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【イベント・レポート】於:6月30日 @彩の国さいたま芸術劇場・小ホール
ザ・ビートルズ来日公演60 周年記念
[The Beatles レコード聴き語りLive]
レーザーターンテーブルでかけたレコードの歌声が、
この会場では天から降ってくる感じがたまらないです
──安田顕
二部構成の第一部はミュージック・ライフ・クラブから吉田聡志が登壇、60年前に流行っていた曲も交えながら、ビートルズ来日前夜の音楽シーンが解説された。
第一部 ビートルズ来日前の音楽シーン
♪「ロック・アンド・ロール・ミュージック」ビートルズ
吉田:ジョンのヴォーカルとご機嫌なジョージ・マーティンのピアノ。機関車が迫っ てくるようなすごい迫力を感じます。1965年にシングル盤が出た当時は、まさか日本公演の一曲目になるとは思ってもみなかったでしょう。そして1965年6月15日には、ミュージック・ライフ(以下ML)誌星加ルミ子編集長がビートルズとの単独の独占会見に成功します。
映画『ハード・デイズ・ナイト』が公開され世界中を席巻していた時代、マネージメント・オフィスからは《一切取材は受けない》と言われていながらも、あらゆる作戦を立てて取材を勝ち取ります。取材の際メンバーはとても日本に興味を持って大歓迎してくれたそうです。そしてなんとその後ビートルズがMLにコメントを入れてくれました。その生のビートルズの声がソノシートで雑誌付録についたんです。 当時どれだけインパクトがあったか、それを聴いていただきます。
♪「ビートルズ・メッセージ」ML誌1965年10月号付録ソノシート
吉田:今お聞きになった音声ではビー トルズのジョン・レノン、ポール・マッカートニー、そしてジョージ・ハリスンの順番で、ML読者の皆さんへのメッセージとして届いたものです。 1965年8月14日、ニューヨークにやってきましたビートルズがワーウイック・ホテルで特別に録音して送ってくれました。 三人とも異口同音に日本のファンの皆さんによろしくということと、最後のジョージは《いつかお会いできるのを楽しみにしています》と付け加えています。なぜか収録されたリンゴのコメントは洩れてしまいました。
そして1966年にはいよいよ来日の噂が高まってきます、その頃日本の音楽ファンはどんなアーティストに夢中になっていたのでしょう。ML誌1966年3月号には、毎年行なわれていた人気投票の結果が掲載されています。男性ヴォーカル部門はクリフ・リチャード、女性ヴォーカル部門はフランス・ギャル、インストゥルメンタル・ グループ部門はベンチャーズがそれぞれ1位。ヴォーカル・グループ部門はもちろん ビートルズが1位でした。まずはベンチャーズから聴きましょう。
♪「ダイアモンド・ヘッド」ベンチャーズ
吉田:そしてヴォーカル・グループ部門、1位はもちろんビートルズですけど、彼らに迫った人気を誇ったのはアニマルズ。彼らの代名詞の1曲です。
♪「朝日のあたる家」アニマルズ
吉田:カレッジ・フォークも当時人気でした。皆で歌うという形で広まった曲です。
♪「500マイル」ブラザーズ・フォア
吉田:こういった曲が流行っている間にもビートルズの来日の噂はどんどんどんどん広まって、その第一弾の来日決定情報が1966年4月末発売のML5月号に出ます。 表紙には「6月30日決定! ビートルズの来日」とありますが、中に赤紙がとじ込まれて「号外 6月28日に来日繰り上がる」となっている。インターネットのない時代の訂正はこれが一番早い情報修正でした。
来日公演で演奏される曲の予想も行なわれています。来日前に出たML増刊「ビートルズ来日特集号」には音楽評論家やラジオ曲プロデューサーが挙げた《演奏して欲しい曲》が載っています。1位「ヘルプ」、2位「ミッシェル」、3位「抱きしめたい」、4位「ア・ハード・デイズ・ナイト」、5位「イエスタディ」、これは「イエスタディ」以外はことごとく裏切られました。
一方、当時一番皆さんが情報を得ていたのがラジオ。TBSラジオ『ポップス・ベストテン』の1966年5月には「ガー ル」、6月には「ミッシェル」がチャートインしていました。どちらもアルバム『ラバー・ソウル』の曲ですが、当時この2曲を含む4曲入り500円のコンパクト盤が出ていたのでその影響受けてのヒットかも知れません。
