ジェスロ・タルの創設メンバーの一人、ミック・エイブラハムズが長期闘病の末他界

ジェスロ・タルの創設メンバーでギタリストのミック・エイブラハムズ(Mick Abrahams)が19日、82歳で他界しました。エイブラハムズは2009年11月に心臓発作を起こし、一時は回復し活動を再開していたもののその後メニエール病を発症。病状が悪化し長期の闘病の末、帰らぬ人となってしまいました。

ジェスロ・タル/イアン・アンダーソンはSNSに追悼のメッセージを投稿しています。

「昨日、ジェスロ・タルの創設メンバー、ミック・エイブラハムズの訃報を知り、深い悲しみに暮れています。ミックは、ジョン・エヴァン・バンドと、ルートン/ダンスタブル地域でクライヴ・バンカーと結成したブルース・バンド、マクレガーズ・エンジンの崩壊後、ジェスロ・タルが結成された初期において、極めて重要な役割を果たしました。

ミックのご家族と親しいご友人の皆様には、心からお悔やみ申し上げます。皆様は、彼の功績と音楽的遺産を当然ながら誇りに思っていらっしゃるでしょう。

イアン・アンダーソン 2025年12月21日」
本名マイケル・ティモシー・エイブラハムズ、1943年4月7日ベッドフォードシャー州ルートンに生まれ。ジェスロ・タル結成時からバンドに参加し1968年のデビュー・アルバム『This Was』(邦題『日曜日の印象』)で演奏したものの、イアン・アンダーソンとの間で方向性の相違を原因に完成後まもなくバンドを脱退。より明確なフォークやジャズの影響を取り入れたいと考えていたバンドに対し、彼はよりブルース/ロック色の強い方向性を追求したかったためということです。

エイブラハムズはその後、ブルース・ロック・バンド、ブロドウィン・ピッグを結成。1970年の解散までに『Ahead Rings Out』(1969年)と『Getting to This』(1970年)という2枚のアルバムをリリースしました。71年にはセルフ・タイトルのソロ・アルバムを発表し、ミック・エイブラハムズ・バンドとして精力的に活動を続け、数年おきに作品を送り出し続けます。90年代にはブロドウィン・ピッグ再結成、こちらでも10作以上ものアルバムをリリースし続けました。

一方彼は、運転手やライフガード、金融コンサルタントとしても働いていたそう。それでも音楽活動は諦めることなく並行して続けていました。しかし2009年11月に心臓発作に見舞われます。回復に時間を要しながらも活動再開を目指していた約半年後、2010年4月にメニエール病を患っていることを公表。少なくともさらにもう1年間は活動ができない状態であることを明かします。2013年12月には健康状態が依然として悪化していることを明かしながらも、翌年にはアルバムをリリースしたいと宣言していました。それからわずかにずれ込んだものの2015年にアルバム『Revived!』をリリース。同作にはブロドウィン・ピッグのメンバーや、ビル・ワイマン、ジェフ・ホワイトホーン(バック・ストリート・クロウラー/プロコル・ハルム)他多数の協力者が参加した力作となっています。しかしこれが彼の最後の作品となってしまいました。

病に倒れたことを回想し、彼はこのように述べています。「(2009年11月に)ほぼ同時に2度の心臓発作と脳卒中を起こしました。それが私に大きな影響を与えています。最近は他の人とギターを弾くことはできますが、かつての自分のレベルには到底及びません。それが本当に悔しいです」

イアン・アンダーソンは公式サイトで、彼との思い出とともに以下のように綴っています。
「1968年10月、エスビャウからハーウィッチへ向かう夜行フェリーで、ミックと私は小さなツインベッドの船室に同乗した。そこで私は、フェリーターミナル近くの古物店で買ったばかりのマンドリンを弾こうとして、ミックを困らせてしまった。その夜、私は “Fat Man” という曲を書いた。私が作曲に取り組んでいる間、眠ろうとしていたミックは、この曲が自分のことを歌っていると思ったようだ(実際は違った)。実際、ミックは当時、引き締まったハンサムで、タルの初期に痩せこけていた私たちのような小僧よりもスタイルが良かった。私たちは11ヶ月間、互いに学び合い、有益な経験を積んだが、最終的に仲たがいした。主な原因は、将来の音楽的方向性に関する私たちの考え方の違いだった。私はより幅広い音楽的影響を取り入れたいと思っていたが、生粋のロッカーでありブルースマンであるミックは、ファースト・アルバム『This Was』のより伝統的なスタイルを貫きたかったのだ。

しかし、その後も私たちは一緒に演奏し、いくつかの作品でコラボレーションした。そして、私たちが築き上げてきた相互尊重は、タル時代の形成期に深く結びついている。ミックはタル時代だけでなく、ブロドウィン・ピッグや自身のバンドでも記憶に残っている。ブロドウィン・ピッグでは、飛行機恐怖症のミックをアメリカ行きの飛行機に乗せることさえできたのだ(飛行機恐怖症のため、適切な鎮静剤が投与された)。タルのアメリカと世界ツアーの多忙なスケジュールは、ミックには全く向いていなかったのだろう。彼は地元で演奏し、ほとんどの場合自分のベッドで寝るのが好きな、家庭的な人物だった。最近、私もほぼ同じ気持ちだ……。

私たち全員は、ミックの功績と音楽の遺産を当然ながら誇りに思うべき家族と親しい友人たちに哀悼の意を表します」

安らかなる眠りをお祈りいたします。
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●Blodwyn Pig - Modern Alchemist (1969)
●Mick Abrahams - Cat Squirrel ( Live at Bishops Stortford Blues Club 24th November 2003)
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ミック・エイブラハムズ
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ミック・エイブラハムズ
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