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【イベント・レポート】於:6月29日 @ 阿佐ヶ谷・LOFT A

カーネーション・直枝政広も出演『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』 出版記念イベント・レポート

この本を作ってみて、当時の新聞はかなり自由だったな、と思いました ── 大村 亨

大村亨・著『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』
写真左より美馬亜貴子さん、直枝政広さん、大村亨さん
『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』出版記念イベントが6月29日、阿佐ヶ谷のLOFT Aに於いて開催された。同書は1966年6月のビートルズの来日前後を「新聞」というメディアがどう伝えていたのかを検証した貴重な記録。イベントは二部構成で、一部は著者の大村 亨さんによる「新聞記事」にスポットを当てたレクチャー、二部はビートルズ・ファンとしても知られるカーネーションの直枝政広さんを交えてのトーク、ともに編集を担当した美馬亜貴子さんの進行で行なわれた。
【第一部】
新聞の「見出しトップ3」から感じる、66年という時代
大村さんによる「ビートルズと日本」シリーズも本書で4冊目。今回は全国紙5紙、スポーツ紙10紙、47都道府県の地方紙に掲載のビートルズ情報をこまめに探し出し、執筆に10ヶ月かかったことが冒頭で説明された。美馬さん曰く〈ちょっと狂気を感じる作業量〉でできあがった本書を通して、大村さんが気づいた点は〈当時の新聞はかなり自由だった〉こと。本書の取材を現代の新聞社から受けた際、現役の記者たちも「何でもアリだったんですね」と、ちょっと呆れていたという。

 スクリーンを使って「来日報道」「来日中の事件」「来日公演の立役者」などといったテーマで、それぞれの記事のトップ3が大村さんの感想とともに紹介された。
「来日報道 新聞の名見出しトップ3」



第3位『ビートルズ 暁の上陸」

(内外タイムス6月30日)

大村「やっぱりこの見出しは抜群にかっこいいです」
第2位『“抱きしめ”そこねたファン』

(報知新聞6月30日)

大村「曲名にちなんでます。でも3人の顔が何かおかしい。写真は多分合成じゃないですか」
第1位「平和を求める!」

(スポーツタイムズ7月1日)
大村「記者会見で、“あなたたちは名誉と財力を得たが幸せか。次に何を求めているか” と言う質問に対して、ジョン・レノンが『平和、ピース』だと答えた。 そこをちゃんと拾ってくれてます」
「来日中に起こった事件トップ3」


第3位:『屋上から逆さづり 金髪娘ホテルに朝がけ』(報知新聞7月2日)
大村「屋上の鉄格子の囲いの外で仲間に足を押さえてもらって部屋を覗こうとしていた──こんなこと本当にあったのかなって疑問です」
第2位:『ポール! わたしと見た東京の朝焼けを忘れないで』
(女性セブン7月20日号)
大村「藤堂ひろ美という署名と写真も掲載されていますが……。この記事を書かれた方に伺った話では、エレベーターで地下1階に降りてきた女の子に取材したということでした。『東京の朝焼けを忘れないで~』とありますが、この日は雨だったんですよ(笑)」
第1位:『変装して“脱出”』(日刊スポーツ7月2日)
大村「ジョンがホテルを抜け出して骨董屋に買い物に行った。この記事は買った物などかなり詳細に報じてます。変装っていうほどの変装ではないですが」

「来日公演の立役者トップ3」


第3位:読売新聞社社主、正力松太郎氏

「ペートルスというのは何者だ! 日本武道館公演でもめたビートルズ」
(サンデー毎日 6月12日号)

大村「この人がいたから来日が実現したわけではないんですけど、日本武道館使用に反対を唱えた人。会場問題で揉めた経緯などは今回この本に書きました」
第2位:ブライアン・エプスタイン氏
「ザ・ビートルズ陰の演出家 エプスタイン」
(北日本新聞7月9日夕刊)

大村写真は広報担当のトニー・バーロウを間違って載せています。でも記事そのものはなかなか面白いですよ
第1位:永島達司氏
(スポーツ毎夕6月15日)