♪「ミッシェル」ビートルズ
♪「ガール」ビートルズ
吉田:こういう風にスピーカーからの大音量で聴くのは僕もあんまり機会がないで すね。久しぶりに聴くとやっぱ低音とか音圧がすごいです。それではちょうど時間となりました、皆さんお付き合いいただいてありがとうございました。
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第二部 ビートルズ日本公演の映像を観て
第二部の司会進行はビートルズ研究家の藤本国彦氏が担当。ゲストの俳優・安田顕氏はビートルズ・ファンとしても知られており、レーザーターンテーブルの音は初体験。MCの紹介で「ミスター・ムーンライト」に乗って大拍手の中、藤本国彦さんと安田顕さんが登壇。
なお彩の国さいたま芸術劇場・小ホールは、センターのアリーナ席の周りを階段状の席が囲む造り。ビートルズの公演以来 “ロックの聖地” と呼ばれるようになった日本武道館をイメージさせる造りになっており、安田さんもそれを踏まえた挨拶を披露。
藤本国彦(以下、藤本):よろしくお願いいたします。
安田顕(以下、安田):第一部は、武道館のようなこの会場の3階席から観てました。今日はよろしくお願いいたします。(大拍手)
藤本:レーザーターンテーブルの音は初めて?
安田:先ほどサウンドチェックの時に聴かせていただいた時にぶったまげました。目の前に彼らがいるっていう、あの生々しさは何なんでしょう。凄いですね。
藤本:この後もじっくりと聴いていただくとして、安田さんは武道館公演については?
安田:もちろん藤本さんの書かれた著書とかでいろいろ勉強したんですけど、僕が中学3年生ぐらいの時に、日本テレビでビートルズの武道館公演をテレビで放送してくれたんですよ。その時の記憶で、ポールのマイクがずっとずれていて、「あれ!? 演奏どうした?」っていう印象が実はあります。
安田:後から、“これじゃいかん” ってビートルズは練習したとか、7月1日はすごくクオリティがいいとか、そういう話は聞きました。
藤本:演奏自体はご覧になっていかがでしたか。
安田:もちろんビートルズが大好きだから話すことなんですけど、やっぱり1964年の初のワシントンD.C.のアメリカ公演。あの時のリンゴ・スターのドラミングとか、ああいうものを聴いた時に、66年の武道館のリンゴのドラムがそれよりも躍動してないような印象を実は受けていて。 ロックバンドっていうのは、もちろん4つの楽器、そして声、すべて大事ですけど、何をもってロックかと言ったら、僕はドラムだと思ってるんですよ。やっぱりリンゴ・スターという人がキーを握ってた気がしていて。全部後追いですから、全部聴き比べた時に、日本というプレミアム感がなかったとしたら、武道館公演の映像は正直《どうしたどうした》っていう印象が あります。
藤本:私も同じです。スタジオで、あの『ラバー・ソウル』、その後の『リボルバー』というアルバムを作っていて。しかも『リボルバー』のレコーディングを全部完成し仕上げたのが6月23日、それで1週間足らずで日本に来てる。お聴きになった方は分かると思いますが、ライヴでは再現できないサウンドをスタジオで生み出していて、同時期録音のシングルの「ペーパーバック・ライター」のスタジオ・ヴァージョンと、日本公演での「ペーパーバック・ライター」ではやっぱり差がある わけです。しかもちゃんとしたPAもないし、今みたいにイヤモニもない。そういう当時の技術の限界もあったんですけど、それ以前にやっぱり気持ちがもうスタジオに向いてる。
安田:モチベーションですね。
藤本:それはやっぱり一つ大きかったかなと思います。安田さんが仰る通り、64年の初のアメリカ公演のリンゴのドラムはもうヤバいぐらい凄いですね。
安田:いや、ちょっとビビりました。
藤本:あの時は初めてのアメリカで、本当に勢いがある演奏を聞かせます。だけど日本は本当によく来てくれた──なんですけど、逆にギリギリで、その2ヶ月後にライヴを止めちゃいますからね。
