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フィフス・ディメンションの創設メンバー、ラモンテ・マクレモア死去

ザ・フィフス・ディメンション 『The Essential』
Amazon(2011/3/15)輸入盤・CD

コンピレーション盤のジャケットより。後列左がラモンテ・マクレモア、右がロン・タウンソン。前列左からマリリン・マックー、ビリー・デイヴィス・ジュニア、フローレンス・ラルー。
ヴォーカリストとしてグラミー賞受賞経験を持ち、かつフォトグラファーでもあったラモンテ・マクレモアは、ポップ・ソウル界屈指の影響力を誇ったグループを築き上げることに尽力すると共に、数世代にわたる音楽、スポーツ、そしてカルチャーの変遷を、そのレンズを通して記録し続けました。
 
2月3日、ザ・フィフス・ディメンションの結成メンバーであり、アメリカのポピュラー・ミュージック界及び写真界の重要人物、ラモンテ・マクレモアが亡くなりました。享年90歳。数年前に発症した脳卒中に起因する自然死で、ラス・ヴェガスの自宅で家族に囲まれ旅立ったとのことです。彼の死は、かつてレコーディング・スタジオを超えて音楽、カルチャー、社会史にまで及ぶ影響力を誇ったひとりのアーティストが喪われたことを意味します。
彼の遺族は30年間連れ添った愛妻、ミエコ・マクレモアと娘のシエラ、養子のダリン、妹のジョアンと3人の孫で、彼の葬儀とその人生を讃える会の開催については、後日アナウンスされる予定です。
ザ・フィフス・ディメンションの中心メンバーとして、マクレモアは1960年代後半から70年代前半のポップ/ソウル・ミュージックの刷新につながるサウンドの確立に貢献しました。グループの洗練された曲のチョイスと磨き上げられたハーモニーにより、「アップ・アップ・アンド・アウェイ」や 「輝く星座(アクエリアス)/レット・ザ・サンシャイン・イン」といった楽曲は、時代を代表する音像の具現化としてグラミー賞年間最優秀レコード賞に輝き、後には彼らにグラミー賞名誉の殿堂入りの名誉ももたらしました。「輝く星座/レット・ザ・サンシャイン・イン」は1969年、ビルボード誌Hot100で6週間首位を守り通し、この時代が生んだ最も息の長いアンセムのひとつになっています。

フィフス・ディメンションの人気が頂点に達した時期、彼らは7枚のゴールド・アルバムと6枚のプラチナム・シングルを記録し、更に「Wedding Bell Blues」「Stoned Soul Picnic」「One Less Bell To Answer」「(Last Night) I Didn’t Get To Sleep At All」といったメジャー・ヒットを次々に飛ばしました。1991年、彼らのオリジナル・ラインナップはその栄誉を称えられてハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムに星を刻むこととなり、アメリカの歴史においても動乱の時代の中で、人種もスタイルも、そして商業的な限界も飛び越えた作品たちに対する評価が明確に示されたのでした。
The 5th Dimension - Stoned Soul Picnic (Official Audio)
The 5th Dimension - (Last Night) I Didn't Get to Sleep at All (Official Audio)

ミズーリ州セント・ルイスで生まれたマクレモアの、音楽のスターダムへと続く道は必ずしも真っ直ぐではありませんでした。ハイスクールを卒業した後、彼はアメリカ海軍に志願し、航空写真の撮影担当として訓練を受けたことで、写される側ではなく写す側としてのもうひとつのキャリアの素地を与えられます。また、彼はプロの野球選手の道も積極的に模索し、セントルイス・カージナルスで史上初のアフリカ系アメリカ人選手としてトライアウトを受け、後にはロサンジェルス・ドジャースのマイナー・リーグのシステムで、ごく僅かですが登板の機会を得たこともありました。

