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● イベント・レポート
8月15日(土)埼玉 @ 彩の国さいたま芸術劇場小ホール
レーザーターンテーブルで聴く『レジェンド音盤・盆まつりレコード聴き語りLive』
プログラム②《マイケル・ジャクソン》

無条件の愛というのは、マイケルが生涯を通して歌い続けた
大きなテーマだった

レコード針を使わずレーザー光でレコードを再生する株式会社エルプ製「レーザーターンテーブル」で、名盤を高音質で聴き語るイベント『レジェンド音盤・盆まつりレコード聴き語りLive』が、埼玉県の彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて8月15日(土)に開催された。ここではプログラム①ビリー諸川さん(R&Rロカビリー歌手、プレスリー研究家)による《エルヴィス・プレスリー》に続いて行なわれた《プログラム ② マイケル・ジャクソン》のイベント・レポートをお送りする。
プログラム②:マイケル・ジャクソン イベント・レポート
前半はMUSIC LIFE CLUBの吉田聡志のトークで、マイケル・ジャクソン『スリラー』を中心にした80年代の音楽シーンを振り返った。

まずポール・マッカートニーとの共演曲「ガール・イズ・マイン(Girl Is Mine)」、さらにそのきっかけとなった共作・共演曲「セイ・セイ・セイ」を紹介。


◼️「セイ・セイ・セイ(Say Say Say)」(『スリラー』収録)
その後ポールがスティーヴィー・ワンダーと「エボニー・アンド・アイボリー」を制作した流れとともに、マイケルが《ブラック・ミュージックと白人音楽の境界を壊し、新しい音楽の地平を切り開いた先駆者であった》と解説。

さらに世界で最も売れたアルバム(1億枚以上)としてギネス認定された『スリラー』からは、収録9曲の内なんと7曲がシングル・カットされ、それぞれが全米ベスト10に入る大ヒットとなったことが一覧としてスクリーンに投影された。
●「ガール・イズ・マイン」最高位 2位●「ビリー・ジーン」最高位 1位●「今夜はビート・イット」最高位1位●「スタート・サムシング」最高位5位、●「ヒューマン・ネイチャー」最高位 7位●「P.Y.T.(プリティ・ヤング・シング)」最高位 10位●「スリラー」最高位 4位

続けて各曲に参加した面々についても言及。「今夜はビート・イット」のギター・ソロは当時のハード・ロック界ナンバー・ワンのスーパー・ギタリスト、エディ・ヴァンヘイレンが担当。さらに曲の中でマイケルがドラム・ケースを叩いていることがクレジットされているこtにも触れ、その遊び心をレーザーターンテーブルで聴くことができるかどうかと「今夜はビート・イット」を紹介。


◼️「今夜はビート・イット(Beat It)」(『スリラー』収録)

5曲目のシングル・カット「ヒューマン・ネイチャー」はハイテク・プロフェッショナル集団TOTOのメンバーがレコーディングに参加、しかもキーボードのスティーヴ・ポーカロの作曲作。1984年第26回グラミー賞主要部門を総なめしたのがマイケル・ジャクソンなら、その前年第25回グラミー賞で同様に賞を獲ったのがTOTO。当時の音楽界を席巻した両巨頭の共演がここで実現したのではないか──と締め括った。

この後、当時ミュージック・ライフ編集部に届いた1983年のマイケル・ジャクソンからのサイン入りグリーティング・フォトが公開され、続いてゲストとして、ソニー・レコード時代マイケル・ジャクソンを担当をされていた田中章氏を迎えての後半トークがスタートした。
吉田:田中さんはマイケルの他、ジョージ・マイケル、シンディ・ローパー、フリオ・イグレシアス、ビーチ・ボーイズと数々の海外アーティストとの契約他色々と交渉されていました。ここで今回お借りした写真を投影します。青い服を着ているのが田中さん。
田中:1987年に『バッド・ワールド・ツアー』でマイケルがソロとして初来日しました。その時、当時信濃町にあった「ソニーミュージック信濃町スタジオ」を録音のため借りたいと言うので、クインシー・ジョーンズやエンジニアのブルース・スウェディンを連れて行き、スティーヴィー・ワンダーの「ゲット・イット」のマイケルのヴォーカル・パートを録音しました。僕にとっても非常に刺激的な体験で、終了後に「よかったら壁にサインをしていただけませんか」とお願いしたら、クインシーはカタカナで書いてくれました。この建物はもう売却してしまったんですけど、サインの部分は切り取って信濃町の或る美術館に残っているそうです。