安田:きっとライヴ演奏をするモチベーションが少し下がって、逆にレコーディングに対する気持ちがあって。《ダライ・ラマがお経を唱えるみたい~》という「トゥモロー・ネバー・ノウズ」がもうレコーディングされている状態で、それでもライヴ公演をしたいとなると、やっぱり行ったことのない国とか、星加ルミ子さんが住んでいる国に行きたいとか、日本というものに対する興味とか、そういうものがモチベーションとしてあったんだろうなっていう、そういう感じがします。
藤本:当時4曲入りコンパクト盤が500円という話が第一部でありましたけど、日本公演のチケットが一番高いので2,100円、あとは1,800円と1,500円。これはマネ ージャーのブライアン・エプスタインのいわゆるアジア戦略。とにかく安くということで、ギャラはとりあえず抑えてチケット代を安くした。
安田:なかなかできることじゃないですね、このご時世だと。
藤本:やっぱりビートルズにとっては本当に東洋のまだ行ったことがない国。でも幸いなことにジョン・レノンはすごく東洋に関心あったし、ジョージ・ハリスンはもちろんシタールを演奏したり東洋思想に関しては非常に関心が強かった。先日、読売新聞で102枚の写真が武道館から見つかったっていう報道があり、ジョンが抜け出して買った「福助人形」を眺めてる写真が掲載されてました。あれはその後 『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のジャケットに写ってます。
安田:でもちょっと髷の形違ってないですか。
藤本:二体って説もありますけど、おそらく一体。一緒の物だと思います。
安田:あぁそうなんですね。
藤本:今、ダコタハウスにありますよね。ショーンが家にあるって最近言ってまし た。
安田:ショーンは今、ダコタに居るんですか?
藤本:ショーンはダコタにいて、ヨーコさんはニューヨークのもう少し空気のいいところにいらっしゃるようです。
レーザーターンテーブル
安田:杉真理さんがFMの『ディスカバー・ビートルズ』で「ミッシェル」について話されてたんですけど、アルバム『ラバー・ソウル』のA面7曲目というのは一番内側だから、溝の関係で音が良くないんだけど、レーザーターンテーブルの場合はそれをクリアできるって。
藤本:できてます、最初から最後まで音が均等なので一つの売りですよね。「ツイスト・アンド・シャウト」もアルバムの最後じゃないですか。レーザー~はそこも音がいい。
安田:「ツイスト~」のジョンの声には心奪われますね。
藤本:一部で流れた「ガール」とかも凄い。
安田:ヤバいですよ、「ガール」とか二部の冒頭の「ミスター・ムーンライト」とか、心が持ってかれます。
ここで1966年日本公演のプログラムを手にして、海外の物に比べてその作りの良さや、4人のサインが入った頁はロード・マネージャーが代筆していた──ということが話された。
藤本:それではこの後、60年前にタイムスリップするということで。まず当時のそのままのビートルズのライヴ音源、1996年に発売された『アンソロジー2』収録の 6月30日のライヴ音源からまず二曲お聴きいただきます。さっきスタジオ版をお聴きいただいた「ロック・アンド・ロール・ミュージック」がビートルズの日本公演一曲目でした。ジョンが歌います。二曲目は「シーズ・ア・ウーマン」をポールが。 その二曲を続けてお聴きください。
♪「ロック・アンド・ロール・ミュージック」
♪「シーズ・ア・ウーマン」
安田:うわぁ、なんすかこの臨場感、やばいっすね。
藤本:歓声も凄い。
安田:72年にニューヨークでやった「ワン・トゥ・ワン」コンサートで、「カム・トゥゲザー」を歌った時の歌い方に、この「ロック・アンド・ロール~」似ていません?
藤本:似てます、似てます。
安田:あんまり練習しない時って、ああいう歌い方になるのかな。
藤本:実はビートルズのちゃんとしたオフィシャル音源で、武道館ライヴが残ってるのはこの二曲だけなんです。この後の三曲目以降は主催のエルプの竹内さんにご相談して、UKオリジナルや、モノ、ステレオとか、いろいろ拘って選んでいただいてます。私、あんまり深みにはまると大変なんで、はまらないいようにしてますけ ど。
安田:ワクワクします。聴きたいのはモノラルですよね。
藤本:モノ盤は結構買ってらっしゃいます?