音楽と写真は最終的にロサンジェルスでひとつに収束します。フォトグラファーとしてのマクレモアは、大都市のブラック・カルチャーの日常の只中に身を置くことを生業とし、40年以上にわたってJetやEbonyといった週刊/月刊誌[訳注:いずれもアメリカで公民権運動が激化していた時代にアフリカ系アメリカ人向けのファッションやカルチャー、社会的な話題を扱っていた]他、様々な出版物にその作品を提供し続けました。そして60年代半ばに携わったミス・ブラック・ビューティー・ペイジェント(黒人女性の美人コンテスト)での写真撮影の仕事を通して、彼はマリリン・マックーとフローレンス・ラルーと出逢い、その関わりがフィフス・ディメンションの結成へと発展して行ったのです。

マックー、ラルー、ビリー・デイヴィスJr.、ロン・タウンソンに彼を加えてロサンジェルスで結成されたグループは、ジャズ寄りだった当初のプロジェクトから、次第にポップ、ソウル、フォーク、更にはブロードウェイに影響されたマテリアルまでこなせるヴォーカル・アンサンブルへと進化を遂げます。マクレモアの温かみのある低音ヴォイスは彼らの複雑なハーモニーを支え、また彼の業界での経験が、ザ・ヴァーサタイルズからフィフス・ディメンションへのグループ名の変更や、ジョニー・リヴァースのソウル・シティ・レーベルとの契約に至るグループの活動初期の指針となりました。

チャートでの成功以外でも、フィフス・ディメンションは数多くのTV出演と国内外でのツアーをこなすことで、カルチャー全体を代表する存在となりました。グループは冷戦時代の1973年、国務省による文化交流の米国代表として、鉄のカーテンの向こうでツアーを行ない、ニクソン政権時代にはホワイトハウスで2度パフォーマンスを披露していて、こうした起用も当時の深刻な社会的分断の中で、彼らがいかにメインストリームにおいてその存在を認められていたかを象徴的に物語っています。
 
また、マクレモアが写真という形で遺したレガシーは、彼が音楽の世界で成し遂げた実績に引けを取りません。彼は米ハーパーズ・バザー誌史上初めて起用されたアフリカ系アメリカ人フォトグラファーであり、スティーヴィー・ワンダーのファースト・アルバムのカヴァー写真も彼が手がけています。彼は多くのミュージシャン、スポーツ選手、そしてカルチャーの旗手たちをその曇りのないレンズで、敬意をもってとらえ、優れた能力を持つ黒人たちがアメリカのメディアの中でどのように扱われるべきかという手本を示したのでした。
 
後年、マクレモアとフィフス・ディメンションは、そのアーカイヴの再評価を通じて新たなオーディエンスを獲得しました。ザ・ルーツのクエストラヴが監督を務めて2021年にアカデミー賞を獲得したドキュメンタリー作品『Summer Of Soul (…Or, When The Revolution Could Not Be Televised)』(邦題:『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』)の中で、彼らの1969年のハーレム・カルチュラル・フェスティヴァルにおけるパフォーマンスが大々的にフィーチュアされていたことがきっかけで、ブラック・ミュージックの歴史のより広義な物語における彼らの立ち位置が再認識されることとなったのです。

Summer Of Soul | A Questlove Jawn | Trailer | Hulu

2014年、マクルモアは自身の半生の多方面にわたる活躍を振り返る自伝『From Hobo Flats To The 5th Dimension: A Life Fulfilled In Baseball, Photography, And Music』をロバート=アラン・アルノとの共著で出版しました。この本には好奇心と、ひたむきな努力と、クリエイティヴな可能性に対する信念によって突き動かされてきた彼のキャリアの軌跡が記されています。

彼の個人的な哲学は、その人生を通じて不変でした。「結局のところ、俺たちは互いに助け合うためにこの世界に存在しているだけなんだよ」、マクルモアは生前そう語っていました。その思いが数十年の時を経て、彼の声と、写真と、物語を、私たちの間で高らかに響かせ続けているのです。

安らかなる眠りをお祈りいたします。

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