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キース・アーバン、最新作『Flow State』はマイケル・マクドナルドとのデュエットも含む珠玉の70年代AORカヴァー集
また、今作に収録されている唯一のオリジナル曲であり、ファースト・シングルとなった「We Go Back」には、元ドゥービー・ブラザーズのマイケル・マクドナルドがヴォーカルでフィーチャリング参加しています。記事冒頭の動画をご覧の通り、先月行なわれたカントリー・ミュージック・アウォードのステージで、同曲を生披露した際、彼は曲の途中でマクドナルド本人をステージに登場させ、このスペシャルなデュエットをライヴで実現させて大喝采を浴びていました。
米カントリー・ミュージック界では既にスーパースターの地位を欲しいままにしているアーバンが、何故いまカヴァー・アルバム、それも “ヨット・ロック” ばかりを集めた作品を?という当然の疑問に対し、アーバン本人がSiriusXMで語ったところによれば、制作のきっかけは2024年に彼がTracking Roomというスタジオを購入したことだったそうです。このスタジオは地元ナッシュヴィルでは有名な場所で、彼は老朽化していた建物をリノヴェーションし、機材も入れ替えて、約9か月かけてきちんと使えるようなところまで漕ぎつけました。ところがいざ録音作業も可能な状態になった段階でツアーが迫り、彼はせっかく手に入れたスタジオがあるのにレコーディング作業に入れないというジレンマに直面。そこで、相棒であるギタリストのダン・ハフ(元々LAで売れっ子スタジオ・ミュージシャンとして活動、先日アーバンと同時にミュージシャンの殿堂入りした際にはスティーヴ・ルカサーを呼び込み役に指名していた)に声をかけ、スタジオの慣らし運転も兼ねて、ほんの一日でいいからミュージシャン仲間と一緒に、ヨット・ロックの定番ソングでもひとつふたつ、試しにレコーディングしないかと誘ったのです。「何故ヨット・ロックだったかと言えば、勿論元々好きだったというのもあるけど、どの曲もとてもよく出来ていることに加え、とにかくアレンジメントがどれも秀逸で、本当に文句のつけどころがないんだよ。それにみんな馴染みのある曲ばかりだから、覚える時間も少なくて済むだろうと思ってさ(笑)」
ハフが腕利きのセッション・ミュージシャンたちを集めてバンドを仕立て、彼らはその日にまず2曲を録音しましたが、それが想定を上回る良い出来で、「自分でも凄くしっくり来たし、関わってた全員が手応えを感じてるのが分かったんだ。それでダンから『まだ他にやりたい曲ないの?』って言われて、『他にもいっぱいあるよ』(笑)って答えた。その時はメンバーのスケジュールの都合上2曲止まりだったんだけど、その後ツアーを終えてから再度バンドを招集し、更に数曲を録音したところで、これならEPとして出してもいいかも知れないと思った。あくまで自分たちのお楽しみの域でね。それが4か月、5か月、6か月とやっていくうちに、気づいたらアルバム一枚分のマテリアルが完成してたんだ」
「We Go Back」に関しては、アーバンによれば、この曲は元々2020年のコロナ禍の真っ只中、ソングライティングのパートナーたちと一緒に、ふざけ半分で「ちょっとヨット・ロックっぽい曲を書いてみようぜ」と言って書き始め、徐々に曲の形ができてくる中で、マクドナルドに歌わせることを想定して歌メロを作り、デモのレコーディングではアーバン自身がマクドナルドの真似をして(!)歌入れをしたのだそうです。それから月日は流れ、その曲を入れられるようなアルバムが作られることもないまま6年が経った今年、彼はマネジメントを移籍しました。するとその新しい事務所から思いがけず「どうだろう、マイケル・マクドナルドかケニー・ロギンスあたりと一緒にコラボでもする気はない?」と持ち掛けられました。アーバンは即座にこの曲のことを思い出し、実は以前こういう曲を作ってね、と言って彼らにデモを聴かせたところ、ああ、だったらこの曲も今回のアルバムに入れたらいいじゃない、と事も無げに言われたのだそうです。
「一応言っとくと、その時点で僕はもうこのアルバムのレコーディングもミキシングもマスタリングも終えて、曲順も決めて、完パケの状態でレコード会社に提出済みだった。だから、『え、何言ってんの、もう全部終わってるじゃん』って言ったら、『いやいや、それは全部終わってるとは言わないんだよ』(笑)って言われちゃって。つまりそこから、僕らは記録的なスピードであの曲を仕上げたんだ。僕はまずマイケルに会わせてもらい──これまで一度も会ったことがなかったんだからね──曲を送って聴いてもらい、幸いなことに彼はすぐに気に入ってくれて、サンタ・バーバラで彼のパートの歌入れをやってくれた。そいつを送り返してもらって、こっちでミキシングしてマスタリングして、アルバムの曲順をやり直して、再度レーベルに提出して、ドーン! 今に至るってわけだ。あれはクレイジーだったよ(笑)。ちなみにマイケルはこれ以上はないってぐらい、最高にスウィートな人だったね」
アーバンによるマクドナルドの物真似(インタヴュアーの無茶ぶりに快く応えて)は、このインタヴューの9分30秒あたりからお聴きになれます。
彼はヨット・ロックというカテゴリーについて、「自分としては実際にヨットに乗ったりしなくても(笑)単純にリラックスしながら聴ける音楽というイメージで、聴いているうちにいつのまにか現実から離れることができる、エスケイピズム(現実逃避主義)の象徴的な音楽であるという感覚」を持っていると語りました。今回カヴァーした楽曲たちが元々書かれ、ヒットしていた1970年代というのも、実は現在と同様社会的・政治的対立が先鋭化し、人々の間の緊張や分断が表面化した時代であり、だからこそそうしたエスケイピズムに基づいた音楽が生まれ、またそれがヒットしたということは大衆もそうした音楽を欲していたのだと彼は述べています。
「そしてそれは我々が今まさに必要としているものだと思う。緊張、軋轢、分断、不確実性に満ちた社会状況の中で、誰もが恐怖と絶望を抱えて生きている今、その中で誰もが懸命に有効であろう、認められようと抗い、不安と闘っている……物理的にも心理的にも、そういうせめぎ合いを強いられながら日々を送るうちに、みんな自分の自然体から逸脱せざるを得なくなってしまってると思うんだ。昔は週末になったらふいっとどこかへ出かけて、誰からも音信不通になることだって出来ただろ? でも今はみんな、そんな余裕もなくて、凄く息苦しくなってる気がする。そういう意味でもこのアルバムが聴く人たちにとって、ひとつ大きな深呼吸をするきっかけにでもなってくれればと思うんだよね」
キース・アーバン
『Flow State』
・Amazon Music(JUN 12 2026)
・Amazon(2026/7/10)輸入盤・LP
2. Baby Come Back
3. Magnet And Steel [feat. Little Big Town]
4. Just The Two Of Us
5. On And On
6. We Go Back [feat. Michael McDonald]
7. Help Is On Its Way
8. How Much I Feel
9. Summer Breeze
10. I Just Wanna Stop
11. Guitar Man [feat. John Mayer]
キース・アーバン
『Greatest Hits - 18 Kids』
Amazon Music(NOV 20 2007)
キース・アーバン
『Be Here』
Amazon Music(SEP 21 2004)
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