安田:モノは一応買ってるんですけど。部屋でスマホを大音量でかけたら、出ていけ!みたいな(笑)、でヘッドフォンで聴くとそれはもう変わりはないわけで。だからこういう所で聴けるというのは夢のようです。
藤本:ということで、三曲目はジョージ・ハリスンが歌います。「恋をするなら(If I Needed Someone)」。今回は『ラバー・ソウル』のUKモノラル、1965年のプレスです。
♪「恋をするなら」
安田:うわぁすごい。うわ〜! いましたね。いたな4人。びっくりしたなぁ。生々しいですね。
藤本:4トラックだから。
安田:いっせーのせ、ドンってやらなきゃならないから。
竹内:生まれた時の姿がそのまま入ってるんですよ、この中に。だからいじくり回しも何もしてない。あるアーティストの方が “いわゆる音楽のタイムマシーンだ” っ て仰ってました。ここから出てくる音は60年前も今も一緒なんです。
安田:この頃のジョージの伸びって凄いですよね。「恋をするなら」から『リボルバー』では「タックスマン」でしょ。
藤本:ですよね。『ヘルプ!』まではキーボードも入りますけど四人編成のバンド。『リボルバー』ではエンジニアも変わって、歌詞にも深みが出てきます。次は「デイ・トリッパー」。「恋をするなら」と同じ時に録音されたシングル曲。今日はやっぱりUKのモノのシングル盤をかけます。
安田:やっぱり33回転と45回転では違いますか?
藤本:45回転の方が圧倒的にいいですね。
竹内:45回転の方が長いレンジで音を入れられるので余裕があるんです。情報量も多いです。
安田:じゃそれが聴けるんですね、やばいです「デイ・トリッパー」。
♪「デイ・トリッパー」
安田:もっとギター・ソロがぐっと前に出てくる印象があったんですけど、この45回転盤だとリズム隊の方が大きいような感じがします。
藤本:そうですね、ベースも非常にラウドです。
安田:音の分離がいいですね。この間、何かで読んだんですけど、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが、《ロック・ベーシストで凄いのはポール・マッカ ートニーだ》と言ってました。なぜかと言うと、リズム隊を逸脱してベースがメロディを弾いていて、ロックを進化させた──と。まさにこの辺りからその匂いが。
藤本:出てますね。
安田:でも、このクオリティを当時のライヴの技術で再現しようとしても、確かに難しいですよね。日本公演のお客さんは、騒げないんだけれども歓声は普通に出てますね。
藤本:出てましたね。では次5曲目に行きましょうか、「ベイビーズ・イン・ブラック」。『ビートルズ・フォー・セール』に入ってるちょっと渋い曲。予告ではヒット曲ばかりでしたけど、実際やった曲は結構渋い。
安田:新聞でもデタラメな曲目を報道してた──ということは、これ僕の想像です けれど。もちろん警察もいっぱい出て、超VIP待遇での来日だったわけですけど、日本という国で本当のポピュラリティを持っていたのなら、多分曲順とかは伝わってるはずだと思うんです。それが《間違っていてもいいや──》ぐらいのモチベーションで、日本の中の知識人たちは彼らのことを見てたのかもしれない。
藤本:その通りだと思います。《曲目や演奏がどう──》と言う細かい所ではなく、《ファンの暴走とか得体の知れない物への警戒心》が強くて、要するに《現象として捉えていた見方》が当時は圧倒的に強かったと思います。今はもう伝説にもなってるし、ほとんどクラシック的な存在になってますけど。
安田:ですよね。「ベイビーズ・イン・ブラック」ってハリウッド・ボウルですか? 70年代のジョージ・マーティン監修の『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ』では選曲からはじかれてましたけど、メンバー的にはこの頃からお気に入りだった可能性ありますよね。
