リンダ・ルイス死去。アルバム『ラーク』を名盤たらしめた可憐な声を持つ歌姫、享年72

1950年に英エセックス州ウェストハムで生まれたジャマイカ系の英国人のルイスは、幼い頃から演技を習い始め、60年代前半のTVや映画にセリフのない端役で出演し、またビートルズ1964年の映画『A Hard Day’s Night』に絶叫するファンの役で出演したこともありました。

5オクターヴの声域を持つルイスは、1964年にブルース・シンガーのジョン・リー・フッカーとロンドン郊外のクラブで共演したこと機にレコード契約を結び、ホワイト・ラビットやフェリス・ウィールなどのグループで活動した後、1971年に初ソロ・アルバム『Say No More』をリリースしました。

その後、自身が書いた1973年のシングル「Rock-a-Doodle-Doo」が、UKチャートで15位を記録する初ヒットになり、1975年にカヴァーした「It’s in His Kiss」は、同チャートで6位にランクインしました。

また、70年代からセッション・ヴォーカリストとしても活躍したルイスは、アル・クーパー1972年のアルバム『A Possible Projection of the Future』（邦題『早すぎた自叙伝』）や、デヴィッド・ボウイ1973年の『Aladdin Sane』、キャット・スティーヴンス1972年の『Catch Bull at Four』、ロッド・スチュワート1978年の『Blondes Have More Fun』（邦題『スーパースターはブロンドがお好き』）と1981年の『Tonight I’m Yours』などでバック・ヴォーカルを担当し、キャット・スティーヴンスのワールド・ツアーにも参加。1974年には彼の来日公演にも同行し、フロントアクトとして出演も果たしました。

ルイスは、1971年～1983年にかけて7枚のソロ・アルバムをリリースし、そのうちの1枚、ジム・クリーガン（ファミリー他）のプロデュースによる『ラーク』（1972年）は名盤の誉高く、10年余りの間公の場から撤退したままだったにもかかわらず、1990年代に入ってからのレア・グルーヴ・ムーヴメントにおける再評価で俄かに注目を集めます。1992年にジョーン・アーマトレーディングのアルバム『Square the Circle』に参加、そうして再評価の後押しも受けて1995年に12年ぶりとなる『セカンド・ネイチャー』をリリースし、本格的にアーティストとしてシーンに復帰。その後再来日公演も実現させました。

今年3月には、UKフォーク・ファンク・バンドのザ・パラコスモスが、ルイスとコラボしたシングル「Earthling」をリリースしており、これがルイス最後の曲になりました。

ジャマイカ系英国人として、R&BでもUKフォークでもいためそのどちらかだけには決して当てはまらず、しかし同時にその両方の音楽性を併せ持つことでどこか無国籍な音楽性を特徴とし、何よりその美声を持ち味とした、唯一無二のシンガーでした。安らかなる眠りをお祈りいたします。