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● トークショー&サイン会レポート
9月15日(火)東京 @ 新宿「ディスクユニオン ベストアルバムストア」
『Peter Barakan’s Music Film Festival』開催 &
『MUSIC FILM MAGIC! ピーター・バラカンが選んだ音楽映画』
発売記念ピーター・バラカン トークショー&サイン会

ピーター・バラカン「今年の開催も含めてこれまで上映した全ての映画と、その他に僕が個人的に好きな音楽映画を取り上げています」

『MUSIC FILM MAGIC!
ピーター・バラカンが選んだ音楽映画』
第6回を迎える『Peter Barakan’s Music Film Festival』の開催と、初の音楽映画ガイド『MUSIC FILM MAGIC! ピーター・バラカンが選んだ音楽映画』の発売を記念したピーター・バラカン トークショー&サイン会が、9月15日新宿「ディスクユニオン ベストアルバムストア」にて開催された。司会進行は同映画祭の共同主催者VALERIAの小倉さんが担当。
バラカン:この映画祭が始まったのも小倉さんに誘われて。2021年、コロナの最中に始めました。
小倉:あの時は席が一個空きで。
バラカン:「×」テープが座席に貼ってあって、あれで黒字になった? 多分なってないよね。
小倉:なってないです。でもあの時ライヴがほとんど中止になったから、映画館でライヴ映画を見る楽しみがありました。
バラカン:それはあった。そしておかげさまで今年で 6回目の開催、今回は作品数も結構多くて21本。そのうち日本で全く上映されたことがないものが 8本あります。そのうち7本は僕が字幕監修をやっています。あ、「第19回ショパン国際ピアノコンクール映像選」はまだ観てないから7本。
小倉:「第19回ショパン国際〜」は演奏だけなので字幕監修は大丈夫です。これは5年に一度やっているコンクールなんですけど、古い劇場なので実際に入って見られる人数はものすごく少ない。それで、コロナの時からYouTubeで配信を始めました。だから画面では観られるんですけど、一度、高崎の芸術劇場の大スクリーンで上映したら、その場にいた人たちみんなが感動してが立ち上がったんです。まるで会場にいるかのようなピアノ演奏の映像だったので、クラシックのコンクールを知らなくても楽しめる作品だと思います。
写真左よりピーター・バラカンさん、小倉聖子さん。

ここから「Music Film Festival」の紹介が始まった。その中のいくつかをご紹介します。

◉エラ・フィッツジェラルド物語

エラはだいぶ前に亡くなって、今はあまり話題になることはない──、この映画祭で取り上げているメンツも割とそういう人が多いかもしれません。エラがルイ・アームストロングと一緒に作ったアルバムは、子供の時から何回も耳に入ってたから、それは好きだったんだけど、特別好きなタイプのヴォーカリストではなかった。でも、この映画はめちゃくちゃ面白かった。


◉ビッグ・ママ・ソーントン 有りのまま

これは一押し。「ハウンド・ドッグ」を最初に録音した人だけど、生きている時も、不遇というか報われなかった。《一晩クラブで歌って25ドル、でもバックのミュージシャンに5ドルずつ払っていたから全然割が合わない》──そういう活動をずっとしていた。ジャニス・ジョプリンがカヴァーした「ボール・アンド・チェーン」のおかげで注目されて、亡くなる前にヨーロッパで60年代毎年行われていた『アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティヴァル』に出てすごい喝采を浴びた。この映画も地味だけど、でもすごく内容のいい作品です。


◉皆がモントルーにやってきた

モントルー生まれのクロード・ノブズというスイス人が、街をもっと面白くしたいからジャズ・フェスティヴァルをやりたいと、ニューヨークのアトランティック・レコードにアポなしで行くんです。そこで副社長のネスヒ・アーティガンといろいろな偶然が重なって会うことができて、意気投合してアトランティックのバックアップを得てフェスティヴァルが開催できた──っていうとてもいい話、そういう話がいっぱいある。出番は短いけれど有名なミュージシャンが山ほど出てるし、美味しい瞬間がたくさんある映画です。


◉詩は裸の人 素顔のリオン・ラッセル

この映画祭では、去年すでにレス・ブランクという監督の映画を2本上映しました。彼が撮っているものはみんな面白いんだけど、普通のドキュメンタリーと一味違って、描かれているミュージシャンが住んでいる街の雰囲気や、普通のおじさんたちのバカ話や食べてるものとかいろんなものを撮る人。この作品はリオン自身が自分の映画を作って欲しいとレス・ブランクに頼んで、70年代前半の2年かけて撮影されたもの。けれどできたものをリオンがダメ出ししたから、結局40年以上日の目を見ないことになった。リオンが嫌だったっていうワン・シーンがあって、見れば、あっ、あそこだな──と多分分かると思います。