吉田:それは貴重ですね。最初のマイケルの印象はどうでした?
田中:スーパースターですからもちろんオーラはあるんですけど、彼はなんとも言えない優しさがあって、こちらもあまり緊張しなかったのが印象に残っています。
吉田:では、田中さんにも曲を選んでいただきます。
田中:アルバム『スリラー』の中から説明不要の名曲「ビリー・ジーン」を。やはりこの曲はベースとドラムの低音グルーヴですね、これに力を入れて、ブルース・スウェディンがこの曲のミキシングを91回もやり直したとクインシー・ジョーンズがインタヴューで語っています。それで、やっぱり2番目のミックスがよかったのでセカンド・テイクを採ったそうです。曲の内容はご存知かと思いますが、実際にマイケルが体験したストーカー被害について歌っています。華やかなスターの世界にある裏側にある誘惑、執着、濡れ衣、恐怖から、自分を守ることが一つのテーマになっています。 マイケルは世界的なスターになったことによって、常に人々から噂され、私生活を監視詮索される存在になった。自分自身の人生なのに自分ではコントロールできなくなっていく──という恐怖と、有名人であるがゆえの孤独が描かれてるのがこの曲だと思います。


◼️「ビリー・ジーン(Billy Jean)」(『スリラー』収録)

吉田:いかがでした?
田中:僕もアナログ・レコードで聴くのは初めて。この素晴らしい音響装置で聴くと、またさらにこの曲の良さを実感します。
吉田:バックのリズム・セクションでも、アナログのいいところとデジタルのシャープなところのバランスが絶妙な曲が多いと思います。クインシー・ジョーンズはブラザーズ・ジョンソンのルイス・ジョンソンが大好きで重用してます。『スリラー』の一番の聴きどころは絶対にリズム・セクションのカッコよさだと思うんです。
田中:そうですね。このドラムとベースのミックスに力を入れたのもすごくよくわかります。このグルーヴ感がなんとも言えないです。
吉田:では次のアルバム。

田中:『デンジャラス』収録曲で「ウィル・ユー・ビー・ゼア」。意外なことにベートーヴェンの「交響曲第九」から始まります。マイケルはR&Bもロックも、もちろんクラシックも聴いていて、最初「星の彼方に 必ず神は住み賜う」という歌詞から始まり、そこからマイケルの「貴方は僕の側にいてくれますか」という祈りに繋がっていくという構成になっています。マイケルは黒人のトップ・スターになったが故に、白人至上主義者たちから大変なバッシングを受けたと思うんです。その後また裁判やメディアのバッシングがあった。そういった世間の嵐に巻き込まれて、「暗闇に突き落とされた時、苦しい時、幸せじゃない時も、貴方は側にいてくれますか?」という歌詞なんです。貴方というのは、神でもあり、友達でもあり、家族、ファンでもあるでしょう。弱さを曝け出した状態で受け入れてくれる、この無条件の愛というのは、マイケルが生涯を通して歌い続けた大きなテーマだったと思います。 曲の最後の方にマイケルのナレーションが入りますが、涙声になってるんです。バッシングを受けても、それでも世界に愛を届けたい──という想いが溢れた涙なんじゃないかと、僕は思ってるんです。ぜひ、最後の涙声になるマイケルのナレーションのところまで聴いていただきたいと思います。

 

◼️「ウィル・ユー・ビー・ゼア(Will You Be There)」(『デンジャラス』収録)


