クイーン研究家・いしづみたかゆきのクイーンとプラチナ・ジュビリーを訪ねて5,000マイル![3]6月5日(日)クイーン+アダム・ランバート、ロンドン公演

クイーン研究家・石角隆行(いしづみたかゆき)氏によるクイーンのツアー+エリザベス女王プラチナ・ジュビリー観戦記 in 英国「いしづみたかゆきの英国徒然漫遊紀行」も今回でもう第3回。今週は、4年ぶりだったクイーン+アダム・ランバート公演に関してです。

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クイーンとプラチナ・ジュビリーを訪ねて5000マイル!
いしづみたかゆきの英国徒然漫遊紀行③

4年ぶりにQALがロンドンに還ってきた! O2アリーナ・レポートその1

石角隆行(クイーン研究家)

6月5日(日)、クイーン+アダム・ランバート(以下QAL)が遂にロンドンに還ってきました。2018年7月4日以来のO2アリーナなので、ロンドン公演は4年ぶりです。前回は3日間でしたが、今回は6月21日までの全10公演がO2アリーナで開催されます。チケットは本来開催予定だった2020年には売り出されていましたが、日本と大きく違うところは発売と同時に完売しないこと。6月3日(金)のグラスゴーのチケットは発売日に購入しましたが、ロンドン公演、まだ売ってるかな?とサイトを見ると、まだまだ残っている! ならばと購入したのが、1Fスタンドの前から10列目、ステージの真横(左側)。なんとメンバーが肉眼で見える好ポジションが、公演2ヵ月前の4月中旬に買えました。ただしチケット代は300GBP(日本円で約5万円)と、そこそこ高いです。日本公演ならゴールド席の値段です。ちなみにグラスゴーは1Fスタンド正面の前から10列目ぐらいで、300GBPでした。スタンド席は上に行くほど安くなります(最上段で150 GBP=¥2万5,000)。アリーナはオール・スタンディングでした。

O2アリーナの外観

ロンドンでも物販ブースは閑散としています

物販ブースを横からみたところ

いざ行かん!O2アリーナ前で武者震いする筆者 

O2アリーナには開演時間の30分ぐらい前に到着。開場時間(18時30分)に慌てて行かなくてもイイというのは先のグラスゴーで学習済み(本連載①参照)。物販ブースもガラガラで並ばずにTシャツを購入。ところが、入場時にトラップ発生。A4サイズ以上の荷物は持ち込み不可とのことで、会場外のラゲッジ・ブースに行けとの指示。預かり賃が10GBP(約¥1,600)とけっこう高いです。ここで少々時間をくいましたが、なんとか開演前には入場。ロビーに入るとビール売り場の前は大行列。グラスゴーもそうでしたが、イギリス人はみなさんお酒好きです。ツアー・ロゴがプリントされたパープルカラーのビア・カップは気になりましたが、いかんせん1パイント(568ml)は飲みきれず、あの行列に並ぶのもなんなので断念。

会場に入って最初に感じたのは、思っていたより小さくみえたこと。これまで数々のO2アリーナでのライヴ映像を見ていてとてつもなく広い印象があっただけに、少々拍子抜けしました。コンサートの場合、18,000人ぐらいは収容できるそうですが、アリーナ・エリアに限っては横浜アリーナや大阪城ホールより狭いです。ただ、天井は高く、スタンド席がけっこう上まで伸びているので、最上段だとステージまでかなり距離があります。とはいえ、ここはウェンブリー・アリーナ(現:OVO Arena Wembley)と並ぶロンドン最大のアリーナ。QALは2015年1月の初公演以来、6回コンサートを開催しておりファンにとっては新しいロンドンの聖地でもあります。開演前になると場内には『メイド・イン・ヘヴン』のラストに収められたインストゥルメンタル曲「Track 13」が重々しく流れ、これから始まる宴をゆっくりと煽っていきます。

O2アリーナ内。エスカレーターはけっこう高くて恐いです

O2アリーナ会場内。写真で見ると大きく見えますが、肉眼で見ると小さくみえます

座った席はステージ左側の101ブロック。ここだとメンバーの動きがよく見えます
■ACT-1/「イニュエンドウ」のオーケストラ・ヴァージョンで幕を開ける!

