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ポール・マッカートニー、改めて『Man On The Run』ドキュメンタリーを振り返る。「ビートルズをやった後で、一体何をやればいいんだ?」
1968年から1980年頃にかけて、妻のリンダや成長していく子供たちと共に、スコットランドの人里離れた農場で暮らし始めたマッカートニーは、新たに手に入れた自由をどう生かすべきか、悶々としていました。ザ・ビートルズは既に活動を終えていました──マッカートニーによれば、それはジョン・レノンが言い出したことだったそうです──が、世間はまだそのことを知りませんでした。
『Man On The Run』は、その上映時間を通じて、マッカートニーが全米中のアリーナで再びヘッドライナーとして返り咲くまでの道のりと、その過程で直面した数々の困難を描き出した作品です。このドキュメンタリーは、マッカートニーのソロ作品の多くに対する批評家たちの酷評、ジョン・レノンの暗殺、日本の刑務所への短期間の収監、そしてザ・ビートルズを提訴するという大胆な選択といった事柄にも、臆することなく真正面から向き合っています。
ステラ及びメアリー・マッカートニー、ミック・ジャガー、デニー・レイン、ローレンス・ジュバー、クリッシー・ハインド、ジョー・イングリッシュといった主要人物に加え、ポール本人もこのドキュメンタリーではエピソードを語っています。さらに1998年に亡くなったリンダも、アーカイヴ映像やナレーション、写真を通じて幾つかのエピソードを提供しています。
現在はAmazon Primeで配信中のこのドキュメンタリーですが、9月28日にロサンジェルスのアカデミー・ミュージアムで上映された後に、マッカートニーとネヴィルを迎えての質疑応答が行なわれ、映画監督のジャッド・アパトウが司会を務めました。その際の会話の要約・編集版をお届けしましょう。
アパトウ:さてポール、誰かが「『ウィングス』のドキュメンタリーを作ろうじゃないか」と言ってきた時、あなたは「いいね、ちょうどあの頃の自分の生き方についてじっくり掘り下げたいと思ってたんだ」と思いました? それとも「うわあ、勘弁してくれ」って感じ?
「いや、僕はあの時期は好きだったよ。まあ、分かるだろ、今となっては懐かしい思い出ってやつでね。ザ・ビートルズが終わった後は何をすべきだろう? ザ・ビートルズは解散したんだ。僕にとってはそれまでの人生で唯一やっていた仕事が、突然もうやれなくなっちゃったわけだよ。まるでクビになったも同然さ。それで始めたのがウィングスだったんだよ、分かるだろ──この先どうすべきか模索する手段としてね。映画でもわかる通り、僕らはよくやったと思う。ちょっと無鉄砲なところはあったけどね。でも、そう、嫌だとはか全然なくて、僕はあの時期には愛着があるんだよ。
ああ、ちなみにそれ[ザ・ビートルズを脱退した]に加えて、アレン・クラインというビジネスマンがいたんだよな、そいつは実質的にザ・ビートルズから金をネコババしてたんだけど、そう思っていたのは僕だけだった。他のメンバーは彼のことが大好きだったんだ」
アパトウ:一体どうして彼らはそんなに間抜けだったんでしょう? いや、だって、ぶっちゃけ事務方の人たちは、彼が何だか怪しげな人物だと薄々気づいていたと思いますよ。
「その理由を教えてあげるよ。奴と話し合いをしてると、じきに言いたくなるんだ、『何が欲しいんだ? ニューヨーク野郎、お前は何が欲しいんだ? 何が欲しい? 100万ドルか?』『そうだよ』『わかった、ならくれてやるよ』ってね。
