ビートルズ来日の五日間にスポットを当てる──無観客・無料配信ライヴ、LEGEND OF ROCK「The Beatlesは終わらない!」トーク&ライヴ・イベント・レポート

THE BEATMASTERS



左:吉田(ビートルズ・コンシェルジュ)、
右:大村 亨氏(「ビートルズと日本」著者)
 
 

日時/会場:2020年6月29日(月) 渋谷・duo MUSIC EXCHANGE
出演
・ライヴ・パフォーマンス: THE BEATMASTERS
・トークライヴ:大村 亨(『「ビートルズと日本」週刊誌の記録 来日編』著者)/吉田聡志(ビートルズ・コンシェルジュ/シンコー・ミュージック)

2020年6月29日、無観客・無料配信ライヴ「The Beatlesは終わらない!」(Supported by MUSIC LIFE CLUB)が開催された。
 
トークタイムとライヴ・パフォーマンスの二本立てで構成され、トークタイムは今から54年前の1966年6月29日に初来日を果たしたビートルズにスポットを当て、「ビートルズと日本」シリーズの著者、大村 亨さんを招いての対談が行なわれた。

続くライヴパートでは日本屈指のビートルズ・トリビュートバンド、THE BEATMASTERSが初期〜中期の衣装を変えた二部構成で、62年〜65年のビートルズ・ナンバーを演奏した。

尚、ステージ上では対談、演奏シーン共に個人間に等身大の透明アクリル板が設置され、THE BEATMASTERSも本来のコーラスの妙味である1本のマイクをメンバー同士が分け合う──といったパフォーマンスを封じて〈ソーシャル・ディスタンス〉をとってのものだった。
吉田:みなさんこんばんは、MUSIC LIFE CLUBビートルズ・コンシュルジュの吉田と申します、この新型コロナウィルス禍の真っ只中、我々エンタメ業界も大きな打撃を受けておりますが、ここduo MUSIC EXCHANGEをはじめライヴハウスは壊滅的な状況です。しかし我々もただ手を拱いたままいるわけではありません。本日はそんな状況下に於いてもできることとして、初の試みである会場支援企画〈無観客・無料配信ライヴ LEGEND OF ROCK  The Beatlesは終わらない!〉を実施させていただきます。今回は会場支援企画として、ドネーション、寄付を募っておりますのでご覧いただいている方の中でお心遣いいただける方がいらっしゃいましたら是非ご寄付をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします(詳しくは文末でご紹介します)。