田中:本当にこの曲は何度聴いても、僕も心を揺さぶられます。
吉田:沁みる──というか、マイケルの言葉がそのまま入ってくる感じですね。
田中:マイケルの喋り方は普段でも本当に優しくて穏やかな声なんです。これは有名な話なんですが、ソニーの創業者盛田会長が、晩年は闘病生活で亡くなる寸前までハワイの別宅で療養されてたんですけど、そこにマイケルが「ミスター盛田、あなたは必ずよくなる、頑張って」というメッセージを吹き込んだヒーリング・カセットを送ってくれたんです。それは、今、知多半島にある記念館「盛田昭夫塾」で聴くことができます。
吉田:マイケルは本当に優しい方なんですね。では3曲目は?
田中:1995年にリリースされた『ヒストリー パスト、プレズント・アンド・フューチャー ブック1』というアルバムから「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス」を。マイケルの作品の中でも特に政治的社会的メッセージが強い曲です。曲のタイトルはそのまま《彼らは僕たちのことはどうでもいい》という意味。マイケルはこの曲で、差別され傷つけられる社会的弱者の側に立っています、《彼ら》というのは権力者、あるいは社会を支配する特権階級を指しているわけなんです。この曲のミュージックビデオは2種類あります。マイケルはショートフィルムと言ってますけども、一つがブラジルでのスラム街で撮影されたビデオ、もう一つが刑務所の中というイメージで作られたビデオです。当時ブラジル政府は国家の貧困が世界に広まるとして、スラム街での撮影を禁止しようとしたんですけど、マイケルはスラム街の住民や子供たちから、地元を仕切っていたギャングたちも味方につけて、このミュージックビデオを撮影したそうです。刑務所を舞台にしたビデオは、警察、戦争、差別、人権侵害などを思わせる、ある意味攻撃的な映像が出てくる。これは国家権力による弾圧をあまりにリアルに描いているので、アメリカの MTV や主要な音楽チャンネルでは暴力的すぎるということで放送禁止、あるいは深夜帯のみの放送ということになりました。エンターテイメントの枠を超えて、命がけで世界の平和や社会的不平等を告発しようとしたマイケルのメッセージが込められている曲なので、これもぜひお聴きいただきたいと思います。

 

◼️「ゼイ・ドント・ケア・アバウト・アス(They Don't Care About Us)」

(『ヒストリー パスト、プレズント・アンド・フューチャー ブック1』収録)

吉田
:今日はなかなか一般では知られていないというか、シングル・ヒットした曲とかではなく、マイケルの心情を表した曲をたくさん聴かせていただいている感じですね。
田中:有名じゃない曲も含めて、聴いていただきたいなと思う曲を選んでみました。
吉田:映画『マイケル』のパート2ができるという話ですが、今回の映画はちょうど「バッド」のツアー・シーンで終わるから、次は、この辺がテーマになって、ハーフ・ドキュメントで描かれるかもしれないということですか?

田中:期待したいですね。まああの映画ですと、お父さんは悪者というイメージなんですけれど、マイケルがオックスフォード大学で講演をした時に、《許し》が一つのテーマになっていて、おそらく映画の続編では、お父さんに対する思いや 確執が回収されるんじゃないかな──とは思ってるんです。 実際、マイケルが死ぬ直前まで、裁判があった時はお父さんも応援に駆けつけています。 そのオックスフォード大学での講演の中で、マイケルは赦しの大切さについて話をし、お父さんに対しても「今はそれは愛情だったと受け止めている」と語っています。
吉田:『スリラー』とか『バッド』といった大ヒットは何度も聴いてると思いますけど、その後の『デンジャラス』や『ヒストリー~』やラスト・アルバムはなかなかじっくり聴く機会がないので、今日は本当に嬉しいです。
田中:ではそのオリジナル・アルバムとしては最後の『インヴィンシブル』から聴いていただきたいのですが、このアルバム発売された時は、マイケルがアメリカのソニー・ミュージックとプロモーション不足だということで揉めていて、様々な確執があったんです。一方、メディアではマイケルのいわゆる幼児虐待疑惑という、もう根も葉もない、本当に全く無罪どころか無実が証明された件でバッシングが続いた時期なので、日本ではあまり知られて話題にならなかったかもしれないと思います。《Invincible=インヴィンシブル》というのはあまり聞かれたことのない言葉だと思いますが、《無敵とか不屈》というような意味です。
世界からどれほど裏切られ、傷つこうとも、無償の愛を信じることが、誰にも壊すことない「インヴィンシブル」、無敵なことだというマイケルの思いが詰まったアルバムであり、曲なんです。これは本当に良い曲で誰でも好きになる曲だと思うので、じっくり聴いていただければ。「真の無敵とは暴力で勝つことではなく、誰も壊したり傷つけたりすることない純粋の愛の力」だというマイケルのメッセージが十分に伝わる曲だと思います。「スピーチレス」。