20時10分。「Track 13」が流れる中、ステッキをせわしく叩く音が5回入ります。1976年のオペラ座の夜ツアーの冒頭で開演を告げるあの “音” です! 続いて1・2・3とカウントが入ると「イニュエンドウ」のオーケストラ・ヴァージョンが高らかに鳴り響きます。ステージを覆っていた金色の王冠がゆっくりと上昇すると、聞こえてきたのは「ナウ・アイム・ヒア」のギター・リフ。ステージ後方の赤い紗幕がゆっくり左右に開くと、そこにはバックライトに照らされたブライアンのシルエット。続いてステージ右上にはアダムのシルエットが。「I’m Just !」のシャウトと共に、さっきブライアンが居た場所に今度はアダムが表れます。一方、ブライアンはステージ前方からせり上がっての登場。ゾクゾクするほどのカッコいいオープニングで、「ラプソディ・ツアー」のロンドン初日が遂に幕を開けました。冒頭のステッキ・カウント音は1976年、シルエットに浮かび上がりながら瞬間移動して登場するのは、初来日公演でも見せた1975年の「シアー・ハート・アタック・ツアー」の再現。デビューの頃から応援している古参ファンにもしっかりアピールする粋な演出です。

このレポートでは、コンサートの演出やステージ構成から6つのACTに分けて紹介していきます。ACT1は比較的初期の楽曲を中心に、短めにテンポよく演奏していきます。プラチナ・ジュビリーで披露された「ドント・ストップ・ミー・ナウ」は、この位置でなく、後半でも良いのではとも思えましたが、選曲や構成は2019年に始まった「ラプソディ・ツアー」がベースになっているので致し方ないのでしょう。ACT1の最大の見せどころは「神々の業(リヴィジテッド)」。1977年の「華麗なるレース・ツアー」まで本編の最後に、1986年の「マジック・ツアー」でも演奏された、古くからのファンにとっては想い出深い曲。ほぼ原曲と同じキーで歌うアダムの美声にしびれます。さらに、初期クイーンのコンサートでお馴染みだった大量のスモークがステージを覆い、幻想的な雰囲気を醸し出します。最後の「Wo Wo LaLaLa」のコーラスでは、オーディエンスも右腕を大きく掲げ左右に降りながら大合唱。客席とステージが見事に一体化し、ラストは火の球を爆発させ、ACT1を締めました。

■ACT2/ロジャーのヴォーカルが炸裂!

前の曲で熱くなった空間をバッサリと切り裂くように「1・2・3!1・2・3!」のカウントで始まったのは「アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー」。ロジャーがドラムセットに座って歌います。QALはコロナ禍でライヴ活動を2年間中断していましたが、ロジャーは昨秋、ニュー・アルバム発表と共にUKツアーを行なったばかりの現役感バリバリ。ドラムを叩きながら、オリジナルのキーでシャウト。後半はブライアンがドラムセット前に立ち、レッド・スペシャルが唸りを上げて絡みます。この2ショットを見ると、クイーンはこの2人で始まったんだなぁと改めて思えました。

ロジャーのステージが終わると、スラスト・ステージ(花道)先端に置かれたハーレー・ダヴィッドソン型の大型バイクに跨ったアダムが「バイシクル・レース」を歌います。続く「ファット・ボトムド・ガールズ」は1978年に「バイシクル・レース」と両A面でシングル・リリースされたいわば兄弟曲なので、この2曲が続く流れは必然。残念ながら他楽曲を演奏する関係上、日本公演では披露されなかっただけに、ようやくこの組み合わせの妙を楽しむことが出来ました。Act 2のラストは「アイ・ウォント・イット・オール」。ライヴ活動を停止した以降のアルバム『ザ・ミラクル』(1989)に収められたライヴ映えする1曲です。フレディの体調不良さえなければ、コンサートで演奏することも想定していたことでしょう。そんなメンバーの思いは2005年のポール・ロジャースとのコラボ・ツアーで実現。以降はQALにも受け継がれ、今やコンサートの鉄板ナンバーに。冒頭、アダムが縦横無尽のヴォーカル・インプロヴィゼーションをたっぷり聞かせ、「アイ・ウォント・イット・オール」のコーラス・パートになだれ込むと場内から大歓声が上がります。リアルタイム体験世代の私から見れば、この曲はクイーンの中では新しい曲という位置づけでしたが、この盛り上がりを見る限り、しっかりと認知されているんだと実感。アダムのグイグイと引き寄せていく力強いヴォーカルは終始、場内を圧倒し続け、圧巻のパフォーマンスで第2章〜ACT2のステージを締めました。

スマホ・ライトの光の海で埋まった会場
■ACT3/センターステージのアコースティック・コーナーにフレディが降臨!

