映画『コンサート・フォー・ジョージ』公開記念トーク・イベント第2弾:藤本国彦×本秀康、詳細版を公開

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写真左から 本 秀康さん、藤本国彦さん
ジョージ・ハリスン生誕80周年『コンサート・フォー・ジョージ』の劇場初上映記念イベント、その第2弾として行なわれた藤本国彦/本秀康両氏によるトークイベントのレポートについては昨日のニュースでダイジェスト版をお送りしましたが(8月8日MLCニュース参照)、ノーカットに近い詳細版を公開。
ジョージ・ハリスン生誕80周年『コンサート・フォー・ジョージ』劇場初上映記念トーク・イベントが、ピーター・バラカンさんに続いて、共にジョージ・ハリスンの大ファンを自認する藤本国彦さんと本 秀康さんを迎え8月3日にTOHOシネマズ シャンテにて開催された。

本 秀康(以下 本):イラストレーター、漫画家の本 秀康です。
藤本国彦(以下 藤本):ビートルズ研究家の藤本です、よろしくお願いします。まずは大きなスクリーンで『コンサート・フォー・ジョージ』を観て。
:僕は試写で2回観て、今日で3回目です。
藤本:僕も3回かな、大画面は迫力満点です。
:音も良かった、コーラスの二人の女性の声の区別もできてわかりやすかった。20年前はみんな年とったなぁって観ていたんですけど、今見ると若いですね(場内笑)、ポールが若い!
藤本:ポールが60歳、髪型が若いですよね(笑)。あと引いた画面になると大画面だからロイヤル・アルバート・ホールにいるみたいで。
:音がいいから演奏が終わったら間違えて拍手しそうになって。
藤本:ともかく出ている人がいいですよね。
:僕は現場(追悼コンサート)には行ってない、要はジョージが出ないことは分かっているので行かなかった。バカなことしましたよねぇ〜〜(場内笑)。ジョージを感じられるし、これだけの人が集まって自分の持ち歌ではなくジョージの歌を歌う──というのはなかなかない。今となっては亡くなっている人もかなりいて。
藤本:ゲイリー・ブルッカー、ビリー・プレストン……。
:ラヴィ・シャンカール、トム・ペティ……。だから今観ると当時よりも悲しい思いをしてしまいます。
藤本:あと、このコンサートで珍しいのは、ポールが脇役って感じなんです。もちろん歌うんですけど、ピアノはいちばん右端で目立たないしポールが所在なげで。
:多分ダニー(・ハリスン)君と仲がいい順に、コンサートでの偉さが決められているんじゃないですか(笑)。
藤本:ダニーはリンゴのことをアンクル・リンゴって言うけど、ポールのことは言いませんものね(笑)。
:でも、今日もそうでしたけど、僕はポールがジョージの曲を歌うだけで泣きそうになっちゃいます。
藤本:ポールは脇役──って言いながらも、登場して「フォー・ユー・ブルー」を歌うとポールの声に癒されるんです。唯一無二の声と安心感があって。これを観てポールって癒し系かな──と思いました。慈愛っていう言葉が珍しく似合って(場内笑)。
:そんな感じを纏わないと、出られないんじゃないですか?(場内笑)。