◉ニューポート・フォーク・フェスティヴァルの夢

マリー・ラーナーという人が作った映画で、以前1963、4、5年のニューポート・フォーク・フェスティヴァルの中から編集した一時間半ぐらいの映画があったと思います。それ以外に彼が撮った未発表映像が山ほどあって、ボブ・ディランのところはすでに発表されているものもあるけれど、その未発表映像からこれまで見られたことがない数々の出演者の演奏はすごく面白い。また、その三年の間フォーク・ミュージックの捉え方がどう変わったかということも描かれていて。特に、64年の初めにビートルズが『エド・サリヴァン・ショー』に出て、アメリカの音楽業界がガラリと変わる。フォークがその影響をどう受けたかという話もとても面白い。


◉プロテスト・シンガー、バーバラ・デインの人生を描いた作品「七転八起の歌手バーバラ・デイン」
(3回目の上映)


この映画の監督モーリーン・ゴズリングは二十代の頃レス・ブランクの所で助手としてずっと仕事していた人です。編集や、音声を録ったり、まあ助監督的なことをやっていた。僕はとにかく好きな作品で、観たかったけど観られなかったっていう人が時々いるから、これはもう一回やろうと思いました。で、ちょうどこのタイミングで、アメリカでDVDが出ます。リージョン・フリーで、日本語字幕もつきます。またそれとは別にTシャツもアメリカで作られて、日本でも販売します。そこに《I Hate The Capitalist System(私は資本主義制度が大嫌い)》っていう、バーバラ・デインが歌っていた曲のタイトルが入っています。なぜ資本主義制度が嫌いなのかというと、自分の愛しい人がその大企業の犠牲になってしまったからという歌。バーバラ・デインは、そういったプロテスト・ソングをたくさん歌った人でもあります。 そのために名声を得られなかったっていう面もあるんですけれど、とにかくその Tシャツ、すごくカッコいいんです。アメリカから輸入すると高いし、間に合わないかもしれないということで、アートワークだけもらって、小倉さんと相談しながらね、限られた枚数だけど、会場でそのかっこいい Tシャツを販売します。


◉オマール・ソーサのピアノは打楽器である

僕は、オマール・ソーサというキューバのピアニストが大好きで、LIVE MAGICにも一度出てもらったことがあるんです。今回、彼の新作が出て、ラジオでかけたいから彼のマネジャーに連絡したら、映画があると言われて、オンラインで見せてもらった。やっぱりこれもすごく面白くてね、ぜひ今年の映画祭で上映しようと決めました。彼は一応ジャズ・ピアニストなんですけど、若い時にはクラシックも習ってるし、キューバの人だからラテンの文化が目いっぱい入ってる。ライヴを見ると一番面白いのがね、次に何をするか全くわからない。この映画を見ればファンになると思います。


◉BUD LIVES! バド・パウエルへのラヴ・レター

これはアメリカ在住の韓国の女性監督で、ムン・ヘヨンが作ったバド・パウエルに関するドキュメンタリー映画。 バド・パウエルは初期のビー・ボップの世界では伝説のピアニストだったんですけど、名前は知ってても、彼のレコードを持ってる人は意外に少ないんじゃないのかな。ともかくすごいテクニックと才能を持ってるんだけど、レコードを聴いてすぐに魅力が伝わるかというと、そうとは限らない。ムンさんは、そのバド・パウエルのことをもっと多くの人に知ってほしいということで、この映画を作ってる。
小倉:私たちも初めてお会いする監督なんですけど、日本に来てくださるので、今回トークにも参加していただきます。26日の 1時40分の回です。


この他、本映画祭では初上映の作品、アンコール上映作の中からも紹介された。

◉「SOUL TO SOUL 魂の詩」71年のガーナで行なわれたコンサートの記録映画。もう何十年も日本でやってなかったけれど、久しぶりに見て、やっぱり最高です。

◉「マザー」80年代に公開されたゴスペルの世界を描いた映画。マザーと称されるのはウィリー・メイ・フォード・スミスという女性。今のゴスペルの形を一人で作った、彼女の師匠トマス・A・ドーシーと共に日常的なゴスペルの活動を続ける姿を素朴に撮った映画。アメリカで非常に高い評価を受けた作品です。

◉「マイルス・デイヴィス クールの誕生」マイルズは今年生誕100年です。日本で公開された当時、劇場で少ししかやらなかったらしい作品です。

◉「イン・タイム ドーナル・ラニー」アイルランドの伝統音楽の世界で、ドーナルがどれだけの重要人物であるかということを、この映画を見ればよくわかります。全編白黒で撮影されたすごいいい映画です。