さて、本日6月29日はビートルズ来日記念日であります、そこで我々は「ビートルズは終わらない2020-2021」というキャンペーンをスタートしました。そのタイトルにもなっている書籍『ビートルズは終わらない』は、ビートルズのCD発売のプロデュースなどをされていた行方 均さんがお書きになったもので、ビートルズの現役時代を生で体験されたお話が満載です。それでは行方さんの遺志を継いだ「The Beatlesは終わらない!」、スタートしたいと思います。まずはビートルズ来日記念日にちなんで、「ビートルズと日本」というテーマを語らせたら、おそらくこの方より詳しい人はいないのではないかという大村 亨さんをお呼びしたいと思います。
──大村氏登壇
大村:こんばんは。
吉田:その格好はどうしたんですか?
大村:着てきて欲しいって言ったじゃないですか(笑)(大村氏はビートルズも着ていたJAL日本航空の文字入りハッピを着用)。ビートルズの日ということで、彼らが来日したときに着ていたハッピを着て参りました。
吉田:飛行機から降りてきたときに着ていた。
大村:そうですね。
吉田:ちょっと年季が入っているようですけど。
大村:復刻版もあるんですけど、これは当時のオリジナルで、54年前の本物です。当時の関係者の方から譲っていただいたもので、ちょっとシミがついてますけど(笑)。
吉田:54年前、ずいぶん前ですが。
大村:私、生まれてません。
吉田:その当時の貴重なものを、本日は色々とお持ちいただいたということですが。
大村:そうですね、まずはビートルズ日本公演のパンフレット。ここに武道館のビートルズの声が染み込んでます。
吉田:ちなみにお値段はいかほどだったんでしょうか?
大村:これはたぶん1万5千円くらいだったかな……。
吉田:えっ!? いや、当時。
大村:当時(笑)、当時は300円。で、これは公演のチケットです。
吉田:プレミア・チケット。それに今のチケットとちょっと違いますね。コンピュータで打ち出されるチケットとは。
大村:チケットも色々と細かいことがあって、普通に買うときは読売新聞社に応募して抽選だったんですけど、それ以外にスポンサー枠として、ライオン歯磨・ライオン油脂というのもあったんです。今日持ってきましたのはそのライオンさんルートで当たったものです。当選通知書や、送られてきた封筒とかも残ってたので、全部譲っていただきました。
吉田:封筒まで持ってる人は少ないんじゃないですか。
大村:やっぱりこのへんはマニアが。それで、当時どうやってライオンさんルートのチケットが当たったかというと、歯磨きを買ってその空き箱で送ると抽選で当たる──ということで、当時の歯磨きも持ってきました。
吉田:54年前の箱?
大村:はい、当然未使用のチューブで中身も残ってます。
吉田:すごい! ビートルズ関連のメモラビリアとして歯磨きも保存されている(笑)。
大村:関連といえば関連なんでしょうね。興味ない人には只の歯磨きですから。
吉田:当時、一生懸命それで歯を磨いては空き箱を送って応募したんでしょうね。で、大村さんはそういったビートルズ来日時のさまざまなトピックスに関しては、もう第一人者になってると思います、これまで弊社シンコーミュージックから「ビートルズと日本」と題したシリーズを書いていただいますけど、だいたいどういった内容なのかを教えてもらえますか。
大村:今三冊出ています。赤の「熱狂の記録」はベスト盤的なもので、日本に於けるビートルズのできごとを時系列で追ったものです。〈◎年△月□日にビートルズの映画「◇◇◇◇」を上映〉とか、〈ラジオ番組◎◎◎で特集をしました〉とか、新聞とラジオとテレビと週刊誌でのビートルズ関連のできごとを調べ上げました。
吉田:時間軸はあくまで「日本」。
大村:そうです、「日本」でのできごとです。その切り口のものって意外になかったので。
吉田:何年にデビューしてアメリカを制覇したのは何年……というのはよく聞きますけど。
大村:あくまで「日本」に拘ってます。で、次に出したのが青の「ブラウン管の記録」。これはベスト盤の中からテレビだけを取り出してより深掘りしたものです。
吉田:ビートルズは日本公演の放送とかもありましたよね。
大村:もちろんそれが一番メジャーなんですけど、それ以外にも「エド・サリヴァン・ショー」を65年に放送していたとか、67年には「われらの世界」という衛星中継が日本でも同時放映されていたりとか、それ以外にもワイドショー的な番組で取り上げられたりとか、そういうものを当時、63年〜70年の新聞のラジオ・テレビ欄から一つずつ探し出して。
吉田:それは図書館とかで?
大村:永田町の国立国会図書館で。もう顔パス状態でした。
吉田:この人は何なんだろうと思われてるかもしれませんけど、その積み重ねでこのようなアーカイヴが出来上がっているというわけです。そして、いよいよ明日6月30日に発売になるのが、「週刊誌の記録 来日編」。これは一体どんな内容でしょうか?
「ビートルズと日本」 週刊誌の記録 来日編