出演アーティストは皆んなジョージに似て出しゃばらない
藤本:(出演アーティストは)本当にいい人ばっかりなんですよ。何か皆んなジョージに似ていて出しゃばらない。裏方というか職人っていうタイプ。ポールが「オール・シングス・マスト・パス」「フォー・ユー・ブルー」を歌った時は、映画の『Get Back』でポールとジョンの仲の良さに逆にジョージに疎外感があった──あの頃のことも少しダブりました。
:この2曲を選んだのはなぜでしょうかね。ポールはゲット・バック・セッションの時の自分の立ち振る舞いのこととか考えたのか──曲は何を選んでもいいわけですから、そこから選んだのは驚きでした。
藤本:「サムシング」はこのコンサートの一番のハイライトになるつもりでポールは臨んでいると思うんですけれど。
:「サムシング」の中盤からクラプトンとポールがハモる所があるじゃないですか、あれは泣けます。
藤本:いいですね。ウクレレから始めるパターンはこのコンサート以降自分のライヴでも取り入れます。
:ウクレレからエレクトリック・セットに切り替わるパターン。ポールのコンサートで「サムシング」をやる時はジョージの昔の映像が映し出されるんですよね。豪華本で有名なジェネシス(Genesis)出版から「コンサート・フォー・ジョージ」の本も出ていて、そこにセット・リストの初期ヴァージョンと完成形の手前のものが載っています。最初はジュールズ・ホランドのところで「ビトウィーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー」を演る予定だったらしいです。後ろに大きなスクリーンがある想定で、そこにジョージがジュールズとやった映像を流してジョージのヴォーカルで──ということだったようなんですよね。
藤本:そうなんですね。
:それは感動的だったでしょう──そう言いつつもジュールズと「ホース・トゥ・ザ・ウォーター」をやったサム・ブラウン(ジョー・ブラウンの娘)は素晴らしい!
藤本:彼女はジョージのお気に入りでね、お母さんはヴィッキー・ブラウン。ジョージのアルバム『ゴーン・トロッポ』には共にバック・ヴォーカルで参加、収録曲の「ミスティカル・ワン」ではジョー・ブラウンがマンドリンを弾いています。
:「ホース・トゥ・ザ・ウォーター」の歌声は厳かなコンサートにしてはソウルフル過ぎる──という声もありましたけど、まず選曲が素晴らしい。
藤本:ジョージのラスト・レコーディング曲ですね。
:それを敢えて、もしかしたらお客さんが知らない曲かもしれないけれど、全キャリアをまとめようという意識で、冒険して攻めている感じが素晴らしい。トリビュート・コンサートはああいうハイパーな演奏が基本だと思うんです。
藤本:このコンサートのベストの1曲は、僕はこの曲なんです。
:僕もそうかもしれない。
藤本:圧倒的にいいんです。劇場版はDVDの完全版よりたしか1分くらい短いんじゃないかな。サム・ブラウンは「マイ・スウィート・ロード(2000)」でも曲の後半を歌ってます。

すごく練られたようだけど、人脈も含め結局はジョージがやってきたことを全部入れたコンサート
:このコンサートのすごいところは、最後の感動的な「夢で逢いましょう」をジョー・ブラウンが歌う──これはジョージの曲じゃないんですよね。しかもあのステージの中では一番人気ではない彼が歌い感動させるというのはすごいと思います。ポールもステージの端で、これでいい、これでいいって顔をしていました。
藤本:普通ならステージ真ん中なんでしょうけど、ジョージの仲間──というのがポールは分かっていて、ちゃんと退いて端にいるのはさすがです。
:さっき言っていたジェネシスの豪華本に載っている最終決定稿前のセット・リストには、「ワー・ワー」が鉛筆で付け加えられているんです。ジョージが今までやってきたバングラデシュのコンサート、日本公演、どちらもクラプトンは出ていて、それらをイメージしていたんじゃないかな。そこでバングラデシュ度が足りないから「ワー・ワー」をやったんじゃないかと(笑)。それと、この劇場版にはインタヴューも入っていて、編集が素晴らしいですよね。
藤本:冒頭に入れていた映画『バングラデシュのコンサート』の反省ですかね(笑)。あとはかなり際どいモンティ・パイソンも良かった。
:インド音楽の厳かな感じは追悼コンサートに相応しいし、そこにモンティ・パイソンの笑いが入って、最後は超大物が集まってロックをやるというのも、すごく練られたようで結局ジョージがやってきたことを全部入れただけなんですよね。
藤本:人脈も。
:それでいい追悼コンサートになっているのはすごい。
藤本:出演者も変に出しゃばる人がいなくて、クラウス・フォアマン、ジム・ケルトナーは言うまでもなく、ゲイリー・ブルッカーもビリー・プレストンやヘンリー・スピネッティもいい。で、ソニーのディレクター白木さんのブログに書いてあったんですけど、スキンヘッドでドラムを叩いていたヘンリー・スピネッティって俳優のヴィクター・スピネッティの弟なんですって。ヴィクターは『ハード・デイズ・ナイト』や『ヘルプ!』とかに出ていました。
:コンサート最後の「夢で逢いましょう」での花吹雪、紙吹雪(本当は布なんですけど)、あのシーンってなんで泣けるんだろう──とずっと思ってたんですけど、やっぱり普通に、ジョージが亡くなったんだなぁ……というのを実感するんですね。
藤本:今回限定で上映館で配布している小冊子の裏表紙は本さんが描かれたそのシーン。
:ミステリーでいうとネタバレになっちゃうんですけど、この映画で描くとしたらあのシーンかな。
藤本:大きいスクリーンで見ると客席にスティーヴ・ウインウッドや、ビル・ワイマンが居るのが分かります。しかしみんな若い。
:ダニー君が24歳くらいでジョージに一番似ているところを捉えた映画。中でも「ジ・インナー・ライト」でピアノの前に座っていてハーモニーを付ける、あの時が一番ジョージに似ていますね。
藤本:楽屋で本さんが言っていましたけど、トラヴェリング・ウィルベリーズの「ハンドル・ウィズ・ケア」のジョージのパートは全部ダニーが歌えばよかったのに──。
:ボブ・ディランに出演をオファーしたけど都合が合わなかった。来たら「ハンドル・ウィズ・ケア」を歌ったんですかね。
藤本:歌わざるを得ないんじゃないですか。
:さすがのディランもそこは従う──でも結果的に参加しなくて良かったと思っています。さっき藤本さんが言ったように、突出して目立つ人がいないのがこのコンサートのいいところで。

