サム&デイヴの片割れ、伝説的ソウル・シンガーのサム・ムーアが89歳で死去

サム&デイヴ『Hold On, I'm Comin'』Staxs:1966)
60年代に活躍したソウル・デュオ、サム&デイヴの片割れで、伝説的ソウル・シンガーのサム・ムーア(Sam Moore)が1月10日、89歳で死去しました。

海外メディアによると、ムーアは最近受けた手術後の合併症により、フロリダ州コーラルゲイブルスにて亡くなったそうです。
 
1935年にフロリダ州マイアミで生まれたムーア(本名サミュエル・デヴィッド・ムーア)は、地元の教会で歌い始め、ゴスペル音楽の道に進む予定でしたが、ジャッキー・ウィルソンのコンサートを見て考えが変わり、ポップスとソウルに転向しました。

その後、マイアミのクラブに出演していた時にデイヴ・プレイターと出会い、1961年にサム&デイヴを結成し、ムーアは高音のテノールを担当しました。

二人は、1966年から68年にかけて一連のヒット曲で成功を収め、その中には、R&Bチャートの1位に輝いた1966年の「Hold On, I’m Comin’」や、2位を記録した1967年の「Soul Man」、4位を獲得した1968年の「I Thank You」などがあり、いずれもアイザック・ヘイズとデヴィッド・ポーターの作詞作曲チームが共作し、スタジオではスタックスのハウスバンド、ブッカー・T&ザ・MG’sがバックを務めていました。

また、彼らの素晴らしいライヴ・パフォーマンスは「ダブル・ダイナマイト」と呼ばれ、人気を博していましたが、二人の関係は舞台裏では上手く行かず、1970年に解散しました。

ムーアは1971年、伝説的アレンジャー/サックス奏者のキング・カーティスがプロデュースしたアルバムでソロ・キャリアをスタートする予定だったものの、アルバムの完成前にカーティスが殺害され、アルバムはお蔵入りになりました。

そして、同年サム&デイヴが再結成し、1981年までレコーディングやツアーを行なっていましたが、やはり二人の関係には常に緊張感が漂い、1982年に完全に解散し、1988年にプレイターが交通事故で他界しました。

なお、サム&デイヴは1992年に「ロックの殿堂」入りを果たした後、「ヴォーカル・グループの殿堂」入りも果たし、グラミー賞の生涯功労賞を受賞しました。

ソロ活動を続けたムーアは、1998年公開の映画『ブルース・ブラザーズ2000』に牧師役で出演し、名曲「John the Revelator」を熱唱、また2002年には1971年のお蔵入りアルバム『Plenty Good Lovin’』がようやくリリースされ、評論家から絶賛された同作で、ついにソロ・アーティストとして認められました。

2006年にはブルース・スプリングスティーン、スティング、ボン・ジョヴィら豪華ゲストをフィーチャーしたソロ・アルバム『Overnight Sensational』をリリースし、2009年にマディソン・スクエア・ガーデンで開催された「ロックの殿堂」25周年記念コンサートに出演したムーアは、ブルース・スプリングスティーンと「Soul Man」「Hold On, I’m Comin'」を共演したほか、スプリングスティーン2022年のソウル・カヴァー・アルバム『Only the Strong Survive』(2022年9月30日MLCニュース)にもフィーチャーされ、2曲でスプリングスティーンとコラボしていました。

ムーアの訃報を受け、ポール・ロジャースやロジャー・ダルトリーが追悼メッセージを公開しており、ダルトリーは次のように綴っています。

「10代の頃を思い返し、やがて僕の人生を形作ることになるレコードの音を思い出すと、サム・ムーアの声が今でも耳に新鮮に響く。彼の純粋なソウル・ヴォイスは僕にインスピレーションを与えてくれました。サム、素晴らしい音楽をありがとう」

安らかなる眠りをお祈りいたします。

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