ザ・バンドの指導者、ロカビリー・ミュージシャンのロニー・ホーキンスが87歳で死去

ザ・バンドの指導者で、ロカビリー・シンガー/ソングライターのロニー・ホーキンス(Ronnie Hawkins)が5月29日、87歳で死去しました。

妻のワンダが訃報を発表しており、ホーキンスは長い闘病生活の末、静かに息を引き取ったそうです。ホーキンスは、2003年に膵臓ガンと診断されていました。
ホーキンスは1935年、米アーカンソー州ハンツヴィルで生まれ、子供時代に家族とノースカロライナ州に移住しました。18歳の時に地元のバーで演奏し始め、1952年にザ・ホークスを結成。このバンドには、後にザ・バンドのドラマーになるレヴォン・ヘルムが参加していました。

その後、ホーキンスは1959年にカナダのオンタリオに移住し、1964年に永住権を取得。移住にあたり、ヘルム以外のメンバーがホークスを脱退したため、カナダ人ミュージシャンのロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソンが加入しました。ホークスは、1963年までホーキンスのバック・バンドとして活動した後、1966年にディランのツアーでバック・バンドを務め、ザ・バンドに改名。ザ・バンドはその後、スターダムにのし上がりました。

ソロとしてのホーキンスは、1958年にボ・ディドリーのカヴァー「Hey, Bo Diddley」がヒットし、翌1959年にチャック・ベリーのカヴァー「30 Days」がカナダ・チャートのトップ10を記録、その後もゴードン・ライトフットやザ・クローヴァーズのカヴァーなどがヒットしました。また、後にジャニス・ジョプリンのバンド・メンバーになるジョン・ティルやリチャード・ベル、ギタリストのパット・トラヴァースらの指導も続けていました。

平和運動の最盛期だった1969年には、世界平和キャンペーンを行なっていたジョン・レノンとオノ・ヨーコをオンタリオ州の農場に招待し、平和祭を計画。また、彼らがカナダのピエール・トルドー首相を訪問する際、オタワ行きの列車にも同行しました。その後 、ホーキンスはレノンに依頼され、レノンの反戦メッセージを伝える平和の使者として、ワールド・ツアーを行なっています。

1975年にはボブ・ディラン監督のドキュメンタリー『Renaldo and Clara』でディラン役を演じ、翌1976年にザ・バンドの解散コンサートに出演。この公演では、1963年にホークスと録音したボ・ディドリーのカヴァー「Who Do You Love?」を演奏し、マーティン・スコセッシ監督のドキュメンタリー映画『The Last Waltz』にもフィーチャーされました。

1993年には、ホークスの大ファンだったビル・クリントン米大統領の就任記念パーティーに招かれ、パフォーマンスを披露しています。

ホーキンスは、2002年に発表した『Still Cruisin’』が最後のスタジオ・アルバムになってしまいましたが、同年カナダのウォーク・オブ・フェイムに名が刻まれ、トロント市は10月2日を「ロニー・ホーキンスの日」に制定。2004年には「カナダ音楽の殿堂」入りを果たし、同年ホーキンスのドキュメンタリー『Ronnie Hawkins : Still Alive and Kicking』が公開されました。ホーキンスは同作の中で、すい臓がんの末期と診断され、余命90日と宣告されたことを明かしていました。

ホーキンスと妻のワンダは2019年、ロビー・ロバートソンとザ・バンドを描いたドキュメンタリー『Once Were Brothers : Robbie Robertson and the Band」(2019年5月10日2020年1月17日MLCニュース参照)の初上映にあたり、トロント国際映画祭に出席していました。

ホーキンスの訃報を受け、ロビー・ロバートソンはSNSで次のように綴っています。

「“ザ・ホーク” が夕日の中に飛んで行ったと聞き、僕の心は沈んだ。ザ・バンドの物語は、ロニー・ホーキンスから始まった。彼は僕らの良き指導者で、ツアーのルールを教えてくれた。ホーキンスは、16歳の僕をカナダからミシシッピのデルタ地帯へ連れて行き、僕が書いた2曲を録音し、僕に才能があると思ったようだ。彼は僕にギターとベースを弾かせてみたが、唯一の問題は、僕が彼らの巡業するクラブで演奏するには若すぎたこと、経験が浅すぎたこと、力不足だったことで、南部のロックンロール・バンドにはカナダ人が一人もいなかった。だが僕は、指から血が出るまで練習し、彼は困難をものともせず僕を雇ってくれた。

ロニーはゴッドファザーであり、すべてを実現させた人だった。彼は夜半過ぎまで僕らにリハーサルをさせ、僕らは文句を言っていたが、どんどん上達していった。知ってか知らずか、それが僕らの目標だった。

ザ・ホークスがロンの元を去って独立した後、僕らはボブ・ディランと合流し、ホークスはザ・バンドになった。あとはご存じの通りである。すべてはロニー・ホーキンスから始まった。

彼は偉大なアーティストであり、途轍もないパフォーマーであり、バンド・リーダーであっただけでなく、比類なきユーモアの持ち主だった。笑い転げるほど 面白く、本当にユニークな人だった。そう、神様はそういう人を一人しか作らなかった。彼は僕らの心の中で永遠に生き続ける」

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