1971年7月、嵐を呼んだグランド・ファンク・レイルロード後楽園球場公演

【ミュージック・ライフ写真館/ML Imagesライブラリー 撮影:長谷部 宏 pix : Koh Hasebe / ML images / Shinko Music】

今回「ミュージック・ライフ写真館」第5回で取り上げるのは、グランド・ファンク・レイルロードの初来日となった、今から49年前の今週──1971年7月17日の雨の後楽園球場。『ミュージック・ライフ』の歴史〜「ML Images」ライブラリにおいてのみならず、日本の洋楽史に一際強い印象を残した、歴史的な出来事を捉えた一連の写真です。
1960〜90年代にかけて、雑誌『ミュージック・ライフ』は、フォトグラファー長谷部 宏氏を中心にした撮影陣で、数多くの海外アーティストの写真を撮り続けて来ました。60年代にはビートルズ、70年代にはクイーン、KISS、チープ・トリック、ジャパン、80年代にはボン・ジョヴィやデュラン・デュラン……などなど、撮りためたポジ・フィルムやプリントは、数十万枚にも及ぶ量になります。しかもその貴重さは世界的レベルのため、海外からのリクエストも絶え間なく寄せられています。

現在我々は、そのコレクションを「ML Images」と名付け、膨大な量の写真を地道に整理整頓しつつ、貸し出すサービスを行なっており、ライブラリへアップロード済みの画像は目下約3万点で、現在も増え続けております。ご利用をご希望のメディア/展示スペースの方は、弊社までご連絡いただければ、具体的なご希望がない場合でもスタッフがお応えいたします。お気軽にご相談ください。メールはこちらから。

※個人の方へのご提供は行なっておりません。
グランド・ファンク・レイルロードは1969年8月にアルバム『グランド・ファンク・レイルロード登場(On Time)』でデビュー。レッド・ツェッペリンのUSツアーで前座を務めた際に、その熱演でメインアクトの彼らを食ってしまったというのは当時からの語り草で、案の定人気爆発。その後も『グランド・ファンク(Grand Funk)』『クローサー・トゥ・ホーム(Closer to Home)』、そして『ライヴ・アルバム(Live Album)』とハイペースで作品をリリースし、それぞれチャート上位に食い込むヒット、しかもライヴ盤については “超” が付くほどのバカ売れに。70年代前半はそんな調子で、誰にも手をつけられない、まさに暴走列車さながらの活躍が続いたのでした。

そんな人気沸騰の最中、1971年4月に5作め『サバイバル(Survival)』をリリース。それを受け『ミュージック・ライフ』の3月号では表紙(下写真・左)も飾っています(写真はマーク・ファーナー。しかし暗くて誰だかよくわかりません)。その後まもなく来日決定、しかもコンサートは当時異例のスタジアム公演。それを受け『ミュージック・ライフ』では、来日当月の7月号でこれまた異例の、コンサートに備えた「7月17日・18日に嵐が起こる!!」と、この時点ですでに不穏な打ち出しでの大特集(以下記事の画像2点。ただし記事は途中まで、そして一部事情によりぼかし処理ある点、ご了承ください)。ステージは記事中にある日程の通り東京・後楽園球場と大阪・大阪球場の2公演のみ。メンバーは7月15日に羽田から日本入りしましたが、写真からもその熱狂ぶりが伝わってきます。

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翌16日は東芝レコードのスタジオに入り(次写真・左、左から順にマーク・ファーナー〈g, vo〉、ドン・ブリューワー〈ds〉と、マネージャーのテリー・ナイト)、午前中は「ギミー・シェルター」「アイ・キャン・フィール・ヒム・イン・ザ・モーニング」2曲の編集を行なったとのこと(中央写真はスタジオでのマーク・ファーナー)。この2曲は8月にシングルでリリースされており、アルバム収録の長尺ヴァージョンをシングル用にここ日本でエディットしたのだそうです。午後はホテル周辺の散策などもしたようで、階段でのショットは赤坂・日枝神社にて(メンバー3人。左側がベースのメル・サッチャー)。

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そして7月17日当日。フィールド中央のセカンドベースあたりにホームベースに向けてステージを組み、観客はスタンドのみ。当日券も発売されたものの速攻で完売、一部買えなかった人たちが暴れ始め、すわ暴動かという事態にもなったそう。前座は日本からモップス、麻生レミ&スーパーグループ(彼女はこの日のためにバックバンドWYNDとともに帰国したものの、バンドのメンバーがビザの関係で来日できず。この日は井上孝之[当時。のちに尭之と表記を変更]/山内テツらによる急造バンドとのステージで、しかも大阪公演は一部メンバーが異なったのだとか)。さらにカナダからマッシュマッカーンが登場、その頃まではまだなんともなかったようなのですが……。しかしその演奏が進むにつれ、ステージ前に設定されていた “GRAND FUNK” の文字が強風で舞い上げられたりという予兆もあったのだとか。

そして間も無くメインのGFR登場、というその時。雷とともに突然の豪雨、嵐の襲来!(話によると雹も降っていたそうです)。その結果1時間あまり開演は遅れることになったものの、スタンドのほとんどの観客は雨宿りで退避することもなく待ち続け、熱は高まる一方だったとか。そうして小降りになったところで、ようやく真打ち登場!

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「小降りになったところで」と言いますが、見る限りそこまで小降りでもなく、アンプはビニールシートで雨よけをして。ということは、その前はどんだけ降ってたんだよ、と。雨天決行とはいえ、よく中止にならなかったものです。その後はさながら『ライヴ・アルバム』の再現といった具合で、実際にご覧になった方の原稿は異様なテンションでこの日のステージを振り返るものばかり。自然現象による演出もさることながら、脂の乗り切った時期のバンドによる演奏は、ほぼ半世紀を経た今も観た者の心に強く残っているようです。

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結局途中で雨は上がったようで、それが何より。そして最後の2枚は会場全景と、演奏中のグランド・ファンクをステージ前の水たまり越しに撮ったカット。当日会場にいたみなさん、いいもの見ましたね。そして長谷部さん、お疲れ様でした。ちなみに、写真はありませんが、翌日の大阪公演も雷雨&雹で大変だったそうです。

……それにしても、7月中旬の球場での公演ということは、プロ野球もシーズン真っ只中だったはず。そう思い調べてみたところ、この日は阪急西宮球場でオールスターゲームの第1戦が行なわれていたのでした。余談ついでに、そのゲームは全セの先発・江夏 豊が9連続三振という、これまた伝説を残しています。そしてGFR公演直後の後楽園球場でのゲームは、7/20に同第3戦が無事行なわれたということです。

ではまた次回、【ミュージック・ライフ写真館/ML Images ライブラリー】をお楽しみに。不定期更新、次回もまた近いうちに。
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