藤本:あります。やっぱり二人でハモれるし、ずっと歌ってるし。で、今日まさにこのハリウッド・ボウルのヴァージョンがかかります。『エイト・デイズ・ ア・ウィーク』という映画の公開タイミングで2016年に出た、4曲追加のリマスタ ー盤『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』のヴァージョンです。
安田:66年には最初の「ツイスト・アンド・シャウト」を「ロック・アンド・ロール・ミュージック」に変えたり、最後を「ロング・トール・サリー」から「アイム・ダウン」に変えたりしてますけど、「ベイビーズ・イン・ブラック」は実は出た頃からやっていて、お気に入りだったからこそ、次の年のツアーとかでもやって る可能性ってすごくありますよね。
藤本:まったくもって仰る通り。さすがです。
安田:いや、ちょっと──ありがとうございます。恐縮です。
藤本:では、武道館ではないですけど、「ベイビーズ・イン・ブラック」の、『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』のヴァージョンをお聴きください。
♪「ベイビーズ・イン・ブラック」
安田:さっき藤本さんが《ずっと二人で歌ってるし》と仰ってましたけど、ジョンとポールの関係性におけるすごい深いところだなって、今すごく思ったんですよ。ジョンとポールって何が楽しいって、二人でマイクを分け合って歌ってることが何より楽しくて嬉しかったんじゃないですか。
藤本:相思相愛ですからね。初めてハモった感じがすごくあるから。楽しんでるのが伝わります。
安田:どこまで行っても、ずっと出会った時の少年の時のザ・ボーイズだった頃の、あの感覚ってずっと持ってたのかもしれないですね。これ武道館でやったんですね。
藤本:知らない人も多分多かったかもしれないですけど、やっぱりいいですね。
安田:これは再現しやすかったんじゃないですか。
藤本:そうですね。あと、そういう二人で通して歌うのも多分これだけ。
安田:それとどうしてもフッと浮かぶのは、なぜだか無駄に高い位置のリンゴ、で、ジョージが左に来て、鏡の対になってる右利きと左利きのジョンとポールがマイク 1本で分け合ってるっていう、このショットがまずビートルズのライヴでは浮かぶんです。
藤本:そうですね。リーダーのジョンが中央にいないっていうのがまたちょっと独特なんですよ。映画『ザ・ビートルズ:Get Back』のアップルの屋上では真ん中ですけど、大体右なんですよね。面白いですよね。じゃあ次いきますか。6曲目「ア イ・フィール・ファイン」。アルバム『ビートルズ・フォー・セール』と同時に録音したシングルのA面曲。B面はさっきポールが2曲目に歌った「シーズ・ア・ウーマン」。これもUKシングルで聴きたいと思います。
安田:最初のフィードバックの音を客席で聴きたいので移動しましょう。
♪「アイ・フィール・ファイン」
安田:さぁここでクイズです。日本武道館ではジョンはフィードバックをやろうとしたんでしょうか?
藤本:あんまりちゃんとやってないですね。
安田:スピーカーに近づければ出るものじゃないですか。
藤本:偶発的にスタジオで生まれたって話がありますけど、実際は『ビートルズ・フォー・セール』に入ってる「エイト・デイズ・ア・ウィーク」という曲の時にフィードバックをちょっと試みてるんです。
安田:ええ!
藤本:実はちゃんと計算して、もう実験的なことを色々始めてたとも言えますね。
安田:凄いですね、64年ですもんね。ジミ・ヘンドリックスやザ・フーよりも前に。
藤本:その時期だとちょっと早いかもしれないですね。
安田:早いですね。やっぱ革新的ですね。
藤本:「リボルバー」とか以降の革新性につながる試みをもうすでにやってたとも言えると思います。
安田:いや、素晴らしい音で聴けました。
藤本:次はもう誰もが知っている「イエスタデイ」。
安田:藤本さんの中で「イエスタデイ」という楽曲に対する思いっていうのはどんなものがあります?