奴はとにかくありとあらゆることを約束しておきながら、結局は何ひとつ果たさなかった。僕は一貫して、こいつは眉唾もんだと見抜いてたんだ。でも構図としては僕対その他のメンバーたちということになってしまって、それが何より最悪だった。というのはつまり、音楽を作っている時にもメンバー同士で意見を戦わせることはあったけど、そういう時には『うーん、僕は確実にこれが正しいと本気で思ってるんだけどな』とか何とか主張した挙句に、僕が同意するか、彼らが同意しないってことになれば、最終的には彼らのヴァージョンで行くこともあったわけだ。そういう問題は比較的簡単に解決できたんだよ。ところがこの問題は、僕らがこれまで稼いできた一切合切──これまで稼いだすべての金──が、突如としてこの男の銀行口座に行ってしまうことになるって話で、僕は何がなんでもそれに抗う必要があったんだ」
アパトウ:しかも彼らはあなたにとって一番親しい友人たちだから、親友たちを訴えることになったわけですよね。
「まあ、そういうことだよね。『よしわかった、アレン・クラインを訴えよう。あいつの尻尾を掴んでやるんだ』って僕は息巻いた。僕の代理人はリンダの父親と兄貴だったから、『イエー、やっちまおうぜ。あの野郎、叩き潰してやる』ってけしかけてね。ところが彼らから、『それは無理だ、彼はどの契約の当事者でもないんだよ。これらの契約の当事者はザ・ビートルズだ』って言われてしまった。『だから、もしそういう気持ちがあるなら、キミが訴えるべきはザ・ビートルズになってしまう』って。僕は『うわあ、それは僕にはできないよ』って答えた。このやり取りは何ヶ月も続いた。『僕には無理だよ、分かるだろ。まず第一に、世界を敵に回すことになるし、僕自身が自分を訴えることになるわけで、とてもじゃないがいい考えとは思えない』って言ってね。だけど結局、それ以外には術がなかった。やるしかなかったんだ」
ごく若くして途轍もないことを成し遂げる人は大勢いますが、その後の人生でそのレベルに近づけることはほぼありません。あなたにとっては、そのジンクスは恐怖でしたか?
「そうだね、そもそも一人で活動すること自体が凄く怖かったし。それまでずっとグループという繋がりがあったからね。でも、あそこからは自分の力で、この先どうやってやっていくか、どう差別化を図るかってことを考えなきゃいけなかった。そこがポイントだったんだよ、だって僕は『ようし、もうちょっとビートルズっぽい曲を幾つか書いて、それを真似してみればいいんだ。ビートルズのカヴァー・バンド的なものになればいい』って思ってたからね」
いま現在、『Ram』は名盤として評価されています。ある種のインディ・ロックやホームレコーディングの先駆けだったと考える人も大勢いますね。しかし、当時、その作品に対して批判を浴びたとき、世間の人々があのアルバムをどうやって楽しめばいいのか理解できなかったことは、あなたに大きな失望をもたらしましたか?
「うん、そうだね。僕らは自分たちが何か特別なものを創りあげたと思っていたけど、批評家たちはそうは思わなかった。批評家ってのは批判するのが仕事だからね、彼らは仕事として僕を批判したわけだ。僕としては、若い家族の大黒柱としての立場と、このアルバムに対する大いなる希望と共に、『これはいいアルバムだ』っていう確信を抱いてた。なのに、何が一番いけなかったかって、僕が彼らの言葉に惑わされてしまったんだよ。批評家の意見に耳を傾けて、『もしかすると、彼らの言う通りかもしれない。どうなんだろう』ってね。そうやって何年もの間、僕はこのアルバムはあまり出来が良くなかったと思っていたんだ。ところがある日、甥の一人が僕のところにやって来て、『ねえ、僕が伯父さんのアルバムで一番好きなのは《Ram》なんだよ』って言ってくれたんだ。僕は思わず『えっ?』て言っちゃったよ。それをきっかけに、僕は急にまたあのアルバムが好きになったんだ」
あの時期、ジョン・レノンは何に苛立っていたんだと思いますか? 彼がプライマル・スクリーム療法に取り組んでいる間に、あなたが楽しくやっていたこと、その楽しげな雰囲気が原因だったのでしょうか? 一体何が彼の神経を逆なでしたと思いますか?