「グッド・イヴニング、ロンドン! 昨日のバッキンガム宮殿はみてくれたかい?」。ACT3はセンター・ステージに移動し、アコースティック・ギターを抱えたブライアンの第一声から始まりました。「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」のイントロが奏でられるや「待ってました!」とばかりに場内から大きな歓声が上がります。ブライアンの優しい声がO2アリーナの最上段まで響き渡ります。ギター・ソロに入る前、場内にちらほらと灯るスマホの光を見渡したブライアン。少々足りない?と感じたのか「もっとライトを!」と促す一幕も。観客はこれに応じ、全員が一斉点灯。会場中が白い光で満たされた感動的な光景となりました。そしてエンディング。上方スクリーンにフレディが登場! 隣にはブライアンの姿も! スクリーン上でふたりの共演。あの2ショットがヴァーチャルで蘇りました。客席では涙ぐむ人も! 最後のフレーズを歌い終えるとフレディはブライアンの差し伸べる右手にタッチし、静かにステージを降りました。ちなみに日本公演ではこの曲の前に「手をとりあって(Let us cling together)」を演奏していました。

フレディの登場で熱くなった客席に向け、ブライアンが放ったもう1曲は、『オペラ座の夜』に収められた「'39」。フレディ時代はメンバー4人が横一線に並んで演奏していた、ファンの間で人気の高い曲。QALでは2014年のツアー以来です。私はステージ真横のスタンド席で視ていたのですが、「'39」の演奏中、暗がりの中でロジャーがスパイク・エドニーのキーボードの傍らに立ち、ステージのブライアンを見据えながらコーラス・パートを真摯に歌っていた姿が印象に残りました。続いては、今回のヨーロッパ・ツアーから新たに組み込まれた「輝ける日々(These Are the Days of Our Lives)」。北米や日本、豪州では「ドゥーイング・オール・ライト」を演奏していたパートです。初めて見たのは19年ぶりにツアー活動を再開させた2005年のポール・ロジャースとのコラボ、ツアー初日のロンドン、ブリクストン・アカデミー公演でした。スクリーンには1975年の初来日の模様が映し出され、クイーンにとっての “輝ける日々” は、やっぱりあの頃だったんだと、誇らしげに思ったものです。今回はフレディ時代のバンドの映像を上映。ギター・ソロが終わったタイミングでセンター・ステージにタータン柄のキルト・スカートに着替えたアダムが表れ、曲にジョイン。ロジャーと肩を並べ、時には見つめ合いながら歌うさまは、同じバンドのメンバーというより、親子のような固い絆が感じ取れました。

ここでロジャーはセンター・ステージのドラムセットに座り、3人で.「愛という名の欲望」に。いつもならアコースティック・ギターのカッティングから始まるこの曲ですが、アコギの音はブライアンのレッド・スペシャルから出ています。かつてはアコギ〜テレキャスター〜レッド・スペシャルと3台のギターを持ち替えながら演奏していましたので、ギター一本で賄えるようになったのは大きな進歩。センター・ステージ最後は、ロジャーから「(先日急逝したフー・ファイターズの)テイラー・ホーキンスに捧げます」と紹介されて「アンダー・プレッシャー」に。ベーシストのニール・フェアクローが弾くベースラインから始まり、フレディのパートをアダム、ボウイのパートをロジャーが絡み合いながら歌い綴り、大喝采の中、センター・ステージを締めました。

新たに加わった “あの曲” が素晴らし過ぎる後半は、次回(連載④)で! 今しばらくお付き合いください。
■石角隆行の著作
クイーン 誇り高き闘い

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クイーン 輝ける日々の記憶 浅沼ワタル写真集

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