ブリル・ビルディングを代表するソングライター、シンシア・ワイルが82歳で死去

シンシア・ワイル(写真右)、夫のバリー・マン(左)との二人による公式フェイスブック・ページより。



夫のバリー・マン(Barry Mann)とチームを組み、多くのヒット曲を書いたソングライターのシンシア・ワイル(Cynthia Weil)が6月1日、ビバリーヒルズの自宅にて82歳で死去しました。

二人は、NYブロードウェイのブリル・ビルディングに拠点を置き、キャロル・キング、バート・バカラック、ニール・ダイアモンドらと共に、60年代ロックンロール・サウンドの形成に貢献し、1987年に「ソングライターの殿堂」入りを果たしました。

家族が訃報を伝えており、夫のバリーは次のように語っています。
「私は幸運な男です。私の魂でインスピレーションだった人は、妻であり、世界で最も偉大なソングライターの一人という二役を兼ねていたのですから」
NYのブルックリンで生まれ育ったワイルは、子供時代からピアノを習い、大学で演劇を学んだ後にソングライティングの道を歩み始め、1961年にNY出身のソングライター、バリー・マンと結婚しました。

二人は、音楽事務所やスタジオが入ったブロードウェイのブリル・ビルディングのソングライティング・コミュニティで活動を開始、ライティング・デュオとして即座に頭角を現し、ライチャス・ブラザーズの「You’ve Lost That Lovin’」(邦題「ふられた気持」)や「You’re My Soul and Inspiration」、ドリフターズの「On Broadway」、ドリー・パートンの「Here You Come Again」(邦題「愛のほほえみ」)、ザ・ロネッツの「Walking in the Rain」(邦題「恋の雨音」)などを手掛けました。

そのほかにも、ママス&パパスのキャス・エリオットや、ザ・クリスタルズ、アニマルズ、エルヴィス・プレスリー、ダスティ・スプリングフィールド、モンキーズ、クインシー・ジョーンズ、ディオンヌ・ワーウィック、ベット・ミドラー、レイ・チャールズなど、多くの大物アーティストが、彼らの曲をレコーディングしていました。

また、二人が1986年に映画音楽作曲家のジェームズ・ホーナーと共作した「Somewhere Out There」は、リンダ・ロンシュタットとジェームズ・イングラムが、アニメ映画『An American Tail』(邦題『アメリカ物語』)のサントラ用に録音し、この曲は、アメリカとカナダのシングル・チャートで第2位を記録、グラミー賞の「最優秀楽曲賞」などを受賞したほか、アカデミー賞の「最優秀オリジナル曲賞」にノミネートされ、60年代以降の二人にとって、最大のヒット曲になりました。

ワイルは2006年、『ソングライター・ユニヴァース』誌のインタヴューで、次のように語っていました。

「私たちはノンストップで働き、3年にわたり週に6日は曲を書き、デモ・テープを作っていました。唯一の友人は、ジェリー・ゴフィンとキャロル・キングしかおらず、それは私たちと同じスケジュールで仕事をしていたのが、彼らしかいなかったからです」

ワイルの訃報を受け、キャロル・キングは、次の追悼メッセージを発表しています。
「私たち4人は、No.1ヒットを出したアーティストのために次のヒット曲を書くという熾烈な競争をしていたにもかかわらず、親密でお互いを気遣う友達でした。私たち全員がより優れたソングライターになれたのは、シンシアのハイレベルな仕事のおかげです」

また、ホール&オーツのジョン・オーツは、次のように綴っています。
「ブリル・ビルディングの偉大なソングライターの一人、シンシア・ワイルの訃報に深く悲しんでいます。彼女とバリー・マン、フィル・スペクターが大ヒット曲 “You’ve Lost That Loving Feeling” を書き、ダリルと僕は1980年のアルバム『Voices』(邦題『モダン・ヴォイス』)でカヴァーしていました」

なお、ワイルは2010年、「ロックの殿堂」入り式典で、音楽業界の舞台裏で活躍した人々に贈られる「アーメット・アーテガン賞」を受賞し、同賞を受賞した初の女性として栄誉に輝きました。

安らかなる眠りをお祈りいたします。
商品詳細
バリー・マン&シンシア・ワイル 
『プライヴェート・トレジャーズ』


CD(2017/7/26)¥3,182
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