リンゴ・スターとポール・マッカートニー

藤本:でも、リンゴは出てきた瞬間にいきなり〈リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド〉になっちゃうんですよ(場内大爆笑)。
:「想い出のフォトグラフ」と「ハニー・ドント」、自分の持ち歌2曲歌ったのはあの人だけ(場内大爆笑)。
藤本:リンゴだけですよね、先に2曲やるって言っちゃってるし。
:リンゴはリハーサルでビリー・プレストンと仲がいいところも泣けますね。〈やっても良かった曲〉が少ないのがこのコンサートのすごいところで、〈やらなければいけない曲〉は全部やっている。
藤本:そうですね、幅があります。
:あと、僕が思ったのは「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」は、ジョージの数少ないライヴでも必ずやっているんです。僕は「バングラデシュ・コンサート」以降はこの曲はジョージの曲として聴いてきたんですけど、この追悼コンサートでは『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』に入っているビートルズの曲に聞こえるんです。
藤本:その通りですね。
:ポールがいるだけでこんなに変わるのかって。
藤本:リンゴもいるし、ポールのピアノがね。
:そう、最初のあのピアノの音だけで『ホワイト・アルバム』なんです。
藤本:クラプトンがまたレコードと同じソロを弾くじゃないですか、本当に忠実に弾いていてやっぱり泣けますよね。
:クラプトンっていい人──なんですかね。
藤本:ダニーがいいって言うからいい人でいいんじゃないですか。
:このコンサートでは本当にいい人にしか見えない。
藤本:ジョージの弟分として。
:「オール・シングス・マスト・パス」にストリングスが入っているのもいいですね。「マイ・スウィート・ロード」も。ジョージのライヴで一番良かったんじゃないかな。
藤本:ビリー・プレストンも「イズント・イット・ア・ピティ」のエンディングが「ヘイ・ジュード」みたいに盛り上がって。
:「イズント・イット・ア・ピティ」はビリー・プレストンの持ち歌じゃないけれど「オール・シングス・マスト・パス」は歌っている。だからビリー・プレストンが「オール・シングス・マスト・パス」を歌い、ポールが「イズント・イット・ア・ピティ」を歌って最後は「ヘイ・ジュード」になだれ込むというのも良かったかも(笑)。
藤本:そろそろ時間ですね。次回観る際はポールやリンゴにも注目していただきたいと思います。
(場内大拍手)

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『コンサート・フォー・ジョージ』

『コンサート・フォー・ジョージ』はジョージ・ハリスンが他界したちょうど1年後の2002年11月29日に盟友エリック・クラプトンと妻オリヴィア・ハリスンによって開催された、ジョージ・ハリスンの音楽と“美しき人生”を称えるトリビュート・コンサート映画。