大村「ビートルズ招聘の立役者はこの人しかいないです。他のアーティストからもすごく信頼が厚かった人。これはマニアックなネタですが、のちの〈GET BACK session〉でも “Get Back” でポールが “タツ、タツ、ナガシマ~♫” って歌ってます」

「どうでもいいニュース」とひどい記事

その他の「どうでもいいニュース」のコーナーでは、付き人マル・エヴァンズであろう人物が特殊浴場を訪れたのを目撃された記事や、公演初日の日刊スポーツ朝刊に掲載された「架空のライヴ・レポート」を紹介。見出しは「泣きシビれる観衆」とうたっていながら、実際は公演前に書かれた記事だった。また各新聞社が掲載している演奏曲目もデタラメが多く、大村さんは「東芝音工がビートルズ側に希望演奏曲目をリクエストしたものを元に書いたからでは」と推察。

「ひどい新聞記事」のワーストでは、デイリースポーツの座談会記事や東京スポーツの「くたばれビートルズ」記事、公演初日翌日の7月1日付け東京新聞朝刊掲載の「演奏曲目がメチャクチャのライヴレポート」が取り上げられた。大村氏は特に東京新聞の記事について、通信社が配信した原稿のため、全国の地方紙に同じ間違った情報が掲載されたことを指摘した。

─────────────

【第二部】
ビートルズ体験と来日公演検証

「重い内容の濃い本」──直枝政広

直枝:第一部で披露された面白い記事が当時のリアリティなんですね。僕は当時ビートルズを見た文化人たちの意見が面白く、興味深かった。絶対的に否定する作家がいる一方で、わかってる人はわかってるなって。まずは岡本太郎。あの人は理解者でした。“理想像の一つ、騒がれるだけの魅力はある” と。
美馬: 感想も爆発してます(笑)。
直枝:“好きではない” と断ったうえで、なぜ騒ぐのかというのが分かると言ってます。

さらに、官能小説家、川上宗薫による作品『肌色あつめ』の話題に。実際のビートルズ公演を観て激しく騒ぐ女の子たちに感激したという観点。東京スポーツに連載されていた作品で、小説の主人公もビートルズを観に行くといったドキュメンタリー的な内容になっていると直枝さん、大村さんの間で話が盛り上がった。



直枝さんのビートルズ体験談‎
1959年生まれの直枝さんは、ビートルズ来日当時まだ6歳で1966年の騒動の記憶はなく、『ウルトラQ』『ウルトラマン』などのテレビ番組に夢中だった。音楽は中学2年頃からグループサウンズにハマってタイガースのファンに。他にはザ・フォーク・クルセダーズなども聴いた。エレキギターはボール紙を切って自作、弾く真似をして遊んだりもしたが、ビートルズのことは知らなかった。その後ヴェンチャーズを通してビートルズと出会い、60年代の全盛期の後、70年代に入った彼らのレコードを遡って聴いたと言う。

直枝:中学に入ってみんながギターを持ち始めたんですけど、そこで、実はビートルズもいいぜって話になった。歌もののビートルズが新鮮に映ったんですね。自分で最初に買ったビートルズは、友達から50円で譲り受けたシングル盤「ヘイ・ジュード」。微妙に遠回りですね。それからレコード店に通うようになりました。アルバムは『レット・イット・ ビー』から遡りながら。

ビートルズ来日公演には間に合わなかったが、70年公開の映画『レット・イット・ビー』から入った直枝さん。やさぐれ感と洗練の微妙なブレンドの〈大人のビートルズ〉を観た後では、来日当時の写真を見ても疼かなかったそう。

