スライ&ロビーのスライ・ダンバー死去

スライ&ロビー『Dub Rockers Delight 』(Blue Moon:1991)。
右がスライ・ダンバー、左がロビー・シェイクスピア。

ジャマイカの伝説的ドラマーであり、数え切れないほどのアーティストたちのレコーディングで脇を固めながら、レゲエが新たな進化の舵を切るための先導役を果たしたスライ・ダンバーが亡くなりました。享年73歳。1月26日、ダンバーの妻セルマが現地の新聞『ザ・グリーナー』の取材に応える形で認めています。「今朝6時頃、彼を起こしに行ったんですが、反応がなかったんです。すぐにお医者様に来てもらって、息を引き取ったことが確認されました」彼女はそう語りました。直接の死因は現時点で不明ですが、伝えられるところではダンバーはここしばらく体調を崩していたようです。

セルマによれば「昨日は彼にとって、凄くいい日でした。彼の友人たちが訪ねて来てくれて、みんなでとても楽しく過ごしました。昨日は食欲も旺盛だったし……時には食べ物に見向きもしないこともありましたから。彼が具合が悪いのは分かっていました……でもこんなことになるほど悪いとは思ってもいませんでした」とのことです。

ベーシストのロビー・シェイクスピア(2021年に死去)と共に、世界的な名声をほしいままにしたダンバーは、概算によればこの数十年の間に、リズム・セクション(兼プロダクション・デュオ)として20万曲以上のレコーディングに参加しており、これにはオリジナル・トラック、リミックス、そして彼らの仕事をサンプルした膨大な曲の数が含まれています。『ローリング・ストーン』誌ではかつてダンバーを史上最高のドラマーのリストに加えた際、「彼のリズムがサンプルとして使われてきた頻度を考えれば、恐らく世界で最も多くのレコーディングに関わったミュージシャンとして認定されてもおかしくない」とのコメントが添えられていました。

1952年5月10日、ジャマイカのキングストンで生まれたローウェル・フィルモア・“スライ”ダンバーは、2021年のインタヴューで、子供の頃過ごした家には彼の姉たちが聴いていたオーティス・レディング、ブッカー・T & ザ・ MGs、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(ニックネームの “スライ” は彼が彼らの大ファンだったことから付いたもの)がいつも流れていたと証言しています。が、ダンバーがドラマーになることを志したのは、ロイド・ニブがスカタライツと一緒にプレイしているのを聴いたのがきっかけでした。
「学校に行ってても、ずっと自分の机を叩いて演奏してて、そのうち空き缶で演奏し始めてね。13の時に、もう学校には行きたくないってオフクロに宣言したんだ」
ダンバーの母親は退学して彼の音楽の才能を追求していくことを許しましたが、彼はドラムを叩く上で、きちんとしたレッスンを受けたりすることは一度もありませんでした。

ダンバーは15歳の時、ザ・ヤードブルームスというバンドで初めてステージに立ちます。初めてのレコーディング参加はリー・“スクラッチ”ペリーと彼のバック・バンド、ジ・アップセッターズの「Night Doctor」でした。1969年、ダンバーはデイヴとアンセル・コリンズのアルバム『Double Barrel』でプレイし、タイトル・トラックは全英シングル・チャート首位を獲得する大ヒットとなりました。

1973年、ダンバーのプレイをナイトクラブで観たベーシストのロビー・シェイクスピアは、たちまちその抜きんでた技量の虜になりました。彼はダンバーにスタジオ・セッションを勧め、二人は意気投合します。ダンバーは2009年にこう振り返っています。「初めて一緒にプレイした時は、まるで魔法みたいだったよ。一瞬のうちにがちっとグルーヴがハマってね。俺には奴の音が聴こえるし、奴にも俺の音が聴こえてるんだよ。お互い徹底してシンプルに徹するよう心掛けてた」

ダンバーとシェイクスピアはジャマイカのチャンネル・ワン・スタジオのハウスバンドだったザ・レヴォリューショナリーズでプレイするようになり、並行してピーター・トッシュのツアーやレコーディングにも参加しました。加えて、リディム・ツインズの異名を取った彼らは自分たちのプロダクション会社、タクシーを起ち上げ、グレゴリー・アイザックス、デニス・ブラウン、バーリントン・リーヴァイといった大物レゲエ・アーティストたちとの仕事をこなしながら70年代を過ごしました。彼らの成功の最大の要因は、“ロッカーズ”・リズムを発明したことにあり、これによって彼らは、既にポピュラーで巷に溢れていた “ワン・ドロップ” リズムに、もっとシンコペーションやエナジーを注ぎ込むことが可能になったのです。