 

◼️「スピーチレス(Speechless)」(『インヴィンシブル』収録)

田中:マイケルが作詞、作曲、プロデュース、全てをやってるんですけれども、本当に最後のアルバムにふさわしい作品で、彼自身の思いが激しく伝わってきます。
吉田:それでは、田中さんとマイケルの過ごした時間も含め、一番印象に残っている個人的な思い出とかを教えていただけますか。
田中:これはいろいろな所で書いたりお話していることなのですが、マイケルが「バッド・ツアー」で来日した際、六本木にもあったソニーミュージックのスタジオを使うことになって、そこに行った際のことです。──ビルの踊り場に清掃員の方がいたんです。パッと見て分かったんですけれども、その方が顔に火傷があってケロイド状になっていた。 マイケルもすぐそれに気づいたらしく、僕に「この人と握手していいですか? 」って聞くんです。

清掃員の方に、(この人はマイケル・ジャクソンです──とかは一切言わずに)「この人が握手をしたいと言ってるんですけどいいですか?」 と聞いたら、「うん」と仰るので、マイケルが近づいて握手して──まぁ、それだけの話ではあるんですけれど。
映画『マイケル』でも《ペプシのコマーシャルで自分が火傷を負ったが、その後、病院やいろいろな所に慰問に行った》というエピソードがありましたけれど、そういったハンディを負った方、社会的弱者に対する思いやりがある人だなと改めて思いました。その後何年か経って、いわゆる幼児虐待疑惑といったような話が出た時に、本当にその一言、一つの事実をもって、マイケルはそういうことをする人じゃない、と自分自身では確信しました。
吉田:ありがとうございます。今日は貴重なお話をたくさんお聞きできて、改めて『バッド』以降もマイケルの作品をもう一回聴き直してみたいなと思いました。最後に田中さんに選んでいただいた曲をかけたいと思います。
田中:では「ヒール・ザ・ワールド」で締めくくりたいと思います。今も戦争や貧困、差別などは厳然としてこの世の中にあるわけですが、みんなの愛で癒し、より良い世界を作ろうというまっすぐで純粋な願いで作られた歌です。歌だけではなくマイケルはこの作品発表と同時に、『Heal The World Foundation (ヒール・ザ・ワールド財団)』を作り、ツアーの収益の大部分を紛争地帯の子どもたちの支援に寄付しています。 単に言葉だけじゃなくて、実践にも踏み出してるマイケルでした。
吉田:では最後に『デンジャラス』から「ヒール・ザ・ワールド」を聴いてください。田中さん、本日はありがとうございました。
田中:ありがとうございました。


◼️「ヒール・ザ・ワールド(Heal The World )」(『デンジャラス』収録)
 

シンコー・ミュージック・ムック

AOR AGE Vol.38

表紙&特集:マイケル・ジャクソン

中田利樹 監修

5/29(金)発売/定価:2,200円(本体:2,000円)/ムック/判型:A5/128ページ
5月29日に発売される『AOR AGE Vol.38』の巻頭特集は、伝記映画『Michael/マイケル』の公開が迫っているマイケル・ジャクソン! クインシー・ジョーンズに制作を委ね、TOTOやエディ・ヴァン・ヘイレンの力を借りて新しいポップ・ミュージックの形を提示した20世紀の金字塔、『スリラー』の魅力を徹底的に掘り下げます。また、注目の最新ライヴ盤をリリースするビリー・ジョエル、待望の新作が届いたランディ・グッドラム など、新譜もクローズアップ。本号も濃密な内容でお届けします。
商品詳細
マイケル・ジャクソン/ジャクソン5
『マイケル・ジャクソン&ジャクソン5 - グレイテスト・ヒッツ-』


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マイケル・ジャクソン & ジャクソン5
『Michael:The Birth of A Superstar』


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マイケル・ジャクソン
『スリラー〈40周年記念エクスパンデッド・エディション〉』


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2CDs(2022/11/18)¥3,383
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マイケル・ジャクソン
『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』


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