MG’s
『Green Onions』


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Amazon(2013/1/29)¥768
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