「まあ、そんなこともあったのかも知れないとしか言いようがないよね。僕はジョンのことが大好きだったし、今でも大好きだし、これから先もずっと愛し続けると思う。彼が何を言おうと何をしようと、そんなことは問題じゃなかったし、実際大したことじゃないんだよ。だって、僕は15歳の頃から彼を知ってたんだからね。彼は僕にとって、よく知ってるちょっとイカれた奴って位置づけだったけど、僕は心から彼を尊敬していたんだ。
13歳半くらいになると──僕はもうちょっと年上の15歳で、彼は16歳半だったと思うけど──残酷で機知に富んでいて、いつも的を射たことを言う奴ってのが大体いるんだよ。そういう奴に出逢うと『うわっ、あいつマジでカッコいいな』って憧れてしまうものだよね。僕はいつもジョンがすごくカッコいいと思っていたし、今でもそう思ってるんだ。ただ、彼はある特定のことに関しては、まるっきり阿呆みたいになっちゃうこともあってね。とにかく愛すべき男だったんだよ。彼の生涯を振り返ってみれば、彼がイカれたことをやるようになったのだってちゃんと理由があるんだ。随分沢山辛い経験をしてきたんだからね」
では、はっと目覚めて「また新しくバンドを始めたい」と口にしたのはいつだったんですか?
「TVでジョニー・キャッシュを観てた時に、彼がカール・パーキンスや、僕たちがすごく好きだったカントリー系のミュージシャンたちを集めてバンドをやってたんだよ。『うわっ、ジョニーがバンドを結成したんだ。なんて素晴らしいアイディアなんだろう!』って単純に思った僕は、リンダの方を向いて、『どうかな、やってみない? 一緒にバンドを組んでみる気はない? 君はやりたくない?』って訊いたんだ。
彼女が音楽教育を受けた経験なんて全然ないことは知ってたけど、僕はその時、『いやあ、ビートルズをやってた僕らだってそうだったじゃないか。僕らは(音楽理論なんて)何も知らなかったんだから』って思ってたんだよ。僕らは一緒に幾つかのコードを覚え、一緒に学んで行った。それが何よりも楽しかったんだよ。僕らはみんなで一緒に一段ずつ登っていったんだ。そのせいで彼女は多くの批判を浴びたし、僕も多くの批判を浴びた。『おい、ミック・ジャガー、バンドにこんな年増の女を入れて、何やらせようって言うんだ?』とかね。失せやがれってんだよ。一体彼に何の関係があるって言うんだ?」
あなた方──あなたとリンダとデニー・レイン──は、歌い手として本当に素晴らしいハーモニーを奏でていましたね。あの音にはある種の魔法のような魅力があることに、当時から気づいていましたか?
「今聴いても、『ワーオ』って思っちゃうよ。特にリンダの歌声は本当に素敵だ。実に興味深い味わいを加えてくれていると思う。忘れちゃいけないのは、当時はオートチューンなんてシステムは存在しなかったから、彼女はとにかく正確に歌わなきゃならなかったんだよね。今聴き返してみると、本当に素晴らしいと思うよ。最高のハーモニーだった。
結局のところ、僕らはザ・ビートルズと同じ道を歩んだんだ。つまり、どんどん腕を上げて行ったんだよ。みんなで結束して粘り強く取り組んだおかげで、最終的には本当に上手くなりました。そうしてアメリカに来ることができるようになり、キングダム・シアターだかどこだかを満員にすることができて、最後には素晴らしいショーを披露できるようになったんだ。でも、そこに至るまでには、そりゃもう大変な努力を要したよ」
ウイングス全史 バンド・オン・ザ・ラン
ポール・マッカートニー: 著 テッド・ウィドマー:編
BOOK・2026.02.19
6/18発売予定 ポール·マッカートニー自身の名義となる公式書籍、『ウイングス全史 バンド・オン・ザ・ラン』翻訳版の登場
ポール・マッカートニー
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ポール・マッカートニー&ウイングス
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ポール・マッカートニー&ウイングス
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MUSIC LIFE
B5判/144頁/予価2,310円(税込)
BOOK・2026.01.30
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BOOK・2026.01.22
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MUSIC・2023.06.16
ハッピー・バースデイ、ポール! 6月18日に81歳を迎えるポール・マッカートニー。ウイングス・ファン待望、ウイングス最強期の軌跡を辿った集大成書籍が今秋発売決定!
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MUSIC・2021.10.08
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