音楽監督を務めるエリック・クラプトンの呼びかけで、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、ジェフ・リン、ジュールズ・ホランド、ビリー・プレストン、シタール奏者のラヴィ・シャンカール、トム・ハンクスがサプライズ参加したモンティ・パイソンまで、ジョージを愛するアーティストが奇跡の共演を果たし、ジョージの名曲の数々を演奏するトリビュート・コンサートは、ジョージ・ファンはもとより、音楽ファンの心を揺さぶる歴史的一夜として語られています。

今回、日本初劇場公開となる『コンサート・フォー・ジョージ』は、昨年開催20周年を記念し海外でワンナイト上映された、高音質・高画質のリマスター版。豪華アーティストが結集した感動溢れるコンサート映画を劇場の大スクリーンで体験ください。

オフィシャル・サイト

■著名人の方々からの推薦コメント (敬称略・50音順)

掲載ページ

オカモトコウキ(OKAMOTO'S)/岸田繁(くるり)/喜多建介(ASIAN KUNG-FU GENERATION)/杉真理(シンガー・ソングライター)/立川直樹(プロデューサー/ディレクター) /直枝政広(カーネーション)/萩原健太(音楽評論家)/藤田朋子(俳優)/藤本国彦(ビートルズ研究家)/ピーター・バラカン(ブロードキャスター)/星加ルミ子(元ミュージック・ライフ編集長)/本秀康(イラストレーター)/安田顕(俳優)/山崎洋一郎(ロッキング・オン編集長)/湯川れい子(音楽評論・作詞家)/和田唱(TRICERATOPS)

■ 映画劇場予告編
●7.28公開『コンサート・フォー・ジョージ』
100秒劇場予告編

60秒劇場予告編

■ 映画作品概要

作品名:『コンサート・フォー・ジョージ』
上映時間:約102分
監督:デヴィッド・リーランド
製作:レイ・クーパー、オリヴィア・ハリソン、ジョン・ケイメン
製作総指揮:オリヴィア・ハリソン、ブライアン・ロイランス

音楽監督:エリック・クラプトン
コンサート・オーディオ・プロデュース:ジェフ・リン
撮影監督:クリス・メンゲス
編集:クレア・ファーガソン

出演:エリック・クラプトン、ポール・マッカートニー、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、ジェフ・リン、リンゴ・スター、ジョー・ブラウン、サム・ブラウン、ジュールズ・ホーランド、ビリー・プレストン、レイ・クーパー、アヌーシュカ・シャンカール、ラヴィ・シャンカール、モンティ・パイソン with トム・ハンクス

制作年:2022年  制作国:アメリカ  
コピーライト:© 2018 Oops Publishing, Limited Under exclusive license to Craft Recordings
公開表記:7/28(金)〜 TOHOシネマズ シャンテほか公開
公開作HP:『コンサート・フォー・ジョージ』HP

■ ビートルズ研究家・藤本国彦さんによる曲解説動画
「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」
「オール・シングス・マスト・パス」
「ハンドル・ウィズ・ケア」
 

ジョージ・ハリスン生誕80周年記念 関連作品

ジョージ・ハリスン・インタヴューズ

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3,520円

アシュリー・カーン(編)、伴野由里子(訳)
V/A 『コンサート・フォー・ジョージ』
2018.2.23発売

劇場の感動をご自宅で。ロイヤル・アルバート・ホールにビッグ・スターが集いジョージ・ハリスンを偲んだ伝説のコンサートのライヴ盤がリリース。本作品はグラミー賞「ベスト・ロング・フォーム・ミュージック・ビデオ」を受賞。

ザ・ビートルズでの活躍をはじめ、ソロになってからも数多くの名曲を残したジョージ・ハリスン。ジョージが他界してからちょうど1年後の2002年11月29日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでジョージの妻オリヴィア・ハリスンと盟友エリック・クラプトンの発案によって行われた伝説のトリビュート・コンサートがリリース。

<商品フォーマット>
『コンサート・フォー・ジョージ』(2CD + 2Blu-ray)
<輸入盤> 品番 : 720-3003 | 価格:オープンプライス 他、全4形態で発売

商品形態・収録曲他詳細:ユニバーサル・ミュージック 公式ページ
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