ホストに立川直樹氏を迎えた、極上の音楽と食で嗜む大人のイベント・レポート──最高峰のオーディオ・システムで聴くビートルズ

Salon De TOGO THE BEATLES 1966 TOKYO DAYS SUPER AUDIO LIVE”

6月29日(木)@ 東京・原宿 東郷記念館

1966年6月29日、未明の羽田空港に降り立ったザ・ビートルズ。その57年後のメモリアル・ディ(ビートルズ来日記念日)2023年6月29日に、極上の音楽と食で嗜む大人のイベント “Salon De TOGO THE BEATLES 1966 TOKYO DAYS SUPER AUDIO LIVE” が原宿・東郷記念館で開催された。

ミュージック・セレクトとトークは、音楽評論家の立川直樹さん。そして、高級オーディオ・ブランドであるテクニクスによる最高峰のオーディオ・システム(総額800万円超!)と、東郷記念館自慢のお料理と “リストランテ濱﨑” 様よりお一品ご提供を頂けるお料理を楽しめる贅沢な内容のイベントだ。

共に英国盤『ザ・ビートルズ1962-1966』(赤盤)と『ザ・ビートルズ1967-1970』(青盤)を手にする立川直樹氏。
※写真:東郷記念館提供(以下同)

立川:食事をしながらお楽しみいただくのは、音楽映画の大傑作、ビートルズの主演映画第一弾『ア・ハード・デイズ・ナイト』のオリジナル・サウンドトラック盤です。これは日本では発売されなかったもので、アメリカのユナイテッド・アーティストから発売されました。ビートルズの曲とジョージ・マーティンが編曲・指揮をしたオーケストラ・ヴァージョンが交互に出てくる素晴らしいレコードなので、この後のレコード・セッションよりはちょっと音量を抑えますけど大きい音でお届けしたいと思います(笑)。エルヴィス・コステロも 「『ア・ハード・デイズ・ナイト』は64年のビートルズのファンタジーの時代を象徴している」という最高のコメントを残しています。ともかく最初のコード一発で僕らは連れて行かれました。

★『ア・ハード・デイズ・ナイト オリジナル・サウンドトラック』米国ユナイテッド・アーティスト盤 A面

立川:A面最後はジョージ・マーティン・オーケストラの「アンド・アイ・ラヴ・ハー」。ビートルズの4人が音楽を作るときに果たしたジョージ・マーティンの役割がいかに大きかったのかが分かる実証実験を後でやります。続けてB面をお楽しみください。

『ア・ハード・デイズ・ナイト オリジナル・サウンドトラック』米国ユナイテッド・アーティスト盤B面

立川:先日亡くなったデヴィッド・クロスビーが、当時この映画を見て「これでロックンローラーは大丈夫!」と言ったそうです。改めてサウンドトラック盤を聴くと、ロックだけではなく、ジョージ・マーティンの編曲したヴァージョンがレイヤーとして流れていて、それで成立しているのが分かります。ではビートルズの映画サウンドトラック第二弾『ヘルプ・オリジナル・サウンドトラック』米国キャピトル盤。これも当時日本では発売されていませんでした。64〜65年に輸入盤を買おうとするとエアメール便で5,000〜6,000円、シーメールで3,500円はかかりました。当時のサラリーマンの初任給は12,000円くらいですから、かなり高額です。

『ヘルプ・オリジナル・サウンドトラック』米国キャピトル盤』A面

立川:ビートルズは1962年にデビューして、1964年に主演映画第一作『ア・ハード・デイズ・ナイト』、そして第二作の『ヘルプ』は1965年。3年でここまで来て翌年には来日するのですが、解散が1970 年ですから活動期間は通して8年間。オリジナル・アルバムも12枚しか出していないけれど、どれも素晴らしいアルバムです。ライヴについては1966年に来日の後、8月に北米ツアーを行ない、最終日サンフランシスコ、キャンドルステイック・パークでライヴを終えるので、実はデビュー後は4年しかライヴをやっていないんです。では、本日のメイン・イベントの最初はレアなレコードをかけます。
普通はかけてはいけないんですけど──と前置きの後、1966年6月30日〜7月2日の3日間計5回行なわれたビートルズの日本武道館公演にフォーカスしたタイム・トラベルが始まる。高音質オーディオと複数の貴重音源盤による素材のセレクションで、ドキュメント番組さながらに来日直後の模様から武道館の熱狂が再現された。

──大歓声の中、ジョン・レノンがギターをかき鳴らして歌い始める「ロックン・ロール・ミュージック」、ジョージ・ハリスンが12弦ギターで歌う「恋をするなら(イフ・アイ・ニーデッド・サムワン)」、リンゴ・スターが髪を振り乱してドラムを叩きながら歌う「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」をはじめ、絶妙に絡み合う独特のコーラスや4人でしか出せない大きなグルーヴが大音量で再現され、その度に場内から拍手が起きる。そして当時の最新曲「ペイパーバック・ライター」が披露され、最後はロックンロール・シャウターの面目躍如、ポール・マッカートニーの「アイム・ダウン」で幕を閉じる熱狂の33分──。


立川:「ペイパーバック・ライター」は66年の4月13日、14日の2日間でB面の「レイン」と一緒に録音をしていて、スタジオ盤を聴くといかに上手いバンドだったかが分かります。ではここから僕がオーディオ様と呼んでいるテクニクスのスーパー・オーディオでビートルズの素晴らしい録音を楽しんでいただこうと思います。

