伝説のR&B／ソウル・ギタリスト、スティーヴ・クロッパーが84歳で死去

スティーヴ・クロッパー『ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ』
（Volt：1969）Amazon Music（JAN 01 1969）

60年代を中心に米R&B／ソウル・シーンを支えた伝説的グループ、ブッカー・T＆ザ・MG’sの創設メンバーで、数々のヒット曲を生み出したギタリスト／ソングライター／プロデューサーのスティーヴ・クロッパー（Steve Cropper）が12月3日、ナッシュヴィルにて84歳で死去しました。

家族が訃報を伝えていますが、死因は発表されていません。

1941年にミズーリ州で生まれたクロッパーは、9歳の時に家族とテネシー州メンフィスに移住、14歳で初めて自ギターを手にし、チャック・ベリーやジミー・リードから影響を受け、ソウルフルな独自のリズム・スタイルを磨き始めました。

地元バンドでキャリアをスタートさせた後、ギタリストのチャーリー・フリーマンと結成したザ・マー・キーズがスタックス・レコードの専属となり、1961年のインスト曲「Last Night」がヒットしました。

後列中央がスティーヴ・クロッパー（g）。下段がブッカー・T（key）、後列左はドナルド・ダック・ダン（b：2012年の来日中に日本で客死、それを発表したのがクロッパーだった）、アル・ジャクソン Jr.（ds：1975年没）。

翌1962年、スタックスのハウスバンド「ブッカー・T＆ザ・MG’s」の創設メンバーになったクロッパーは、オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、サム＆デイヴ、そしてステイプル・シンガーズをはじめ、数え切れないほどのスタックス・セッションにギタリストとして参加したほか、ソングライター／プロデューサーとしても活躍し、エディ・フロイドの「Knock on Wood」、ウィルソン・ピケットの「In the Midnight Hour」、オーティス・レディングの「（Sittin’ On）The Dock of the Bay」といった不朽の名曲を生み出しました。

● [Sittin' On] the Dock of the Bay

●Justin Timberlake and Steve Cropper Perform "(Sittin' On) The Dock of the Bay" at In Performance

●BBC Proms: Tom Jones and Steve Cropper: (Sittin' On) The Dock of the Bay

その後、1970年にスタックスのハウスバンドを離れたクロッパーは、ソロ・レコーディングに加え、ジョン・レノンやリンゴ・スター、ジェフ・ベック、ブルース・ブラザーズ、ジョン・プライン、タワー・オブ・パワー、ポール・サイモン、バディ・ガイ、エルトン・ジョンなど、数多くのアーティストとコラボレーションを行ないながら活動の幅を広げ、60年にわたるキャリアを通じ、彼がサポートした数えきれないアーティストや、制作に関わった楽曲に影響を与えました。

●Blues Brothers: Soul Man - SNL

最近では、2021年にソロ・アルバム『Fire It Up』をリリースし（2021年4月26日MLCニュース）、2024年には自身の新バンド、スティーヴ・クロッパー＆ザ・ミッドナイト・アワーのデビュー・アルバム『Friendlytown』（2024年7月1日MLCニュース）をリリースしましたが、こちらが最後の作品になりました。

なお、クロッパーは、1967年～2022年にかけてグラミー賞に7度ノミネートされており、そのうち1968年に「（Sittin’ On）The Dock of the Bay」が「最優秀R&B楽曲賞」、1994年に「Cruisin’」（ブッカー・T＆ザ・MG’sの曲）が「最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞」を受賞しました。

また、2005年に「ソングライターの殿堂」、2010年に「ナッシュヴィル・ソングライターの殿堂」入りを果たしています。

安らかなる眠りをお祈りいたします。