「自分たちの恐れていることを突き詰めた上で、それを覆すために変化の必要性を感じ、レゲエにもっとエナジーを注入しようと考えたんだ、何故かと言うとワン・ドロップは屋内の大規模アリーナや、大型スタジアムとかになるとどうも何だか軽く聞こえちゃったから……俺たちはジャマイカに戻るとすぐに、ブラック・ウフルとオープン・スネアで実験を始めた。そうしたらスネアが命を持ったんだ」

そのよりエナジェティックなサウンドが、70年代後期にスライ&ロビーがリズム・セクション兼プロデューサーとして関わったブラック・ウフルの作品を定義づけるものとなったのです。スライ&ロビーを後ろ盾に、ブラック・ウフルは『Red』『Guess Who’s Coming to Dinner』といったヒット・アルバムを何作も世に出し、中でも『Anthem』は1985年にグラミー賞最優秀レゲエ・アルバム部門の受賞作となりました。

ブラック・ウフルの成功はまた、スライ&ロビーに、プロデューサーとしてもセッション・ミュージシャンとしてもより幅広く認められる機会──そしてより多くの仕事──を与えることとなりました。彼らはグレイス・ジョーンズと一緒に、彼女が1981年にジャンルの壁を超えてスマッシュ・ヒットさせた『Nightclubbing』をはじめとする数々のアルバムに関わり、ボブ・ディランとは1983年の『Infidels』を含む3枚のアルバムで共演しました。彼らは更にミック・ジャガー、ザ・ローリング・ストーンズ、ヨーコ・オノ、ジャクソン・ブラウン、ジョー・コッカー、イアン・デューリー、そしてカーリー・サイモンといったアーティストたちのレコーディングに参加しています。またスライ&ロビーは、1987年の独創性溢れる『Rhythm Killer』を皮切りに、自分たちの名義でも数々のアルバムをリリースしています。

「俺はただビートを生み出したいだけだから、ただそこに座って、自分の感じたままにプログラミングして行くのが楽しいんだ。でも大半のドラマーはプログラミングには一切手を出そうとしない。彼らの中で俺ひとりだけが、プログラミングをこなせるドラマーになるんだ。連中は自分たちは偉大なドラマーだからそんなの必要ないと思っていて、だから誰も彼らにはプログラミングを頼まない。でもこれは新しいレコーディングの手段のひとつだから、俺はできるようになりたいと思ってるんだ」

新たなテクノロジーを武器に、ダンバーはまたレゲエの進化をダンスホールへと先導することに。初期のダンスホール・ヒットの多くの礎となっています。彼らはその後もシャバ・ランクス、カッティ・ランクス、ビーニー・マンといったアーティストたちとダンスホール・レコードを作り続けました。また、相変わらず幅広いジャンルでプロダクション・ワークに勤しみ、ノー・ダウト、シネイド・オコーナー、マリアンヌ・フェイスフルといった異色の顔ぶれともパートナーを組んでいました。1999年、スライ&ロビーは彼らにとって二度目のグラミー賞最優秀レゲエ・アルバム賞を獲得。今回の授賞作品は他人ではなく自分たち自身のアルバム『Friends』で、2人は見事トロフィを自宅に持ち帰りました。

「赤信号が見えると逆に燃えちゃうんだよな。常にイチかバチかのところで勝負して、何か前とは違う、新しいものを手に入れるんだよ」
「俺は誰とも違っていたいと思ってやってるけど、だからって他のドラマーをサゲるつもりはない。俺はどのドラマーもみんな尊敬してるし、みんなのことを凄いと思ってるんだ。──ただ、俺としては、一旦市場に出て来て決意表明をしたからには、俺はみんなが好きになってくれるような、みんなが楽しんでくれるようなものを探し出さなきゃならないと思ってるんだよ。だからいつだってそういうものを探してる。今でもそうさ。あちこち目配りして、耳を澄ましてるんだ、毎日アイディアを求めてね」

安らかなる眠りをお祈りいたします。
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