ポピュラー音楽の巨匠、バート・バカラックが94歳で死去

ポピュラー音楽の伝説的ソングライターで、編曲家／ピアニスト／音楽プロデューサーでもあったバート・バカラック（Burt Bacharach）が2月８日、94歳で死去しました。

広報担当者によると、バカラックはロサンゼルスの自宅にて、老衰のため亡くなったそうです。

1928年にミズーリ州カンザスシティで生まれたバカラックは、NYCのクイーンズで育ち、10代の頃からジャズ・クラブに通い、カナダの大学や、ニューヨークとカリフォルニアの音楽学校でジャズ・ハーモニーなどを学びました。

1950年から2年間、アメリカ陸軍に徴兵された後、バカラックの全盛期は1957年に始まり、NYCで作詞家のハル・デヴィッド（トップ画像右の人物）と出会ったバカラックは、同年「The Story of My Life」と「Magic Moments」を共作し、前者の曲をマーティ・ロビンスが、後者の曲をペリー・コモが大ヒットさせました。

洗練されたポピュラー音楽の新たなパラダイムを確立した二人は、60年代に入ると100曲以上の曲を書き始め、ダスティ・スプリングフィールドやハーブ・アルパート、カーペンターズらにヒット曲を提供したほか、特にディオンヌ・ワーウィックとは10年以上にわたりチームを組み、「Walk On By」「Don’t Make Me Over」「I Say a Little Prayer」「Do You Know the Way to San Jose?」など、39曲がヒットしました。

また、二人は映画音楽も手掛け、トム・ジョーンズが歌った1965年コメディ映画『What’s New Pussycat』（邦題『何かいいことないか子猫チャン』）のタイトル曲がミリオンセラーになり、ダスティ・スプリングフィールドがヒットさせた1967年スパイ映画『Casino Royale』（邦題『007/カジノ・ロワイヤル』）の主題歌「The Look Of Love」（邦題「恋の面影」）は、アカデミー賞にノミネートされました。なお、B.J.トーマスが歌った1969年の映画『Butch Cassidy and the Sundance Kid』（邦題『明日に向かって撃て！』）の主題歌「Raindrops Keep Fallin’ on My Head」（邦題「雨にぬれても」）は、アカデミー賞を受賞しています。

その後80年代に入ると、バカラックは新たな作詞家で後の妻となるキャロル・ベイヤー・セイガーとコンビを組み、クリストファー・クロスやパティ・ラベル、マイケル・マクドナルド、ニール・ダイアモンドらのヒット曲で成功を収めました。二人が共作した1982年の「That’s What Friends Are For」（邦題「愛のハーモニー」）は、1985年にディオンヌ・ワーウィックがスティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、グラディス・ナイトとカヴァーしたヴァージョンが大ヒットし、グラミー賞を受賞。また、二人がクリストファー・クロス、ピーター・アレンと共作した、1981年コメディ映画『Arthur』（邦題『ミスター・アーサー』）のテーマ曲「Arthur’s Theme（Best That You Can Do）」（邦題「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」）が、アカデミー賞に輝きました。

バカラックは90年代から2000年代にかけて、映画『オースティン・パワーズ』の全3作にカメオ出演し、また1998年にエルヴィス・コステロとコラボしたアルバム『Painted From Memory』が、グラミー賞を受賞しました。バカラックとコステロは今年1月、このアルバムの25周年記念エディション『The Songs of Bacharach & Costello』が、3月3日に発売されると発表したばかりでした（1月13日MLCニュース参照）。

なお、バカラックはグラミー賞を8回、アカデミー賞を3回受賞し、1972年にハル・デヴィッドと共に「ソングライターの殿堂」入りを果たしました。二人は、2012年に米国議会図書館から「ガーシュウィン賞」を授与されましたが、同年デヴィッドが91歳で死去しています。

バカラックの訃報を受け、ディオンヌ・ワーウィックは、SNSに「家族の一員を失ったよう」と綴り、ブライアン・ウィルソンは、「バートは僕のヒーローで、僕の作品に大きな影響を与えた。音楽ビジネスの巨人であり、彼の曲は永遠に生き続ける」と綴っています。

安らかなる眠りをお祈りいたします。