訃報:フランス往年の名女優にして活動家、ブリジット・バルドー死去

第二次世界大戦後の時代精神を魅惑的に体現し、フランス映画界で一世を風靡した女優、ブリジット・バルドーが12月28日に南仏サントロペの自宅で亡くなったことを、彼女が主宰し運営に携わっていた動物愛護基金が公表しました。死因は明かされていません。享年91歳。
日本でも「BB(べべ)」の愛称で映画ファンに親しまれたバルドーは、1934年にパリの裕福な家庭に生まれました。バレリーナとして教育を受けた後、モデル業を始めたところから一気にその天賦の才を開花させ、僅か15歳で『Elle』誌の表紙を飾ると、2年後には『Le Trou Normand』(邦題『素晴らしき遺産』)で女優デビューを果たしました。50年代には代表作『素直な悪女』をはじめ、当時の夫だったロジェ・ヴァディム監督によるきわどい内容のフランス映画への出演が続き、更にジャン・リュック・ゴダールの1963年の映画『軽蔑』や、ニュー・ウェイヴのゴッドファーザー、ルイ・マルによる『ビバ・マリア!』ではジャンヌ・モローとダブル主演を果たすなど、未来のヌーヴェル・バーグの巨匠たちの寵愛の的となります。1973年に女優業を引退するまで、生涯に出演した映画の本数は47本とそれほど多くはありませんが、演じたキャラクターと実生活の奔放さのシンクロぶりで時代を代表するセックス・シンボルとして多くの人を惹きつけ、1985年にはフランスの最高勲章であるレジオン・ド・ヌールを授与されました。

バルドーは女優業と並行して60年代から音楽活動にも関わるようになり、ボブ・ザグーリ、サシャ・ディステルらと共演しましたが、とりわけセンセーションを巻き起こした共演者がセルジュ・ゲンズブールでした。60年代後半、彼女が3番目の夫、ギュンター・サックスと結婚している最中にスキャンダラスな関係となったバルドーとゲンズブールは、「Comic Stri」と「Bonnie and Clyde」というデュエットの名曲をレコーディングし、1968年には彼女が歌った様々なゲンスブールのナンバーを集めたアルバム『ボニーとクライド』をリリースしています。
●Comic Strip (Mono Version)

ちなみに、ゲンズブールの代表作の一つ「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」は元々彼女のために書かれた曲で、二人のデュエットとして録音されたものがオリジナルです。制作当時には夫との仲は既に冷え切っていたものの、過激な内容が離婚の引き金になりかねないと危惧したバルドーのエージェントの意向でお蔵入りとされ、それを機に二人の関係も終わりを告げました。ゲンズブールは後に同曲をジェーン・バーキンと録音して大ヒットさせましたが、バルドー版の音源は1986年まで公表されることはありませんでした。

●Je t'aime moi non plus
1973年、バルドーはエンターテインメント業界からの引退を発表し、以後は動物愛護活動家として積極的な活動を展開しました。1986年には国境を超えて全世界における動物福祉事業を支援するため、ブリジット・バルドー基金を起ち上げます。しかし2000年代に入る頃には、ハラル・ミートの習わしを巡る議論を利用して、自らが「野蛮人」とみなす人々や移民、人種的な純潔に関する攻撃的な民族主義的言説に走り、イスラム教徒嫌悪むきだしの発言で人種差別主義者として告発され、罰金刑を課せられることもありました。2021年までに、彼女が人種間の憎悪を扇動したとして罰金刑に処せられた数は6回にのぼります。


バルドーが亡くなるまで配偶者であったベルナルド・ドマールは、かつてフランスのファシスト党首ジャン・マリー=ル・ペンの側近を務めていた人物で、バルドーは先頃の選挙でその後継者となったマリーン・ル・ペンの支持を表明していました。

安らかなる眠りをお祈りいたします。

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