アカデミー受賞映画『シュガーマン』の主人公、シクスト・ロドリゲスが81歳で死去

2012年にアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー『シュガーマン 奇跡に愛された男』(原題『Searching for Sugar Man』)で知られる米シンガー/ソングライター、シクスト・ロドリゲス(Sixto Rodriguez)が8月8日、81歳で死去しました。

ロドリゲスの公式ウェブサイトで訃報が伝えられていますが、死因は発表されていません。
1942年にメキシコ移民の両親のもとデトロイトで生まれたロドリゲスは、1967年にロッド・リゲス(Rod Riguez)の名で音楽キャリアをスタートさせ、3年後にサセックス・レコードから、ロドリゲスの名で2枚のアルバム『Cold Fact』(1970年)と『Coming from Reality』(1971年)をリリースしました。しかしながら、アルバム・セールスの不振により解雇され、音楽制作から撤退しました。

その後、肉体労働の仕事に就いたロドリゲスは、政治的な活動も行なうようになり、労働者階級の生活改善を主張しつつ、1981年にデトロイト市長に出馬するなど、何度か公職に立候補したものの、当選することはありませんでした。

その一方で、ロドリゲスの2枚のアルバムが海外で商業的な成功をおさめ、1970 年代半ばまでにオーストラリア、ボツワナ、ニュージーランド、南アフリカ、ジンバブエで大々的にオンエアされ、輸入盤のLPが売り切れになりました。特に南アフリカでは、デビュー・アルバム『Cold Fact』の収録曲「Sugar Man」が反アパルトヘイトの賛歌となり、大きな支持を得ましたが、音楽制作の引退から何年も経っていたこともあり、ロドリゲスが自殺したのではないかという噂が広まっていました。

しかしながら、結果的に南アフリカのファンと接触したロドリゲスは、1998年に南アフリカで初ツアーを開催し、音楽業界に復帰しました。そして、デビュー・アルバムのリリースから40年近くが経った2009年、ロドリゲスの2枚のアルバムがアメリカでリイシューされ、その後、彼の奇跡的な物語がマリク・ベンジェルール監督により映画化され、ドキュメンタリー映画『Searching for Sugar Man』として2012年に公開されました。

翌2013年にアカデミー賞を受賞した同作の成功に続き、ロドリゲスはデヴィッド・レターマンの番組『Late Show』や、ジェイ・レノの『The Tonight Show』に出演したほか、CNNや、CBSのドキュメンタリー番組『60ミニッツ』でも話題となり、2010 年代を通じてオーストラリア、南アフリカ、ニュージーランド、アメリカをツアーしました。

なお、南アフリカでは、ロドリゲスはエルヴィス・プレスリーよりも多くのレコードを売ったと言われ、サセックスのアルバムが入手不可能になった際は、オーストラリアのレーベル、ブルー・グース・ミュージックがロドリゲスの録音権を獲得し、2枚のスタジオ・アルバムをリリースしたほか、1977年に『At His Best』というコンピレーション・アルバムをリリースしました。このベスト盤には「Can’t Get Away」「I’ll Slip Away」「Street Boy」といった1973年の未発表音源が収録されており、南アフリカでプラチナ・アルバムとなり、ロドリゲスはボブ・ディランやキャット・スティーヴンスと比較されていました。

安らかなる眠りをお祈りいたします。

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