藤本:すごくいいなと思う時と、もうこれ飽きたなっていうのが交互に来るんですよ。
安田:自分も「イエスタデイ」が素晴らしいと思う時と、うーん、どうかなっていう時とムラがあるんです。
藤本:最近ポールも「イエスタデイ」をやらなくなった。でも2018年、東京ドームの初日のアンコールでやった「イエスタデイ」が一番沁みたな──といまだに思って ます。昔みたいな若い声じゃなく、枯れた声なんですけど。
安田:すごいですね。22~23歳で作った歌が、70代で完成する──じゃないです けど。
藤本:そうですね。本当に名曲ですからね。発表当時はアルバム『ヘルプ!』B面最後から2曲目の地味な位置で、ポールのソロ・トラック。アメリカ、日本ではシングル・カットされてますけど。A面がリンゴの「アクト・ナチュラリー」、そのB面ですから。
安田:あ、そうですか。
藤本:でもアメリカじゃ、「イエスタデイ」がビルボード1位になりました。ではここで、イギリス盤のモノラルで「イエスタデイ」を。途中エコーが深くなる感じです。
♪「イエスタデイ」
安田:本当に名曲ですね。
藤本:ですよね、ただこれ日本公演はバンド編成でやったんですよね。だからち っと変なんですよ。YouTubeとかでご覧いただけます。
安田:これはバンドでやれる曲じゃない──というのはジョージ・マーティンも分かってると思うんですけど。でもそれを曲げてもこれは世に出すべきだっていう力 が「イエスタデイ」にはあったんでしょうね。
藤本:ジョンとかジョージ、リンゴも、“ポール、一人でやれば”って言ってるんですよ、なんかそういうところもいいですね。やっぱりジョージ・マーティンが凄い。ポールの新作に入っている「ママ・ゲッツ・バイ」と言う曲の弦楽の入り方がこの「イエスタデイ」と一緒だと安田さんの鋭い一言が。
安田:フレーズが似てるんです。ジョージ・マーティンが入れてくるフレーズと、 ポールの新作のプロデューサー、アンドリュー・ワットの入れてくるフレーズが──。あ、話が飛んじゃってすみません。
藤本:それはもうちょっと後で。日本公演ようやく8曲目でリンゴ・スター。「ア イ・ウォナ・ビー・ユア・マン」という曲で、「彼氏になりたい」って邦題が付いてます。ジョンとポールがローリング・ストーンズに提供した曲。ストーンズのことはどうも下に見ていたようで、ライバルって言われながらも、ストーンズにあげた曲はジョンとポールは歌わずにリンゴに歌わせてるところからもわかるんです。でもストーンズ・ヴァージョンもいいんですよ。ちょっとブルージーで。ビートルズはもうちょっとロックンロールな感じで。
安田:そうですね、それぞれのメンバーの感じが出てますね。
藤本:リンゴの曲の時は、ジョンとポールのコーラスがいつもいいので。
安田:楽しみです。
藤本:じゃあ聴いてください。UK盤2枚目のアルバムから「アイ・ウォナ・ビー・ ユア・マン」。モノラルです。リンゴの曲は歌詞が単純でそこもいいですよね。
♪「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」
安田:ストーンズ版ってブライアン・ジョーンズの最初のイントロに耳を持ってかれるんですけど、リンゴが叩いているのと、チャーリー・ワッツが叩くのでは結構違いが大きい。チャーリーってジャズでオフビート、そこの違いでうねりが変わってくる。
藤本:それはありますね。
安田:「ホンキー・トンク・ウィメン」の最初のドラム、もしリンゴが叩いたらあの名曲にはなってない。
藤本:そういうこともありますね、ビートルズでデビュー直前にクビになったピート・ベスト、ピートはよく下手だって言われけど、平均的なドラマーだったと思います。リンゴがやっぱりずぬけて上手かった。
安田:そうですね。
藤本:では次は「ひとりぼっちのあいつ(Nowhere Man)」これはもう名曲ですね。アルバム『ラバー・ソウル』に入ってます。今日はUKのモノラルで。
安田:ありがとうございます、このアルバム、僕、一番大好きです。
藤本:あ、そうなんですか。『ラバー・ソウル』と『リボルバー』どっちが好き?って訊かれると、『ラバー・ソウル』ですか。
安田:《アルバム聴き》だと、トータル感が一番大事だと思うんですけど、好きな曲がいっぱい入っていて、それまでのビートルズとそこからのビートルズの《いいとこどり》のようなアルバムだと思ってます。