◉「チャック・ベリー ブラウン・アイド・ハンサム・マン」チャック・ベリーの曲を、本人も含めていろんなイギリスやアメリカのロック・バンドが演奏するシーンが続く、基本的に演奏だけの映画になってます。でも、一曲まるまる入ってるから、そういう意味では楽しい映画です。チャックベリーも今年で生誕 100年、因みにジョン・コルトレインもそうですね。

◉「ジェイムズ・ブッカー/愛すべきピアノ・ジャンキー」ジェイムズ・ブッカーは日本だけじゃなく、どこ行っても知られていないミュージシャンなんですけど、この映画は本当に面白い。観た人は、きっとみんなジェイムズが好きになる。ただ、買える CD が少ないんです。

◉「ブライアン・イーノのジェネラティブ・ドキュメンタリー Eno」ご存知かもしれませんけれど、上映されるたびに内容が変わります。生成AIによって編集が変わる仕組みになっている映画ですから、すでにご覧になった方でももう一回見る価値はあると思います。今回、レコード会社から提供された未発表ライヴの映像を急遽本編と合わせて上映することになりました。


最後に、この映画祭で上映された作品を全部網羅した、バラカンさん初の音楽映画ガイド『MUSIC FILM MAGIC! ピーター・バラカンが選んだ音楽映画』が紹介された。

「今年の開催に合わせて、今回も含めてこれまでの6回で上映した全ての映画と、その他に僕が個人的に好きな音楽映画を取り上げています。

前書きにもありますが、僕が原稿を書く時間がどう見てもなかったので、編集担当の竹脇さんに長時間の話をした上で、彼がまとめてくれた原稿を僕がちょっと手直しして出来上がりました。その前にまず映画のリストを作るんですが、原稿が全部出来上がった最終段階で、僕はデイヴィッド・バーンのコンサートに行っていたんです。で、《あれ?! 待てよ、もしかしたら「ストップ・メイキング・センス」入れなかったんじゃないかな?》と確認したら、入ってなかった! 慌てて 1頁で取り上げるはずだったものを2分の1頁ずつにして、空けた1頁に急遽原稿を書いて「ストップ・メイキング・センス」を入れました。必ずそういうことがあるんですよね。はい(笑)。

有名な音楽映画でこの本で取り上げていないものがあります。これは僕のこれまでのディスク・ガイドの本で、有名なアルバムを取り上げていないのと同じことで、自分が好きなものだけでやっていますから、それだけのことです」

この後、質問コーナーに続いてサイン会が行われた。

MUSIC FILM MAGIC! ピーター・バラカンが選んだ音楽映画

MUSIC FILM MAGIC! ピーター・バラカンが選んだ音楽映画

2,750円

著者:ピーター・バラカン
ピーター・バラカン初の〈音楽映画〉をテーマにしたガイド・ブックが登場!
9月18日より開催される『Peter Barakan’s Music Film Festival』上映作品も完全収録。


ロック、ポップ、ブラック・ミュージック、ジャズからワールド・ミュージックまで、ピーター・バラカンがお気に入りの音楽映画の見どころを紹介する自身初の音楽映画ガイドが登場! ドキュメンタリー、ドラマ、コンサート映画など、ジャンルも国も年代もさまざまな音楽映画200作品をこの一冊に集約。2021年より開催している音楽映画祭『Peter Barakan’s Music Film Festival』(2026年9月18日〜10月1日に角川シネマ有楽町で開催)で上映してきた全作品を紹介しています。
【映画祭詳細】

Peter Barakanʼs Music Film Festival 2026

・会期:2026年9月18日(金)〜10/1(木)
・会場:角川シネマ有楽町
・公式サイト:Peter Barakanʼs Music Film Festival 2026
◼️日本初上映
エラ・フィッツジェラルド物語
ビッグ・ママ・ソーントン 有りのまま
皆がモントルーにやってきた
詩は裸の人 素顔のリオン・ラセル
ニューポート・フォーク・フェスティヴァルの夢
オマール・ソーサのピアノは打楽器である
BUD LIVES ! バド・パウエルへのラヴ・レター 第19回ショパン国際ピアノコンクール映像選

◼️本映画祭初上映
SOUL TO SOUL 魂の詩
マイルス・デイヴィスクールの誕生
マザー
イン・タイムドーナル・ラニー
1975年のケルン・コンサート
キャロル・キング&ジェイムス・テイラー:ジャスト・コール・アウト・マイ・ネーム
エリス&トムーボサノヴァ名盤誕生秘話
Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto 4Kレストア版
チャック・ベリー ブラウン・アイド・ハンサム・マン

◼️アンコール上映
ブライアン・イーノのジェネラティブ・ドキュメンタリー Eno
ジェイムズ・ブッカー/愛すべきピアノ・ジャンキー
七転八起の歌手 バーバラ・デイン
ピアノフォルテ
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