「ビートルズと日本」 週刊誌の記録 来日編

3,080円
 
大村:先ほどの青の「ブラウン管の記録」はテレビの記録だったのですが、今回は週刊誌に特化したものです。最初企画をいただいたときに、ビートルズのデビューから全部やろうとしたんですけど、ヴォリュームがものすごいことになってしまいまして、それで来日のところに絞って、66年の1月から12月の期間に限定して、そこで来日に関して報じられたものを集めたんです。
吉田:それでも、これだけのすごいヴォリュームで。
大村:424ページ。
吉田:それをお一人で。
大村:趣味ですから(笑)
吉田:いやぁ本当に読み応えたっぷりな一冊に仕上がったと思うんですけど、今日はその中からいくつか取り上げてご紹介したいと思います。
まずは定番ともいえるビートルズ日本公演を観客にフォーカスしてレポートした記事から。メンバーの名前を大書きした服を着た入場前の行列、メンバーの写真を貼り付けた自家製のウチワを持ったファン、それを持って武道館一階席で熱狂する姿など、現代のアイドルのコンサートの原風景が垣間見える記事が紹介された。
音楽的な面からは、66年当時の日本に於けるシングル盤(17cmのアナログ・レコード)の売り上げが紹介された。ベスト3の第3位は日本独自のカップリング選曲でシングル・カットされた「恋する二人」、第2位は世界的にも大ヒットし、日本でもビートルズとして最初に出た「抱きしめたい」。そして第1位はなんとチャック・ベリーのカバー「ロック・アンド・ロール・ミュージック」。これは日本ならではの不思議な現象で、奇しくも日本公演のオープニング曲でもあった。今回の本ではそれに加え1位〜9位の売り上げ枚数も紹介されている。

そして最後に、まさにこれこそ週刊誌!ともいうべき“トンデモ記事”の見本がいくつか紹介された。
吉田:これはもう週刊誌ならではの記事。
大村:すごいですよね、『私はビートルズの覆面護衛官だった』
吉田:(笑)何ですか、覆面護衛官って。
大村:来日したときビートルズが泊まったヒルトンホテル、彼らは10階を貸し切りにしていて、エレヴェーターで行けたのは9階まで。そこからは通行証がなければ上がれなかったんです。ファンはもちろんマスコミも入れない。でもなんとしても記事を取りたい。
吉田:記者魂が。
大村:そこで、この『週刊現代』の記事。まず、当時警備を担当していた会社がビートルズ警備用に人員を臨時募集したんですね、で、そこになんとしても記事を取りたい編集部が記者を応募させて送り込んだんです。          
吉田:すごい企画ですね(笑)。
大村:それで、まんまと10階に入って彼らの一挙手一投足を追って、休み時間に原稿を書いていたんです。
吉田:警備員のフリをして、中身は週刊誌の記者。
大村:今ではありえない企画ですね。
吉田:それくらい取材合戦が過熱していて、厳戒令が敷かれていた中で。
大村:結局、7月1日の夜に芸者さんたちが彼らの部屋に入るときに、“これはスクープだ!”とカメラを取り出したのがバレて捕まってしまうんです。記事はそこまでなんですけど(笑)。
吉田:そのことも全部今回の本に入ってます?
大村:元の記事もちゃんと読めるようになっています。
吉田:来日後の週刊誌の記事としては他に何かありますか?
大村:これはもう週刊誌ならではの記事。「ポール! わたしと見た東京の朝やけを忘れないで……」
吉田:(笑)これも、もう、ホントかなぁっていう。
大村:タイトルがすごいですよね、これも本には記事全部を載せているんですけど、『女性セブン』が、ポールと一夜を過ごしたという女の子を捉まえて手記を書いてもらってます。
吉田:(笑)ほとんどもう芸能人のスキャンダルみたいなノリで。
大村:それに近いですね。最終公演の夜、午前2時から5時まで一緒にいたという内容が書いてあります。肝心なところは書かれてないんですけど(笑)。
吉田:でも、実名・写真入りで出て大丈夫かな──って(笑)。まぁ当時の週刊誌はなんとしてでもビートルズに関するどんな記事でも取りたかったと思うんですけど──、それが実際形になって誌面に掲載されてるわけですから、これはもう今では考えられない。
大村:考えられないですね。
吉田:その辺りのびっくり仰天なエピソード満載な感じでしょうか。
大村:そうですね。
吉田:それはこの全424ページでじっくり楽しんでいただけたらと思います。