藤本:最初のバンドサウンドの頂点だと思います。その後色々と入ってきて変わっちゃうから。『ラバー・ソウル』は三人の三声コーラスもいいですね。
安田:たまらんです。早く聴きたい。
藤本:では「ひとりぼっちのあいつ(Nowhere Man)」、『ラバー・ソウル』UKモノラル盤でお聴きください。
♪「ひとりぼっちのあいつ」
安田:最高です! ありがとうございます。《Nowhere~》どこにもいないんだけど、いましたね、本当に《Now here》で。
藤本:《Nowhere》と《Now here》、言葉を分ける箇所を変えると、《いない》と《いる》になります。
安田:いたいた、今、ここに。いやぁ今日は幸せだなぁ。
藤本:邦題もいいですよね、ディレクターの高嶋弘之さんによるもの。ヴァイオリニスト高嶋ちさ子さんのお父さん。邦題では「恋する二人(I Should Have Known Better)」「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」「ひとりぼっちのあいつ(Nowhere Man)」の三曲が自分で気に入ってるって仰ってました。
安田:結構付けられてるんですね。
藤本:高嶋さんは『リボルバー』まで担当されてました。『ラバー・ソウル』にいっぱいありますね「浮気娘( Run For Your Life」「嘘つき女(Think For Yourself)」。それまでにも「こいつ(This Boy)」とか「夢の人(I've Just
Seen A Face)」とか。
安田:あ、だから「夢の旅人(Mull Of Kintyre)」という言葉が出てきたんでしょう。
藤本:その通り。さすがですね。当時、邦題を付けられたのは解散後のビートルズの担当ディレクターだった石坂敬一さん。石坂さんに取材した時に “「夢の旅人」って「夢の人」からですか? ” って訊いたら、“そうだよ”と 仰ってました。ピンク・フロイドの『おせっかい』もウイングスの「あの娘におせっかい」も石坂さんですね。
安田:邦題だけで充分面白いですね。
藤本:では、あと2曲です。次は「「ペーパーバック・ライター」、当時の最新シングルです。『リボルバー』と同時期に録音して、日本に原盤が届いてすぐ、日本公演に間に合わせるために6月15日にシングル盤を発売しました。これもやっぱりUKのモノラル盤でお聴きいただきます。ラウドミックスなんで当時針が飛んじゃうとも言われました、しかもマト1(初回盤)なので結構な爆音だと思います。
♪「ペーパーバック・ライター」
安田:ヤバいですね、ヤバかったね、すごかったね。でもラウドミックスって当時のレコードでやったら針が飛んじゃうわけじゃないですか。どうしてラウドミックスが存在するんですか?
藤本:必ずしもそれがいいってわけじゃないんです。やってみたらやっぱり針が飛ぶから、結局マト2に差し替えられたんですけど、それまでのノーマン・スミスに代わってジェフ・エメリックというエンジニアが参加して、革新的なミックスをやったんですね。すごくロックだし、ビートも効いてる、それでちょっと針が飛んでも──上げちゃえってやったのをメンバーも気に入ったんです。
安田:これってレーザーターンテーブルだったらもちろん飛ばないですけど、今のレコード・プレーヤーでこのマト1を聴いても、やっぱり飛ぶ可能性はあるんですか?
藤本:知り合いのところで聴いたら飛びましたよ。もちろん針の重さとかを調整しなきゃいけないとかあります。
安田:なんか今、めちゃめちゃ貴重なもの聴けてます。ありがとうございます。
藤本:では最後の曲を。安田さんも仰ってましたけど、以前は「のっぽのサリー(Long Tall Sally)」がコンサートの最後の曲だったんですが、この時期ポールは「アイム・ダウン」を最後に歌ってました。これはシングル盤「ヘルプ」のB面で、ポールのシャウトがいですね。
安田:日本公演ではジョンはオルガンを弾いてたんですか?
藤本:シェイ・スタジアムでは弾いてますけど、武道館ではステージ右側に準備してあったんですけど、結局触らずに終わってます。
安田:置いてあったの知らなかったです。
藤本:では、ビートルズ最後の11曲目「アイム・ダウン」お聴きください。
♪「アイム・ダウン」
藤本:日本公演はこれで終えましたけど、ここまでいかがでした?
