森田編集長の “音楽生活暦”

新連載 森田敏文(ミュージック・ライフ・クラブ編集長)

第1回:新年のご挨拶/ザ・ビートルズ/2021年の洋楽シーン

© 1969 Paul McCartney. Photo by Linda McCartney.
新年あけましておめでとうございます。2022年最初の更新は、ミュージック・ライフ・クラブ編集長・森田敏文による新連載。月いちペースでミュージック・ライフ的な洋楽のアーティストや作品、業界やシーンに関するあれこれなど。「ミュージックなライフのカレンダーへ」、徒然なるままに書き留めたその月の雑記として、お送りして参ります。

森田編集長は1981年入社、即『ミュージック・ライフ』編集部に配属(当時の編集長は東郷かおる子氏)。88年に新雑誌『クロスビート』を編集長として立ち上げ、現在は編集の現場を離れるも、洋楽の出版部門一筋。会社の舵取りの一角を担いつつ、MLC編集長として今回新たに連載をスタートさせます。

記念すべき第1回目のテーマは、新年のご挨拶と、昨年の総括。MLC編集長として何より見逃せなかったのは、やはりザ・ビートルズでした。

●新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。
MUSIC LIFE CLUBもスタートして今年で4年目になります。試行錯誤をしながらも何とかここまでやってまいりました。少人数のスタッフで運営していることもあり、なかなか大きな記事展開はできませんが、少しずつサイトの充実を図れるよう頑張りますので、本年もよろしくお願い致します。

またツイッターもフォロワーが7,000人を突破しました。あまりツイート数が上がらない中で、ここまでフォローして頂けるとは、嬉しい限りです。ありがとうございます。こちらもウェブサイトとは違った形で有益な、あるいは面白い情報を発信していけるよう努めますので、引き続きよろしくお願い致します。

さて、年齢相応のまったり感も横溢するMLCですが、月いちの新企画として私の『音楽生活暦』をスタートさせることになりました。これはその折々の音楽トピックについて語る形で掲載します。齢64にしての初めての試みですので、時に暴走迷走があるかもしれませんが、ご容赦ください。

●ビートルズのドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Get Back』について

「ザ・ビートルズ:Get Back」|予告編|Disney+ (ディズニープラス)
マスコミ用に公開された短縮版を観ました。実際に観てまず非常に驚いたのは画質が凄く良いという事ですね。つい最近のバンドの映像のように見えました。話を聞く限りでは技術的な進歩によって、修復というか「フェイク技術」と言われているそうですが、それによってリアルなものが目の前に現れたという衝撃を受けました。それだけでも観る価値はありますね。

それと音、各メンバーのちょっとした発言をあれだけの精度で拾っているのは、考えられないなと。

内容の方も、ビートルズの最後の頃の在り様というもの、ずっと伝えられていたメンバーの微妙な関係性も、実はいろんな感情の振り幅が大きくあったんだ、ということがわかって何だかスッキリしました。特にセッション現場でのメンバー間のやり取りとか活き活きとしていて、メンバーもその場その場を楽しんでいる感があって、嬉しくなりました。

公開される前に色々な情報は入ってきましたけど、想像していたものよりはずっと良かったです。監督のピーター・ジャクソンがかなりのビートルズのマニアであったという事で熱の入れようが違ったでしょうし、最新の映像技術を必要とする映画をずっと手掛けていた監督だった事もプラスに作用しましたね。

現在は年にアルバム1枚出したら凄く多作と言われるけど、ビートルズって、年にアルバムを1枚ではなく2枚とか普通に出していた時代に活動していた。そうした状況の中でのビートルズの進歩、そういうものの一端──この映画で観られるような手順で曲が作られていく様子などは、バンドマンが観たら、すごく刺激されるのではないでしょうか。即興でどんどん形作られていく感じが露わになっていて、それでいてこういう凄い曲を作っていたのかと思うと、当時のビートルズの無敵感が漏れ出ている感じで、その撮り方なのか編集なのか、とにかく好感が持てる仕上がりでした。

●2021年の洋楽シーンについて

ライヴは国内ではほとんど出来なかったし、海外でもようやく始まり出したばかりなので、来年春頃から本格的に始まるんでしょう。これまで我慢していたライヴへの渇望感がきっと噴出して賑やかになって欲しいと思います。配信も良いですが、やはり生で接するライヴとは違いますから。

2021年はレコーディングが色々な形で行なわれた年だったなと。巣籠もりがあったからこそ出来たこともあったと思いますし、人によっては年に2枚アルバム作ったりとか。そういう意味で言うと、不測の事態によって創作意欲がすごく掻き立てられたところがあったんじゃないかな。それだけに話題作も多くて聴くのはとても楽しかったですね。

ベテランのミュージシャンの訃報は残念な事に毎日のように届いて……これは致し方ない事ですけど。その一方で老境にありながら創作意欲が増している人もいて、若い人との交流を活発に行ったり、頼もしい人もいました。若い人がリスペクトして、そこに回路が出来て一緒にレコーディングしたりと、ちょっと枯れてきていた人も元気になったりという部分もあって、そういう意味での面白さはありましたね。音楽を作っている現場はポジティヴだし、出来てきている作品も個人的には面白いのが多かったですね。

ベテランも頑張っているし、一方で新しい才能もたくさん出てきています。MLC世代だとよく分からないというのもあるとは思いますが、若手でもニュースを掲載しているミュージシャンはオススメしたい人たちなので、ぜひマメにチェックしていただきたいですね。今ではサブスクリプションのサービスがあるので安価で色々聞けます。またYouTubeでは演奏している映像も簡単に見られるので、そういう機会を逃さずにいれば、いっぱい好きな音楽に出会えると思います。しかもこれまで聞いたことのない国の音楽にも簡単に接することが可能ですし。

若い人たちは、そうしたサブスクだけで満足かもしれませんが、我々レコード、CD世代はやはり気に入った音楽は「LP」や「CD」で持っていたくなります。こればかりはやめられません。

2022年も好きな音楽をたっぷり浴びて、ああでもないこうでもないと口角泡飛ばさぬ程度に、楽しんでいきましょう。
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