ビートルズは終わらない

2,200円
吉田:では、先ほどもご紹介したんですけど、「ビートルズは終わらない」という私どもビートルズ・ファンの願いも込めた今回のキャンペーンですけど、このタイトルそのものでもある『ビートルズは終わらない』という行方 均さん著の本を弊社でもこの5月に出させていただきました。この本、大村さんにも読んでいただきましだが、いかがでした?
大村:この中で行方さんが〈日本では『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の評価が低く、それが僕にはわからない、納得がいかない〉ということを書かれていました。我々後追い世代にとっては『サージェント・ペパーズ〜』はすごいアルバムだとは思うけど、ビートルズの中でベストかといわれるとそうではない──という意見を持つ方も多いと思うんです。ですが、行方さんからは「絶対『サージェント〜』しかない、なんでお前たちはわからないんだ!」というメッセージを強くいただいて、すごく新鮮でしたし、あぁそうなのかなぁというのも感じさせられました。
吉田:僕も大村さんも後追い世代じゃないですか、行方さんは現役でビートルズの大ファンで、後にレコード会社に入られてからはビートルズのプロデューサーとして関わる、という二面性からビートルズを切ってるんですけど、僕も面白いと思ったのは、『レット・イット・ビー』以降に日本独自のビートルズの編集盤アルバムが出たものの中でお気に召さないものは、“これはもう抹殺!”と歯切れがいい。
大村:抹殺って言葉使ってらっしゃいますね。
吉田:やっぱり、それはビートルズを発売する日本側のレコード会社のプロデューサーをされて、かつ少年時代はビートルズが大好きだった──という愛情もあって、行方さんらしい、歯に衣を着せぬ書き方が大変スカッとした感じでした。
大村:吉田さんも鼎談が載ってましたね。
吉田:そうなんです、残念なことに行方さんは今年の3月にお亡くなりになってしまったのですが、私もギリギリのタイミングでお話をする貴重な体験をさせていただいて、リアルタイムのビートルズのすごさを肌で感じる話をたくさん伺いました。その中でもさっき大村さんがおっしゃった、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』がいかに当時の音楽シーンに大きな影響をもたらしたか──というのを熱く語っていただいたのは印象深いです。
──ということでお話しの方は尽きないんですが、トークタイム、時間になってしまいました。明日6月30日発売の「ビートルズと日本 週刊誌の記録 来日編」の著者、大村 亨さん、貴重なお話をありがとうございました。
大村:ありがとうございました。
 
この後休憩を挟み、ライヴパートとしてTHE BEATMASTERSのステージが行われた。ビートルズのデビュー当時、中期と、それぞれ衣装や楽器をチェンジした多彩なメニューで全26曲を演奏、トータル2時間を超える無料配信イベントは終了した。
THE BEATMASTERS 演奏曲目
第一部
1. Tell Me Why
2. Can't Buy Me Love
3. I'm Happy Just To Dance With You
4. If I Fell
5. A Hard Day's Night
6. Boys
7. I Want To Hold Your Hand
8. We Can Work It Out
9. Eight Days A Week
10. Nowhere Man
11. Day Tripper
12. Help
13. Kansas City
第二部
1. It Won't Be Long
2. Love Me Do
3. Please Please Me
4. From Me To You
5. All My Loving
6. Please Mr. Postman
7. This Boy
8. Till There Was You
9. Roll Over Beethoven
10. I Wanna Be Your Man
11. I Feel Fine
12. I Saw Her Standing There
13. She Loves You
────────────────
 

無観客・無料配信ライヴ
「The Beatlesは終わらない!」(Supported by MUSIC LIFE CLUB)

この日の配信映像は7月いっぱいアーカイヴとしてご覧いただくことができます。

THE BEATMASTERS 今後のスケジュールなどはコチラ
ドネーション(ご寄付)頂けます場合は、下記よりお願いいたします。

LEGEND OF ROCK ライブハウス『duo MUSIC EXCHANGE』支援募金

※募金におけるプラットホームはチケット販売用のプラットホームを使用しているため、フォーマット上「BUY TICKET」と表記されていますが、「募金」として扱われますのでご安心ください。
※クラウド・ファンディングではございません。
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ビートルズは終わらない

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「ビートルズと日本」 週刊誌の記録 来日編

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