クイーンの “新曲”「Face It Alone」と、新ボックス『ザ・ミラクル』の背景

〈以下、メイカー・インフォメーションより〉

不世出の天才、フレディ・マーキュリー（1946年9月5日生―1991年11月24日没）。彼の感動的な歌声によって歌われた未発表曲「フェイス・イット・アローン」が発掘され、8年ぶりのクイーンの「新曲」として10月13日（木）に全世界同時で配信された。そして本日（25日）、その「フェイス・イット・アローン」のミュージック・ビデオがTV初公開される。

同ミュージック・ビデオでは、アニメーションや万華鏡エフェクトを駆使しつつ、バンドが愛用したモントルーのマウンテン・スタジオを再現。更に1989年のアルバム『ザ・ミラクル』の時期に彼らが発表したミュージック・ビデオの数々を思い起こさせる様々なイメージと組み合わせており、ロジャー・テイラーが「僕らが少し忘れてかけていた、フレディの珠玉の小品」と語り、ブライアン・メイが「美しい、胸を打つ曲」と評するこのバラードの内容を、視覚的に力強く表現している。

クイーンが信頼を寄せるコンテンツ・クリエイターで、今回のビデオを制作したサイモン・ラプトンは「この曲の歌詞についてどんな解釈がなされるかはさておき、今回のビデオは、この曲をレコーディングしたのが彼らにとってバンド史上最も多作かつ団結していた時期だったという事実を讃える快活なものにしようという意図で制作したんだ」と語る。

彼は今回、孤独と勇気、そして友情が持つ救いの力をテーマに、この曲の痛切さと抵抗の姿勢を描き切っている。「人生に何か壊滅的なことが起きた時、人は本能的に自分にとって最も愛しく大切なものに囲まれたいと思うもの、そういった意味がこの曲には込められていると解釈したんだ」「作品づくりに没頭し、バンド仲間に囲まれていることで、フレディはそれをコントロール出来ていた。言うまでもなく、最終的には一人で向き合わなければならない——だが、それとどう向き合うかを、周りの人々が手助けしてくれるということだよ」と彼は説明する。

「フェイス・イット・アローン」は、1987年12月から1989年3月までに行なわれた、フレディ在籍時のクイーン後期の名盤であり13作目のアルバム『ミラクル』（1989年発売／全英1位）のためのレコーディング・セッションで録音された音源。このときクイーンは約30曲をレコーディング。最終的にアルバムには10曲が収録され、収録されなかった多数の楽曲は今日まで一度も日の目を浴びずに保管されていた。クイーンのプロダクション及びアーカイヴ・チームが、今回『ザ・ミラクル』のボックス・セットをリイシューするに当たり、当時のセッション音源を再調査していた際に同曲が偶然発掘された。 

『ザ・ミラクル』の制作が開始された前年、1986年8月9日、イギリスの〈ネブワース・パーク〉で推定16万人以上の観客を前にクイーンの「ヨーロッパ・マジック・ツアー」は最高潮を迎えたまま終幕。結果としてこれがクイーンにとってフレディとの最後のライブとなった。その後、『ザ・ミラクル』のレコーディング期間中にフレディはバンドのメンバーに自らのAIDS感染を告白したと言われている（映画『ボヘミアン・ラプソディ』ではフレディが1985年7月に開催された「LIVE AID」出演前に告白する姿が描かれているが、実際の時期とは異なる）。「フェイス・イット・アローン」の歌詞は、まさに当時のフレディの心境が投影されているかのような、深刻な決意を感じさせる。

今回再発見された同楽曲について、ブライアン・メイはこう語っている。「僕らのチームがこのトラックを見つけてくれて嬉しいよ。あれから長い歳月が流れたけれど、ここでこうしてまた僕ら4人全員で……そう、ディーシー（※）もいて……今日の今日まで完全には仕上がらなかった素晴らしい曲のアイデアを、僕ら4人全員がスタジオで取り組んでいる様子を聴けるなんて実に素晴らしいね……今回やっと完成したよ！」

（※）ディーシー・・・クイーンのベーシスト、ジョン・ディーコンのこと。1997年に事実上引退。

11月18日（金）に全世界同時発売となるクイーンの豪華8枚組ボックス・セット『ザ・ミラクル - コレクターズ・エディション』では、この「フェイス・イット・アローン」に加え、5曲の未発表曲、「ドッグ・ウィズ・ア・ボーン」「アイ・ゲス・ウィアー・フォーリング・アウト」「ユー・ノウ・ユー・ビロング・トゥ・ミー」「ホエン・ラヴ・ブレイクス・アップ」「ウォーター」を初収録。その他レア音源、アウトテイク、インストゥルメンタル、インタヴュー、ビデオ等を豊富に収録している。さらに未公開写真、バンドからファンクラブ宛に送られたオリジナルの手書きの手紙、当時のプレス評、フレディ、ジョン、ロジャー、ブライアンがアルバム制作や代表的なビデオについて回想している幅広いライナーノーツが掲載された、76ページのハードカヴァー・ブックを同梱。クイーン史上、極めて重要な瞬間を知る上での魅力的な手掛かりが数多く収録されている。

クイーンは13作目となるアルバム『ザ・ミラクル』で初めて、それぞれの曲を誰が思い付いたかに拘らず、作詞・作曲のクレジットをバンド名義として平等に共有。この結束はクイーンの4人の顔が1つに融合している『ザ・ミラクル』のジャケットにも表れている。「このジャケットは、当時のグループの結束、つまり4人が繋ぎ目なく1つになっている一体感を表しているんだ」とブライアンは語る。「同時に、悪化していくフレディの健康状態に対応しながら、力を併せて彼を支えていたんだよ」。フレディの決意と、かつてなく結束した4人から生まれた感動的な作品、まさに奇跡－「ミラクル」の1枚だ。

※「フェイス・イット・アローン」はフレディ・マーキュリーをフィーチャーした新曲としては8年ぶりのリリース。2014年11月発売のベスト・アルバム『クイーン・フォーエヴァー』に「ユア・ハート・アゲイン」（Let Me in Your Heart Again)、「ラヴ・キルズ」（Love Kills)、「生命の証」（There Must Be More to Life Than This）というフレディ参加の未発表曲3曲が収録されている。