続いて大村さんが提供を受けた秘蔵映像『1966年7月1日夜に日本テレビでオンエアされた同日の昼公演』が断片的に上映された。


直枝:(武道館の演奏の映像を観て)ギターの鳴らし方とか、逆に今いろんなことが分かってくると、モニターもないステージでよくやったな、どうしてこんなことできたんだろうって感動がありました。ファン目線で見てもとんでもない発見があって、すごく上手かったり、いい意味で手を抜いて、歌が始まるとリフに戻ってくるジョージの臨機応変さが分かったり。そんなのは後から気づいたことですよね。 
美馬:7月1日の夜オンエアというのは、もう〈撮って出し〉なんですよね
大村:多分撮りながら、編集・スイッチングもやったんじゃないですか。
直枝:初日(6月30日)は半音下げてやったけど。
大村:二日目(7月1日)はオリジナル・キーで、張りもありますね。
直枝:なんかとてもいいなと。 これは YouTube で見たんですけど、初日の映像で12弦ギターを半音下げで弾いてるのも見事でした。 よくチューニングが合うな、手間が大変だったろうな。
大村:やったのはマル・エヴァンズですね。
直枝:演奏も日を追ってどんどん良くなっていくんです。最終公演の三日目(7月2日)の夜はすごく良かったと言われてます。
美馬:それは音源は残ってないんですか?
大村:映像は若干警視庁のフィルムに断片的に残っていますが、音源はないです。当時隠し録りした人がいない限り出てこない。



ビートルズ、ライヴ・パフォーマンスの分析‎

美馬:ビートルズのライヴの魅力や特徴は、どういうところにあるんですか?
直枝:フィーリングに溢れてるっていうか、やれることはやれる、演奏が上手いんですよ。だけど状況が許さないんです。遠くからちょっと反響で返ってくる音を聞きながら演奏してる。でも呼吸は合うんです。やってるっていう実感がすごくたくさんあるから、そこを見せつけられてる感じ。 今のバンドじゃ絶対できないマジックがあると思ってます。
美馬:長いドサ回りの賜物ですね。
直枝:本当に一緒に生活して、一緒に作ってきたっていう、それじゃないと出せないものだって見ながら感じます。
大村:モニターないですよね。 
直枝:ないですね。 
大村:リンゴは他のメンバーの身振り手振りに合わせて叩いてます。
直枝:相当お互いを信じてやってる。確か65年のハリウッドボウルの「アイム・ダウン」は、テンポが間違ってリズムがひっくり返るんだけどすぐ直してました。それすごいなと思った。「アイ・フィール・ファイン」でも、ジョンがリフを弾きながら歌うのがちょっときつくなると、今度はジョージがリフを一緒になぞる。いい意味で勢いとかグルーヴとか気持ちよさで、多分支え合ってるような気がするんです。 ただ、根っこがしっかりとあるから、みんな本当に上手い。

ここで秘蔵映像から「恋をするなら(If I Needed Someone)」を上映。ジョンが刻むラテンっぽいリズムや、ジョージの12弦ギターのサイケデリックな味わい、ポールの巧みなベース・フレーズ、などへの評価が語られた。当時ビートルズはすでにアルバム『リボルバー』を仕上げてからの来日だった。



1970年代の音楽雑誌文化とレコード購入体験

大村:直枝さんがビートルズにハマってからの、70年代当時の話にすごく興味があるんです。まず周りにビートルズのファンってどのくらいいました?
直枝:クラスに4、5人はいました。
大村:情報交換とかは?
直枝:レコードを買っては、お互いに聞きに行ったりしてましたね。
大村:直枝さんは「ヘイ・ジュード」で、周りの方は何を買ったんですか?
直枝:ポリドールから出た「マイ・ボニー」の4曲入りコンパクト盤を持ってる奴がいて、100円くらいで譲ってもらった。あとは足りないものはみんな銀座ハンター(中古レコード店)で。ジュースを我慢してシングル盤を買ったり。小遣い貯めて毎月 1枚アルバム買ってました。シングル盤なら50円とか100円で買えた。
大村:ハンターはプライスカードがジャケットにホッチキスで止めてあった(笑)。