安田:いや、あの、本当に僕ビートルズ大好きですし、音も大好きなので、もうすごい貴重な体験ができたし、このイベントに来て本当によかった、聴けてよかったです。なんか歌声が天から降ってくる感じがたまんないです。今度プラネタリウムでやってください。
藤本:それは竹内さんと相談してみます(笑)。
この後はポール・マッカートニー特集ということで、新作の『ダンジョン・レインの少年たち』にスポット当てたトークがスタート。ごく最近、ビートルズ・ファンと連れ立ってロンドン、リバプールを回るツアーを行って来た藤本さんが、現地で購入した同アルバムのアナログ黒盤をかけ、撮影したスライドを上映しながら、安田さんを交えたトークとなった。
藤本さんは『ダンジョン・レインの少年たち』を評して、“最高です。素晴らしいですよね、本当に。『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード~裏庭の混沌と創造』(2006年)と並び、今世紀で一番二番の傑作です”と絶賛。安田さんも“本当に本当にいいですね。聴いても聴いても味わい深くなっていくアルバムって時々あるじゃないですか、今、ポール・マッカートニーがこれを出したっていうことが嬉しくて嬉しくて仕方がないです”と続けた。
藤本さんが “「デイズ・ウィ・レフト・ビハインド 」という今度のアルバムの先行で出た曲の歌詞にも出てきますし、リンゴと一緒に歌ってる曲「ホーム・トゥ・アス 」もそうですけど、《やっぱり、リバプールのこの場所が自分たちの生きる世界の全てだった》ということなんですね。ロンドンに行って、アメリカに行って、日本にも来ちゃって、未だにやってるっていう、その歴史を含めて、このアルバムじゃ歌詞含めて、そういうところが染みるんです” と続けると、安田さんも、“染みますね。 どんな人間も故郷があって、子供の時っていうのは家の近所周辺が自分の世界で、その後中学校に行けばもっと世界が広がって、高校大学に行って、どんどん自分たちの世界が広がっていく。そして年をとってどうなるかというと故郷に帰る人たちがいる。その時にまた原点に戻って、その時のことを
考える──もう人生そのものですね”
そしてアルバムから「ライフ・キャン・ビー・ハード」「ママ・ゲッツ・バイ」がかけられた。最後の最後、アンコールとして「ツイスト・アンド・シャウト」を大音量でかけ、場内も立ち上がってのライヴ会場と化して、レーザーターンテーブルを使った聴き語るライヴ・イベントは終了した。
「ビートルズと日本」新聞が見た来日狂騒曲
著者:大村 亨
前代未聞のビートルズ研究本」として日本全国のビートルズ・ファンをうならせた『ビートルズと日本』シリーズ、最新刊登場!! 1966年当時の新聞記事(全国紙5紙、スポーツ紙10紙のほか、全47都道府県の地方紙)を調査し構成された本書は、ビートルズ来日への期待をあおる報道以外にも、青少年への悪影響への懸念、公演への参加禁止を報じた記事や、類を見ないまでに厳重になった警備態勢、メンバーの動向を執拗に追いかけた取材、現代と同様の投書による “炎上騒ぎ”、さらには根拠のない噂やデマまで……ビートルズ来日にまつわる混乱と狂騒のエピソードを満載。
ザ・ビートルズ日本公演の全貌
フロム・ビー(編)
BOOK・2026.05.11
6/18発売 ビートルズ日本公演の全貌を解き明かし、7つのテーマで構成し検証する一冊〜『ザ・ビートルズ日本公演の全貌』
ウイングス全史 バンド・オン・ザ・ラン
ポール・マッカートニー: 著 テッド・ウィドマー:編
BOOK・2026.02.19
6/18発売予定 ポール·マッカートニー自身の名義となる公式書籍、『ウイングス全史 バンド・オン・ザ・ラン』翻訳版の登場
シンコー・ミュージック・ムック
MUSIC LIFE ザ・ビートルズ アンソロジー・コレクション
BOOKS・2026.01.30
3/21発売 最新技術で蘇ったザ・ビートルズ『アンソロジー・コレクション』をさまざまな視点から徹底検証!〜『MUSIC LIFE ザ・ビートルズ アンソロジー・コレクション』
ビートルズ万華鏡
キーワードでめぐるファブ・フォー
桑原亘之介[著] 藤本国彦[監修]
BOOKS・2026.01.22
2/25発売 元新聞記者ならではの切り口でビートルズの魅力を徹底解剖〜『ビートルズ万華鏡 キーワードでめぐるファブ・フォー』
(シンコー・ミュージック・ムック〉
MUSIC LIFE ビートルズのアメリカ物語
BOOK・2025.04.08
4/23発売 全米制覇60周年の2025年に送る ビートルズとアメリカのすべて〜『MUSIC LIFE ビートルズのアメリカ物語』
マル・エヴァンズ もうひとつのビートルズ伝説
ケネス・ウォマック(著)、松田ようこ(訳)
BOOK・2024.08.21
ビートルズに愛され頼りにされたマル──活動初期から解散後までのもうひとつの伝説〜『マル・エヴァンズ もうひとつのビートルズ伝説』
ザ・ビートルズ
『プリーズ・プリーズ・ミー』
・Amazon(2026/6/26)¥3,300(限定盤SHM-CD)CD
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ザ・ビートルズ
『ウィズ・ザ・ビートルズ』
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