★「ペイパーバック・ライター」

立川:まだこの頃はレコーディングは4チャンネルで行なわれていました。もちろんコンピュータもない時代です。1966年8月にライヴ活動を停止したビートルズはその後スタジオに籠ります。そして翌67年6月1日に出したのが、ポピュラー・ミュージックの歴史の中でもベスト10枚に選ばれるアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』です。それまでになかったコンセプト・アルバムで、ジャケットも素晴らしいし裏側には全面に歌詞が掲載されています、当時としては画期的なことです。それではビートルズの4人とジョージ・マーティンの力が結集したアルバムのオープニングから2曲続けて聴いてください。

★「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」
★「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンド」


立川:この曲のポールのベースって無茶苦茶上手いです。では次はアルバム・ラストの曲で「ア・デイ・イン•ザ・ライフ」。この曲には、当時のイギリスにおいては歌詞の “I’d love to turn you on” がドラッグを連想させるのでBBCでは放送禁止になりました。これはいかに当時のイギリスが保守的だったのか分かるエピソードです。曲の最後のピアノの和音はアーティストたちの中でも語り草になっていました。
★「ア・デイ・イン•ザ・ライフ」

立川:ビートルズは来日前にすでに『リボルバー』という名盤を作っていました。昨年末『リボルバー・スペシャル・エディション』としてその新しいミックスが出たのですが、聴いてみたらびっくりした曲があって、それを聴いてみたいと思います。ジョン・レノンが “ヒマラヤの山頂で1,000人の僧侶が読経しているようなイメージ” と言ったのをジョージ・マーティンやエンジニアのジェフ・エメリックが形にしたものです。当時は聴こえていなかった音が新しいミックスでは再現されています。では「トゥモロウ・ネバー・ノウズ」。

★「トゥモロウ・ネバー・ノウズ」

立川:ビートルズは『サージェント・ペパー〜』の後に『マジカル・ミステリー・ツアー』を作りましたが、その間にシングル「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を作っています。これが本当に凄い曲で、転調やリズムの変化はジョージ・マーティンの助けがなくてはできなかったでしょうし、何よりもジョンのセンスが凄い。これは『ザ・ビートルズ1967−1970』ベスト物の青盤に入っているので、英国オリジナル盤で聴きたいと思います。オルガンやギターの音一つ一つが素晴らしいので、〈レコードはアートだ〉ということを耳から楽しんでください。
★「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」

立川:本当は一晩中レコードをかけてお話をしたいのですが、とりあえず一区切りします。僕とテクニクスが組んで〈スーパー・オーディオ・ライヴ〉を始めてから6年くらい経ちます。大阪で行なわれたかなり大掛かりな「世界を変えたレコード展」が出会いのきっかけでした。テクニクスの上松さんから、「レコード展なら音が聴けるオーディオ・ブースを作りませんか、テクニクスが協力しますから」という提案をいただいて、二つブースを作ったんです。これがすごく評判が良かった。その後上松さんからは「今度社の試聴室でゲストに来てお話をしていただけませんか」とお誘いがあって、せっかく凄い機材で聴けるのだからと、大好きなビリー・ホリディとマイルス・ディヴィス、ビートルズなど数枚を持って伺いました。マイルスの『スケッチ・オブ・スペイン』も凄かったんですけど、びっくり仰天したのが、これからおかけする『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』に入っているジョージ・ハリスンの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」。それまで何100回も聴いてきた「ホワイル・マイ・ギター〜」はいったい何だったんだ!?という音で、全く聴いたことがない音がいっぱい入っていて、リンゴ・スターのドラムが如何に凄いか、ビートルズのメンバーが如何に楽器の鳴らし方を知っていたか、プロデューサーが如何に凄かったのか──というのが分かったんです。それで、こういうプロジェクトをやりたいですね──と始まったのが〈スーパー・オーディオ・ライヴ〉です。好評で全国でやらしていただいて、ここ東郷記念館でも次回は10月11日にエディット・ピアフでやろうかなと思っています、楽しみにしてください。では最後にこの曲を。

★「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」

(場内アンコールの拍手と声援!)

立川:アンコールもいろいろあると思うのですが、さっきちょうど『リボルバー・スーパー・エディション』をかけたので、そこに収録されている、新しいミックスで聴き違えるくらい凄くなっている「エリナー・リグビー」をアンコールにかけます。で、また来年もやるんですか──。
(場内から、是非!お願いします! 拍手)

来年は1967年以降──というのをやろうかな(大拍手)
じゃあ、またその時に。今日はありがとうございました。(大拍手)

★「エリナー・リグビー」

この後もスーパー・オーディオでビートルズをBGMとして聴きながら散会となった。
ディスカバー・ビートルズ THE BOOK

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NHK-FM『ディスカバー・ビートルズ』制作班(編)
ナビゲーター:杉 真理 & 和田 唱
監修:藤本国彦
ジョージ・ハリスン・インタヴューズ

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3,520円
MUSIC LIFE ザ・ビートルズ リボルバー・エディション

MUSIC LIFE ザ・ビートルズ リボルバー・エディション〈シンコー・ミュージック・ムック〉

2,200円
56年目に聴き直す『リボルバー』深掘り鑑賞ガイド

56年目に聴き直す『リボルバー』深掘り鑑賞ガイド〈シンコー・ミュージック・ムック〉

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伝説の音楽雑誌ティーンビート   ビートルズ特集保存版

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ザ・ビートルズ A to Z アルファベットでたどる音楽世界

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