直枝:ブートレッグ(海賊盤)は雑誌『音楽専科』で特集されたのを読みました。何これ!?って、一般に発売されてないヤツで、こんなものがあるんだって知って、広告見て買い始めました。俺は新宿御苑前のディスクロードへ行ってました。店は後に西新宿に移るんですけど、夢をくれましたね。普通と違うところにもレコードは売ってるんだと知って、輸入盤屋を探したり音楽の聴き方を広げていった感じです。
大村:他に音楽雑誌は、何か買いました?
直枝:『ミュージック・ライフ』。俺が買ったのは73年のデヴィッド・ボウイ初来日の表紙号。それが最初に買ったロック雑誌です。『音楽専科』はビートルズの表紙でブート特集で買ったら、キンクスも紹介されていたり。ただあの頃って何故かキンクスのレコードは出てるはずなのに街のレコード屋では手に入らなかった。『ミュージック・マガジン』は高校に入った75年から。ブラジル音楽とかそういうのを聴くようになった。 同時にザ・バンドが『南十字星』を出したり、 音楽には割と大きくいろんな幹があって、全部が絡み合ってる──ってことを知り始めたのが『ミュージック・マガジン』。
大村:『ミュージック・マガジン』の中村とうようさんもビートルズの日本公演はご覧になってます。コンサート・レビューをクラシック系の雑誌に寄稿されてます。
直枝:どうだったんですか?
大村:ちゃんと評価はしてました。この間図書館で見つけました。 
美馬:大村さんの本を読まれての直枝さんの感想は?
直枝:なんでこんな勉強ができるんですか?
大村:勉強はしてないです。
直枝:10年で、こんなに本を出すのはすごいですよ。
美馬:私も担当して長いんですけど、毎回大村さんの狂気に驚かされます。
大村:それは、めちゃめちゃ褒め言葉ですよ。超嬉しいです。
直枝:それとね、なんかいい人だなと思ったのは、大村さん落語好きなんです。俺とも楽屋でずっと落語の話をして。こういう人はね、何やっても大丈夫。

◉この後、直枝さんがシンガー・ソングライターのKANさんと結成したビートルズ・スタイルの変名バンド、BAD LOOKSの激レア・ライヴ映像が上映された。メンバーは直枝さん(G. Vo)、KAN(G. Vo)、西嶋正己(B)、清水 淳(Dr)のBAD LOOKSがFM802の「MEET THE WORLD BEAT’98」に出演した時のもの。曲は「からまわる世界」。

◉続いて場内からの「質問コーナー」に移った。

Q:「ビートルズ武道館公演動員」について、公式発表は5万人でしたが実際は3万人くらいだったのではないでしょうか?
A:僕(大村)の知っている限り、統計資料は出ていないので、公演の写真などから推察するしかないですね。当時の販売方法では捌ききれずにチケットは余っていたと思います。ただ具体的な人数はわからないです。

◉最後に、1966年当時武道館公演で販売された「ザ・ビートルズ・ブック」を賞品としたジャンケン大会が行なわれ、大盛り上がりのイベントは終了。続いて大村さんと直枝さんのサイン会が行なわれた。

【開催概要】
『「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲』出版記念 トーク・ショウ

・日時:ビートルズの日 2026年6月29日(月)18時半開場 19時開演
・場所:阿佐ヶ谷 ロフトA
・出演:大村 亨(「ビートルズと日本」著者)/直枝政広(カーネーション)
・司会進行:美馬亜貴子
・企画・製作:MUSIC LIFE CLUB
「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲
前代未聞のビートルズ研究本!!
日本全国のビートルズ・ファンをうならせた
『ビートルズと日本』シリーズ第4弾登場!!


地方新聞では各地でビートルズ公演参加禁止を報道したり、ライヴ当日にはビートルズがホテルで使用したコップやタオルなどを販売するチラシがばら撒かれたり、当時の高校生のリアルなアンケートがあったり、来日後にはあれだけバッシングしていた新聞各紙が「メンバーはいい人だった」「ファンも不良ではなくいい子だった」と評価が変わったりとか、66年の来日の臨場感が満載。様々な角度からのビートルズ現象を描いた1冊。


ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲

B5判/440頁/3,850円(税込)
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